エルマルは……終わらねえっ!   作:ONE DICE TWENTY

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第10話 計画! 崩せ、ドンキホーテ・ファミリー

 王の台地に降り注ぐ凶岩。グランドラインの天気が多種多様と言っても、明らかにピンポイントが過ぎるソレに、ドンキホーテ・ファミリーは王の台地へと集結しつつあった。

 けれど、その傍らで様々な異常事態が発生する。

 

 ──縫い付けられたり、オモチャになったりしている銃器、刀剣類。

 ──各地にある電伝虫が何者かに盗まれ、幹部やドンキホーテ・ドフラミンゴとの連絡が取れない状態。

 ──極めつけは、一部の幹部たちにおける同時多発的な体調不良。

 

 これらのせいで情報の統制が取れないまま、けれど王の台地へと向かったファミリーたちは──見ることになるだろう。

 

 なんか明らかに爆弾っぽいものを繋ぎまくって敷きまくっている、金髪の少年を──!

 

「な……何やってんだお前!!」

「囚人剣闘士か!?」

「関係無ェ、武器が無くてもガキ程度なら殺せるだろ! やっちま」

 

 ザク。

 

 刺さるは槍。無手のファミリー、その下っ端の背に、槍が刺さる。簡素な槍だ。粗末な槍だ。

 けれど──落ちてくるのなら、十二分に脅威となる槍が。

 

「ん、ああすまん。天気予報言うの忘れてた。えー、ドレスローザは王の台地一段目近辺。晴れ時々槍。傘でも持って出直しな」

「傘でどうにかなるモンじゃ」

 

 数分後、そこに無数の墓標が──建ち並ばない。

 人体を容易く殺した槍は消え、ただただ、身体を穿たれた死体だけが残った。

 

「……全員こうなら楽なんだけどな」

「そんなわけ"GA"なかろうのG! ──型氷!」

「だと思ったよのG。"蘂降る桜"」

「ム!?」

 

 鋭い突き。突然現れた細身の老人による攻撃は、まるで空気か何かを押したように避けられ、その後すぐ老人の身体に異変が走る。

 

「お、ぉぉ、おおおお──!?」

「肺の中の空気が沈殿するってのは、老人にゃ効くだ──」

「目の突枯!!」

 

 またも躱される突き。

 けれど、速さと精度が上がっている。

 

「……もしかしてだけど、体内の不調系は老いとして換算されたりする?」

「ほう、我GA地翁拳の真髄を知る者か! ファファファ、それは中々に楽しめそうだ、のG!」

「"砂漠の煌布(デザート・サリー)"!」

「砂なぞ、この地翁拳の前に無意味と──」

「オイオイオイオイ、砂ァ舐めてくれんなよ。砂漠出身だぞこちとら。──砂がどんだけ人間を絡めとるかってさァ!」

 

 いつも少年が使っている目隠し程度ではない。

 ざぁざぁと──この辺一帯が砂で埋まる勢いで、天より砂が降ってくる。

 初めは素早くそれを躱していた老人……ラオGも、次第に逃げ道が無くなり、積もった砂山に足をかける──も。

 

「くぅっ!?」

「極細粒砂。直径約80マイクロメートルの砂だ。蹴っても蹴っても前に進めないどころか、立ってらんないだろ?」

「ぬGA……こんなことで止められると思っているのなら、それは間違いだの──」

「思ってねーって。"劣神の裁き(クライン・トール)"」

 

 雷が落ちる。

 平時のラオGであれば容易に避けることのできたであろうソレは──しかし直撃する。

 高齢である。御年70の高齢者。

 そこに雷。即ち。

 

「……ナイス心臓発作!」

 

 とか。

 割合最低な言葉を吐き捨てて、少年は準備に戻るのだった。

 

 

 *

 

 

 ところ変わって、王の台地二層目、外縁部。

 

 走るは二人。と、無数の小さいモノ。

 

 一人は黒髪の美女ヴィオラ。ヴァイオレットを名乗っていたけれど、状況を聞き──そして自身で()()を視認し、ファミリーを裏切ることを決意した女性。

 もう一人は片足の大男、キュロス。二人の通った後に倒れ伏す兵士の誰も彼もが一刀のもと倒されていることを見れば、下手人も実力も一目瞭然だろう。

 

