勢いでレナちゃんと結婚してから数年経った。
とは言っても、私は相変わらず学園で教師をやっているし、色々なトラブルに巻き込まれたり、解決したりしている。
そして……。
「ねぇー。シーラちゃん。今日は良いでしょ?」
「今日は一緒に寝たいという子が居ますので」
「もー! 昨日も、その前もそう言ってたじゃない!! シーラちゃんは私の事なんてどうでも良いの!?」
「どうでも良い。という訳ではありませんが……」
「ありませんが……?」
「ほら、レナちゃん。すぐ暴走するじゃないですか。私がもう止まって下さいって言ってるのに、無理に続けようとしますし。結婚の時の約束はどうしたんですかね」
「いやー。それはほら。なんていうか。シーラちゃんが可愛すぎるのがいけないんだよ!!」
私は、何度言われても変わらずやりたい放題してくるレナちゃんをジトっとした目で見た。
そして、レナちゃんは私の目から逃げる様に視線を逸らした。
「そうですか。私がいけませんか。では、レナちゃんと一緒に居る事は出来ませんね」
「えぇ!? なんで!!」
「だって、私が居るだけでレナちゃんは自分を抑える事が出来ないのでしょう? なら共に居る事がレナちゃんのマイナスになってしまいます」
「ちょっと! 待って! 待ってよ! 嘘だから!」
「離婚しますか?」
「分かった! 分かったから!! ちゃんと自分を抑えるから!!」
「……」
「し、シーラちゃん?」
「とりあえず今日は別々に寝ましょう。一緒に寝たい子も居ますし。それに明日は朝から大事な用事がありますから。暴走するレナちゃんと一緒に寝ると朝まで寝かせて貰えませんし」
「自重する! 自重するから!」
「ですから、それを今夜から証明してください。証明出来たら、また一緒に寝ましょう」
「……分かった」
私はレナちゃんが頷いたのを確認してから、仕事に戻ろうとしたのだが、すぐに腕をレナちゃんに掴まれてしまう。
「シーラちゃん!」
「はい?」
「今! 今、今夜からって言った!?」
「えぇ。今夜からです」
「う、嘘だよね!? 今夜だけだよね?」
「いえ。最低5日くらいは考えてますね。ちょうどやる事が重なってますし」
「やだやだやだ!!」
「という訳なので、レナ先生は仕事に集中して下さい」
私は魔法でレナちゃんを部屋の外へと追い出して、この部屋に近づけない様にするのだった。
レナちゃんとの会話が終わってから、私は仕事をしていたのだけれど、冒険者組合の方から呼び出しがありそちらへと転移する。
「はい。何かありましたか?」
「あぁーん。せんぱぁーい!」
「用事は無さそうですね。では、帰ります」
「あります! あります! ありますから!!」
私は転移してすぐに抱き着いてきた宵闇さんに白い目を向けながら、ため息を吐く。
「それで? 何があったのでしょうか。組合長さん」
「あぁ、実はですね。私が殺した魔王たちが復活しているみたいなんですよ」
「え」
「魔王の魔法は先輩が持っていると思うんですけど、どうやら、魔王も同じ魔法を持っている様です」
「それで、魔王は!」
「別に何かをしようという事は無いみたいですよ。まぁ、小規模な被害はあるかもしれないですけど。元々人間にそこまで興味があるという事は無いみたいですし」
「まさか魔法を奪っても復活するなんて……」
「そういう理の存在だという事みたいですね」
「みたいですね。では、冒険者組合長さんはそちらをお願いします。私は学園に戻りますので」
「えぇー!? もっとお話しましょうよー! 折角先輩に頼まれて冒険者の組合長なんてやってるのに!」
「私だって忙しいんですから」
「そんなの、別の人にやらせれば良いんですよ。はい。という事でここからの先輩の予定は私とお茶に決定でーす」
「もー。我儘なんですから」
私は抱き着いてきた宵闇さんを振り払おうとしたが、子供と大人の体格ではどうする事も出来ず、応援を呼ぶ。
「オリヴァー君! エミリーちゃん!」
「えぇ」
