エルマルは……終わらねえっ!   作:ONE DICE TWENTY

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第12話 速攻! 黒炭オロチ、死す!

 そこそこ、語り明かした。

 今までの冒険を。ただ俺が嘘を吐くとすぐにニコ・ロビンの訂正が入る。余程「真実を覆い隠すこと」が嫌いらしい。

 そして──話を聞くたびに、ゼファーは大笑いをして、俺の頭を撫でてくる。

 ぶっちゃけ歳、そこまで離れてないはずなんだけどな。

 

「あァ、そうか……そういう道も、あったのかァ……」

「別に、黒腕のゼファーは大事な存在だったでしょ。今の海軍で、良識ある奴は大体アンタの教え子なわけだし。行き過ぎてんのもダラけてんのも真面目なのもさ」

「ハッハッハ、そこにボルサリーノの奴を含めねェのが、お前の"博識"を物語ってるなァ」

 

 スナワニ、ヤハハさん、ジハハさん、シュロロロ、ドフィ。

 今まで倒し、殺して来た敵。シュロロロに至っては()()犯罪を犯していないにもかかわらず、ゼファーは何も言ってこなかった。

 

「それで、運び屋レコダ。次の標的は誰なんだ?」

「……それ言ってさ。次の行き先に海軍いたら」

「カイドウ、だろう?」

 

 ……。

 ワノ国の内情は海軍に伝わっていないはず。そもそも世界政府加盟国じゃないから……とか。

 

 この人には、関係ないか。

 

「ああ。んで、まぁできたら白ひげもかな」

「ニューゲート? まさかアイツもどこかで悪政を敷いているのか?」

「いや、アイツの傘下がね」

 

 今、インペルダウンにはドフィとシュガーが幽閉されている。あとカハハさんも。

 だから、インペルダウンの囚人解放は俺の望むところではない。麦わらの一味、あるいはポートガス・D・エースが同じ道を辿るかどうかはともかくとして──ゼハハか、あるいはサッチの方を俺が殺しておくのはアリだと思っている。

 そうすればポートガス・D・エースは少なくともゼハハを追わなくなるだろうから。

 

「……()()()、決めたぜ、オレは」

「何を?」

「お前についていく!!」

 

 ドン!! ……じゃねーんだわ。

 ん? ん?

 何を……ん?

 

「ふふ、豪快な人」

「レコダ。お前の行動は正しい! だが、()()を入れねェから罪になる。そこにオレという後ろ盾がつけば、お前の行動は正当化される!」

「いやされないよ。最悪アンタが海軍の裏切り者になるだけだよ」

「構わん。お前の行くところに悪政あり。お前の行くところに虐げられている民草あり。オレはそう睨んだ。違うか?」

「違うね。なんたって俺は万国にも行ってる。モコモ公国にもだ。あそこは悪政なんか敷かれてなかった」

「けれど、ポーネグリフがあった」

「ちょ……」

「ポーネグリフ。世界政府が隠したがっている世界の真実。一説には、世界貴族の汚点があるって話だ。オハラの遺児が解き明かしてェのは、それなんだろう?」

「いいえ。世界貴族の汚点なんてどうでもいいものを追いたいわけじゃない。私はただ、真実と……歴史を知る者として、文を導く使命を有するだけ」

 

 いやぁ……そのー……俺仲間とか要らなくてェ。

 やること終わったらルフィ現れるまでスカイピアに永住しようとか考えててェ!

 

 そんな正義のヒーローじゃなくってェ!!

 

「丁度、オレの仲間も来たみたいだ。──行こうじゃねェか、ワノ国」

「……知らないよ。アンタが良くても、アンタの部下は、ってことだってあるんだ。……じゃあな、ゼファー。俺達は先に行く。軍艦が来てるんだ、逃げたっておかしくねーだろ」

「あァ、勝手にしろ。オレ達はオレ達でワノ国へ向かう。大丈夫だ、センゴクが何を言ってきたところで全てねじ伏せる」

「勝手に言っててくれ。回天土(エクステンド)

 

 砂岩ウォークだとワンチャン狙撃される可能性があったので、天と天を繋いで一気に移動する。

 そっから砂岩ウォークに切り替えて、落ちてきたニコ・ロビンをキャッチ。

 

「はァ……嫌になるな」

「ふふ……善人の相手は苦手?」

「多分な。善人を助けるのはいいんだけど、協力するとか……やめてほしい。アイツ70歳とかだぜ? 心肺機能弱ってるし……あんなんで戦場来て、土壇場で蹲ってみろよ。助ける奴増えるじゃんか」

