【完結】西住安斎大学受験物語   作:そとみち

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西住安斎大学受験物語 3

 

 

 ……夕食を取り終えて食休みをした後、少し早い時間だが、お風呂に入ることになった。

 

 

「………どこぞの温泉宿か!」

 

「いや、私の家だが…」

 

 

 軽く20人は同時に入れそうな檜風呂を見て、安斎千代美が思わず漏らしたツッコミに対し、なんで驚いたんだとでもいうかのように切り返す西住まほ。

 両名とも、風呂に入るのだから当然ではあるが、体にバスタオルを巻いている以外は何も身に着けていない。

 流石に全裸を見せるのは親友といえども羞恥が勝る。大勢で入るような場ならともかく、二人きりだと先ほどの悶着もあり、意識してしまう。

 …まぁ現在はバスタオルで隠しているので、普段通りの二人でいられるのだが。

 

 なお、安斎千代美は現在、自慢のツインテールをほどき、髪を下に降ろしている。

 普段の三つ編みでも、ドゥーチェスタイルのツインテールでもない、ほとんどの人間が見たことのない安斎千代美の髪形。

 珍しいものを見れたものだ、と西住まほは嬉しく思っていた。自分にはない長い髪が…綺麗だな、とも。

 

 

「いや、それにしたってこの広さは…パないぞ西住。まさか源泉を引いてるとか言わないだろうな?」

 

「…熊本の源泉はリウマチや神経痛に効くらしい」

 

「おいおいおいおい」

 

 

 冗談のつもりで言った言葉に、こともなげに遠回しに自慢?をしてきた西住まほに、もやは呆れを感じてしまう安斎千代美であった。

 わかってはいたが、財力半端ないな西住流!

 少しくらいアンツィオ高校にその財力を分けてくれないだろうか。…口が裂けても西住まほには言わないけど。

 

 湯気の先の檜風呂の中のお湯を観察してみると、傍目には透明な液体に見えるが、水の動きで少しぬるぬるしているのが読み取れた。

 なるほど、本当に源泉らしい。安斎千代美は感心したようなため息をついた。

 

 

「はぁ…まーいっか。西住だもんな」

 

「…なぜだろう、それで納得されたのは少し私が得心できない」

 

「気にすんなー。ほら、突っ立っててもなんだし体洗うぞ!背中流してやる!」

 

 

 安斎千代美にせかされるようにして、二人は流し場に行き、髪と体を洗う。

 もこもこと泡立つ安斎千代美の髪をみて、くすりと笑う西住まほと。

 我が親友は意外と背中が弱いという弱点を知った安斎千代美。

 すっかりお互い体がきれいになったところで、ゆっくりと肩まで風呂に浸かり、一日の疲れをいやすのであった。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 その後、ぽかぽかと温まった体に夜の秋風を涼やかに感じながら、浴衣姿(西住まほは私物の寝間着、安斎千代美は菊代さんに借りた)で廊下を歩いて元の客間に戻ってきた。

 持ってくるの下着だけでよかったな、と安斎千代美は思いつつ。テーブルに向かい合って座って、冷たい麦茶でのどを潤して、一言。

 

 

「…さて。何するよ?」

 

「うん。何しよう」

 

 

 就寝時間まで手持無沙汰なふたりは、顔を合わせてつぶやいた。

 現在時刻は8時。明日も朝から勉強をするとして、10時~11時には布団に入るだろうが。

 それまで暇なのである。

 

 安斎千代美は思考する。

 まず、テーブルゲームやTVゲームなど、その類の物を期待するのはやめた。

 西住まほがそのような娯楽に通じているとは欠片も思えなかったし、それにここは西住流の総本家。

 人生ゲームやP○4、W○iなどが出てくるはずがないと理解していた。

 

 …ならば、どこかに出かけるか?そう考えて、また脳内で首を横に振る。

 そもそもが、すでにすっかり日の暮れた夜だ。女子高生二人で外出するには、甚だ心もとない。

 それに、この家の周囲は来る途中のヘリコプターで見たが、田園地帯がかなり広範囲に広がっている。

 車を運転できない二人に、街中まで行く手段は皆無と言えた。

 戦車で向かえばいい?どこに駐車しろというのか。うん、無理だ。

 

 

