エルマルは……終わらねえっ!   作:ONE DICE TWENTY

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第11話 終結! 糸筋別つ天つ空

 変化は突然だった。

 

「あ……?」

 

 どさ、と。

 フレバンスの地に倒れるドフィ。

 

「倒れるの遅すぎだろ……」

「……テメェ、今度は何の小細工だ」

「いやだから、天黒死(テンペスト)だって」

「何を降らせた?」

「何も」

 

 あー、疲れた。

 今までで一番疲れたわ。タフ過ぎる。本当に。

 

 満身創痍も満身創痍。

 全身ボロボロで──ドフィを見下ろす。

 

「フフフフフフ……おれを見下ろすか」

「いや、二番煎じも二番煎じなんだけどね、やったことは。さっき言った通り、アンタは俺の天空を吸い込んでる。体に循環してる。アンタの身体には今、巡るべきものの代わりに俺の天空が巡ってる」

「……」

 

 シュロロロの窒息みたいなものだ。毒でも良い。

 ただ、ドクドクやガスガスよりも圧倒的に即時性がない。況してやこんな大男となると、こんだけ時間がかかる。主な効能は酸素欠乏だけど、要らなくなった二酸化炭素も体内に残留する。まぁ総じて酸欠だな。

 

 あと何で普通に喋れてるの。あと何で普通に思考回せてるの。

 ……。

 

「離れたなァ。テメェも……慢心はしてねェな。小物を名乗るクセに」

「アンタがちゃんと人間なら酸欠で思考が白んでるはずだ。が、そんな様子ないからな。アンタも大概噓吐きなんだろ?」

「フフフフフフ……それでこそだ。それでこそ──」

「だから、俺は追い打ちをかけることにした。天濁流(テンタクル)

「ッ……!!」

 

 液状化した天空はドフィに絡みついていく。天空は高空。酸素は薄い。

 さすれば、天空により溺死する。

 

「──海原白波(エバーホワイト)ォ!!」

 

 突如、フレバンスの街並みが全て糸となり──俺に襲い掛かってくる。

 珀鉛を含んでいるから、さらに白く。まさにEverwhite(果ての無い白).

 

 けれど、それが直後に黒く変色する。

 使ってこないとは思ってたさ。そりゃあな。

 

羽撃糸(フラップスレッド)

「……覇気を拒否してるだのなんだの言ってたけどさ。ましょーじき武装色は羨ましいよ。元の肉体が貧弱だからなー、武装色纏っても押し負けるんだろうけど」

「貧弱……フフフフ! おれからの攻撃を受けて、そんだけ血を流してて、眩暈も起こさねェテメェの身体がか!?」

「そうだよ。俺のこの身体がだよ。天板(テンプレート)

 

 パリンパリンと、プレパラートでも割るかのように容易く貫かれて行く大気の壁。

 一本一本がそれだ。

 それが、千本。

 

「終わりだ」

 

 ──殺到するソレを。

 

「まぁ避ける手段とか無いんだよね」

 

 全て、受ける。

 ルフィの覇気があって尚その肌を貫通していた矢である。フッツーに。

 ふっつーに──貫通する。大気の壁も容易く貫通だ。高威力且つ一方向から攻撃ならばともかく、高威力だけど全方向から、しかも点の攻撃となるとどうしようもない。弾糸が無数にとんできてるようなもんだし。

 

 刺さって。全身、針の筵になって。

 

「……フフフフフフフッフッフッフ! 倒れねェ! 倒れねェか、レコダ!!」

「そりゃもう。いや、痛いよ? 言っておくけど。かなり痛い。めっちゃ痛い。けどこれどうしようもないんだよな。俺ってば麻酔効かねえからたとえここでアンタに勝って、緊急搬送されたとしても──まぁ、ずーっと痛い。酷い話だよホント。()()()()()()()()()()()

「何?」

「次で最後の一撃だからさ、そっちも最強ので来てくんない? いや、ちょいとネタバラシをすんだけどさ。俺に珀鉛病効かねーんだわ。毒とか病気とか、俺は全部無効化する。だから麻酔も効かねぇし──」

 

 集める。

 天空海闊によって広げに広げたソレを。

 

