宵闇の魔王こと、宵闇さんの襲撃により大きなダメージを受けてしまった私であるが、レナちゃんのお陰で何とか復帰し、野外活動を全て終わらせる事が出来た。
しかし、問題は野外活動ではなくその後に待っているのだった。
学園に戻り、生徒達にも寮へ戻る様に言った後、私はキッフレイ聖国の騎士団の人に囲まれ、キッフレイ聖国へと行く事になってしまった。
どうやら私が何か疑われているらしい。
そして、騎士団ごと転移をしてキッフレイ聖国へと辿り着いた私は玉座の間で、色々な国の偉い人達に囲まれて話をする事になるのだった。
「シーラ殿。待ちわびましたよ」
「はぁ。それで、お話とは何でしょうか? 私、これでも忙しいんですけど」
「なんたる不敬だ!」
「聖王様に向かって!」
「……」
何か言葉遣い間違えたらしい。
とりあえず変な事言わない様にお口をチャックしておこう。
「よい。これでも今日まで人間の為に戦っていたエルフだ。多少の無礼は許そう」
「……はぁ。それはどうも」
何だろう。何か、おかしな感じだ。
凄く違和感がある。
この感じ、前にも……。
「とにかくだ。人類の為に役立っていたのならば良かったものを、こうして人類と敵対するのであれば自由にさせておく事など出来はしない」
「あの。何の話ですか?」
「おのれ! まだ嘘を吐くつもりか!」
「自分さえ良ければそれで良いとでも言うつもりか!」
「あの、本当に、何の話か分からないんですけど」
「聖女の事だ!」
「っ!」
「やはり人でない物を信じるなど、間違っていたのだ。エルフシーラ。お前は、人類の至宝たる聖女を己の利益の為だけに隠し、独占して、人類を騙した!」
私はキッフレイ聖国の王の言葉を聞きながら、なるほどと頷いた。
レナちゃんの事が、世界に知られたという事だろう。
「確かに、言われた通り、私はレナちゃんが聖女である事を隠していました。しかし、それはレナちゃんが」
「言い訳をするな!!」
「っ!」
「やはり、エルフ等信用するべきでは無かった。騎士たちよ! そこのエルフを捕まえろ!」
「待ってください! 話を!」
「急げ!」
「くっ!」
私は迫りくる騎士から転移で逃げ、話をするべく言葉を王たちに向けるが、誰にも話が通らないのだった。
仕方ないと、私はキッフレイ聖国から学園へと逃げるのだった。
学園の自室へ戻ってきた私はすぐに、部屋の外で待っていた先生方に捕まってしまい、また同じ事が起きるのかとビクビクしていたが、どうやら違うらしい。
「シーラ様! ご無事で!」
「あぁ。良かった。神はまだ我らを見捨ててはいなかった!」
「えと、皆さん?」
私はなんとか抱きしめてくる先生方から逃げ出して、少し離れた場所へと移動した。
「いったい何の騒ぎですか。これは」
「申し訳ございません。しかし、シーラ様の危機でしたので」
「私の危機ですか?」
「はい。我々も詳しい事は存じておりませんが、各国がシーラ様に対して、聖女を隠し、独占しようとした罪で捕まえろと」
「なるほど。先ほどキッフレイ聖国で言われた事と同じですね」
「キッフレイ聖国へ行かれたのですか!?」
「はい。呼び出されましたので」
「いや……よくぞご無事で……」
「本当に良かった」
喜び合う先生たちを見ながら、私はどうしたものかと考えていた。
何がどうなっているのか分からないが、ともかく何か妙な事が起きているのは確かなのだ。
「しかし、これからどうしますか。シーラ様。世界と戦争になろうとも我らはシーラ様に付いてゆきますが!」
「あぁ! 当然だ!」
「比べるまでも無いわね!」
「いえ。まずは生徒の安全を第一にお願いします。次に先生方です。皆さんの安全が確保されてから私の事を考えましょう」
「シーラ様……!」
「なんとお優しい」
「いや、学校を経営してるなら生徒が第一なのは当たり前ですから」
私は大騒ぎの先生方をとりあえず放置し、ふむと考えた。
玉座の間で行った会話についてだ。
噛み合っている様で、噛み合っていない会話。何か向こうには絶対に変えてはいけない意見があって、それがあるから思考や会話がズレていく様な感じ……。
何だっけ。
どっかであった……。
「傀儡魔法……!」
「シーラ様?」
「皆さん。もしかしたらちょっとマズい事になっているかもしれません」
「今更ですか!?」
「シーラ様の事を悪しき様に言う様な連中が増えているんですよ!? マズいどころの騒ぎではありません!!」
「大事件ですよ! 大事件!!」
「こうなったら戦争しかありませんな!!」
「いや、ちょっと落ち着いてください。そういう事じゃないですから」
「と、言いますと?」
「もしかしたらキッフレイ聖国に居た人たちは皆、操られていたかもしれないという事です」
「なるほど」
「つまりは、容易く敵に操られてしまう様な軟弱者であったという事ですね?」
「いや、そうでは無くてですね」
「なんという事だ!」
「操られていたなど言い訳になるか!」
「そうだそうだ!」
私は収まらない先生方に、軽く電気の魔法を流し、地面を強く叩いた。
そして、ついでに学園全体に魔力を薄く流して、傀儡魔法が使われていないか調べる。
どうやら学園は無事な様だった。
「しかし分からないのはその目的です。レナちゃんを聖女として利用する為。という事でしょうか」
「いえ。シーラ様。それは違うと思います」
「そうなのですか?」
「はい。間違いありません」
私は自信満々にそう言い切る先生から視線を順番に流してゆくが、どの先生も同じ様に強く頷いているのだった。
なるほど。何か考えがあるようだ。
「では、どの様な」
「決まっています! シーラ様を自分だけの物にする為にこの様な事を行ったとしか思えません!!」
「やはり……! やはりか! シーラ様を人形にして、着せ替え人形の様に楽しむつもりだな!? おのれ! 変態め! 許せぬ!!」
「あの?」
「いや、専用のドジっ子メイドにするつもりだったに違いない! たまに転ばせて、落ち込むシーラ様を見て楽しむつもりだったんだ!!」
「いや、流石にそれは」
「違うわ! シーラ様を愛玩動物の様にして楽しむつもりだったのよ! いつも傍において、撫でられて喜ぶシーラ様を見て、愛でるつもりだったんだわ!!」
「いや、皆さんの欲望はよく分かりましたが」
「違いますよ!? これはあくまで犯人の欲望をですね」
「分かりました。分かりましたから。犯人ですね。許せないですね」
「えぇ。まったく!」
「おのれ……なんという羨ましい」
「え?」
「いえ。何でもありませんよ。何も言っておりません」
私はため息を吐いて、防音魔法で騒ぐ先生たちの声をかき消した。
話にならない。
とにかく今は冷静にこの状況を見極めて、世界を元の状態に戻さなくてはいけないのだ。
そんな個人的な欲望で動いているとも思えないし。
何か大きな陰謀があると考えて間違いないだろう。
つまり、レナちゃんを巡る巨大な陰謀が動き始めたのだ。
おそらくは、レナちゃんを守る私をまずは切り離す為に、王様たちに傀儡魔法を使ったに違いない。
ならば、守るべきはレナちゃんだ。
私はそう決意してレナちゃんの元へ向かうのだった。