「……私としては」

 

 

 安斎千代美がそうして暇つぶしの種を考えていると、西住まほから口を開いた。

 お?と安斎千代美は少し驚きつつも、話を傾聴する。

 

 

「お前と……戦車道の戦術議論でも、と考えているのだが」

 

「……Ah…うん、そーだな」

 

 

 真面目に聞こうとした私がバカだったようだ。安斎千代美は意気消沈した。

 そうだよなー。こいつからまともなうまい時間つぶしの提案なんて出るわけないよな。

 知ってた。

 

 怪訝そうな顔でこちらを見返す西住まほに、はぁ、とため息をつく。

 表情に思いっきり出しているが、これくらいはかまわないだろう。

 そもそも友人を呼ぶならば、夜に何をして遊ぶかくらい考えておいてくれてもよいものではないだろうか。

 戦術議論て。

 

 ……とはいえ、二人でテレビを見ながら駄弁る、というのもそれはそれで面白くはなさそうなので。

 しゃーない付き合ってやるかー、と思考を切り替えて、安斎千代美は構えなおした。

 

 

「よし、わかった。いやわかってた!西住の家だもんな!戦術議論で盛り上がろうじゃないか!!」

 

「………よし。なら…準備しよう」

 

 

 そういって、西住まほがぱんぱん、と手を二回叩くと、すぐに女中の菊代がやってきた。西住まほはなんだかすごい嬉しそうな顔をしている。

 本当にこういうのあるんだ…、と感心して安斎千代美が様子を見ていると、菊代が指示を受けて、再度部屋を離れる。

 そしてしばらくして戻ってきたとき、その後ろには戦術地図や戦車の模型など、戦術議論に必要な小道具がすべてそろった箱を持ってきていたのだった。

 あと、お菓子と清涼飲料水。たぶんこちらは、菊代さんの心遣いだ。まずそうだろうと安斎千代美は推測する。

 

 そして、それらをてきぱきと机の上に並べ始める西住まほ。

 その顔は安斎千代美が観察するに、とてもとても楽しそうな様子であった。

 まるで大好きなおもちゃを与えられた子供のようだ。安斎千代美はそんな感想を持った。

 

 

「よし、やろう安斎。まず黒森峰とアンツィオの戦力を想定して、15対15の山地での殲滅戦による模擬戦術でいこう。そっちはCV33とセモヴェンテ、P40。こちらはティーガーⅠにⅡ、ヤークトティーガーに……」

 

「お前戦車道の話になると早口になるよな!あとせめてマウスを準備しようとするのやめてくれないか!?それ戦術議論上じゃ絶対勝てないから!!」

 

 

 絶望的な戦力差が展開されようとしていた机上を、仮想アンツィオに倍の戦車を追加することで対抗しようとする安斎千代美。

 む…そうか、P40の火力でも確かにマウスの装甲は…としぶしぶマウスを模した大型の模型を片付ける西住まほ。

 女子高生二人によるパジャマパーティは、戦車道の戦術議論という、とても色気のない様相を示していた。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

「……やるな安斎。そこでCV33をあえてこちらに向かわせるか…なら、こうだ」

 

「うん…そう来ると思ってたんでじつはその部隊は囮だ。こっちからP40率いる主力がお前ら主力部隊の後ろに回り込むんだけど…索敵の如何次第じゃ、こっちの動きがバレるな。…どする?」

 

「そうだな…こちらの索敵が成功していたパターンと失敗していたパターンを想定したい。ここから二通りでいこう…まず、索敵成功の時…」

 

「索敵でこちらの動きがばれてれば…ウチの戦車たちはやりようがないから、動きが読まれてると感じた時点で退却させるなぁ…でも半分以上は撃墜されるだろうから、戦力が…」

 

 

 

 時計の針は、夜10時を過ぎていた。始まってから二時間強。二人とも、時間の経過には気づいていない。

 しょうがなしに始めた戦車道の戦術議論だが、安斎千代美もやはり始まってしまえば熱が入るタイプの人間であった。

 高校生活で実現はしなかったが、黒森峰とアンツィオの試合。もちろん、机上のものではある

 だが、それは自分一人で行う文字通りの机上の空論ではなく、実際に黒森峰の隊長が指揮をする、生の勝負である。

 楽しくないはずがなかった。

 

