エルマルは……終わらねえっ! 作:ONE DICE TWENTY
「ウォロロロロ……冷静じゃねェか。秘策を潰されたってのに……」
「秘策が一個なワケないだろ。それ破られた時どーすんだよ」
「確かにそうだが……どうする気だ? 他の連中に退避を促してたよォだったが……ウォロロロロ、まさかお前一人で戦うとか言わねェよな」
「俺一人で戦うんだよ。元々そのつもりで来たのに、アイツらが勝手についてきたんだ」
「ウォロロロロロロ!! あァ……良い啖呵だ。いいぜ、何か準備や小細工が必要なら言え。それくらいは待ってやる」
「あ、マジ? そりゃありがたい。じゃあ一回離れても良いか。ずっとアンタの上に立ってるのは気が引ける」
「構わねぇよ」
砂岩ウォークでカイドウの身体の上から離れる。
俺が離れたことで、身体を起こしたカイドウ。獣型のまま……焔雲をつかんで浮上する。
鬼ヶ島に戻ろう、という気は無いらしい。
「っつーのはまァ嘘なんだ。降れよ、飛行能力者」
「ウォロロロロ!! まァそんなこったろうとは思ったぜ! そして……残念ながら、もうそれは効かねェ。おれは飛行してるわけじゃァないんでな」
「そんなことはないさ。──アンタが掴んでる焔雲を降らせりゃ、アンタも落ちるだろ?」
すか、と。
カイドウが掴もうとした焔雲の一つが、落ちる。たかだかその程度でバランスを崩すカイドウじゃないけれど、その全てが消えれば落ち……てくれない。
焔雲を再生成し、それを掴んだ。
「"
「また寒波か?」
「いや、みぞれ程度だよ。鈴後に比べりゃ涼しいくらいだろ?」
「ウォロロロロ……段々楽しみになって来た。次は何が飛び出す? この、その程度の曇り空から……何が降ってくる?」
「あー、そうだな。そういや今回言ってなかったわ。んんっ、じゃア」
落ちて来い。
「天気予報、天気予報。鬼ヶ島周辺海域の天気だ。今日は曇天暗雲が果て無く続き──けれど時々」
「なん──隕石!?」
「巨岩が降り注ぐでしょう。"兇状旅"」
カイドウの巨体に直撃していく小隕石群。
傷は……全然ついてない。どうなってんだマジで。
「──
「ぬおっ!?」
対処するなら
けれど、来たのは龍巻。マジの自然災害の方。
海流を巻き込むそのトルネードに、小隕石までもが巻き込まれて凶悪さが増している。
……けど。
「そりゃいいな! そりゃいいよカイドウ!」
「ウォロロロロ!! この光景を見て喜んだ奴はお前が初めてだ!」
「いや喜ぶだろ、だって──俺にとっちゃ、リベンジだ!!」
忘れもしない、セズサナ村を襲った
俺の準備不足で止められず、凄まじい破壊が齎され……結局能力を使わざるを得なくなったあの時のこと。
アレも竜巻だからなァ。
「
天空を展開する。
それは──発生した龍巻の上下に一組ずつ。
直後、龍巻が消滅した。
「オオオオ!?」
「
ばら撒く。
ゼファーがいないからな、あとは
「ウォロロロロロロ!! あるじゃねぇか! まだまだ、いくらでも!」
「そりゃあるさ、格下が最強倒しに来てんだぞ。どんだけ作戦持って来たと思ってやがる。もったいないから全部食らいやがれ!」
「あァ! 勿体ねェから全部出せ! そして、すべてが無駄だったと絶望させてやるよ!!」
砂岩の降り注ぐ俺の場所を中心に、カイドウの巨体が周回する。
いやァ、本当にでけーな。原作だと目測105mで、アニメだと243mだっけ? 明言されたわけじゃないから真偽は定かじゃないけど。
でも東京タワーより小さいって考えると……まだ短い方か。
「まだ思うように口が開かねェな……!」
「そらグッドニュース。少なくとも
「ウォロロロ! リサーチも欠かさねェか、流石だな若僧!!」
「