「はい。ほら、組合長。仕事に戻りますよ!」
「あ! こら! あなた達は私の部下でしょう!? 上司の邪魔を……!」
「では、また。転移!」
「せんぱーい!!」
私は宵闇さんの手を振り切って、自室へと転移した。
そして、私のデスクに座りながら、書類を見ているエルフの長、セリアさんに目を向ける。
「この部屋に転移しないで下さいって前も言ったと思うんですけど」
「別に良いだろう? 私とシーラの仲だ」
「どんな仲ですか。ただ同じ種族だというだけでしょう」
「そんな寂しい事言わないでくれ! シーラ!!」
「ただの事実です」
私はとりあえずセリアさんをどかしてから、席に座り仕事を再開しようと書類を手に取ろうとした。
しかし、その手を掴まれてしまう。
「何か?」
「働きすぎだ。もう休んだ方が良い」
「いや、まだ今日の仕事始めてちょっとしか時間経ってませんけど」
「それでもだ!! 人間の様にシーラが働く必要がどこにある!」
「私が作った学園と孤児院なんですから、私が働くのは当然でしょう」
「むぅ」
私の言葉にセリアさんは不服そうな顔をしていたが、一応手を離してくれた。
そして、少し離れた場所へと移動する。
異動し、ジッと私を見ていた。
「……」
「……」
しゅ、集中出来ない。
「あの?」
「なんだ。もう仕事が嫌になったか? そうだろう。そうだろう。あ、そうだ。なら私が何か魔法を教えてやろうか。もしくは……」
「いえ。集中出来ないので、部屋から出て行ってもらって良いですか?」
「何故だ!」
「いや、何故、って今理由言ったじゃ無いですか。集中出来ないんですって」
「集中出来ないという事は、仕事を嫌だと思っている証拠だ!」
「セリアさんが見ているから集中出来ないんです! 一人なら出来ます」
「そんな事はない! さ、子供は遊べ! 遊ぶんだ!」
私は無理やり椅子から立たせようとするセリアさんにため息を吐いて、冒険者組合に居るオリヴァーさんに連絡を取り、転移して来てもらう。
「またアンタか」
「また貴様か!!」
そしてセリアさんはオリヴァーさんに捕まり、部屋の外に追い出される。
それから私は落ち着いた部屋で、一人仕事をこなしてゆくのだった。
レナちゃんと寝なくなってから5日が経った。
しかし、あれからレナちゃんは何も言わず、無理に迫ってくる事もない。
それで平穏が保たれているのだが……少し寂しい気持ちがあるのも確かだった。
我儘だなぁ。
私は自分のズルさに息を吐きながら、レナちゃんに謝ろうとレナちゃんの部屋の前に転移して部屋をノックする。
が、返事がない。
そして、何度かノックしたが、部屋の中から物音はするのに出て来なくて。
私は何か大事件かと部屋の中へと転移して……それを目撃した。
「シーラちゃん!」
「……何をやっているんですか?」
「っ!!!?」
ベッドの中でもぞもぞとやっていたレナちゃんは私の声に飛び起きて、ベッドの上に人形を落とす。
私はそれを白い目で見ながらとりあえずレナちゃんに転移魔法で服を着せた。
「……レナちゃんには私が居なくても問題なかったみたいですね」
「え? あれ? もしかして、シーラちゃん。今嫉妬してる?」
「別に! してません!!」
「嫉妬! 嫉妬だ!! シーラちゃんが!」
「だから、してま……きゃっ!」
「大丈夫。私にはシーラちゃんだけだから!」
「ちょ、待って下さい! 明日は朝早くから仕事が……!」
色々なトラブルはあったけれど、何だか良く分からないままエンディングを迎えてしまった私。
レナちゃんの相手に選ばれたのは、何故かヒーローではない私だったけど、レナちゃんもみんなも幸せそうだし、多分これで良いのだろう。
いつかレナちゃんが居なくなるとしても、その時までは……。
「愛してますよ。レナちゃん」
私は寝ているレナちゃんにそう告げて、窓から差す朝陽の中、眠りにつくのだった。
本作、シーラの話はこれで終わりとなります。
別のキャラクターの視点を中心とした話も構想はありますが、公開は未定です。