「イエローカブ部隊から伝達れす! ディアマンテ軍のラオG撃破! レコランドれす!」

「同じくイエローカブ部隊からの伝達! コロシアムにいたレベッカ様、リク王様の両名に事情を説明! 今フラッパーたちが護衛中!」

「ピンクビー部隊とレオがファミリーの全武器の縫い付けに成功しました! 計画は順調れす!」

「ああ、ありがたい。小さなリク王軍。続けて彼の様子見、及び彼が足止めしているシュガー、ドフラミンゴの監視も頼む」

「はいれす!」

 

 キュロスは隊長として、そう指示する。

 危険は十も百も承知。それでもそうするだけの価値があると、トンタッタ族も理解している。

 

「……何者なの? 彼」

「レコダ君のことか?」

「ええ。……覇気を宿しているわけでも、身体能力に優れているわけでもない。けれど──()()()()()()()()()()()()

「……やはりそれが気になったか」

 

 走りながら。目的地に向かいながら。

 ヴィオラは、先ほど視たもの……ギロギロの実で見た光景を思い返す。

 

 

 戦闘はほとんど一瞬だった。

 ドフラミンゴの糸と、彼の操る様々なモノ。そして──空。そのぶつかり合い。

 互いに全力ではなかったから出力まではわからないけれど、一つだけはわかる。

 

 ドフラミンゴは、ちゃんと「動揺していたし」、「楽しんでいた」。

 対しレコダは、「確認して」「眺めている」──そんな印象を受けた。

 自身の命が懸る場だ。死が間近にある場面だ。表情や喉の動きで何かを喚いているようにも見えたけれど、それが見せかけであることはもう見抜いている。

 

 極限の場面で──自身の命に何の興味もない人間。

 

「もうすぐれす! ディアマンテがいるれす!」

「ああ、ありがとう」

「ジョーラとモネ、グラウディウスはまだ帰港してないことも確認が取れてるのれすが、バッファロー、デリンジャー、ベビー5についてはまだ捜索中れす! 見つけ次第、手を出すことなく報告を優先するれす!」

「頼んだ」

 

 その言葉で一斉に解散するトンタッタ族。

 残ったのは伝達用の一人だけ。

 

「……ディアマンテとの戦いは私個人の問題だ。だから──」

「今更仲間外れ? ……いいえ、わかっているわ。あなた達との戦いに手を出せるほど、私は強くない。だから──レベッカのためにも、絶対に死なないで」

「……。……ああ!」

 

 身を投じる。

 戦いに。

 ドフラミンゴの元へ急ごうとしていたディアマンテの元に──キュロスが、襲い掛かる。

 

 ヴィオラは監視役だ。この決戦に、誰も近づいてこないように、と。

 そして──。

 

「……ええ、あなたの言う通り。彼は物を降らせる以外の攻撃も行っていた。……本当に知らなかったのね」

 

 自身の腕に咲いた、耳に一言。

 

 

 *

 

 

 ハイヒール少年とピザはニコ・ロビンがキメてくれた。片や半魚人、片や重いだけの超人系(パラミシア)だ。特にピザは元お仲間さんにレモンがいるからな。対処はしやすかったっぽい。

 ……なーんか俺がドフィとの決戦の場から降りてきてからずっと変な目で見て来てるのは気になるけど、まぁまぁまぁ。

 

 トンタッタ族からの連絡で幹部やファミリーの場所を頭に入れつつ、鉢合わせる場所と時間をタイムラインに組み込んでいく。

 次に来るのはセニョール・ピンク。その次がピーカ。ただしピーカは、できるのならニコ・ロビンに任せたい感はある。原作ではハナハナが最強になりすぎるからやらなかったのだろう「エグい手段」も使わせられるしな。

 ただ……計算外のことは必ず起きる。ドフィがあんなにもあからさまに「世界政府に連絡を入れた」と言ったんだ。来るのは果たして中将か大将か、それよりも上か。

 