 むろん、これは実際の勝負とは違う。本当の戦車道の試合ならば、お互いがお互いの戦術を確認できるなど、ありえない。

 実際に戦車で動いたら、現状では黒森峰が勝利するだろう。

 そもそも、ウチの軽戦車の乗員の練度、かなーり盛ってるしなー。

 安斎千代美は、若干頼りがいのない、しかし可愛い後輩たちの顔を思い浮かべつつ、苦笑した。

 

 

 西住まほもまた、この戦術議論を心から楽しんで、真剣に取り組んでいた。

 安斎千代美の戦車道。自分が中学時代に見て、そして感嘆を覚えたその戦術が。

 高校生活という時間によって、より高温高熱にて鍛えぬいた白刃のように、鋭いキレをもって目の前に展開される。

 

 決して定石を崩してはいない。だが、時折明らかにおかしな動きや、撃ってくださいと言わんばかりの、誘いの手を見せてくる。

 誘いに乗れば罠にはまるし、誘いに乗らず定石をこちらが打てば、実はそれが相手の策の内、時間稼ぎやさらなる策の中に堕ちていく。

 奇策、愚策ともいえる戦術も見えるが、相手の戦術にはまった時のノリと勢いがすさまじい。

 こちらの混乱や動揺も誘い、致命傷を負わせることが散見した。

 

 まぁ現在の机上は…西住流として研ぎ澄まされた自分の思考と、お互いの戦車の力量差のおかげで、基本的にこちらが有利な状況であることは変わらないが。

 それでも。追い詰めれば追い詰めるほど、次の策をすぐに練り、隙あらば食らおうとしてくる安斎千代美。

 素晴らしい、と改めて感動を覚えるくらいに、安斎千代美の戦略は面白かった。

 自分には、絶対に真似できないと思う。ネジの1本や2本外れていそうな、しかし確かな効果を産む安斎千代美の戦略は、芸術とも言えた。

 

 そういえば、今年度の戦車道大会。安斎千代美の二回戦は、もちろん西住まほも観戦していた。

 妹の指揮する大洗高校と、安斎千代美の指揮するアンツィオ高校。そのどちらも、自分にとって興味のある学校だったからだ。

 結果だけ見れば大洗の快勝とも言える試合だったが…それまでの経過と発想が面白い。

 特に、最初の戦車の絵を描いた段ボール板で敵をかく乱する作戦。あんな荒唐無稽な戦略、誰が考えるものか?そして、誰が実際にやるものだろうか?

 あの時は戦車の数が違っていたせいですぐに大洗側に看破されたが…もし看破までの時間がもう少し長かったら。大洗は主力の後ろからP40含むアンツィオの攻撃を受けていたはずである。

 そうなれば、勝負の如何はわからなかっただろう。妹の力を信じていないわけではないが、それでもノリと勢いによる怒涛の攻めが大洗を襲っていたはずだ。

 ………実際に安斎千代美と戦えた妹が、うらやましいな、と思った。

 

 

「……ここで、さっきやられた豆戦車の部隊が仕掛けておいたワイヤーの大網で、たぶんお前らの主力部隊のキャタピラを止められたと思う。そこで私が横からだな…」

 

「む。なるほど、そういう意図があったのか…しかし、私ももうすぐ追いつくぞ。ここで決戦となるな」

 

 

 ここでお互いが使う「私」は、もちろんティーガーⅠとP40である。現在の戦況は終盤戦、間違いなく決着がつくクライマックスのシーンであった。

 自然とお互い熱がこもる。指先で自軍の戦車を、速度計算通りに動かし、そしてとうとう勝負は一騎打ちに―――

 

 

「………お嬢様、安斎様。もういい時間でございますよ?」

 

 

 ―――入る寸前。ガラッと障子を開け、菊代が時間の経過を告げる。

 え?と西住まほと安斎千代美が同時に壁に掛けられた時計を見ると…11時を回ろうとしているところだった。

 流石にこれ以上はまずい。そもそも今日は二人ともそこそこ早起きしているのである。

 そのうえ勉強をずっとしていたのだから、これ以上夜更かしすれば間違いなく翌日に影響が出る。

 

 

