空をふよふよと浮きながら、みんなの野外活動を見ていた私であったが、不意にどこからか呼び出しを受けて、空中で跳ねてしまった。
(シーラちゃん! シーラちゃん! 聞こえてますか!? シーラちゃん!!)
どこも緊急事態は発生していなかった様に見えていたが、声の様子ではかなり大きな問題が起こっている様に思う。
という訳で、コピーシーラを通して、緊急連絡を送ってきたレナちゃんを見た。
見たが、やっぱり何も起こってない様に見える。
……?
どういう事?
何か起こってるんじゃないの?
(えと。レナちゃん? 何かありましたか?)
(シーラちゃん!? シーラちゃんの声がする!!)
(今、レナちゃんの脳内に直接語り掛けています……。それで、何か問題があったのですか?)
(う、うん。それがね?)
(はい)
私はゴクリと唾を飲み込みながら、レナちゃんの言葉を待ち……そして、返ってきた答えに言葉を失った。
(シーラちゃん! 恋を教えて!!)
(そういうのは、ナルシス君たちに教えて貰って下さい!)
(えぇ!? そんなの聞けないよ!)
(え?)
(なに?)
なんだ、このすれ違っている感じ。
何かが、おかしい。
(えと、冷静になりたいんですけど。ちゃんとお話を聞いても良いですか?)
(え? う、うん。それがね。その、何か私、もしかしたら恋? をしてるかもしれないんだけど、本当にしてるのか。っていうのとか、してたらどうすれば良いのか聞きたいの!)
(あぁ、そういう事ですか。ビックリしました。そういう事でしたら……)
(そういう事なら?)
(えー。っとそうですねぇ)
(うん)
(その……)
(……?)
私は必死に恋とは何だったかを思い出そうとした。
しかし、頭には何も浮かばない。
何か同じ様な事をちょっと前にも考えていた様な気がするけど……。
何だっけ。
あぁ、そうだ! エミリーちゃんとオリヴァー君の時の事だ!
でも結局あの時も良い案が出なくて、何かうやむやになっちゃったんだよね。
二人は相棒って感じだけど、恋人にはなれなかったし。
これは……! 私の立ち位置凄く大事なのでは!?
ここで私がしっかりと答えられるかどうかによって、レナちゃんの未来が変わる!!
それは間違いない!!
よ、よし。いくぞ。無いなら何か出せ。体の奥に何かある筈だ!
(えっと。ですね。レナちゃん。良いですか?)
(うん)
(恋とは、甘酸っぱい物なんです)
(うん?)
(だから、こう何といいますか。世界が色付いた様に綺麗になって)
(……)
(その、ですね。こう、世界が)
(シーラちゃんさ)
(……はい)
(恋した事無いんでしょ)
(いや! そんな事は!)
(無いんでしょ?)
(……はい)
(はぁー。まぁしょうがない。シーラちゃんは人間じゃないんだもんね。人間のこういう気持ちは分からないか)
(う)
(しょうがない。私がちゃんと自分で考えて、答え出して、シーラちゃんに教えてあげるよ)
(えと、ありがとうございます)
(うん。ま、シーラちゃんは放っておくと、変な人に騙されそうだし。ちゃんと私が見てあげないとね。じゃ、また)
(……はい、お気を付けて)
それからレナちゃんは会話を打ち切ると、そのまま行動を始めた様だ。
なんて、ことだ!!
私はとりあえず自分の体を見えない様にしてからレナちゃんのすぐ傍に移動する。
コピーシーラ各体には子供たちに何かあった時にすぐ対応できる様に個々の判断に任せておく。
そして、とにかく最速でレナちゃんの所へと向かうのだった。
転移とほぼ同じ速度と言っても過言ではない速さでレナちゃんの元へ到着した私は、レナちゃんとナルシス君、トリスタン君、ルイ君の話を見る事にした。
とは言っても、レナちゃんは上手く会話出来ていないんだけど。
「あー。えっと。さ。なんていうかな。ナルシス君たちが色々と私に言いたい事がある様な気がするんだけど。とりあえず落ち着いて貰いたいんだ」
「あぁ」
「それがレナの望みなら」
「僕は別に?」
「あ、そうなんだね。じゃあとりあえず、ルイ君は大丈夫という事で、まずはナルシス君とトリスタン君とちょっと二人きりで話そうか」
「……む。そういう話なら、僕もレナちゃんと話したいな」
「あぇ!? そ、そうなの!? じゃあ、やっぱり三人と順番にお話ししましょう。一対一の真剣勝負だよ!」
「戦うのか? レナ」
「そんな訳無いでしょ! 会話だよ! 会話!」
「それはスマン」
「もう! ナルシス君はそういう所、気を付けて欲しいね! 本当にね!」
「困ったものだね。まったく。レナにここまで言われるとは」
「何分かった様な事言ってんのよ! アンタは! トリスタン! アンタにナルシス君の何が分かるっていうんだ!」
「す、すまない。レナ」
「私に謝ってどうするのよ」
「すまないね。レナ」
「アンタ。話、聞いてる?」
うーん。
私は隠れながらレナちゃんの話を聞いていたのだけれど。
何か、違う。
「はい。じゃあ個別に話聞いていくからね。まず名前から」
「あぁ、私はナルシス。ナルシス・ノグロ・キッフレイだ」
「うん。じゃあ次は趣味とか?」
「そうだな……」
あぁ、分かった。
これ、面接だ。
一人一人呼び出して話を聞いていたレナちゃんは三人に色々な質問をぶつけていたが、三人とも真面目に答えているので、真実面接会場であった。
これで良いのか? 良いワケが無いというのは、いかな恋愛初心者の私であっても分かる。
そう。これじゃあ恋なんて芽生えるはずがないと!!
という訳で、全てが終わってから夜遅く、一人でみんなが寝ている洞窟から出て星空を眺めているレナちゃんの前に姿を現す。
「レナちゃん」
「……シーラちゃん?」
「はい。こんばんは」
「うん」
「どうですか? 恋は」
「やっぱり良く分からないや」
「ふふ。ここは年上で頼れるお姉さんの意見が聞きたくなってきたんじゃないですか?」
「……どこにいるの? そんな人。いないよ」
「ここに居るじゃないですか!」
「冗談。冗談だよ。そんなに怒らないで」
「むー」
私は口を尖らせながらレナちゃんの隣に座り、足を伸ばす。
そして、レナちゃんは笑いながら私の頭を撫でた。
「忘れてるかもしれないですけど、私の方が年上なんですよ?」
「知ってるよ。でもシーラちゃんはシーラちゃんだから」
「むぅ」
「ごめんって。心配して来てくれたのにね」
「……」
「何かさ。困ったなぁ。って感じ。気持ちには応えなきゃって思うのに、やっぱり何度考えても良く分からないの。恋って何なんだろう」
「これは聞いた話で、私の話では無いんですが、恋をした経験というのは色々とありまして」
「うん」
「例えば、寂しい時に傍に居てくれたとか。危ない! って時に助けてくれたとか。何となく一緒にいる事が当たり前になっていたんだけど、ふとした時に、見た事のない表情を見た時、とか。だそうですよ?」
私はレナちゃんが本編で恋をしたのであろう瞬間について喋り、笑う。
どうなんだろう? レナちゃんはどう? そういう瞬間はない?
と、目で聞くのだった。