「そういうところに惚れこまれたのだと思うけど」

「つーか、アンタ保護してもらえば良かったな。オハラの悪魔とか気にしなさそうだし、仮宿に丁度良くね? ゼファー」

「……ええ、そうかもしれない」

 

 我ながら妙案な気がする。

 カイドウ殺したらソレでニコ・ロビンを手放して終わりにしよう。麦わらの一味のことだ、ニコ・ロビンの一件が無くとも世界政府に喧嘩を売ることはしそうだし、その中に「不自由なまま海兵やってる不幸な女性」がいたら解放してやろうと動くかもしれない。

 そうなったら紆余曲折の末に丁度良くニコ・ロビンが仲間になるんじゃね? おい俺、タハー、流石だな。天才か? うわ照れるわー。

 

「ちなみに、カイドウを殺す手立ては組んであるの?」

「ある。十通りくらい」

「流石ね」

「でも全部フィジカルで突破されるかもしれない」

「……」

 

 いやこれマジで。

 死ぬほど搦め手用意してるけど、全部そんな小細工効くかァ! で終わりそうな気はしてる。ウォロロロはそんだけ強い。

 あと……悩みもある。

 光月トキが赤鞘九人男を飛ばしたのは今から五年後の未来。そこでウォロロロとぐはムハを殺した場合、君主は光月スキヤキか光月日和のどちらかになる。

 

 ……この二人、海軍からワノ国守れるか、っていうと……無理……じゃないかな……って。

 いや、スキヤキの方はまだ強い上に執政者だからいいんだけど、日和……。

 

 ……傳ジローいるし大丈夫か! うん!

 

 まだ世界徴兵も起きてない。だから緑牛が来ることもない。他の大将は来るかもしれないけど……あー……大将かー……。

 うううん。

 

 最悪俺常駐……かなぁ。いや言うて俺が何の役に立つ感はある。完封できるの赤イヌくらいなんだよな能力の相性上。

 なんとか……なる、と思うしかなさそうだなぁ。

 

「下……大型の海王類がいるわね」

「なに? 腹減った?」

「……私達をずっと追いかけてきている」

「ああそう? じゃあちょいと高度上げるか。落ちる砂岩を餌かなんかと勘違いしたんだろ。すまねーわマジで」

 

 高度を上げれば……おお、ギリギリだったかもしれない。

 大きなウミヘビみたいな海王類が、その口を開けて俺達に噛みついてきているところだった。

 

 ウミヘビはパクパクと口を開けたり閉じたりして、しばらく俺を見つめた後……大きな水しぶきを上げて海へ戻っていく。

 そうだよなー。海王類とか絶対餌すくねーよな。あんだけ巨大なんだ、一日に必要な餌の量とかエグそう。ああでもジンベイザメよろしく植物プランクトンだけで行けたりすんのか? いやジンベイザメも植物プランクトンだけで生きてるわけじゃないとはいえ。

 

 謎だ。海王類。

 

「また……」

「え、また? もしかしてこの海域餌少ない系か? 雲の上まで行った方が良いか」

 

 そして本当に出てくる海王類。今度は……あー……うーん? ……マン、ボウ? 辛うじて?

 ソイツもパクパクと口をやって、数秒見つめて、海ん中帰ってった。

 

「何かを伝えようとしているんじゃないかしら」

「いや何を。つか伝わんねーよ。声聞こえねーもん」

「それは……どこか、おかしな言葉ね」

「何が。おいおい、俺が嘘吐きだからって、海王類の声が聞こえないなんて突拍子もない嘘吐くわけ」

「海王類が知性を有し、話すことができる、ということは……確信している。そう聞こえるわ」

 

 ……。

 ……。

 

「今まで敵にばっか言ってたけど、アンタにも言っておく。──ナチュラル頭良いのヤメロ。俺の馬鹿が浮き彫りになるだろうが」

「もうなっていると思うけれど」

 

 手を離す。

 

 ぎょっとした顔で俺をみるニコ・ロビン。

 その下に天空を作り、俺の頭上にも天空を作る。回天土(エクステンド)。落ちてきたニコ・ロビンをキャッチ。

 

 この回天土(エクステンド)は、全部の計算を俺がやんなきゃいけないものの、仕組み的にはホ〇ータルと同じだ。2の方がより近い。あと空中に置ける。

 だからこのまま「降らせ続ける」「降らせ続けて加速させる」もできなくはないけど……あ、一個技思いついた。

 

