(レナ視点)
色々あってエルフの里に引きこもってしまったシーラちゃんを、何とか説得して外に引っ張り出さないと世界と私の危機だ。
という事で私は頼れる親友、ナルシス君とヤスミン。そしてその他二名と一緒にエルフの里を……。
「目指すのは良いけど。どこにあるか知ってるの? レナ」
「え? 知らないけど」
「じゃあどうやって行くつもりよ」
「いや、誰か知ってるかなって思って。ねぇ?」
私は順番にナルシス君、トリスタン、ルイ君を見てゆくが、全員黙って首を振る。
「えぇー!? これじゃあエルフの里に行けないじゃん!」
「だから、そう言ってんでしょうが」
「どうしよう。ヤスミン!」
「知らないわよ。私たちはレナに付いて行ってるだけなんだから」
「えー。うーん。どうしよう。どうしよう……あ! そうだ! こんな時はシーラちゃんに……」
「そのシーラ様を探しに行くんでしょうが」
「う、うぅ……」
「レナ。こうしてみるとよく分かるけど、レナはシーラ様に頼りすぎ。なんでもかんでも。シーラ様。シーラ様って」
「だってぇ」
「だってじゃありません。はい! 自分で解決策を考えなさい!」
「ヤスミ~ン」
「甘えた声を出しても駄目!」
「あー。ヤスミン嬢。それにレナ。私に良い案があるのだが」
「え!? ホント!? 流石ナルシス君! なになに?」
「オリヴァー殿やエミリーさんなら、何か知っているのではないだろうか? あの二人はシーラ様ともかなり昔から親しくされているからな」
「なるほどね! さっすが、ナルシス君! じゃあ早速行ってみよう」
「……」
「えと? ヤスミンさん? 何か怒ってる?」
「別に」
「でも……」
「怒っては無いわ。呆れてるだけ」
「……はい」
私はジトっとした目で見てくるヤスミンにペコペコと頭を下げつつ、オリヴァーさん、エミリーさんの所へと向かった。
そして、オリヴァーさんとエミリーさんの二人を何とか捕まえて、事情を話したのだが……。
「はぁー」
返ってきたのはエミリーさんの、それはそれは深いため息だった。
「エミリー」
「何よ。別にこれくらい良いでしょ。これくらい。こっちがどんな気持ちで」
「分かってるが、それでも相手は子供だ」
「えーえー。そうですか。それはそれは。お優しい事で」
エミリーさんは明らかに苛立った様子で、私を睨みつけると、腕を組んで、近くの椅子に座った。
何か衝撃的なほどに怒ってる。
見た事がない姿だ。
「すまないな。それでシーラ様の居場所だったか。俺も正確な位置は知らないが……しかし、場所はだいたい想定できる」
「おぉー! ありがとうございます!」
「ただし、今まで誰一人として人間は立ち入った事のない場所だ。何が起きるか分からん。命の保証は出来ないぞ」
オリヴァーさんが真剣な顔でそう言って、私はその表情にゴクリと唾を飲み込んだ。
私の知る限り、オリヴァーさんは世界で一番強い人だ。
そんな人が命の保証がないというのだから、真実そういう事なんだろう。
でも、それでも私には関係ないのだ。
だって、シーラちゃんがそこに居るのなら。
シーラちゃんが居る世界が私の世界なんだから!
「構いません! どうせシーラちゃんが居ない世界なら、生きていても死んでいても同じです!」
「……良い覚悟だ。よし。場所を教えてやる」
「オリヴァー!」
「なんだ。エミリー。気になるのか?」
「別にそういう訳じゃないけど、子供だけで森の奥へ行ったら間違いなく死ぬわよ」
「無論子供だけで送り出すつもりはないさ。俺も行く」
「オリヴァー」
「エミリー。以前にも言っただろう? 俺たちとシーラ様は同じ時間を生きられない。いずれは俺たちが先に消える。だが、そうなる前に別の大切な物が出来るのは良い事だ」
「……分かってるわよ。私だって」
「あぁ」
なんだかオリヴァーさんとエミリーさんが大人の会話をしているな、と何となく話を聞きながら、二人の関係性が微妙に気になるのであった。
オリヴァーさん、エミリーさんが仲間に加わり、かなりの大所帯となったが、それでも加わった戦力があまりにも大きかった為、私たちはオリヴァーさんが初めてシーラちゃんに会ったという森の奥まで順調に来る事が出来るのだった。
「なんか、何でもない森みたいですねぇ」
「あぁ、だが気を付けろ。ここまで来ると英雄と呼ばれるような人間でもアッサリ死ぬことがある」
「……で、でも、オリヴァーさんなら大丈夫ですよね?」
「それはどうかな。俺も昔よりは強くなったと思うが……それでも」
列の一番前に立ち、すぐ後ろの私と話をしていたオリヴァーさんは腰の剣を抜くと、すぐ目の前で横に振るった。
索敵はずっとしていたけど、何も居なかったはずだ!
そう思いながらオリヴァーさんが切った何かに目を向けると……何か景色がおかしい。
ずれている?
「っ!」
と思っていたら、景色が歪んでおそらくは透明になっていたであろう魔物が両断された状態で姿を現した。
「え……あれ? 索敵」
「あぁ、どうやら魔力も姿も消すタイプの魔物だったらしいな」
「らしいなって、オリヴァーさんは知ってたんじゃないんですか?」
「いや知らん。今初めて見た」
「……」
この人が居て良かった!!
人間じゃあこんな森で一瞬だってもたないよ!
「相変わらず人間止めてるわね。オリヴァー」
一番後ろから聞こえて来たエミリーさんの声に私とヤスミン以下愉快な仲間たちは大きく頷くのだった。
まぁ、そう言いつつも、エミリーさんも私が全力の全力で使えば何とか使えるかなっていう様な防御魔法を常に展開してるんですけどね。
しかも私たち全員にそれぞれ個別に。
冷静に意味分からないですね。
私、これで学園でトップクラスに魔力が多いんだけど、こんな使い方したらすぐに息も魔力も切らして何も出来なくなるよ。
この人もこの人で人間じゃない。
「……すごい」
私は素直に感想を漏らしながら、この人たちから絶対に離れちゃいけないよと私自身、そしてヤスミンたちに告げるのだった。
少なくとも、単独で行動したらすぐに魔物のお腹の中だ。
「でも、探索はどうしましょうか。正直お二人から離れたら私たち即終了だと思うんですけど」
「そうだな……まぁ、効率は落ちるが全員で行動する方が安全だろう」
「私は初めからそのつもりよ」
「分かった。レナ達もそれで良いか?」
「まぁ、当然。というかそれ以外に選択肢がありません」
「そうか」
笑いオリヴァーさんに曖昧な笑顔を返しながら、私はどうやってシーラちゃんを探すか考えていた。
実際、エルフの里というのがどういう場所にあるのかさっぱり分からないし、どういう風に足を踏み入れるかも分からないのだ。
どうすれば良いんだろう。
「……シーラちゃんの事を知っているエルフの人に会えればな」
「なんだ。お前たち。シーラの知り合いか」
「は?」
「ん?」
私は呟いた独り言に返事があり、何事かとすぐ隣を見てみれば、見知らぬ顔の……エルフが何でもない顔をして立っているのだった。
無論、声にならない悲鳴を上げたのは言うまでもない。