愛され転生エルフの救済日記   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第48話『恋の予感』(レナ視点)

(レナ視点)

 

 

 

昔、シーラちゃんが学園に入ったらきっと恋をすると言っていた事を思い出しながら、ナルシス君の背中を見つめた。

 

まだ索敵は慣れていないのか、何度か失敗しているが、それでも数回行えば成功する。

 

魔法の成功に安堵した顔を浮かべているのを見て、私も嬉しくなるのだった。

 

「どうだ。レナ。上手い物だろう?」

 

「まぁね。でも、まだまだかな」

 

「フン。すぐに完璧な物にしてやるさ」

 

私は普段の様に悪態をつこうとしたが、上手くは出来なかった。

 

そして、頭の中ではシーラちゃんの言葉が蘇る。

 

『私は、レナちゃんがお姫様が良いと思うのですが』

 

『お姫様は色々なカッコいい男の人達に囲まれて、とっても幸せにして貰えるんですよ?』

 

『いずれ恋をすれば変わりますよ』

 

「はぁ……」

 

「どうした? レナ」

 

「別に。何でもないよ。気にしないで」

 

「そうか」

 

気にしないでと言われて納得したのに、チラチラと私の方を見ているのは心配だからだろうか。

 

優しい男なのだと思う。

 

プライドが高いのも、王族として、次期王として強くあらねばならないからだと知った。

 

そして、いざ自分が戦いの中で命を落としてもその名をマクシム君が利用できる様にと強い王になるのだと。

 

格好いい男だと思う。

 

少なくとも、私が今までに出会ってきた人たちの中ではかなり好意的に見る事が出来る。

 

昨日まで嫌っていたというのに奇妙な話だとは思うけれど。

 

それでも、本当に嫌っていない人間を嫌い続ける事なんて私には出来ないから、きっとこれからは良い友人の様に思って、そう振舞うのだろう。

 

そう。友人だ。

 

断じて私はナルシス君に恋などしていない。

 

この感情は恋などではない。

 

だって、お話で見た恋はいつだって、激しい感情に襲われて自分が保てなくなる程だって書いてあったから。

 

胸の奥がドキドキして落ち着かなかったりとか、夜眠る事も出来なかったりとか。

 

その人の事を想うだけで様々な感情が暴れて、自分が分からなくなる程だって。

 

でも、私は違うのだ。

 

確かに手を繋いだ時は少しドキドキしたけど、落ち着いていたし。

 

昨日の夜も一緒に洞窟で一晩過ごしていたけど、眠る事だってちゃんと出来た。

 

むしろシーラちゃんと一緒に居る時の様に落ち着いて眠る事が出来たくらいだ。

 

だから、恋はしていないと思う。

 

……。

 

でも、少しだけ、この一緒に居る時間が終わったら寂しいという気持ちがあるのは確かだった。

 

 

 

「そう言えばさ。この野外活動って何日やるんだっけ?」

 

「特に決まっていなかった筈ですよ。全チームが脱落したら終わりという話でしたから」

 

「フフン。ならばずっと終わらなくなってしまうな。我らは何日だろうと問題無く活動出来るからな」

 

ナルシス君の言葉に少しだけ胸の奥で鼓動が跳ねた。

 

でも不快感は無くて、まだ一緒に居るんだという喜びがあるだけだ。

 

「そこは流石にシーラ様が止めるんじゃないですか? 僕らだけ続けるのも意味無いですし」

 

「あぁ、まぁ。確かにな。そうか」

 

「……」

 

「しかし、そうなるとレナとこうして一緒に居られる時間も終わってしまうのだな」

 

「っ! な、なに言ってんのさ」

 

「そうだよ。兄さん。僕らは同じ学園に通っているんだから、また学園で会えるでしょ」

 

「あぁ、確かにそうだったな」

 

「何? ナルシス君ってばそんなに私と離れたくなかったの?」

 

私は自分の気持ちを誤魔化す様にそんな事を言ったのだが、ナルシス君の反応は私の予想とは違い。

 

「あぁ、どうやらその様だ」

 

真っすぐに私を射抜きながら、そんな事を言うのだった。

 