 正直ドフィ相手だって小細工しなきゃ勝てる気してないのに、そこに未知数の巨大戦力投入とか無理過ぎる。

 無理過ぎる上に、俺はただドレスローザが鳥カゴで壊滅すんのが嫌ってだけなので、ドフィ殺したらニコ・ロビン連れてアラホラサッサーって逃げるつもり。ああ後シュガーも連れてね。

 

 だから──できるだけ早く幹部を倒し切りたいんだけど。

 

「倒したわ」

「はい?」

「スイスイの実の能力者、セニョール・ピンク。彼、初撃を譲ってほしいと言ったら、当然だ、なんて言うんだもの。──口を開いた瞬間に目を咲かせ続けて、全身の内臓を握りつぶしてあげたわ。見えない部分は見えるようになってから、だけど」

「卵」

「残りはピーカ、だったかしら。イシイシの実の能力者」

「……そうだけど、流石にまぁ油断はしない方が良いと思う。アイツ初撃譲るとか絶対しねーし、武装色纏われると普通に無理だし」

「覇気の武装色、って……体内にも纏うものなのかしら」

「あー。……どうなんだろ。体表面を硬化させる印象だけど。筋繊維とかまでは知らんな」

「……」

「なんだよ」

「いえ。あなたにも知らないことがあることに驚いていただけ」

 

 原作で出て来たこと以上は知らん。

 他は知ったかしてるだけだ。

 

 覇気を纏った状態における人体の構造変化なんざ知るか。おだっちに聞け。

 

「──ピキャララララ! オマエたちか! さっきから暴れまわっているの──お、ぁ゛!?」

 

 おお。

 そうだよな。ワンピ世界ってみんな笑うから、口からの侵入ってしやすいんだよな。

 

「キュ、ァ──ヶェエエエエエ!!」

「何したん?」

「気道と食道を引き千切っただけ。大したことはしてないわ」

「じゃあ何が大したことになるん?」

 

 コイツ二年間修行しなくても良いんじゃね感出てる。

 あれ、ハナハナが強いのは知ってたけど、そこまでだっけ?

 

「これで──あとはドフラミンゴだけ」

「そうだけど……なんか隠してない?」

「いいえ。それじゃ、計画通り私はヴィオラ王女と合流するわ。()()を使うタイミングは任せるから」

「お、おう」

 

 ……なんかこわいな。

 あっさりし過ぎじゃない?

 

 ……保険はかけておこうかなー。

 

 

 

 して、ただいま、をした。

 

「よォ、ただいまジョーカー。降り注ぎ続ける隕石の味はどうだった?」

「……」

「おっと既にキレ顔だ。んじゃまー」

 

 隕石を止ませる。

 瞬間、糸が来た。技名も言わない鋭い糸。速度に加減は無く、ただただ速さを追求したかのような糸。

 

 それを避ける。

 

「また、避けやがったな」

「じゃあいいよ、認めるよ。見聞色であってるよ」

「いや、違う。てめェのは見聞色じゃねぇなァ。──海軍の使う六式。アレの、紙絵と似たような原理。そうだろ?」

「バレんのはっや」

「フフフフフ……そう何回も何回も見せられちゃァな」

 

 まぁ、正解である。

 暖簾に腕押しというか。

 予め作ってある大気の壁。それに攻撃が当たると、大気に押されて俺も移動する。俺は自然系(ロギア)ではないけれど、俺の周囲にある大気がロギアみたいなモンって話だ。

 

「お前が作った待ち時間の中で、ちょいと考えてたことがある。フッフッフ……聞いていくか?」

「いいの? 俺に小細工の時間を与えることになるけど」

「フフフフフフ、お前がその小細工とやらの準備を終わらせずにここに来るわけがねェ。もうこれ以上することがないから戻って来たんだろ?」

「いや正解だけど。なに? さっきから。俺の理解度このちょっとの間にめっちゃ上げた?」

 

 その通りだ。

 全部終わらせたから来た。これ以上ここでやることは何もない。

 むしろ早く終わらせたくて巻いたまである。ニコ・ロビンのおかげも大きいが。

 