「失血死もしなければ、窒息もしなければ、酸欠にもならなければ、毒もガスも効かなければ──」

「フフフフフフ……なんだァ、そのふざけた体質は」

「当然、気絶もしない。──だから俺から意識奪いてェんなら、殺すしかねーんだわ、ドンキホーテ・ドフラミンゴ。アンタの目的それだったんだろ? 最初から覇気使わねーわ本気出さねーわ。家族殺されてんのにその態度だったのは、俺を利用できると踏んだからだろ? 未来が視えて、天空なんつーどこにでもあるもんを扱えて、さらに長距離移動までできると来た。便利だろうよ、そんな奴」

 

 集めて、集めて。

 合わせる。

 

「大丈夫。俺はアンタに従わねェよ、()()()

「フフフフフフ──なら、仕方がねえ。従えねェなら、殺すだけだ。──16発の聖なる凶弾」

 

 先程の羽撃糸(フラップスレッド)とは比べ物にならないレベルの覇気が込められた糸。

 倒れたままに、能力に対してだけ覇気を込められるのはもう意味わからん。化け物め。

 

神誅殺(ゴッドスレッド)!」

「──ハーハッハッハッハ! 最後の最後で俺を信じたな、ドンキホーテ・ドフラミンゴ!! 天晴糸(テンパレイト)!!」

「──!」

 

 その16発の聖なる凶弾と、全く同じ位置に、降る。

 空が。天空が。空のヴェールが。

 

「な……んだァ、次は!!」

「仕込みだよ、ドンキホーテ・ドフラミンゴ。天空海闊。今の今まで、広げに広げた大天空!」

「進まねェ……!」

 

 今、この場にある天空は。

 八方4000kmの天空と知れ。

 

 ドフィの糸だろうがスナイパーライフルの弾だろうが、距離による減衰と減速は必ず起きる。距離ガン無視して効果発揮できるのはホビホビくらいだ。あとまぁ副次的だけどソルソルもか。

 

 俺にその聖なる凶弾が辿り着く前に、4000㎞を越えてこなけりゃならねェ。

 ただ、たとえそうだとしても、ぶっちゃけドフィは他の技を俺に使えばいいだけだ。

 だから、最後の最後。

 

「──ニコ・ロビン! 方角と距離教えてくれ!」

「南南東プラス十二度。十八海里。安心して、誰もいないし、誰も近づけさせてないわ」

 

 聞こえてくる声は、カバンから。

 掌と側頭部だって?

 

 だーれがそんな分かりやすい場所に通信機置くんだよ。

 

回天土(エクステンド)

 

 天と天を。

 点と点を繋げる。

 

 俺とドフィの落ちる位置は当然──繋ぎ、敷いた、爆弾の上!

 

「ただいまだ、ドレスローザ!」

「フフフフフフ──そりゃァ悪手だろ、レコダァ!!」

 

 糸が伸びる。

 天に漂う雲に。周囲の壁に。糸が、糸が、糸が。

 

天晴糸(テンパレイト)! アンタの言う通りだよ、ドンキホーテ・ドフラミンゴ。俺は、どんな状況でも、どんな環境でも──出力が落ちねえ。威力が低かろうがなんだろうがな!」

 

 糸が、撚れる。

 勢いを失う。

 ここは天空。まだ天空。

 

 俺の独擅場(どくせんじょう)は、まだ変わらない!

 

「二度目だ。落ちろ、元天竜人!!」

「フフフフフフ──嘘を吐かなくなったら、お前は、オワリだ。フッフッフッフ──ウ!?」

 

 笑みが消える。

 ドフィの表情に、青い物が走る。

 

 それはまるで──喉になんか詰まらせた、みたいな。

 

「カ……ご、ァ……!」

「フフーフ。油断もオワリもお前の方だよ、ドンキホーテ・ドフラミンゴ」

「ま、た……何か、こざ……」

「遠すぎて聞こえねェだろうから、俺が言ってやる。──"一輪咲き(インフルール)"」

 

 落ち行くドフィの身体が武装硬化することはない。

 

「グラップ」

「……ッ!!」

 

 落ちろ、落ちろ。

 心臓を握りつぶされて──大爆発に巻き込まれて。

 

槍雨(やりさめ)

 

 追い打ちで槍だ、ってな。

 

 

 

 

 

