「なあ、影継は稲妻を出て何年目になるんだ?」
「うーんと……大体4年目ぐらいかな」
「ねえ、影継って七神に会おうとしてるんだよね?」
「?ああ、そうだけど……?」
「風神とはもう会ったの?私たちはモンドにはあんまり戻らないけど……」
「そのことか。安心しろ、ちゃんと会ってる。というか、七神の中で一番会いやすいのがあいつだからな」
バルバトスはそこらの酒場を探していれば見つかる。それに、酒を手土産として持っていけば絶対に話せるからな。
「まあ、バルバトスからは俺の欲しい情報は手に入らなかったな。でも、この先の岩神、雷神、草神からは有益な情報が手に入るだろう」
「なるほどなぁ……そういえば、影継って何が知りたいんだ?」
「ん?お、もうそろそろ璃月港だ。ほら、見えてきたぞ」
「本当だ……ってはぐらかすなよ!」
「まあまあ、それはその内話すさ。……今はまだ、知らないほうがいい」
そう言うと、パイモンは「話したくないならいいぜ。でも、いつかは教えてくれよ!」と言った。
俺はそれに頷きつつ、呟く。
「さて。もうそろそろ七星迎仙儀式の時期だが……」
「七星迎仙儀式?」
「もう、パイモン忘れちゃったの?ほら、ウェンティが教えてくれた……」
「うーん……あぁっ!そうだった!」
蛍はパイモンにジト目を向けた。
まだ出会って数分も経っていないわけだが、俺はパイモンは天然なんじゃないかと思い始めてきた。
とりあえず、まだ七星迎仙儀式の詳細が分からないので、俺、蛍とパイモンで二手に別れ、道行く人に質問することにする。
俺はひとまず、通りかかった老紳士に話しかけた。
「あの、すみません。七星迎仙儀式っていつあるか知りませんか?」
「ん?なんか言ったか?」
「えっと、七星迎仙儀式っていつあります?」
「いやぁ、すまんのぉ。年取ってから耳が遠くなってなぁ。もう一回言ってもらってもええか?」
「七星迎仙儀式っていつあるんですか?」
「……?」
老紳士は首を傾げる。
まだ聞こえていないようだ……どんだけ耳遠いんだこのじいちゃん。
「あの!七星迎仙儀式って!いつあるんですか!!」
「……あぁ~、迎仙儀式のことかぁ。あれなら、明日の昼から始まるぞ。玉京台のほうでな」
「なるほど、ありがとな、じいちゃん」
「ん?なんて?」
「ありがとな!!」
「おう、どういたしまして」
俺はじいちゃんと別れた後4、5人に話を聞いてみたが、さっきのじいちゃんの言う通り、明日の昼に玉京台で行われるようだ。
聞き込みが終わり、集合場所としていた入口の橋へ向かうと、2人が待っていた。
「悪い。待たせた」
「大丈夫。私達もさっき終わったところだから」
「そうか。それで、どうだった?」
「明日の昼に玉京台の辺りで、らしいね」
「俺の方も同じ感じだ。他には何かあったか?」
「いや、特に何も無かったよ」
「なるほどな」
そこまで話すと、パイモンの腹の虫が大きく鳴いた。
「えへへ……オイラ、お腹が空いてきたぞ……」
「そっか、もう夕飯の時間だもんね」
「確かに、俺も腹が減ってきたな。万民堂にでも行くか」
「万民堂って?」
「璃月港で一、二を争う名店だ。そうだな、今日は俺が奢ってやる」
「え、本当にいいのかぁ?!」
パイモンが目を輝かせる。
そんなに腹が減っていたのか……
なんて思っていると、蛍が俺に耳打ちしてきた。
「ねぇ、ほんとにいいの?パイモン、めちゃくちゃ食べるよ?」
「安心しろ。モラならゲーテホテルを買収出来るぐらいある」
まあパイモンが3人前ぐらい食っても大丈夫だろう。
なんて思っていた自分を一発殴ってやりたい。
「ふぅ。オイラもう食べられないぞ……」
「まじか…………パイモン、お前軽く15人分は食っただろ……」
「だから言ったでしょ。パイモンはめっちゃ食べるって」
「まさかここまでとは思わないだろ……しかも蛍もちゃっかり3人分食べてるし……」
「べっ、別にいいでしょっ。今日は特別お腹が減ったのっ!」