「ハッ……ハァッ……」

「ああすまん、そんなに息切れするほどだったか。まぁこれに懲りたらあんまり揶揄わないように――どわっほい!?」

 

 ザバァ! と海から出てきたのはサメ。どでかいサメ。それがシャチとかクジラみたいに跳ねて来て、あわや食われるところだった。

 

 こ……。

 こわ。フツーにこわ。ふざけてないで急ごう。

 

 気になるのは──ソイツも空中で、パクパクと口を開閉していたこと。つぶらな目で俺を見ていたこと。

 す、すまん。なんか言いたいことあんのかもしんないけど、俺に万物を聞く耳とか無いんだ。見聞色さえないんだ! すまんて! 言いたいことあったら……こう……文字とかで……ね?

 

「……」

「そう睨むなよ。俺達は仲間じゃなくて、背を預けて銃口向けあう関係だろ? 馴れ馴れしくしない方がお互いのため。違うか?」

「……」

「あぁそうかい。すまねーすまねー。デリカシーがなかったなかった。よく言われんだ、死んでも治らねえと思うけど」

 

 実際治んなかったしな。

 

 ──さて。

 霧霞の向こうに見えて来たぞ、ワノ国。

 しかし……ホントに来るのかな、ゼファー。来れるもんなの??

 

 

 

 

 

 鈴後のとある山中に降り立つ。

 寒いが、まぁ砂漠の寒さもこんなもんだ。大した違いはない。

 

「ここに降り立った理由は?」

「武器探し。ちょいと敵の数が多くてなー、アンタのサポートだけじゃやってられんのよ。だから刀と、もしあれば銃が欲しい」

「もしあれば、って? 銃くらい、どこにでも」

「無いんだよなぁ、ワノ国には」

 

 ……時期的に、ポートガス・D・エースと鉢合わせしそうだからな。

 編笠村の真反対にあるこっちに来たんだ。特に会いたくない理由は……まぁある。俺達がやろうとしてることがバレたら絶対手ェ貸すとか言ってくるし、マジでゼファー来るならもっとややこしいことになる。

 ゼファーは公認入国ルートを使う……と思いたいんだけど、海軍やめてまで来てたらもう知らん。ただNEO海軍の旗印を上げてないゼファーはまだ民間人守ると思いたい。守んなかったら蘂降る桜で肺機能潰してワノ国の外に追い出す。

 

 捕らぬ狸の皮算よナントカはここまで。

 

「ニコ・ロビン。この国の衣装を盗み見て、適当に着替えとけ。すまんが今回アンタを抱いて戦えるよーな奴じゃねーんだわ。まぁエネルの時点でそうだったけど」

「……わかった」

 

 さて……まぁ、ウォロロロの前にぐはムハだなー。暗殺暗殺ゥ。

 ここに関しては別に住民と長くを共にせずとも喜び勇んで命を懸けられる。っつーか元々ここ目当てで俺はアラバスタ出たようなもんだし。

 

 犠牲になるモンが多すぎてな。

 ムリムリ。許容できねーわけよ。

 

「んじゃちょっと行ってくるから、狐に会ったら逃げな。あぶねーから」

「狐? ええ……」

 

 

 

 さーて。

 ニコ・ロビンにはああいったけど、ここに近づけば当然阻まれるのはわかっていた。

 

 だから。

 

「いやお前の矜持もよくわかる。……だけど頼む、覇気使えない俺は武器が欲しくてさ……」

 

 がるるるる。

 

「うんうんそうだよね、河松戻ってこない内は絶対ヤだよね。わかるわかる」

 

 がるるるる。

 

「ああダメ? ……わかった。そうだよね、あと五年後……とかは知らないか。うん、わかった、諦める──とでも思っ、おぅわ!?」

 

 だ、ダメだ。

 動物に嘘は通じない!!

 せめて牛鬼丸に変じてくれていたら……と思うけど、それでも通じなかった気がする。

 

 ……諦めるか。

 

 

 

 というのはまぁ嘘で。

 回天土(エクステンド)はね、極小範囲にも出せるの。

 すまんな狐。一本だけ貰っていく。

 

「戻ったのね」

「ああ。……服は?」

「どういうものかはわかったけれど、それを運ぶ手段がないもの」

「なーる。……ま、いいよ。武器は手に入った。このまま直で花の都へ行って、頭を潰す」

「……ここはどういう国なのかを……聞いても?」

「強い奴を笠に着た悪い奴が悪いことしてる国だ」

「馬鹿にして……」

 