 眼下。

 全身に槍が刺さり、全身に大火傷を負って倒れているドフィの元に降ろしてもらう。

 いや、フツーに俺も巻き込まれる気でいたんだけど、既のことでトンタッタ族のピンクビー部隊が拾い上げてくれたんだ。

 だけど、殺し切れたかわからんから降ろしてもらった。早く治療しないとだめれす! とか言ってたけどこっちの方が優先でしょフツーに。

 

「……フ、フフフ」

「やーっぱり生きてたか。タフ過ぎてやべーだろ」

「……この先の海には、おれよりも……もっとタフな奴が……フフフフ、ごまんといる」

「ああまぁ、俺の最終目標はカイドウだけだからな。後がどんだけ強くてもどーでもいいや」

「そうか……フフフフ……そのカードを見れねェのは……残念だ」

 

 ガシャン、と。

 海楼石の足枷をドフィに嵌める。

 

「フッフッフ……油断しねェな」

「たりめーだろ格上に油断する小物がどこにいんだよ」

「……殺せ」

「言われずとも」

 

 銃剣類は全部トンタッタ族がオモチャにすり替えてしまったので、槍を一本降らせる。

 それを掴んで。

 

 言葉無く、ぶっ刺──!?

 

「危なかったねぇ~……天夜叉」

「……それは聞いてないんだよね」

「何がだい? ──アラバスタの稚児。運び屋レコダ。懸賞金2億6000万ベリー」

「それは本当に聞いてないね!?」

 

 止められている。ただの足に。

 いやもう、いい。それはもういい。どうせドレスローザの一件は全部バレているし、ドフィもシュガーも他のドンキホーテ・ファミリーも捕まるだろう。海軍が捕まえるだろう。

 

 ただそういう事以前に、俺がヤバい!

 

回天(エクステン)──」

「速度は……"重さ"。光の速さで蹴られたことはあるかい?」

()!」

 

 あっちがどういう状況かは知らんが、ニコ・ロビンと俺の真下に天空を開き、遠く遠くへ繋げて落ちる。

 

「不思議な技を使うねェ~……けど、ちょいと遅いねェ」

「自由落下舐めんな、そんな速度出るワケねーだろ!」

「これ、わっしも入ったら、どうなるんだろうねェ~?」

「ハッ、入ってくんなら途中で能力切ってぶつ切りに」

「フフフフ……気を付けなァ、ボルサリーノ。……そいつは噓吐きだ、不意打ち以外で殺せると思うな……フッフッフ!」

 

 ……なに?

 なんだその……助け舟。明らかに意図して……。

 

「おっと、そうなのかい~? そりゃコワイねェ~」

天世遮(てんやしゃ)!!」

 

 閉じる。

 天空を。最後にレーザーが飛んできそうになってたけど──間に合った。

 ただ、声だけは聞こえた。ドフィの。

 

「──フッフッフ! 最後の最後でおれの名を技に使うか……どこまでもふざけた野郎だなァ……」

 

 ホントは対ドフィで用意してた技だからね!!

 

 閉じて、落ちて。

 落ちて……着地する。

 

 なんとか危機は去った。

 が、である。

 

「いや……なんで解除しねーんだよ。馬鹿だろ」

「あなたに言われたくはない」

 

 ニコ・ロビン。その右腕は、爛れに爛れている。

 なぜって、この女最後の最後までドフィの体内から腕を戻さなかったようなのだ。だからドフィの口から侵入した爆風に腕が飲まれて、大やけど、と。

 

 ……まぁ、ニコ・ロビンの言う通り、俺に言われたかないだろう。

 失血死もショック死もしないけど、羽撃糸(フラップスレッド)の一本でも心臓に当たってたら死んでた。外傷はフツーに負うので、俺のボロボロ具合と言ったら無い。

 

「まぁ……まぁじゃね? ドレスローザの真実に海軍は気付いた。ドンキホーテ・ドフラミンゴも王下七武海から降ろされてインペルダウンに投獄されんだろ。そんで、珀鉛病で獄中死かな。充分だ」

「……ダメね。私の医療知識でできるのはここまで。あとはちゃんとした医者に診せないと……」

「ああ、そんだけでもありがたいよ。……痛テテテ。っと。アンタも一応包帯なりなんなり巻いとけよ?」

 