「お前の行動理念。行動理由。その中に、どうにも納得の行かねェところがあった」

「クロコダイルの殺害とシーザー・クラウンの殺害だろ?」

「……フッフッフッフ! 成程、自覚アリか。コイツは──最悪だなァ」

「あの時点でクロコダイルは大したことをしていなかった。その上で俺は、生まれてからずっとクロコダイルを殺そうとしていた、と発言している。同じくあの時点で非道こそ働いていたものの特に何の露呈もしていなかったシーザー・クラウン。その上で俺は、政府の施設に入り込むという危険を冒してまで、すぐ近くにベガパンクというより高次の天才がいたにもかかわらず、彼だけを狙って殺している」

「明らかに計画性のある犯行だよなァ、アラバスタの稚児」

「だから考えたんだろ?」

 

 仰々しく手を広げて。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってさ」

「……フフフフフッフッフッフ!! あァそうだ。お前の行動のちぐはぐさ。お前の行動の中にある短絡的な部分。頭は回る、計画も立てられる。だが肝心な部分で行き当たりばったり。あるいは衝動的。──傍から見りゃ馬鹿だ。馬鹿なガキだ。目の前の物事についカッとなっちまって、後々思い返せば絶対にやらなかったよォなことをしちまうガキ。だが」

「未来が視えてりゃ、話は全くの別物になる。それなら俺が知るはずもない情報を知っていることの裏付けにもなるし、俺が言った"敵になるかもしれない奴に背を預けてる"の発言の意図も汲み取れる。糸だけに」

 

 ──ところで。

 俺は散々自己紹介したつもりなんだけど──まだ理解されていないのだろうか。

 

「なら、お前の真の目的は──」

回天土(エクステンド)

 

 降る。

 ──俺達が。

 

「大人しく話を聞く姿勢もホラか。とことん虚仮にしてくれやがるなァ。フフフフフ!」

「ちっとは動揺してくれよ。ここ空だぜ? ──どこの、とかさ」

「あン?」

 

 海上。

 下にはドレスローザなど無く、周囲には青い青い海が広がるばかり。

 

「ッッ!」

「えー、天気予報天気予報。──偉大なる航路(グランドライン)から逸れること凪帯(カームベルト)。本日は晴天、本日は晴天。ただところにより──俺達が降り注ぐでしょう、ってことで」

「ンンンフフフフフ……!! なんだ、リベンジか? おれに空中戦を挑むとはいい度胸だ!」

「馬鹿言え、小細工してたっつっただろ。俺が真面目に格上と戦うかってんだ! ──だから、後は頼んだぞゥ美女二人!!」

 

 左手を、ドフィに向ける。

 

 その瞬間ドフィの身体に無数の腕が生えた。

 

「仲間の超人系(パラミシア)か。くだらねェ、お前の用意した小細工ってのはこの程度かァ!?」

 

 その生えて来た腕を握りつぶさんとするドフィ。

 しかし直前で腕がハナとなって消える。

 

天波槍(テンパランス)

「そうだ、そっちでやれ! フッフッフ、ゴミみてェな仲間なんざ頼ってないでなァ。降無頼糸(フルブライト)!!」

「──北北西プラス三十度。距離二海里」

「消え──」

回天土(エクステンド)

「またか!」

 

 空に空を作る。

 天と天を結ぶ。

 ここなるは天空。天つ空。

 

「えー、天気予報天気予報。──偉大なる航路(グランドライン)よりさらに北北西──凪帯(カームベルト)を抜けて……どっかの海上! 本日は晴天なり本日は晴天なり。晴れ時々人~」

「フッフッフ……相変わらず逃げるのだけァ上手いよォだが、さっきの空の槍だの濁流だの、おれには一切」

「──北に真っすぐ。距離三点七海里」

回天土(エクステンド)

「……」

 

 次に落ちた場所も、海上。

 

「えー、天気予報天気予報」

「……どォやってこの距離を飛んでるか知らねェが、雲の少ねェ快晴、且つ必ず海上。……成程、その()にいるのはヴァイオレットだなァ?」

「──さらに北。距離七海里。少し遠いけれど」

「問題ない。回天土(エクステンド)

「どこまで飛ぶ気かは知らねェが、どこに行ったって──」

 

 次に落ちる場所も海上。

 だけど、色々する前に攻撃が来る。

 

