ある雷元素使いの青年の話   作:濃霧/Nolm

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第2話 七星迎仙儀式 ☆

「なあ、影継は稲妻を出て何年目になるんだ?」

「うーんと……大体4年目ぐらいかな」

「ねえ、影継って七神に会おうとしてるんだよね?」

「?ああ、そうだけど……?」

「風神とはもう会ったの?私たちはモンドにはあんまり戻らないけど……」

「そのことか。安心しろ、ちゃんと会ってる。というか、七神の中で一番会いやすいのがあいつだからな」

 

バルバトスはそこらの酒場を探していれば見つかる。それに、酒を手土産として持っていけば絶対に話せるからな。

 

「まあ、バルバトスからは俺の欲しい情報は手に入らなかったな。でも、この先の岩神、雷神、草神からは有益な情報が手に入るだろう」

「なるほどなぁ……そういえば、影継って何が知りたいんだ?」

「ん?お、もうそろそろ璃月港だ。ほら、見えてきたぞ」

「本当だ……ってはぐらかすなよ!」

「まあまあ、それはその内話すさ。……今はまだ、知らないほうがいい」

 

そう言うと、パイモンは「話したくないならいいぜ。でも、いつかは教えてくれよ!」と言った。

俺はそれに頷きつつ、呟く。

 

「さて。もうそろそろ七星迎仙儀式の時期だが……」

「七星迎仙儀式?」

「もう、パイモン忘れちゃったの?ほら、ウェンティが教えてくれた……」

「うーん……あぁっ!そうだった!」

 

蛍はパイモンにジト目を向けた。

まだ出会って数分も経っていないわけだが、俺はパイモンは天然なんじゃないかと思い始めてきた。

とりあえず、まだ七星迎仙儀式の詳細が分からないので、俺、蛍とパイモンで二手に別れ、道行く人に質問することにする。

 

俺はひとまず、通りかかった老紳士に話しかけた。

 

「あの、すみません。七星迎仙儀式っていつあるか知りませんか?」

「ん?なんか言ったか?」

「えっと、七星迎仙儀式っていつあります?」

「いやぁ、すまんのぉ。年取ってから耳が遠くなってなぁ。もう一回言ってもらってもええか?」

「七星迎仙儀式っていつあるんですか?」

「……?」

 

老紳士は首を傾げる。

まだ聞こえていないようだ……どんだけ耳遠いんだこのじいちゃん。

 

「あの!七星迎仙儀式って!いつあるんですか!!」

「……あぁ~、迎仙儀式のことかぁ。あれなら、明日の昼から始まるぞ。玉京台のほうでな」

「なるほど、ありがとな、じいちゃん」

「ん?なんて?」

「ありがとな!!」

「おう、どういたしまして」

 

俺はじいちゃんと別れた後4、5人に話を聞いてみたが、さっきのじいちゃんの言う通り、明日の昼に玉京台で行われるようだ。

聞き込みが終わり、集合場所としていた入口の橋へ向かうと、2人が待っていた。

 

「悪い。待たせた」

「大丈夫。私達もさっき終わったところだから」

「そうか。それで、どうだった?」

「明日の昼に玉京台の辺りで、らしいね」

「俺の方も同じ感じだ。他には何かあったか?」

「いや、特に何も無かったよ」

「なるほどな」

 

そこまで話すと、パイモンの腹の虫が大きく鳴いた。

 

「えへへ……オイラ、お腹が空いてきたぞ……」

「そっか、もう夕飯の時間だもんね」

「確かに、俺も腹が減ってきたな。万民堂にでも行くか」

「万民堂って?」

「璃月港で一、二を争う名店だ。そうだな、今日は俺が奢ってやる」

「え、本当にいいのかぁ?!」

 

パイモンが目を輝かせる。

そんなに腹が減っていたのか……

なんて思っていると、蛍が俺に耳打ちしてきた。

 

「ねぇ、ほんとにいいの?パイモン、めちゃくちゃ食べるよ?」

「安心しろ。モラならゲーテホテルを買収出来るぐらいある」

 

まあパイモンが3人前ぐらい食っても大丈夫だろう。

 

なんて思っていた自分を一発殴ってやりたい。

 

「ふぅ。オイラもう食べられないぞ……」

「まじか…………パイモン、お前軽く15人分は食っただろ……」

「だから言ったでしょ。パイモンはめっちゃ食べるって」

「まさかここまでとは思わないだろ……しかも蛍もちゃっかり3人分食べてるし……」

「べっ、別にいいでしょっ。今日は特別お腹が減ったのっ!」

 