 

 立ち上がる。

 ま、チート能力様様ってことで。

 

「ここは……どこなの?」

南の海(サウスブルー)

「サウスブルー? ……なぜそんなところに」

「いやまぁ咄嗟の判断だったんだよ。腕の良い医者がいて、比較的平和な場所。んでもって俺やアンタの話がほとんど出回ってなさそうな場所」

 

 ここは。

 

「──トリノ王国。まー、田舎も田舎な宝島さ」

 

 医者の腕だけなら、ホントはドラム王国もアリだったんだけど、あそこ平和じゃねーしな。

 

 

 

 *

 

 

 

 時は経ち、俺達の傷は完治した。

 最初トリノ王国に入った時はそれはもう奇異の目で見られたんだけど、このボロッボロさでありながら俺が「すんませーん病院ってどこすかー?」って聞いたら一応答えてくれた。

 医者……というか薬剤師の人には「海王類に噛まれた」と説明し、「口の中で爆弾爆破させて逃げ果せた」とも説明。俺の全身にある細い貫通痕は弾痕とはだいぶ違う傷なので、海賊同士のドンパチには見えなかったらしい。

 まぁ、だったとしても助けてくれた可能性はあるけど。

 

「おぉ、兄ちゃんだぢ、よ゛ぐなっだでか?」

「姉ちゃんも゛、ひでぇげがだっだでなぁ」

「おかげさまでね。ところで、上のアレ。どっか綻びとか出て来てない?」

「いんや、大丈夫だぁ。兄ちゃんのおがげで、鳥が襲っでごねぇがらなぁ」

「毎日見回りしてるけんど、途切れたことは一回もねぇど~」

「おうさ、治療代要らねえなんて言うんだ、これくらいはさせてくれってな」

 

 上のアレ。

 即ち、暗雲。降らせるまでいかない、もうマジでただの暗雲。やっぱりクモクモの実の能力者名乗れるレベルの雲。

 

 それを人々の村や大樹付近に敷いてあるので、鳥……マスケレドモ・ゴアユー鳥の習性に引っかかることなく薬用植物を採ることができている。

 ……とはいえすまないがこの島自体の問題解決はしない方針だ。仮に原作通りトナカイがこの島に飛ばされた時、何のトラブルもないこの島でトナカイ鍋にされるか、されなかったとしてもシャボンディ諸島まで送ってもらえない、という事態になるかもしれない。

 英雄チョッパーはいてもらわないと。

 

「それよが、今日の祭りに参加していくどー」

「ああいや、すまんな。もうここを出ようと思ってんだ俺達」

「出る……たって、船作るだか?」

「いや、空歩いていくよ。あの雲はしばらく残るけど、ずっとじゃないのがすまんとしか」

「いやいや、十分だど。そうがぁ、いなくなっちまうがぁ」

「……。あー、なんだ。一個だけアドバイスいいか」

「アドバイス?」

 

 ……言うつもりは無かったけど、示唆だけ。示唆だけ。

 

「あの鳥、あんだけでけーんだ。雲があろうがなかろうが、餌目的なら降りてきてると思わねえ?」

「だしかに。アンタらが来てから降りてきてないどー」

「鳥の中には、光り物を集める習性を持つモノがいる。あなた達はアクセサリーをたくさんつけているから……それで狙われている可能性はあるわね」

 

 ああ全部言っちゃった。

 どーすんだこれでトニー君帰ってこれんくなったら。

 

 今更っていわれりゃまぁそうだし、くまなら別のトコに飛ばしてくれる気もしてはいるけど。

 

「光り物? ごういうのどがが?」

「いわれでみれば、きらきらしたものがおおいど」

「雲が晴れたら、ひがりもの外して薬草採取いぐか?」

「あるいは、それをあの鳥たちに差し出せば、仲良くなれるかもしれないわね」

 

 全部言うじゃん。

 学者の血が騒いだのか知らないけど全部言うじゃん。

 

 知らねーぞ俺。これはニコ・ロビンがやったことだ。俺しーらね。

 

「つーわけだ。ホント、色々助かったよ。また会う機会があったら、今度はちゃんと旅行で来るから」

「おう、今度は怪我してねぇでなー」

「また来いどー」

 