弾糸(タマイト)!」

「おう、理解早すぎだぜジョーカー。なんでわかったんだ? 俺にそれが有効だ、って」

「フフフフ、五色糸は避けられちゃいなかった。ダメージもあった。だが、超過鞭糸と降無頼糸は簡単に避けられた。──威力が高い攻撃程お前は吹き飛びやすいんだろ?」

「アッハッハ、そんなわけめーっちゃある」

 

 そうです。

 大気の壁は、大技であればあるほど俺を強く押し飛ばしてくれる。

 だけど弱いもの……手加減された攻撃とかだと俺を押し飛ばす前に攻撃が貫通するので俺にダメージが入る。

 

「フフーフ。バレちまったもんは仕方がねえ。──頼む、急いでくれ! 俺の命割と保たないからコレェ!」

「──北西、距離六っ、え!?」

 

 拳を握り、弾糸を受ける。

 さらに五色糸が頭部に迫っていたので、先に側頭を小突いてから五色糸をモロに食らう。

 

「フッフッフッフ! 掌にあったのが目で、側頭部にあったのが口。わかりゃァ大したことはねェ」

「……アンタさぁ。強いんだから、ちょっとくらい慢心しないワケ?」

「相手が本当に小物ならするさ。フッフッフッフ! だが、お前は違う」

「覇気も覚えられないって言ってんじゃんか」

「覇気を使えなけりゃ小物!? そりゃあんまりじゃねェか。勿論強者は覇気を使うだろうよ。だが、使えない奴が軒並み小物ってのは、言い過ぎだ。そうだろ?」

 

 ……六海里飛ぶ。

 ん、ちょっとズレたか。……けど信じるしかないな、もう。

 

「そんでもって──フフフフ! お前に覇気が宿らねェのは、お前に生きるって意思が欠片もねェからだ」

「……へえ、そこまで見抜けるんだ。かなり意外だったかも」

「生きる。勝つ。やり遂げる。そういう強い意志にこそ覇気は宿る。お前にはそれが欠片も無ェ。だから小物に見えるし、軽薄に見える。いつでも死んでもいいと思ってる奴に宿ってくれるモンじゃねェ」

「そーそー。そーだよ。俺はもうやりたいことやったから、いつ死んでも」

「いつ死んでもいいなら! 小細工も、大立ち回りも! 自ら認める格上にも──挑んでくることは無ェだろ!?」

 

 落ちながら。

 ドフィは、大仰に手を広げ、天を仰いで叫ぶ。

 

「認めろ! 言え! お前は()()()()()()()()()()ってなァ!!」

回天土(エクステンド)

「認めるまでおれはお前を痛めつけ続けるぞ! フフフフ──フ!?」

「そうまでして俺の覇気開花を手伝ってくれようとしてんのはありがたいけどさ。もう終着点だ」

「こ……こは。ちィ!」

「逃がすかよ、天夜叉!」

 

 天空を降らせ、ドフィを叩き落す。

 今糸で掴もうとした雲ごと、だ。

 

「──第二ラウンドと行こうか、ドンキホーテ・ドフラミンゴ。お前の大好きなこの島、この国、この町──フレバンスで!!」

「テメェ……ここがどこかわかってて降りて来たってのかァ?」

「ここを目指して飛んでたんだよ。そんでもって──天黒死(テンペスト)

 

 周囲の珀鉛の下に空を敷き、それを俺達の上空に繋げて、珀鉛を降らせる。

 体内に蓄積させ続けなきゃ意味がない毒も、こうして浴びるように接触し続ければその時期をどんどん早められる。

 

「相打ち覚悟。格上に勝つなら良いアイデアだが……そんなことをするとは思えねェ」

「アッハッハ、ハーッハッハッハ、ハーハッハッハッハ!! ……みたいな高笑いすれば油断してくれると思ったんだけど、全然だなアンタ。マジで油断しないじゃん。どうなってんのその頭脳」

「まだ小物ぶるか。……まァいい。お前がどこまで未来を視たにせよ、知ってるはずだ。オペオペの実はおれの手中にある。お前に付き合って、ここでどんだけ戦ったとしても──おれは治るが、お前は治らない。その事実は変わらねェ」