蛍が赤くなった頬を膨らませて言う。
その様子がかわいくて、少しドキッとした。
「まあ、特に文句はないけどな。えーっと会計は……」
「お客さん会計ですか?」
藍色の髪をボブカットにした活発そうな女の子が声をかけてきた。
横には熊のような小さい生き物がくっついている。
「おぉ!香菱じゃないか!久しぶりだな!」
「あ!あの時の旅人たち!久しぶり!」
どうやら彼女───香菱は旅人たちと以前出会っていたようだ。
「それで、そちらのお客さんは初めましてかな?アタシはコックの香菱だよ!」
「あぁ、初めまして。俺は影継。見ての通り稲妻人だ」
「そういえば、会計でしたね。えーっと……15万モラですね」
「へ?」
俺は目が点になった。
払えないわけではないが、まさか飯代だけで15万も持っていかれるとは……
パイモン、恐ろしい子……
とりあえず俺は15万モラをきっかり払い、店を後にした。
「んじゃ、腹ごしらえもしたところだし───宿でも探すか」
三人で話しながら探すと、案外早く見つかった。
宿の手続きは慣れている蛍に任せ、近くの椅子に座っていると、蛍が一つの鍵を持って戻ってきた。
「ん?一つだけなのか?」
「え?同じ部屋でも問題ないでしょ?」
「いやいやいや。付き合ってない男女が同じ部屋で寝るのは───」
「もしかして、私に手を出さない自信がないの?それだったらこれからの旅にはついてこれないかもね?」
蛍は悪戯っぽい笑みを浮かべながら、俺の顔を覗き込むようにしてきた。
「はぁ、分かった、分かった。同じ部屋で寝るよ」
俺はそう言いながら、密かに絶対に手を出さないことを心に誓った。
翌日。
勿論何事も起きることなく朝を迎えた。
時計を確認すると、大体7時ぐらい。
隣のベッドを見ると、蛍が寝相よくすやすやと寝ている。
ちなみにパイモンは蛍に抱き枕にされている。
1時間ぐらいゆっくりしていたが、全くと言っていいほど起きてこないので、流石に起こしてやることにした。
「おーい、起きろ、蛍」
身体を揺らしてやるが起きる気配はない。
強く揺らしても全く起きないので、俺は最終手段に出ることにした。
蛍の耳元に指を持っていき、指パッチンをする。
そのついでに雷元素を凝縮させてバチィッ!っと大きな音を立てる。
「「うわぁあああっ?!?!?!」」
蛍はパイモンと一緒に飛び起き、俺はその様子に肩を揺らす。
「え?!何?!敵?!?!」
「敵じゃねぇよ。おはよう、蛍、パイモン」
「…………?…………さっきの音、もしかして影継?」
「あぁ、そうだけど?」
笑顔でそう答えると俺のことを睨みつけてきた。
「もっと違う起こし方あるでしょ!」
「悪いな。生憎これしか思いつかなかったんだ。あと、俺にキレるより先に着替えとけ」
「そんなの言われなくても分かってるっ!とりあえず着替えるからあっち向いててっ!!」
「へいへい」
俺は大人しく後ろを向き、目に入ったトイレに入る。
それから5分ぐらい待つと、蛍が声をかけてきた。
「……終わった」
「ういよ。出てく準備はできたか?」
「うん」
俺たちはチェックアウトしてから玉京台へ向かった。
人の流れに付いて行く内に玉京台に着いた。
人の間を縫いながら覗き込んでみると、豪奢な衣装に身を包んだ女性───恐らく彼女が凝光だ───と数人の千岩軍の兵士、そして凝光の側近であろう女性たちが中心に立っていた。
「時は満ちた」
彼女はそう言うと、迎仙儀式を始めた。
多くの陣を描くなどした後、さっきまで晴天だった空が雲に包まれていく。
成功したのだろう。
そう思っていたが、空を見上げる凝光の表情が次第に曇っていく。
何事かと思っていると──────
巨大な黄金の龍が空から落下してきた。
勿論現場は騒然とする。
そんな時……
「帝君が殺害された!直ちにこの場を封鎖せよ!」
と、凝光の命令が飛ぶ。
その言葉に、その場にいる全員が固まる。
この日、この璃月を統べる神が──────
死んだ。