結局。
あれからずっとマクシム君に見張られていた為、私は一瞬たりとも二人がどうなったのかを見る事が出来なかった。
でも!
何か元気になって洞窟から出て来た二人は互いに意識してる感じで……。
これはアレなのでは?
昨晩はお楽しみでしたね?
なのでは?
くぁー! 気になる! 気になる気になる!
二人は昨日何があったの!?
告白とかしたのかな!? もしかしてキスまでしてしまった!?
いや、でもちょっと早いんじゃないかな。
だって、純愛ゲームだもん! これ! 奪い合ったりとかそういうのは無いゲームだもん。
あ、いや。でもヒロインという名の主人公レナちゃんを取り合う展開はあるから……ま、まさか?
「あー。良い天気。って。シーラちゃん! なんでここに居るの?」
「あぁ、昨晩休む場所を探していたら、偶然マクシム君と森で会いまして。そのまま一緒に夜通し話していたんですよ」
「そうなのですか。マクシムが世話になりました」
「いえいえ。こちらこそ、色々とお話出来て楽しかったです」
レナちゃんとナルシス君の目がジッとマクシム君に向けられる。
マクシム君は非常に居心地が悪そうだが、はて、どうしよう。
「マクシム……お前」
「そういえばお二人は昨日洞窟の中に居たんですね」
「っ!」
「うん。そうだよ」
ん?
何か様子がおかしいな。
ナルシス君は凄くレナちゃんを意識してる感じだけど……。
レナちゃんは普通の事の様に話している。
ポーカーフェイスって奴?
「怪我とかは大丈夫ですか?」
「うん。何も無いよ。あー。でも昨日はちょっと熱が出ちゃって大変だったかな」
「そうなんですか? では少し調べますね」
私は恋愛どころではないと、レナちゃんの所に小走りで近付いて、その手を取り……何故か抱きしめられた。
「あの? レナちゃん?」
「んー? なぁにー?」
「いや、そのー。体の検査は触れるだけで大丈夫なので」
「うん。分かってるよー。だからこうやって触ってるの」
いや、間違いでは無いけどね?
まぁ、良いかぁ。熱が出たって事は昨日の夜は結構辛かっただろうし。
そんな中私を呼ばず一人で頑張っただけで……。
って、ちょっとまてーい!
そうか! 熱が出て、レナちゃんが普段よりも甘えん坊さんになってたから、そのギャップにナルシス君は撃ち抜かれたんだ!
間違いない!!
だって、甘えてくるレナちゃんは本当に可愛いもの!
まぁ、甘えてくる子は全部全部可愛いけどさ!
「しょうがない子ですねぇ。じゃあ調べますよ」
「うん」
私はレナちゃんの少し高い体温を感じながら、全身に魔力を通して調べてゆく。
が、特に異常らしい異常はない様だった。
一応噛まれた場所があったから、そこには包帯を巻いて対処する事にする。
「こんな感じですかね」
「ありがとうシーラちゃん」
「ありがとうございます。シーラ様」
「ん? 何でナルシス君が?」
「いえ。レナの怪我は私を庇ったものだったので」
「別に気にしなくても良いって言ったのに。心配性だね。君は!」
ん?
んん!?
今、今聞きまして!?
レナ。レナですよ!!
名前呼び!!
名前呼びですよ! 奥さん!
しかもなんか凄く仲が良さそう。
くっ、聞きたい。昨日は何があったのって。
聞きたい!!
けど、直接聞くのは恥ずかしいし。ど、どうすれば!
「……」
駄目だ。何も思いつかない。
ハッ! こ、これか!
昨日予言された、お前、自分の頭の悪さに絶望するぞ。ってこれ!?
どれだけ先読みが凄いの! マクシム君は!
恐ろしい子……!
でも、確かに言われる通り、どうやっても良い方法が思いつかず、私は結局三人から離れて先生業務に戻る事になった。
悔しいです!
空をふよふよと浮きながら、コピーシーラの動向を確認しつつ、真面目に森での野外活動を頑張る生徒を見下ろしながら、私は考えていた。
このままレナちゃんがナルシス君と結ばれるとして、レナちゃんがどうなってしまうのか、とか。
ナルシス君はレナちゃんが聖女だと知っても拒否せずに受け入れて、守ってくれるだろうか、とか。
結局は本人同士の問題だから私が悩んだ所で意味は無いのだけれど、それでも二人とも子供の頃から見守っているからね。
幸せになって貰いたいと思う。
それはオリヴァー君やエミリーちゃんだってそうだし。
ジェイクさんやベンジャミンさん。ダンさんやレオニーさんだってそうだ。
四人だけじゃない。多くの人と知り合って、話をして、親しくしてきた。
だから、みんな幸せになって貰いたいと思う。
いつまでも……。
「でも、いつか終わりは来るんだもんね」
そう。人は永遠を生きる事が出来ない。
死したらもう会えない。
だから、もし、私のよく知る親しい人達が死したとして……。
「……立ち直れるか、分からないな」
「ならば永遠を求めてはいかがですか? シーラ様」
「また貴方ですか? しつこいですねぇ。セールスはお断りですよ」
「でも、シーラ様は永遠を求めているんでしょう?」
「求めてません」
「嘘はいけない」
「話が通じない魔王ですねぇ。いや、ここまでに出会ってきた魔王さん全部話が通じませんでしたけど」
「当然ですよ。魔王とは己の心に従う物ですから」
「……何で増えるんですか。面倒ですね」
永遠永遠煩い魔王と話をしていたら、別の魔王が現れて、空に浮かぶ私をぎゅうぎゅうと抱きしめる。
人形じゃないんだから、そんな風にしないで欲しい。
「っ、いや、まさか貴女にお会い出来るとは思いませんでしたよ。宵闇の魔王。世界を闇に染める為に現れた狂気の魔王」
「いや、世界とか興味無いですけど。私が興味あるのは先輩だけなんで」
「そうで「だから、先輩と話すのに邪魔なんで。消えてもらえますか?」っ!?」
器用にも私を抱きしめたまま、腕を振るったその魔王は、永遠の魔王を消し飛ばすと、私を見てニッコリと笑う。
「先輩。怖かったですねぇ。でも私が居るから大丈夫ですよ」
「むしろ今この状況の方が怖いですけどね。一度殺されてますし」
「そんなぁ! あれは先輩が私を騙したから悪いんですよ!」
「いや、騙したつもりは……って、ここでそんな話をしていてもしょうがないですか。それで? 本日は何の用ですか」
「え? 先輩に会いに来たっていうのが用ですけど」
「ソウデスカ」
私は厄介な存在の体温を感じながら、コピーシーラに異常が無いか調べ、生徒の事も調べる。
とりあえずは問題なさそうだ。
「そんなに心配しなくても。私は先輩以外に興味ありませんよ」
「国を滅ぼそうとした人がよく言いますね」
「えー。だってしょうがなくないですか? あの国。先輩を誘拐して、実験しようとしてたんですよ? 先輩の全ては私のモノなのに」
「いや、私の全ては私のモノです」
「じゃあ、私の全部をあげるので。先輩の全部を下さい」
「嫌です」
「もー先輩っては素直じゃないですねぇ」
「はぁ」
「あぁ、ため息なんて、どうしたんですか? 辛い事があったんですか?」
「今、この瞬間が辛いです」
「大変! すぐに肌と肌で温めあいましょう!」
「イヤデス」
「えー! もう我儘ですねぇ!」
私はぎゃあぎゃあと騒がしい最も面倒な魔王との対話を諦め、心の癒しを求めて子供たちへと視線を送るのだった。