「おうさ、どうせ見てる奴もいねーんだ。いいよ、旦那。覇気とかマージで習得できる気しないけど、そんなに言うなら目覚めるまでやってやろうさ」

「フフフフフフ……なんだァ、いきなりやる気になったなァ。勝ち筋でも視えたか?」

「そんなところ。──天空海闊」

 

 さぁ、真っ向勝負だ。

 

 

 

 *

 

 

 

 彼の落とした計画。

 それは、「どうにかしてレコダとドフラミンゴをフレバンスに連れていくこと」。

 フレバンス。珀鉛病の国。白の国。

 

「どう? ヴィオラさん」

「ええ……戦いは続いている」

「そう。……優勢劣勢は」

「どちらも負けず劣らず。……ドフラミンゴを相手に」

 

 まず、ロビンがレコダに目と耳を咲かせる。ただし目はブラフだ。時折ドフラミンゴに攻撃を仕掛けるが、すぐに消す。

 ロビンとレコダが時間稼ぎをしている間に、ヴィオラがギロギロの実の力で「空が快晴に近く、海上である地点」を探す。ロビンはその位置や距離をレコダに伝え、レコダがようやく明かした力の一端でその地点まで飛ぶ。

 それを繰り返し、二人をフレバンスまで運ぶ。

 ただし、距離が遠くなればなるほど、そして戦闘が激化すればするほどヴィオラが二人を見失う可能性は大きくなっていくので、手元にビブルカードを置くこと。ビブルカードの示す方向にいることは確実にわかるので、見失っても再度視認すれば良い。

 視認後、レコダが対応できそうならば情報をロビンに伝え、無理そうなら待つ。機を窺う。

 

「しかし……フレバンスか」

「彼はなぜそこを決戦の地に?」

「……わからない。けれど、恐らくは」

 

 窒息をしない。呼吸をしない。毒が効かない。

 それが能力によるものなのか、はたまた別の力かはわからないが──あの少年は珀鉛病に罹らない。

 

「──キュロス!!」

「キュロス……本当にお前が……」

 

 と。

 キュロス、ヴィオラ、ロビンが真剣に一方向を見つめる後ろから……二人が来た。

 

 レベッカ。そしてリク王。

 

「す……すまないレベッカ。今は」

「どの道ここにあなたは不要よ、片足の兵隊さん。感動の再会なのでしょう?」

「……恩に着る」

 

 もう泣きじゃくっているレベッカと、複雑な顔をしているリク王のもとへキュロスが行く。

 既に国民のオモチャ化は解けているし、それがドンキホーテ・ファミリーのことだということも知られている。懸念は帰ってきていない幹部だけだが、それもトンタッタ族が見張っている。

 だから構わないだろう、と。

 

「ふふ。あなた、あのコに似てるのね」

「……どういう意味?」

「噓吐き。こっちにレベッカやリク王が来て集中できなくなるのが嫌だったから、キュロスをあっちにやったんでしょ?」

 

 手段のえげつなさと嘘吐き。

 旅の同行者から得た初めてのものが、その二つ。

 

「……」

「不服そう。ふふ、そういう関係性もあるのね」

「ええ……いつ切れるか……切り捨てられるか、わからない関係よ」

 

 こんなにもの長距離移動が可能なら、アラバスタという人質は意味を為さないだろう。

 そうなれば晴れて──レコダとロビンの関係性は消える。

 

 ただの荷物になる。

 

 その前に有用性を示さなければならない。ドンキホーテ・ファミリーの幹部を殺すだけでは足りない。

 なにか、もっと、もっと。

 

「……これは」

「どうしたの?」

「……。これを見るのが、仲間のあなたではなく私なのが、残念でならないわね」

 

 ヴィオラは、また柔らかく笑うのだった。

 

 

 *

 

 

 ダランと垂れ下がる腕。完全に折れているので、防御には使えない。嘘。めっちゃ痛いけど使えはする。

 