弓を引くように、天空を引き延ばす。
威力なんざ期待してない。俺の最大出力である
必要なのは威力じゃない。俺のやりたいことをやるための手段。ラニラニの実はそのための足掛けでしかない。
今必要なのは──時間稼ぎだ。
「ウォロロロロ!! お前の考えが読めるぞ! 時間稼ぎだろう!? 時間を稼いで、どうにかできるのか! お前の見つめる未来には!!」
「
「お前の勝ちが! 見えてんのかよ、若僧ォ!!」
極限まで引き延ばされ、研ぎ澄まされた天空。
それはカイドウの巨体を──通り抜ける。
「!?」
「見えてるに決まってんだろ、老害。そうじゃなきゃ雑魚がこんな場所に立つわけねーだろ」
アレはダメージを与えるものじゃない。まぁ一般人に打てば脱臼くらいはしてくれるかもしれないけど、カイドウにとってはだから何だレベルだろう。
ただあれは、通り抜けることで意味を為す天空。
バチ、と雷が弾ける。
「雷鳴八卦!!」
「──ッッ、いつの間に近づいたとか! 今更問いやしねぇけどさ! 覇王色の覇気ずりィんだよ! やめろ!!」
「ウォロロロロ!! ずりィのはてめェの専売特許ってか!? ──あア! 酒が美味ぇな! 強者でも、武士でもねェ奴を相手にして、こんなに酒が美味いのは久しぶりだ!!」
「クソが、俺ァ酒飲んでも酔えねえんだぞ!! それもずりィだろうが!!」
「あア!? そりゃ勿体ねえ人生だな!! 酒を飲んで酔えねェなら、なんのために生きてんだ!」
「──生きてるつもりなんかねェよ!!」
「ウォロロロロ!! そりゃあ、何の冗談だ……!」
誰が、だ。
誰が、だ。
誰が、だ。
「誰が──生きてるっつったよ、俺がよ! 呼吸もしねェ、気絶もできねェ、眠りもしねェ! そんな奴に、生きてる実感なんざあると思ってんのか!!」
「……そうか、おまえ」
「
「ウォロロロロ……哀れだな。憐れな奴だ! そうか、だがおまえは──あるいは友に! なれたかもしれねぇな!!」
覇王色と武装色──それに、あの黒い稲妻は。
俺みたいな雑魚に使う技じゃねーだろソレ!!
「
「
「
「
ここで使うつもりはなかったけど、仕方がない。
先程引き延ばした天空から吐き出すは、小隕石群を纏った龍巻。アレは消したわけじゃなく、飛ばしただけ。冬島近辺の極寒の空気を取り込んだ氷の龍巻を、その身でくらえ。
──俺も、その覇王色はモロに食らうから。
砂岩を登る。
「ウォロロロロ……
「さっきの話忘れたのかよ。俺は外傷以外じゃ死なねーんだよ。覇王色がなんだっつーの」
「そういや、さっきの威圧も、そよ風みてェに流してたな……年齢を戻す
「気絶もしねぇ、つってんだろ」
「
「……」
表情を、消す。
いや……取り繕ってたモンを捨てた、が正しいか。無事かどうかは知らないが、今の降三世引奈落でニコ・ロビンの耳や口も消えちまったしな。
ギロギロでも視られねェ距離にあるなら……もういい。
「病気に罹らねぇ、毒もガスも効かねぇ、呼吸もしねぇ。ウォロロロロ……そして、気絶もしなけりゃ焦りもしなけりゃ怯えもしなけりゃ怯みもしねぇ! 当然恐慌にも陥らねぇ! ウォロロロロ!! そりゃぁ、確かに! 生きてる実感なんざ、痛みしかねェだろうな!!」
「自殺趣味のアンタと同じにしないでくれる? 俺は別に戦わないでヘーワな場所でゆっくり暮らすでも全然良いんだよ」
「
嵐が来ている。
冷やして冷やして冷やしまくったんだ、この近辺。それでいて、ダイナ岩やエースを始めとした高熱源もあった。……気圧勾配。俺一人じゃ作り出せないもの。
「自分の終わりを! 見つけにきたんだろ!?」
「はは」
「この新時代で! おまえが海賊にならねェ理由はただ一つ! 要らねェからだ! 富も、栄誉も、名声も!
