ウマ娘ポケモンダービー   作:稗田之蛙

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 ポケモンをゲットしたキングヘイロー……さておき、母親に隠れてポケモンを捕獲してきた手前である。そろりそろりとポケモンセンターへ向かっている最中、キングは知り合いに出会う。

「おー、キングじゃん。ここに来たって事は……」

「え、えぇ。ありがとう。釣り竿……」

 ボロい釣り竿をセイウンスカイに渡すと、彼女はそれを手に持って「どういたしまして」と笑った。

「で、トサキント辺りでも釣れた?」

 セイウンスカイがニヤニヤしながら言った。おそらく、本来はその辺りが釣れるのだろう。

「いいえ、コイキング」

 ポケモンセンターの受付にボールを預けながら、正直に告白する。セイウンスカイは、驚いた顔をして、そして考え込むように顎を撫でた。

「あぁ、うーん……まぁ、キングなら心配いらないか」

「なにが?」

 

 セイウンスカイはいくらか言葉を選ぶように沈黙したのち、己の推察を話した。

「たぶん、その子は他の水場で釣れた子で。何らかの理由で池に逃がしちゃったんじゃないかな」

 それを聞くと、若干キングの顔が険しくなる。

「そういう放流って、していいの?」

「どうだろ。やるとしても、逃がす場所は選ぶべきだと思う。生態系が乱れちゃうからね」

 セイウンスカイもそっけなくそう言った。自分の使う釣り場の一つが乱されるのは心穏やかではないらしい。

「でも、それだけ雑な扱いされるのも珍しくない。コイキングだからね。繁殖力がやたら高くて、ポケモンの中でも一番弱いって。図鑑にも記されてる」

 キングは試されている気分だった。初めて捕まえたポケモンをそのように言うのは、セイウンスカイなりの意図があるのだろう。

「じゃあ……スカイさんはあの子をパートナーに選ぶべきでないというの?」

「正直な事をいえば、そうだね。でも、キングがそうしたいなら止めないよ」

「私は……」

 キングヘイローは唇を噛みしめる。自分が捕獲してきたのに、そんな風に言われると……少々ムッともする。

「一流のトレーナーを目指すなら、それこそ全てのポケモンを集める事も大願の一つよ。それは多くのトレーナーもそうでしょう?」

 だから、そのコイキングがたとえ心無い輩の"捨てポケモン"だとしても無碍に扱うつもりは毛頭ないという態度で返した。

 セイウンスカイは、感心したような、はたまた期待通りの答えが返ってきたような顔で笑う。

「うん、じゃあこれあげる。お古だけど」

 何か古めかしい、機械らしきモノをキングヘイローに渡した。

「なにこれ」

「学習装置。まぁ、他のポケモンが戦っていても戦いを学べるっていう代物」

 成る程、言葉から察するにトレーナーの合間で使う便利アイテムの一種か。

「でも……いいのかしら?」

「いいよ。私の仲間達はみんな自力で戦えるほど成長しちゃたし」

「なら……大切に使わせてもらうわね。ありがとう」

「どういたしまして」

 キングヘイローは受け取った学習装置を鞄にしまう。そうして、待合室でお互いのポケモンの治療を待った。

 

『ねぇ、知ってる? ポケモンセンターでさ、500円でポケモン売ってくれるおじさんの話』

『なにそれ』

 その最中に、同じようにポケモンの治療に来たのであろう子供達の談話が聞こえてくる。

『ひみつのポケモン、って売り文句でさ。ポケモン売ってくれるの』

『へー、モンスターボールの値段考えると、いい値段じゃないの?』

 話を聞いていた側の子がそう言うと、相手の子は「とんでもない」といった素振りで言い返した。

『ううん、それがさ。ひみつのポケモンっていうのはコイキングなんだって! ポケモン欲しくてたまらない低学年の子達がさ、コイキングがどういうポケモンだか知らずに、お小遣いはたいて買っちゃったって話。何人も』

『え、えげつねー!』

『あはは……あんな弱いポケモン買っても、何の役にも立たないよねー』

 

 ふと、手に入れたコイキングの事が思い浮かぶ。そういう入手経路で意気揚々とポケモンバトルに駆り出され、敗北した挙げ句。捨てられたのではないかという事が頭の中を掠める。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「あまり気の良い話ではないわね」

「案外法外な値段でもないと思うけどねぇ。いたいけな子供相手じゃなきゃ、だけど」

「そりゃあ、モンスターボール三個より安い値段だけど……」

 正直な話、キングヘイローはコイキングについて簡潔な知識しか無い。どういうワザを覚えてるかも知らない。だが、ポケモンの中で一番弱いというからには相応の理由があるのだろう。

 キングヘイローのように「弱くても構わない」という覚悟があるならいざ知らず、どんなポケモンかも知らずに初めてのパートナーとして迎え入れた十にも満たない幼子達の落胆は想像に容易い。

 

 キングヘイローの寂しそうな表情を横目に見たのか、セイウンスカイは語る。

「それにさ、弱いポケモンでも育てていればいいこともあるんだよ」

 したり顔で セイウンスカイはキングヘイローにそう言った。釣りを嗜むセイウンスカイの事だから、人並み以上にコイキングの事には知っていそうだが。それ以上教えてくれる様子はなかった。

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