 ──さて、久しぶりの砂岩ウォークである。

 暗雲を引き延ばして延ばして、マスケレドモ・ゴアユー鳥の襲ってこない範囲に来たらそれを切って……グランドラインを目指す。

 いやー。……どうしよっかなー。

 

「ドレスローザに戻るの?」

「なワケ。海軍常駐になってるに決まってんじゃん。誰が行くか」

「リク王たちは、あなたに感謝をしたい、と言っていたけれど」

「要らねー。俺リク王助けてねぇし。つーか聞いたか最後の会話。大将黄ザル曰く、俺の懸賞金2億6000万ベリーだってよ。俺が何したってんだ」

「王下七武海一人、政府お抱えの研究者一人、そしてドンキホーテ・ファミリーの悉くを殺して回ったわね」

「殺したのどっちかっつーとアンタだろ」

「加えて……ドフラミンゴがあなたの実力を証言している可能性を考えたら、まだまだ跳ね上がっていてもおかしくはないんじゃない?」

「海賊でもねーのにな。……全部終わったらスカイピアに永住しようかなぁ」

 

 別にラフテル興味ないし。

 ほとぼり冷めたら顔変えてエルマル戻るのもアリ。あんま迷惑かけたくないからバレそうならすぐ出ていくけど。

 

「あの遠くへ移動する技は使わないの?」

「死ぬほど疲れるんだよアレ。距離と方角と能力の展開範囲、高度、時間を全部一気に計算してんだぞ。気軽にやるかいンなこと」

「そう」

 

 マージで天空操るのは頭パンクする。ドフィに「液状化した空を見るのは初めてか」って言ったけど、俺だって能力把握する前まで見た事なかったわンなモン。

 性質は液体でも気体でもない……けど、島雲が少し近いので、あれを自在に操れる、みたいな感覚で使ってる。

 

 島雲といえば、ダイアル系の再装填もしないとなぁ。

 

「……ねえ」

「なんだ」

「私は、あなたに必要かしら」

「要らねー。重荷だし銃口向けて来てるし、できるなら今すぐにでも海に捨てたいレベル」

「そう」

 

 ……なんか悩んでんなーとか思ってたけど、そういう系? 思春期かよ。

 ああでも「生きたい!」を経験してないニコ・ロビンはそうか、必要とされないと生きていけないのか。というか、必要とされていなければ、いつどこで捨てられるか、売られるかわからない……って恐怖に怯えることになるわけだ。

 ベビー5ほどじゃないけど、依存強めなんだわな。

 

 頼む~!

 ルフィ~!!

 早いとこ出航してくれ~~~~~!!!

 

 押し付けるから! 頼む! 俺の手に余るから! ムリムリ! 俺じゃ世界政府の旗撃ち抜けないから! そげキング~~!!

 

 冷静に考えてあと三年は長ぇよ。

 

「あー。まー、なに? そんなに求めてくんなら、もうちょっと有効活用してやるよ。仲間じゃなく同行者でもなく、道具として」

「……どちらでも」

 

 その方が気が楽、って顔に書いてあるんだよね。

 どーすっかなー。その辺含めて。

 

 

 

 

 ゾウ。ズニーシャの上に生えたくじらの木。その最上階に着地して、隠し扉を少し開ける。そんでもってすぐに離脱する。

 当然だ。ギャーギャーとモコモ公国の連中が騒いで追ってきていたので、逃げなきゃ無理だった。ちなみにズニーシャの声は聞こえなかった。

 

「読めた?」

「……ええ。この場所の……ロード歴史の本文(ポーネグリフ)のことまで、知っていたのね」

「ん? アンタ俺とドフラミンゴの会話聞いてたんじゃないの?」

「ええ、途中からは」

 

 ……嘘、じゃなさそうだけど。

 なんで聞いてない時間あったんだ? 咲かせた耳って「聞かない」ってことできんの? 俺もう未来視(原作知識)のこととかある程度バレてるつもりでいたんだけど、知らねーなら言わねーでおこ。っぶねー。

 

 ああいや、未来視できるからってポーネグリフまで……ってこと?

 俺が内容知ってる、みたいなことは前々から言ってたのに?