「ははは」
「それが自殺趣味じゃなくてなんだってんだ! あア!?」
「馬鹿言え、そんな大した奴じゃねーよ、俺は」
カイドウの口が、開く。
筋肉の痺れが切れたか。そう簡単に取れるモンじゃないんだけど、流石は、にしておくか。
「火龍大炬……!」
「"
「なんだァ、そりゃ。ここにきて……火の粉だと?」
「火達磨がいるのに、ってか? もう許してくれよ、俺がくだらねぇ行動取ることくらいよ。──大体意味があんだからさ」
「ウォロロロロ……そうだったな。あアすまねェ、余計な茶々を入れた」
「"
灼熱の龍に、ガラス片など意味を為さない。融けて終わりだ。
火の粉も同じ。こっちは吹き飛ばされて終わりだけど。
「なら──その、"意味のあるくだらねェこと"で──おれに勝ってみせろ、死にたがり!!」
「だから死にたがってねーよ。まァ死に違ったかもしれぇけどさ」
突進。だけど、火龍大炬状態での突進は、ただそれだけで致命傷だ。
それを、
「それもだ! さっきから時々見せちゃいたが、なんだそれは! 見聞色でもねぇのに、どうやって避けてる!」
「そりゃ大気の壁だよ。気付いてんだろ?」
「おれが気付かねぇとでも思ってんのか!? その壁とやらは火やら風やらに滅法弱いだろうが! それに、そいつはおまえが食らってからわかるモンだ。今みてぇにあらかじめ避けておく、なんてのはできねぇだろうがよ!!」
「あー。ドフラミンゴといいアンタといい、強いだけじゃなくて頭回るのどうにかなんねーの? どっちかにしてくれよ。どっちも持ってねーやつが惨めになるだろ」
それはさ。
俺が雷を避けた事とか、冥王の蹴りを寸止めだって理解したこととか、サイレンサー付きの銃弾を避けた事とかさぁ。
そのこと言ってんの?
「そういや言ってなかったっけ、まだ」
「何がだ」
「俺、噓吐きなんだよ」
「へぇ。じゃあなんだ、見聞色は使えるのか?」
「いや、そっちじゃなくて」
チート能力が、「それだけ」って方。
なぁんて言葉は口に出さない。
「天網恢恢」
「またそれか……ウォロロロロ……品切れか、若僧」
「いやー、まぁとりあえず充分かな、と思ってさ。──速度は"重さ"。音の速さで心臓貫かれた事あるかよ、カイドウ」
「グ……ォォオォオオオオオ!?」
火龍が身体をくねらせて暴れる。のたうち回る。
その際に漏れ出でる炎を全て天網恢恢が奪い取っていく。
一寸法師さ。
貫通できるとは思ってない。ただ、ダメージにはなるだろ。
「特別な刀じゃあない。鈴後で死んだ、名も遺されてねェ侍の刀さ。業物でも位列持ちでもねぇ、ちょっと試し切りした感じ、言っちゃぁ悪いがなまくら刀だった。──それが心臓にぶっ刺さってる気分はどうだい、カイドウ」
左心房の中から刀を降らせたんだ。
しかも今までの俺の「降るはずのないもの」と違って、現物。これが消えることはない。
「はぁ……ハァ……あア……痛ェな……内臓への攻撃は……効くさ、昔からそうだ……!」
「マジで効いてたらそこまで喋れねえはずなんだけどな。まぁ、息を荒らげさせただけ充分か」
「ウォロロロロ……充分か? 本当に充分だと思ってんのか……?」
「思ってるワケねーじゃん。
「ウ……!」
「アンタの身体に流れる血液。そこにいる赤血球の一つ一つから漏れ出る天空さ。痛いだろうよ、それくらいは痛がってくれ生物として」
「──あア! 痛ェから──反撃だ。
溜めとか無しかよ。ぶっぱで出て良い技じゃねーだろ。
が、今回はこっちにも準備期間があったんでな。
「
「こ……れは……! またか!」
「届かなきゃ攻撃なんて意味は」
「
「ッ──!!」