「フフフフフフ──そんだけ血を流してて、フラつきもしやがらねェとは。そのタフさは称賛に値するなァ」

「いやー。フラつくとか恰好の的じゃん。フラミンゴだけに」

「加えてその集中力。口と脳が繋がってねェんじゃねえかと疑うくらいに、周囲が見えてる」

「そんなそんな。360度カメラだなんて。……それ誉め言葉か?」

「極めつけに──荒浪白糸(ブレイクホワイト)

天波槍(テンパランス)

「フッフッフ! 出力は大したことねェが、同時に落ちねェ。そんだけダメージ負っててずっと一定の威力を出せるなんざ大したモンだ」

「お褒めに与り光栄ってな。ただまぁ、そちらさんもだと思うけど――飽きては来てるよ?」

「ンンンフフフフフフッフッフッフ! そりゃよかった。おれだけかと思ったぜ」

 

 こんな長時間戦ったの初めてだし、最初の攻撃以外ほぼ千日手だし。

 ドフィは強い攻撃が使えないので、チクチクやるしかない。

 俺は何してもドフィの糸や覇気に、酷い時は何もしない単純フィジカルに阻まれるので、ダメージが入らない。

 泥沼にも程がある。カリブーどっかにいるだろこれ。

 

「ところで――お前が使った、テンペストとかいうのと、天空海闊。この二つの効果が出てるように見えねェが、今度はまたどんな小細工を仕込んでんだ?」

「ああいや、天黒死(テンペスト)は効果出てるよ。仕込んでるのは天空海闊の方」

「ここまで殺し合った仲だ。教えてくれてもいいじゃねェか、なァレコダ」

「んー。まぁ、もうちょっとだけ待って欲しい。開示はするからさ。もうちょっとだけ」

「飽きてきたんだろ? なぁ、いいだろ、どっちかだけでも」

「……わかった。まぁ、天黒死(テンペスト)はその名の通りだよ。アンタ今、呼吸してるだろ? 珀鉛が降ってるから呼吸し辛いと思うんだけど」

「あァ、すまねェな。この程度じゃいつもと変わらねェんで、気付かなかったよ」

「うん、それ狙いの仕込みだよ。アンタが吸ってる空気はいつもと違うんだ。いわば俺の天空をそのまま吸ってるようなもんでさ」

 

 手を──叩く。

 パン!

 

「……なんてやっても破裂するわけじゃない。俺はグラウディウスじゃないし」

「フフフフフフ……勿体ぶるなァ、お前は」

「シーザー・クラウンの真似事が出来たら良かったんだけどね。範囲内の大気を成分を自在に操る、とかできたら面白かった。けど、ラニラニの実はそういう操作系には疎くてさ」

「結論は?」

「簡単に言うと、俺の天空をアンタの中に生成する。"劣神の裁き(クライン・トール)"」

「!?」

「こんな風にね」

 

 感染する天空。ただし量を吸わせる必要があるので、初見殺しの初手必殺な俺のスタイルには合ってない。ドフィがちゃんと俺と向き合ってくれたからできたことだ。

 

「……」

「今さ、体内に雷が落ちたんだよ? しかも心臓近くに。なんで倒れないワケ?」

「……フフフフフッフッフッフ! 新世界に、体内で雷が落ちた程度で死ぬ奴がいると思ってんのかァ?」

「いやいるだろ流石に」

 

 ……。クソ、槍とかにすればよかった。

 吸わせた天空の量に比例して「降るわけがないモノ」「降ったとしてもランクダウンするもの」を降らせられるので、吸ったが最後、ってわけじゃない。さらに言うと肺の中の空気は循環する。俺の天空は死ぬほど軽い上にちゃんと赤血球さんが運んでしまうので、一定量以上を溜めることはできない。

 また吸わせ直し……なんだけど、そんな時間待ってくれるはずないんだよね。

 

「それで? 天地開闢……小細工の方は、何をどうしてる?」

「……まだ言わないで逃げ回ることとします! さらば!!」

「おいおい……待てよォ! レコダァ!! ──おれがお前の天空とやらを十分に吸うまで逃げ切れると本当に思ってるのか? フフフフフフ!!」

 

 うわぜーんぶバレテーラ。

 逃げべ。こーりは逃げべ。んだんだ。

 

 ……つーか二度目だけど、体内に雷落ちたら痙攣するくらいはしろよ! 人として!!

 

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