 

 いや。違う。そうか。

 ニコ・ロビンは今、道具であろうとしている……とすれば、余計なことは……いやいや。

 

 ……なんにせよ保険かけておいてよかった、ってことで。

 

 

 

 ゾウからスムーズに離れて、トットランド。

 といってもホールケーキアイランドにあるロード歴史の本文に用があるだけで、俺にビッグ・マムへの殺意はない。

 なんでって、別にホールケーキアイランドは圧政とか敷かれてないから。

 ここの住民が支払っている税は自身の安全を守るためのもの。騙されてたドレスローザとはワケが違う。ビッグ・マムはちゃんと税を支払った国民のことは守ってるし、その子供達も同じ。確かに食いわずらいで暴走することはあるけど、その被害からさえも長男が住民を守るなどの行為が描写されていた。

 ここのビッグ・マムを殺したら、むしろ周辺諸国がこぞってせめて来るだろ。そんで余計な血が流れようさ。……ワノ国で結局死ぬとは言え。

 

 なお、寿命を奪われた海賊に対しての憐憫はない。海賊だし。自分たちがやってることやっておいて被害者になったら助けてくれは無理だろ。たとえペドロ率いるノックス海賊団がピースメインだったとしても、歴史の本文探してマム所有のソレを奪おうとした時点で、だ。

 

 というわけで、ここでも「ちょっと」隙間を俺が開けて、後は退散。

 ニコ・ロビンがソレを盗み見て、終わり。

 

 

 

 

 そして、ついに──。

 

「いや、うん。わかってた。そんな気はしてた」

「……巨艦、グラン・テゾーロ。少し前、貴方が罪を擦り付けようとしたギルド・テゾーロの乗る船」

「気のせいでなければ追ってきてるよねアレ」

「ええ、あなたの気のせいでなければ、私にはそう見える」

 

 おかしい。俺はテゾーロに興味はない。

 こいつはフツーに自分の目的で自分のやりたいことをしているだけだし、悪事……はしてるけど、正直国盗りとかじゃないし。なんならコイツの敵海軍とか世界政府だし。

 ナカマ。ナカーマ!

 

 ……あ、ドフィか!!

 

 そういやなんか因縁あったなソコ。

 えーと。でも……マジで俺は……その、快楽殺人をしてるとかそういうわけじゃなくってェ。

 

「撃って来たけれど」

「それはヤバ過ぎ子さんじゃん。回天土(エクステンド)

 

 逃げる。

 すまん、なんかあるんだろう。なんか! あるんだろう!

 でも俺逃げるな! ごめんな! あと三年……いや五年後になるけど、ルフィ来るから! そこで頑張れな!!

 

 

 

 して、ようやく。……じゃないのよね。

 

「いやぁ、助けられちまったな。すまねぇ」

「……良いけども。海で漂流してる奴見かけたら誰だって助けるけども」

「けども、なんだ?」

「腕のソレだよ。どーみても兵器だろうが」

「あァ、これか。昔、どこぞのクソ海賊に斬り落とされてな。そのあと海軍の科学者につけられたんだ」

「長い説明されなくてもわかってるよ。アンタゼファーだろ。黒腕のゼファー」

「……ほう? その若さでオレを知っているのか」

 

 空気がピリつく。

 別に時期的に黄ザルと戦ったわけでもねーだろうに、なんで漂流してたんだこの爺さん。漂流癖でもあんのか?

 

「知っていて、じゃあ何が言いたい?」

「……先に言っておく。俺達は海賊じゃない」

「へぇ。そんなパーソナルな部分まで知られてるとはな」

「んで、俺には懸賞金が懸ってる。お尋ね者だ」

「そうか」

「……アンタ、海軍遊撃隊所属だろ? あー……捕まる気は無いけど、こんな小島っつーか孤島にじーさん一人を置いていく気は無くてだな」

 

 黒腕のゼファーについては……迷いがある。

 いや、コイツに関してはルフィいなくても倒せたと思うんだよね。確かに世界の危機ではあったよ、あの状況。でも海軍総出ならまぁ……まぁ、だったくない?