 だって本当のことだもの。

 

「で、その悪い奴殺して、強い奴殺しに行く。殺せるかどうかは……まぁまぁ」

 

 秘中の秘が一個だけある。

 それを突破されたら、その場で色々考えるさ。

 

「できるんならアンタにゃ徒歩で花の都に行って欲しい」

「地図も無しに?」

「行けねーの?」

 

 行けるだろ。ハナハナがどんだけ強いと思ってんだ。

 

「行けねーなら簡単な地図描くけ」

「いいえ。行ける」

「そんならよかった。んじゃーな」

 

 "どうにかして自分の利用価値を認めさせなければならない"という意思がひしひしと伝わってくるけれど、大丈夫大丈夫、ゼファーなら悪いようにはならないって。

 どーせもうすぐで海軍やめるし。

 

 ……そう考えると、仮宿としては……。い、いや。その間に麦わらの一味に出会えれば。

 ん。

 

 二兎追う者は一兎も得ずだ。今は目先のことに集中しよう。

 

 

 

 

 べべん!!

 と、花の都はオロチ城に槍を降らせて推参する。

 あんま多く降らせると一般人にも当たるからな。しかし、建物の耐久力低くて助かるわァ。

 

「なんだ!?」

「槍が降って来た!」

「違う、侵入者だ! であえ、であえ~!!」

 

 ……人が多いから情報伝達も早いと。

 

破天候(ハテンコウ)

 

 突如、オロチ城の上空で雷が鳴り、砂が降り、獅子が降って砂岩が降る。

 マクロ組んで降るものランダムにしてIfって繰り返してる感じ。

 

「何者だ!」

「その髪色、その出で立ち……この国の者ではないな!」

「あぁ、俺はレコダっつってね。外の海じゃ懸賞金2億6000万ベリーの大悪党になってる。つってもここの通貨ベリーじゃねーからわかんねーか」

「何が狙いだ!」

「天守閣突き破ってきて狙いがわかんねーとか無いだろ。将軍の首だよ。……で? さっきから見渡してんだけど、オロチいなくね? どこ行った?」

「言うわけがなかろう!!」

 

 ってことは今ここにいないのね。

 ……んー、困り申した。アイツが宴の場にいねーってことは……えーと、じゃあ……あれか、風呂か!

 

「天守閣へと侵入した愚か者とはお前だな! 我らオロチ様が御庭番衆──」

田雷(でんらい)

 

 ガァン! と。

 現れた忍者の頭上にタライが降る。おお、ワっぽいワっぽい。

 

「っ、妖術使いか!」

「たりめーだろ妖術使い以外がどーやって天守閣から槍持って降ってくんだよ」

 

 少し屈む。

 そこを通り抜ける弾丸。……これマジ意味わからんよな。琵琶に仕込んだ銃でサイレンサー付きって。何? 無音にも程がある。普通にサイレンサーついててもパシュ、くらいの音はするぞ。

 

 ……困ったな。

 一般人とそうじゃない奴の区別が……ムズい。明らかに忍者は敵として、花魁と、ただただ恐怖政治に従ってるだけの兵士は殺したくないんだけど……ふむ。

 

「"劣神の裁き(クライン・トール)"」

 

 俺が槍と共にこじ開けた穴を精確に辿る雷。これによって、オロチ城の畳に火がつく。

 

「雷!? いや、そんなことよりも」

「火事だ! 水をもて!!」

「どういうことだ!? 雨が降りそうな空なのに、雨じゃないモノばかりが降ってる!」

「なんだ雨じゃないものって!」

「雷と、砂と、槍と……狛犬だ! 狛犬が降ってきてる!!」

「狛犬が降るかァァ!!」

 

 ああそうこれこれ。一般人多いとパニックになる。こっちが狙いだったんだけどね。

 御庭番衆の集まりが思いのほか早かった。

 

「とりあえず──"蘂降る桜"」

「ぬ!?」

 

 福ロクジュの肺。その中の空気を沈殿させる。

 鍛えてるっつったってラオG的なそれじゃない。効くだろ、61歳には。

 

 今度は首を逸らす。

 やめてくれ、察知できるわけじゃないんだ。撃たないでくれダルいから。

 弾倉潰して暴発させるぞ。んな細かい操作できるわけねーだろ。

 

「──発見」

 

 ドン、と。

 空気が重くなる。あ、べべん! だ。

 

 既に燃えてて耐久の低くなっていた床は──大気の重さに耐えきれず、崩壊する。

 

