ある雷元素使いの青年の話   作:濃霧/Nolm

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遅くなりすぎました。申し訳ございません。


第4話 「公子」 ★

「あ、ちょっと、影継!」

 

影継は、私の制止も聞かず岩陰から飛び出してしまった。

 

「……おい、あいつ、行っちゃったぞ……」

 

障害物からこっそりと外の様子を見ると、千岩軍と交戦しているようだった。

 

「うぅ……私のせいで……」

「蛍が気にすることないぞ……。今は、影継の作ってくれたこの隙に逃げ出すことに専念しよう……」

 

私はパイモンの言葉に頷く。

ここでもじもじしていても、影継の骨折り損になってしまう。

今私たちに出来るのは、パイモンの言う通り、彼の作ってくれたチャンスを無駄にしないようにすることだ。

 

逃げ出す隙を伺っていると、影継はあからさまに目立つように雷元素を使い、一人の兵士を気絶させる。

千岩軍の注意がそちらへ向いた瞬間、私たちは一目散に走り出した。

 

無事に階段まで到着し、急いで駆け下りようとした時、下から千岩軍の兵士が現れる。

意を決して片手剣を取り出し、睨み合う。

そんな時に彼らの後ろから一つの影が現れた。

彼は水元素で模られた双剣で瞬く間に兵士たちを無力化すると、私たちのほうを向いた。

警戒して半身になるが、灰色の服に赤いマフラーを巻いた彼は人の好さそうな笑顔を浮かべると、その双剣を消した。

 

「そんなに警戒しなくてもいいよ」

「君は……?」

「俺は『公子』だ」

「『公子』……?変な名前だな」

「まあ、ただの肩書みたいなものだからね。例えば……『淑女』とか」

「『淑女』……『公子』……って、まさか、お前ファデュイか?!」

「ああ、そうだよ。モンドでは『淑女』が手荒な真似をしてすまないね。でも、俺のことは信用してほしい。俺は君たちを助けにきたからね」

「助けに?」

「うん、岩王帝君の殺害の疑いをかけられたんだろう?」

「なんでそれを……?」

「あんな騒ぎがあれば誰でも気付くはずさ。それで、どうだい?俺のことを信用する気にはなったかな?」

 

とりあえず片手剣をしまう。

が、正直目の前の彼は物凄く怪しい。

モンドでの一件もあり、私もパイモンもファデュイにいい印象を持っていなかった。

 

「とりあえずこんな事件現場から離れようか」

 

『公子』と名乗った男の提案に、私は頷いた。

彼は、初対面の時の影継以上に怪しいが、この場から一刻も早く離れたいのもまた事実。

信頼したくはないが、ここは彼の言う通り、大人しく現場から離れたほうがいいだろう。

 

 

 

私たちは今、璃月港のメインストリートであろう場所を歩いている。

はぐれてしまった影継のことをぼーっと考えていると、『公子』が話しかけてきた。

 

「どうしたんだい?浮かない顔をして。あぁ、もしかして、さっきまで君たちと一緒にいた彼のことが心配なのかな?」

「まあ、そんなところ」

「彼なら心配はいらないよ。俺の知り合いが助けに行ってるハズだから」

 

彼の言葉は先ほどから変わらず胡散臭いが、なぜかその言葉が直感的に嘘ではないと思った。

ただ、彼の言う知り合いが、ファデュイ絡みの人物ではないことを祈る。

彼との思い出は殆どないに等しいが、それでも旅に同行させてくれ、と言ってくれた友人に災難が訪れるのは嫌だ。

 

暫く歩き、とある建物の入口の前まで来る。

 

「ここは?」

「ここは北国銀行の璃月支部だ」

「北国銀行……確か、スネージナヤの銀行だったよな?」

「そうだよ、おチビちゃん」

「スネージナヤ、ってことはファデュイに関係してるってこと?」

「まあ、あながち間違ってないかな。俺たちはここから資金援助を受けてるし」

「……」

「ははっ、そんな表情しないでよ。君たちに危害を加える気は今のところないから、安心してくれていいよ」

 

『公子』はそう言うと、先に建物の中へ入っていってしまった。

今のところ、という部分には少し引っ掛かったが、彼の言う通りならば今なら入っても問題ないのだろう。

パイモンと目配せを交わし、北国銀行の中へ入ることにした。

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