(ヤスミン視点)
危険な魔物が多数生息する危険な森での野外活動!
私は大した魔法が使えなくて……! このままじゃあ死んでしまう。
でも大丈夫。安心して。
だって私には素敵なナイト様が居るんだから!
一人目は、キッフレイ聖国の王子様で、いずれ王様になる御方!
お父様に似て、凛々しいお姿がとても素敵な方よ!
二人目は、ウィルベン王国の伯爵令息であるトリスタン・ド・モスネル様!
名門モスネル家の跡継ぎで、甘いマスクの紳士的な方よ。
女の子との噂は多いけど、トリスタン様が素敵なだけだから、しょうがないの。
でも、私を見る目は真剣で、いつも困った事があると助けてくれるの!
三人目は、活発な男の子。ルイ君よ。
いつも太陽みたいな笑顔で楽しそうにしていて、見ているだけで癒されちゃうわ!
でも、寂しがりな所もあって、そういう所もキュンと来ちゃうの!
四人目は、うん。誰でも知っているよね。そう。シーラ様! ……の、複製体なんだけど。
シーラ様と殆ど変わらなくて、とっても強くて、頼りになって。
それでいて可愛いの。
シーラ様を知っている人なら、みんな知ってるわよね。そう。あのチョコチョコ歩く姿が可愛いシーラ様がすぐ傍に居るのよ。
もうたまらないわ! 家に帰って一緒に住みたいくらい!
あ、ちょっと熱くなっちゃったわね。
最後の一人の事、話すのを忘れていたわ。
うん。
最後の一人。それはね。私の大親友。レナよ。
女の子みたいな見た目をしてるでしょ? でもね。実は違うの。
シーラ様の密命を受けて、私を守る為に、こうして女の子のフリをしてるんだ。
初めて部屋で男の子だって知った時はビックリしちゃった。
でも、彼は凄く紳士的で、同じ部屋に居ても、一度だって酷い事をした事は無いわ。
それでもね。
私の事、どう思ってるの? って聞くと、顔を真っ赤にしながら素敵な人です。って……。
「いや、解釈違いだわ」
「は? 何? 何かあった? ヤスミン」
「何も」
「なら良いけど。ちゃんと集中しないと危ないよ。さっきも転びそうになってたでしょ。手、繋ごうか?」
「くっ」
「いや、何、その顔」
「レナが女という事に悔しさを覚えてるの」
「意味わかんないんだけど」
「まぁ、レナがあまり女性らしくないからじゃないか?」
「はぁー? こんな女らしい女が他にいるかい! 同じ年の中じゃあ結構胸デカいんだよ?」
「そういう所じゃないかな。レナちゃん」
呆れた様に苦笑するルイ君を見ながら、私も頷く。
そう。レナは見た目こそ美少女だが、精神がどう考えても野生児のソレに、酔っぱらった時のお父様を足した様な姿なのだ。
何というか。全体的に荒い。
まぁ、それでも見た目が整っているから何とかなっているが、シーラ様と話をしている時など見ていられない。
下品というか。
少なくとも同じ淑女とは認めたくない姿だ。
「でも、そういう所もレナの魅力だと俺は思うよ?」
「はいはい。分かった分かった」
「素っ気ないレナも素敵だね」
「アンタは今日も元気ねぇ。トリスタン?」
「それが俺の良いところだからね」
「ある意味そういう姿は尊敬するわ」
そう。コレ! コレである!
トリスタン様と言えば、学園で知らない者が居ない、美青年であり、素敵な殿方として有名だ。
そんなトリスタン様に愛を囁かれて、ジト目で返す女が居るだろうか! いや居ない!!
いや。まぁ、ここに居るワケだけど。
「……やっぱり、レナ。実は男の子だったりしない?」
「しーなーいー!」
「でもさ」
「あのね。男の子になっちゃったら、シーラちゃんと一緒にお風呂とか入れなくなるでしょ!」
「いや、男の子でも入ってる子は結構いるけど」
「それは子供だから。大人になったら流石に出来る人は居ないよ。でも女の子ならオッケーなの。分かる?」
「そこまでしてお風呂に入りたい気持ちは分かんないけど」
「なんで分かんないの! シーラちゃんのすべすべお肌も、触ると柔らかい所も、何もかも、お風呂なら事故を装って、触りたい放題なんだよ!?」
「……この野外活動が終わったらシーラ様に忠告しておくわ。レナには気を付けて。特に一緒にお風呂へ入るのは危ないですよって」
「ヤスミン!! それは許されないよ!」
「いや、許されないのはアンタだわ。世界の至宝に何やってんの。これでシーラ様が人間を見限ったらどうするつもりよ。どっかに消えちゃうかもよ?」
「私もシーラちゃんと一緒に行くから問題ないよ」
「アンタのせいでそうなるって言ってんだから! アンタが一緒に行けるワケ無いでしょうが!!」
「そ、んな!」
レナは間抜け面をしながら、酷くショックを受けた様によろよろとふらついた。
いや、なんでだよ。
なんだよ。その反応。
無駄に顔が良いから、ふざけた理由でショックを受けてるのに、本当に酷い事が起こったみたいに感じるの詐欺だろ。
「ど、どうすれば……」
「どうもこうも、健全に生きなさいよ。健全に」
「ケンゼン?」
「何で今初めて知った言葉みたいな顔してんの。腹立つわね」
「私の辞書にそんな言葉はない!」
「なら今刻みなさい! 二度と消えない様にね!!」
私はレナを捕まえて、頭に拳をねじ込む。
「いたっ、痛いよ! ヤスミン!」
「やかましい! アンタって子は!」
私はいつものノリで、部屋に居る時の様にレナとじゃれていたのだが、不意に肩をちょんちょんと指で叩かれて顔を青ざめさせた。
「ヤスミンさん。それくらいで」
「も、もももも、申し訳ございません! 皆さまの前で、こんな見苦しい真似を」
「いやいや。それは良いのですが。そろそろレナが可哀想だったので」
「はぁん。分かりました。はい。レナ。もう気を付けて下さいね」
トリスタン様の笑顔が美しすぎて、私は乙女回路を爆発させながら、レナを離した。
しかし、レナは首を手で直すと、何故か私ではなく、トリスタン様に噛みついてゆく。
「ちょっと。トリスタン。イチイチ口出してこないでよ。めんどくさいな。魔物はこっちに来てないでしょ?」
「ちょ、レナ」
「それは申し訳なかったな。レナが痛がっていてね。助けなきゃって思ってしまったんだ」
「そ。アンタ。早く友達作った方が良いよ。じゃれ合いも分かんないならさ」
「申し訳ございません! 申し訳ございません! ウチのレナが失礼な事を!」
「ちょ! ヤスミン! 止めてよ! 頭掴まないで!」
私はレナを無理矢理トリスタン様に謝罪させて、伯爵令息様のご機嫌を伺う。
が、少し不機嫌になった様な顔をしていた。
うわーお。終わった。ごめんね。お父様、お母様。
「あ、あわわ」
「おっと、ごめんね。ヤスミンちゃん。レナ。少し嫉妬してしまった。ヤスミンちゃんがレナと仲が良いから」
「はぅあ」
「はぁ? キモチワル。その口いい加減「レナ! 今良いところだから!」ひゃふひん!」
私はレナの口を塞ぎながら、ペコペコとトリスタン様に頭を下げて、レナと共に少し離れた場所へ緊急退避するのだった。
まずい! これはまずいですよ!
本日の優勝者が決定しました。トリスタン様です!
「レナ! アンタ。レナ! レナだよ!」
結局それからしばらくの間。私の思考は狂ったままだった。