「離れろ、崩れるぞ!」

「柱の側に!」

 

 そう、そうしろ。

 そうしていれば助かる。

 そして俺は、階下に行ける。

 

 流石に真下にいたわけじゃなかったから多少走る必要はできたけど、見つけた見つけた。

 

「よー、裸のおっさん。無手の所すまんがアンタの命を取りに来た」

「何奴……見張りの者は」

「アンタがそこまで信を置くんだ、流石に手下だろうって殺しちまった」

「……刀。まさか……まさか、赤鞘九人男……!」

「いやそれ来るの四、五年後でしょ。違うって」

()()()()!! 忘れはせぬ……あのにっくきおでんの妻、光月トキが遺した辞世の句!」

 

 なに?

 

「たった一人で討ち入り──まさかお前があの時の光月モモの助か!?」

「いや違うけど。天波槍(テンパランス)

 

 よし殺せ……てないな。ヤマタノオロチになってら。

 腐っても動物系幻獣種。タフはタフか。つーかなんだっけ、SBSに書いてあったけど8回首切らないと死なないんだっけ? 

 

 まぁ、関係ないか。

 

(イン)天波槍(テンパランス)

 

 ドフィの羽撃糸には遠く及ばないけれど。

 まぁ、三十はあるから、食らってくれや。

 

 

 

 

 将軍が死んだ。将軍が死んだ。

 瓦版は飛ぶように売れる。大ニュースだ。

 

「不服そうね。暗殺が成功したというのに」

「ん。……おロビか」

「私が咄嗟に名乗った名前まで知っているの? ……もう驚くことも無くなって来たと思っていたのに」

 

 着物……それも花魁の着る着物を着たニコ・ロビン。

 それが隣に来る。目立つだろうが。

 

「気になることを言われてなぁ。……ちょっと考えることができた」

「気になること?」

 

 殺しはした。したけど……生かして情報聞き出すべきだったか、とも思ってる。

 あの黒炭オロチが年数を間違えるなど絶対にありえない。それは確信できる。それほどの恐怖を抱いていたのだから。

 

 十六年前、と言った。

 そして、俺をモモの助だと勘違いした。

 

 つまり……光月トキが赤鞘九人男を飛ばした未来は、二十年後じゃなく十六年後……なのか?

 

 なんで?

 二十年には意味がある。麦わらの一味が必ず来るための意味が。

 それを早めた理由は?

 

「いや避けるけども」

「……」

 

 俺とニコ・ロビンが座っていた松の枝が斬り落とされる。

 眼下には……狂死郎。

 

「何か用かい、居眠り狂死郎」

「……お前だな、将軍オロチを殺したのは」

「ああまァ、俺変装してないしな。わかりやすいか」

「なぜ殺した?」

「俺は根っからの悪政嫌いでね。偉大なる航路(グランドライン)の悪政敷いてる国の全部を回ってその頭ァ潰すのが趣味なんだ。どうだい、オロチが死んでせいせいしただろう」

「……」

 

 んー?

 こっちはこっちで……なんだ? 傅ジロー的にも良かったことだと思うんだけど……なんかダメなことあったか?

 

「来い。話がある」

「いやお尋ね者がそうホイホイついていくかよ」

「……」

 

 睨むなよ。

 

「行かないの?」

「いや……行く。俺も聞きたいことあるし」

「そう。なら私はまた、街で情報収集をしているわ。気になることはある?」

「赤鞘九人男、及び光月家に関する伝説でも噂話でもなんでもいいから、信用度関係なく集めといてほしい。ああ、街中でフルーツ見かけても絶対食うなよ。毒だから」

「わかったわ」

 

 毒、以前に。

 能力者はどうなるんだろうな、食ったら。

 

 

 

 

 ついてこい、と言われてついていくこと三十分くらい。

 兎丼のはずれもはずれで、ついに狂死郎こと傳ジローはこちらを向いた。

 

 そして──膝をつく。

 

「──あなた様は……モモの助様に」

「いや違うよ。俺は光月モモの助じゃない」

「……しかし」

「まず髪色が違う。まず目の色が違う。まず肌の色もちょっと違う。まず声も違う。あとアイツ8歳時点で飛ばされてんだから年齢も違う。──はい、何か同じな所は?」

「……おでん様の奥方、トキ様の最期の言葉通り……十六年の時を経て! 黒炭オロチを殺してせしめた!」

「それ偶然。はい終わり」

 