「…こんなに時間が経ってたのか!気づかなかったなー、いやー戦車はやっぱり楽しいな!」

 

「私もだ。………口惜しいが今日はもう寝よう。明日もあるからな…。菊代さん、私の布団もここに」

 

 

 かしこまりました、と菊代が一度下がり、西住まほの寝具を部屋に持ってくる。

 続いて来客用、安斎千代美の寝具を運んできた帰りに、その間に片付けておいた戦車道セットを持ち帰ってもらった。

 

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 西住まほは軽くストレッチをして、睡眠に備える。

 安斎千代美は風呂上りから下ろしていた髪をまとめ上げ、横になった時に邪魔にならないようにした。

 

 

 西住まほは、ちらりと横顔で安斎千代美の動きを追う。

 うなじが見えている。ツインテールの時も見えるその部位だが、浴衣を着ているのと、眠る前ということもあり…妙に扇情的に見えた。

 

(…何を考えているんだ、私は)

 

 妙なことを感じた自分を恥じつつ、表には出さぬようにして、ストレッチを切り上げる。

 安斎千代美は親友である。だが、それは妙な意味合いを持たない。

 西住まほも多少、女性同士などそういった知識は得ていた(戦車道は女性の集い…そういった噂話も多少は耳にする)が、自分と安斎千代美の関係は、そういったものではない。

 そういう趣味を持つ人間を否定するわけではないが、私と彼女は心の底をさらけだせる、いい友人だ。そしてそれだけだ。

 …友達と一緒に寝るなんてことなかったから、少し緊張しているだけだ。

 西住まほは、自分が得心できる思考をたどり、満足した。

 

 

 安斎千代美は、自分に用意された布団の隣にある、西住まほの布団を見る。

 菊代さんが準備してくれたものだが、ここはこうでしょ?と言わんばかりに、普通に布団を並べられた。

 いや、まぁいいんだけど。アンツィオでは飲み会(未成年なので実際健全)の後、よく雑魚寝とかするし。

 だけど、二人きりで和室の布団で眠るなどという経験は今までなかった。それも、昔から付き合いのある友人とだ。

 ………現在のシチュエーションに思いを巡らせ、髪をたくし上げている自分が…なんだか妙に恥ずかしくなった。

 

(…いやいやいやいや、だからなんでそっちに考えるんだ。アホか)

 

 妙なことを感じた自分を恥じつつ、表には出さぬようにして、髪を纏め上げた。ボリュームのある髪を、少し大きめのヘアネットで固定する。

 西住まほは親友である。だが、それは妙な意味合いを持たない。

 安斎千代美はアンツィオ高校の生徒であり、周囲に…女性同士の、そういった関係を持つ人間がいることも承知している。だが、自分と西住まほの関係は、そういったものではない。

 そういう趣味を持つ人間を否定するわけではないが、私と彼女は心の底をさらけだせる、いい友人だ。そしてそれだけだ。

 …普段はきりっとしてるやつが隣で無防備な姿をさらすもんだから、少し驚いているだけだ。

 安斎千代美は、自分が得心できる思考をたどり、満足した。

 

 

 そして就寝。部屋の電気を消し、お互い毛布を被り布団に横になる。

 チク、タク、と時計の音が、妙に大きく聞こえた。

 

 

「…さっきの勝負は、私の負けだったな」

 

「いや、お前の勝ちだろ。カミングアウトすると、ウチの部隊の実力、かなり盛ってたぞ私。あと1年は鍛えないとあそこまで動けてないと思うし…」

 

「そういう意味で言ったわけじゃないんだがな…」

 

 

 お互い目を閉じつつも、どちらとも言わず、自然と会話が生まれてしまう。

 特に西住まほは人との不要な会話を好まないタイプではあるが…安斎千代美だけは、別だ。

 

 

「後輩を鍛える練習って難しいよなー…どうやったら自分の戦術を覚えてくれるかとか考えるしなー…金もかかるし…」

 

「気持ちはわかる…金銭的には黒森峰は余裕があるが。……練習と言えば、去年の練習の時に、UFOが出たと騒ぎになったことがあったな…」

 

「何それ面白い…詳しく聞かせろよ西住…」

 

 