その瞳に、その言葉に、私は胸の奥で大きく鼓動が跳ねるのを感じる。

 

しかし、それをバレない様にと言葉に気を付けながら私は口を開いた。

 

「ま、ナルシス君はお友達少ないからね。しょうがない。私が……」

 

「いや、友人ならいるぞ。レナも知っているだろう」

 

「は? いやいや。あの取り巻きを友人って言うのは止めた方が良いと思うよ。友達って言うのはさ」

 

「お前に何が分かる! レナ。彼らは私の事をよく思ってくれている」

 

「ただ、ナルシス君が喜ぶ様な事を言ってるだけでしょ。そんなの友達じゃないよ」

 

「なんだと!?」

 

「友達ってのはさ。苦しい事も言ってくれる人の事だよ。嫌われても、その人の為になるのならって考えてくれる人の事だ。ただ、力がある人の言う事を肯定して、喜ばせてるだけの人は友達なんかじゃない!!」

 

「っ! 貴様!!」

 

「兄さん! レナちゃんも。そこまでにして。森で大声で喧嘩するなんて襲われてもおかしくないんだよ」

 

「っ、ごめん。マクシム君」

 

「分かっている!」

 

ナルシス君は苛立った様に地面を踏みながら私達に背を向けて森の方へと視線を向けた。

 

そんなナルシス君の姿にマクシム君は深いため息を吐くのだった。

 

「はぁ……」

 

そして私もそんなナルシス君とマクシム君を見て、ため息を吐くのだった。

 

 

 

結局ナルシス君とぶつかってしまった後、私達は出会った魔物に敗北し、コピーシーラちゃんに助けられて学園に戻る事になった。

 

それでも、私達は結構上位だったらしく、私達よりも上に残っていたのは冒険者希望のチームくらいの物だった。

 

だから何だという話では無いけれど、野外研修の続きを学園で行っている間に、いくつものチームが帰ってくるのを見ると、私達ならもっと頑張れたのに。という思いが無くはない。

 

まぁ、結局私たちは途中で喧嘩をしてしまったからどうしようもないのだけれども。

 

そして、全てが終わり、私は寮にある自分の部屋に戻ってベッドに倒れ込んだ。

 

「……あー」

 

「どうしたの? レナ。ご機嫌ナナメじゃん」

 

「まぁーね」

 

「特別教室は野外活動に行ってたんでしょ? そこで何かあった感じ?」

 

「そう。あった感じ」

 

「駄目だこりゃ」

 

私はベッドにうつ伏せで倒れたままヤスミンに適当な返事をしていたのだが、ヤスミンは呆れた様な声を出しながら、私が寝ているベッドに座った。

 

「どうする? シーラ様、呼ぶ?」

 

「呼ばないで」

 

「あら。そりゃ珍しい。普段は何が何でも会いたいって言ってるのに」

 

「今日は会いたくない」

 

「反抗期かねぇ」

 

「そんなんじゃないよ」

 

そうだ。だってシーラちゃんは関係ないもの。

 

これは私が友達になれたかもしれない人と喧嘩をして駄目になってしまった。

 

ただ、それだけの話なのだから。

 

だから、あの人の事は忘れようと私は目をぎゅっと閉じた。

 

慰める様に私の背中を撫でるヤスミンの手の感触を感じながら。

 

そう。忘れるのだ。嫌な事は全部。

 

全部。

 

全部……。

 

 

 

それから私は何でもない日常を過ごし、穏やかな日々を過ごしていた。

 

今までと同じ様に。

 

いや、違うか。

 

以前は廊下ですれ違うだけで言い争いをしていたナルシス君とも、今はすっかり別々の道だ。

 

互いに姿を見つけても視線をかわす事もなく逸らしてゆく。

 

それが少し寂しい様な気もしたが、こんな風になってしまった時、どうすれば良いかも分からなかったから。

 

私はこのまま何も無かったと自分の心を偽って学校で生きていく事にしたのだ。

 

だというのに。

 

「ねぇ。聞いた? キッフレイ聖国の王子様。国が大変みたいよ」

 

「……今の話。どういう事!?」

 

どうして貴方は私の前に残り続けるのだろう。

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