 どーみてもモモの助じゃねーだろ。

 モモの助が可哀想だろ。え、つか大丈夫か? モモの助どっかにいるってこと? ヤバくね? ドレスローザ……に取り残されてたりする? 錦えもん達と。

 

 ま……まぁ、ドレスローザ平和になったし……大丈夫……だよ。うん。とりあえずは。

 

「そうだとして、なぜモモの助様の特徴を知っている?」

「あー、まーそうなるよな。んー。……なんで知ってるか、っていうと……すげーかいつまんで説明すると、俺は未来の人間なんだよね」

「未来……?」

「そうそう。光月トキのトキトキの実は知ってるだろ? それで未来から過去に戻されて来た人間。未来人ってワケ」

 

 トキトキの実にそんな力はないけど、「未来に飛ばす」なんてトンデモ能力の詳細をこいつらが知ってるとは思えないし、通るだろこれで。

 

「……ではなぜ、今、この時に……ワノ国へ?」

「さっき言っただろ。悪政嫌い人間なんだよ。俺はおこぼれ町の悲劇も、今尚続いてる兎丼やらなにやらのことも知ってる。カイドウも殺しに来てる。──謝ってはおく。もうちょい早く来てりゃ、SMILEの被害も防げただろうに」

「SMILEのことまで……」

「ああ。ちなみにもうSMILEは作れない。それの原材料作ってた奴は殺したし、それをワノ国に売ってた奴もぶっ倒して投獄して来た」

「それは……誠か」

「が、すまん。その副作用を抜く、ってのは……俺の知識じゃどーにもならん。俺にできるのは破壊と殺しだけだ」

 

 結局そうだ。

 俺に誰かを守る力はない。天空だって自分の身すら守れないしな。

 

「加えて、赤鞘九人男がこの場にいないことも知っている。ああいや、アンタと菊の丞、河松とアシュラがいるってのはわかってるけど、他のは引き連れて来てない。すまんな」

「いや……オロチが死んだだけでも十分な混乱が起こせている」

「アンタは早いとこ光月日和を確保しに戻りな。カイドウとその傘下の海賊以外はどーにでもなるだろ」

「──かたじけない」

 

 去って行く傳ジロー。

 ……しかし、ほぼ確定か。

 

 なぜ……俺が来る日を指定したんだ、光月トキは。

 

 というかそうなるとモコモ公国で三人連れてくりゃ良かったぁああ! いやドレスローザでもだけど! カン十郎いたなら言えよ殺してたよその場で!!

 

 などと過去を嘆いても仕方がない。

 つかそーなると、海王類が続け様になんか言おうとして来てたのも……深読みしちゃうなァ。

 

 ──ま、いーや。とりあえずブラキオサウルス殺しに行くか。

 

 

 

 

 

 "劣神の裁き(クライン・トール)"。

 

 兎丼囚人採掘場内「幹部塔」。

 そこに落とし続ける雷雷雷。敵しかいないとわかってる場所の気楽さといったらないね。はい時々槍も降らせますよ。コールタールと火の粉もね。

 

 ……が、固い。

 流石に城程容易くは行かない。

 

「あいつだ! さっきから色んなモン降らせてやがんのは!!」

「撃て、撃てェ!」

 

 見つかるの早いな。

 ……練度は低くても見聞色使いはいそうだな。ブラキオサウルスは……見当たらないが。

 なんで居場所わかってる奴が毎回見つからないんだろう。そういう星の下に生まれて来たんだろうか。

 

「"獅子擬き"!」

「なんだ!? 狛犬!?」

「狛犬を降らせる男……? まさかアイツが将軍オロチを殺した……!」

「雷と狛犬を降らせる……そんな妖術があるのか!? そんなの、そんなの、まるで──」

「うるせェぞお前ら! この程度で狼狽えんな! "象の鼻息(エレファント・ハックション)"!!」

「はいそれ待ちでござい! 天板(テンプレート)!」

 

 看守長ババヌキ。その腹から生えた象。

 琵琶銃の方がよっぽど強い。

 どっから撃ってんのかわかってんだから──そこに板しかねー理由はないだろ、ってな。

 

 自爆しろ。

 

「どわぁぁ!? 看守長が爆発した!?」

「ソリティア様とダイフゴー様を呼べ! 侵入者だ!!」

「クイーン様はまだ遊郭から帰らないのか!?」

「クイーン様ァ! 早く帰ってきてくれ~!!」

 

 あー、そういう。

 入れ違い……か。一応。

 

 じゃあ、まあ。

 

天黒死(テンペスト)。天空海闊」

 

 壊滅させておきますか。

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