 会話は小さな声で。しかし、こうして暗い中で、布団を羽織り横になっていると、二人とも睡魔が徐々に襲ってくるのを感じた。

 先ほどまで交感神経を全開にしていたにもかかわらず、やはり勉強の疲れはあったのだろう。瞼は閉じていたが、開くのが億劫になっている。

 

 

「…なぁ安斎…」

 

「なんだー、西住…」

 

 

 お互いそろそろ夢の世界に旅立とうとしていた時。最後に、西住まほから言葉が紡がれる。

 

 

「…大学に入ったら…また、こうして戦術議論をしよう。今度は、対戦ではなく、自分たちの勝利のために、な」

 

「………ああ、そうだな。頑張る」

 

 

 西住まほは、安斎千代美の応えに。

 安斎千代美は、西住まほの言葉に。

 大変な満足感を感じて、そして眠りに落ちた。

 

 

※    ※    ※

 

 

 翌日、二人とも深い眠りが取れたようで、すっきりとした朝を迎えて。

 菊代の作る朝食を食べてから、また昼まで勉強。少し遅めの昼食を取り、帰りの支度をする。

 さすがに明日は月曜日なので、これ以上勉強する時間は取れなかった。

 

 

「…しかし西住、本当にいいのか?こんなに参考書借りちゃって…」

 

「いいんだ。元はと言えばお前のために準備したものだからな。…試験が終わったら返してくれればいい」

 

「試験終わったらお前も使わないだろ!?…そんじゃ、あれだな。使い終わったら西住みほに渡すことにする、それでどうだ?」

 

「…いいな、それは。ぜひそうしてくれ」

 

 

 安斎千代美の帰りの荷物は、行きの時よりもだいぶ増えていた。原因は参考書である。

 西住まほが今日のために安斎千代美用に買いそろえた、レベルが若干高めの参考書類。

 さすがに2日の勉強では全部の範囲を解くことはできなかったので、こうしてお借りしたというわけだ。

 

 時刻は3時を回ろうかと言ったところ。アンツィオ高校学園艦に向かって、西住まほが操縦するヘリの中に二人はいた

 

 

「なんつーか…本当にありがとうな、西住。すげー勉強になったし、参考書まで」

 

「…なんだ急に、らしくない。酔ったか?」

 

「ひどいな!?私だって普通に感謝することくらいあるわー!…いやでも、マジでさ」

 

 

 快晴の中をヘリが行く。アンツィオの学園艦が見えてきた。

 そこに安斎千代美を下ろし、その後西住まほは黒森峰の学園艦に帰るのだろう。

 もうすぐ到着する……そんな時、なぜか二人は少し、そわそわした様子であった。

 少し前からそんな風だったが……意を決したのか、西住まほから口を開く。

 

 

「…ちなみに、だ、安斎。家元は今後、プロリーグの関係で週末に家を空けることが多いんだが…」

 

 

 ヘリを操縦しながら、隣に座っている安斎千代美に向けて、言葉を紡ぐ。

 それは、安斎千代美が聞きたかった内容でもあって。そして、安斎千代美は、

 

 

「…奇遇だな。私も戦車道の練習は隔週なんだ。週末は空いてることが多かったりする」

 

 

 西住まほが求めていただろう答えを返す。

 お互いのその言葉に、どちらともなくくすっ、と笑みが生まれた。

 

 

「また誘ってくれよ、西住。お前に教わるのも結構効率がいいってことがわかったから。もっと頑張るからさ、私も」

 

「任された。またメールででも、日程の調整をしよう」

 

「うん。…ただメールの使い方はもーちょっと上手くなってほしいけどなー?」

 

 

 その後、無事にアンツィオ、および黒森峰に帰った二人。

 翌日から変わらぬ日常に戻った二人だが…少し変化があったという話が、身近な人間からは生まれていた。

 

 西住まほの身近にある、逸見エリカは。

 時折、元隊長が真剣にガラケーを弄り、時には顔文字の使い方を聞いてくる彼女のため、ガラケーの操作方法を覚える羽目になり。

 

 安斎千代美の身近にある、ペパロニとカルパッチョは。

 今まで以上に猛勉強する安斎千代美を見て、明日は何が降るんだろうと学園艦航路図および天気予報を毎日チェックする習慣がついた。 

 

 







出てくるゲーム機の名前に時の流れを感じる(涙)
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