 

 だから……俺が殺す必要も意味も無いと思っている、し。

 一応砂漠出身だからさ。砂漠ってね、広大なんだよ。でも旅人多いの。だから遭難者いたら相手が誰とか関係なく助け合うの。それがマナーっつーかなんつーか、共通の敵は大自然であって人間じゃねーから、って理由で……黒白関係なく送り届けて、そっから仕切り直し、みたいな感じなの。

 アレだよ? ならず者とかなら話は別だよ? 遭難してたら、だから。

 

「お前さん、名前は?」

「……レコダ」

「アラバスタの稚児か!」

「うわ……何その嬉しそうな声。怖いんだけど」

「お前さんならオレは目を瞑る。なんだ、それなら早くそう言ってくれ。無駄な威圧をせずに済んだだろう」

 

 ……んー?

 えっと……油断、させるための……みたいな?

 

「ということは、そっちのお嬢さんがオハラの悪魔だな」

「……ええ」

「そう身構える必要はない。……ああ、海軍がお前達の懸賞金を吊り上げたから、警戒しているのか」

「いやするよ。フツーにする」

「安心しろ。他の海軍がどうかは知らないが、オレはお前への懸賞金の取り下げに関する嘆願書の全てに目を通している。アラバスタ王国、そしてドレスローザ。海軍……というより世界政府は頑なにそれを無視しているが、どれもこれも感情だけに訴えかけたものではない、筋の通った嘆願書ばかりだった」

「……」

「王下七武海制度などというくだらない制度を突っぱねて、自国や寄った国の民を救う行為の数々。なんなら今言ってもいい。──海兵にならないか、運び屋レコダ。」

 

 ……んー。

 

「なんない」

「そうか。理由を聞いても?」

「海兵になったら自由に動けねーじゃん」

「オレは自由だぜ?」

「けど、世界政府に意見できるわけじゃないでしょ。生まれたその瞬間から、俺の敵は世界政府なんだよね」

「……アラバスタ王国も、加盟国だろう?」

「ああ。だけど……。……なんでもない」

 

 まだまだ先の話だ。

 言う必要はない。夢見るガキンチョでいいんだよ、俺の扱いなんて。

 

「嘘吐きだなぁ、坊主」

「……具体的にどの辺が?」

「何かあるんだな? アラバスタ王国と世界政府の間で……お前が、許せねぇと思うことが」

「さてね。……で、どうすんの? ビブルカード追ってお仲間が来てるっていうんなら、何日か分の食料ここに置いて俺達は行くけど」

「まぁ待て。仮に遊撃隊がここまで来たとしても、お前達に手を出させはしない。代わりにもう少しオレと話をしていけ」

 

 話ねぇ。

 ゼファーの面倒見の良さ……か。まだNEO海軍立ち上げてない時期だしな。

 

「異存はないわ」

「まだなんも聞いてねーけど。……まぁいっか。いーよ、話くらいなら。ああただ、俺達が話し疲れて眠ってる間にグチャ、とかされたら……」

「疑い過ぎだろ坊主」

「いやー、一応お尋ね者だからさ。安心して眠るとかできねーわけよ」

「……だったら、お前達が眠っている間、オレのことを縛っていてくれてもいい」

「縛ったって引き千切るだろ。つーか縛ってる間に遊撃隊来たらそれこそ一巻の終わりだわ」

「──どういう育ち方をすれば、そこまで疑い深くなれる」

「聞かれてるよ、ニコ・ロビン」

「ああ……いや、すまない。納得した」

 

 俺のこと知ってんなら、ニコ・ロビンのことも知ってるだろう。

 大体そんな感じだと──。

 

「嘘吐きね。そんな人にアラバスタ中から嘆願書が届くわけない。違う?」

「なんでアンタが俺を刺すの?」

「私も聞きたいから。あなたの話」

「……わかった。わかったよ。俺より疑い深いアンタがそこまで言うなら、俺も信じる。……ちなみにゼファー、アンタどこで漂流したんだ?」

「ん、ああ。西の海(ウェストブルー)が花ノ国近辺……だろうな」

「遠いな。……でもアンタがここにいるってことは、そう離れてやしないだろ。一日二日なら我慢するよ」

「あァ、そうしてくれると助かる」

 

 どうしてそこまで、俺を買ってくれてるのか……話を聞きたがってるのか知らないけど。

 

 ……まぁ適当言っとけばいいか。真実なんざ誰も興味ないだろうしな。

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