蛍が赤くなった頬を膨らませて言う。

その様子がかわいくて、少しドキッとした。

 

「まあ、特に文句はないけどな。えーっと会計は……」

「お客さん会計ですか?」

 

藍色の髪をボブカットにした活発そうな女の子が声をかけてきた。

横には熊のような小さい生き物がくっついている。

 

「おぉ!香菱じゃないか!久しぶりだな!」

「あ!あの時の旅人たち!久しぶり!」

 

どうやら彼女───香菱は旅人たちと以前出会っていたようだ。

 

「それで、そちらのお客さんは初めましてかな?アタシはコックの香菱だよ!」

「あぁ、初めまして。俺は影継。見ての通り稲妻人だ」

「そういえば、会計でしたね。えーっと……15万モラですね」

「へ?」

 

俺は目が点になった。

払えないわけではないが、まさか飯代だけで15万も持っていかれるとは……

パイモン、恐ろしい子……

 

とりあえず俺は15万モラをきっかり払い、店を後にした。

 

「んじゃ、腹ごしらえもしたところだし───宿でも探すか」

 

三人で話しながら探すと、案外早く見つかった。

宿の手続きは慣れている蛍に任せ、近くの椅子に座っていると、蛍が一つの鍵を持って戻ってきた。

 

「ん?一つだけなのか?」

「え?同じ部屋でも問題ないでしょ?」

「いやいやいや。付き合ってない男女が同じ部屋で寝るのは───」

「もしかして、私に手を出さない自信がないの?それだったらこれからの旅にはついてこれないかもね?」

 

蛍は悪戯っぽい笑みを浮かべながら、俺の顔を覗き込むようにしてきた。

 

「はぁ、分かった、分かった。同じ部屋で寝るよ」

 

俺はそう言いながら、密かに絶対に手を出さないことを心に誓った。

 

 

翌日。

勿論何事も起きることなく朝を迎えた。

時計を確認すると、大体7時ぐらい。

隣のベッドを見ると、蛍が寝相よくすやすやと寝ている。

ちなみにパイモンは蛍に抱き枕にされている。

 

1時間ぐらいゆっくりしていたが、全くと言っていいほど起きてこないので、流石に起こしてやることにした。

 

「おーい、起きろ、蛍」

 

身体を揺らしてやるが起きる気配はない。

強く揺らしても全く起きないので、俺は最終手段に出ることにした。

蛍の耳元に指を持っていき、指パッチンをする。

そのついでに雷元素を凝縮させてバチィッ!っと大きな音を立てる。

 

「「うわぁあああっ?!?!?!」」

 

蛍はパイモンと一緒に飛び起き、俺はその様子に肩を揺らす。

 

「え?!何?!敵?!?!」

「敵じゃねぇよ。おはよう、蛍、パイモン」

「…………?…………さっきの音、もしかして影継?」

「あぁ、そうだけど?」

 

笑顔でそう答えると俺のことを睨みつけてきた。

 

「もっと違う起こし方あるでしょ!」

「悪いな。生憎これしか思いつかなかったんだ。あと、俺にキレるより先に着替えとけ」

「そんなの言われなくても分かってるっ!とりあえず着替えるからあっち向いててっ!!」

「へいへい」

 

俺は大人しく後ろを向き、目に入ったトイレに入る。

それから5分ぐらい待つと、蛍が声をかけてきた。

 

「……終わった」

「ういよ。出てく準備はできたか?」

「うん」

 

俺たちはチェックアウトしてから玉京台へ向かった。

 

 

人の流れに付いて行く内に玉京台に着いた。

人の間を縫いながら覗き込んでみると、豪奢な衣装に身を包んだ女性───恐らく彼女が凝光だ───と数人の千岩軍の兵士、そして凝光の側近であろう女性たちが中心に立っていた。

 

「時は満ちた」

 

彼女はそう言うと、迎仙儀式を始めた。

多くの陣を描くなどした後、さっきまで晴天だった空が雲に包まれていく。

成功したのだろう。

そう思っていたが、空を見上げる凝光の表情が次第に曇っていく。

何事かと思っていると──────

 

巨大な黄金の龍が空から落下してきた。

 

勿論現場は騒然とする。

そんな時……

 

「帝君が殺害された!直ちにこの場を封鎖せよ!」

 

と、凝光の命令が飛ぶ。

その言葉に、その場にいる全員が固まる。

この日、この璃月を統べる神が──────

 

死んだ。

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