引き延ばし、圧縮に圧縮した天空の中。ドフィの神誅殺でさえほぼ止まったこの空間の中を──突き抜けてくる熱風。
避け切れないな。肉の削げ落ちてる腕は……要らないか。
「避けねェか! 覚悟も! 決まり切ってる!!」
「意味ねーことはしねーんだよ俺は。コントロールダイアルは除く」
赤、っつーか白が、俺の腕を──。
焼かなかった。
「──浜色の髪の人! 大丈夫かい!?」
「あぁ、準備は?」
「ばっちりだ! きみの言う通りのものを揃えて来たよ!!」
助け出されたからだ。ヤマト。
それだけじゃない、先ほど退去を促したやつら、全員。
足元には──どっから延長してきたのか知らんが、松だの桜だのの、モッサモサの足場。限界までがんばったんだろうなぁ。ワノ国本島から伸びてきてんじゃんこれ。
「すごいよ、本当にすごい! 浜色の髪の人……きみはずっと父の相手をして、死ななかった! 本当に足止めをし続けた!」
「ハッハッハ、よせやい。乳臭ェガキに褒められてもちょっとしか嬉しくねーよ」
「いや、きみの方が圧倒的に年下だと思うけど……?」
23歳だっけ。
まだガキもガキだろ。
「……しっかし、信用されてんだかないんだか」
「きみの暗号のことかい?」
「暗号なんて大したモンじゃねーけどよ。なんか言ってたか、おロビは」
「ああ! きみが頼む、なんて言葉を使うわけがないから、絶対裏があるって言ってた!」
そうさ。
俺がニコ・ロビンに「頼むよ」なんて言うはずがない。アレも嘘だ。
別に見抜かれなけりゃそれはそれで良かったけど、見抜いてくれたんなら見抜いてくれたでどうにでもなるようにしておいた。
折角戦力がいるのに、わざわざそれを退去させる意味はないし、それに従う奴らでもねーだろうからな。
俺があの時言ったのは、「フロアドーム屋上にいる奴らに逃走を促してくれ。フロアドーム内部にエースの仲間がいるなら、そっちにも」。
あそこにいる連中を思えば馬鹿言えが過ぎるし、ニコ・ロビンの言葉に素直に頷く奴らでもない。ゼファーに至っては生徒が現場にいるわけだしな。
だから、準備をしておいたんだ。
フロアドーム内に──しこたま、指示書を貼っておいた。いつそんな時間があった、って。そんなの俺がぐったりしてた時に決まってる。自分の能力の計算と他人の移動くらいでタスクが埋まるかよ。死ぬほど仕込みしてたんだよ俺は。
……赤鞘達にはもうフッツーに「頼むよ」って言ったのは内緒な。
「ウォロロロロ……!! なんだァ、尻尾巻いて逃げたものとばかり思ってたぜ!」
「まぁ、作戦考える頭無いとか言っといて、あんだけ詳細な作戦と指示書置いて行かれたらなぁ、読み込むのに多少時間はかかるってもんで」
「ふっふっふ! アラバスタの稚児は馬鹿じゃねェ。だが、その様子だと、お前もそれを学んだらしいな、カイドウ!」
「あア……あんなにちぐはぐな奴は初めてだが、もう嫌いじゃねェ。ウォロロロロ……小細工やくだらねぇことが、あいつの正々堂々だってわかったからな……もう馬鹿にしたりしねェよ」
随分と高評価なことで。
「すまねえ、ヤマト。ここでいい」
「もう少し離れたほうが良いんじゃ……」
「いや。これ以上はなれると、威力が落ちる。俺を気にしてくれるんなら、あいつらと一緒に前に立ってガンガンダメージ入れてくれ」
「……わかった! じゃあこれ、君のスマシ!」
「ああ、ありがとさん」
ふぅ……と。
呼吸もしてねぇのに、息を吐いてみる。深呼吸したって何の効果もないけど、肺は動かせるからな。
景気づけ、って奴だ。
そして、スマシ……スマートタニシを起動する。
電伝虫使うの久しぶりだな。アラバスタで運び屋やってた時以来か。エルマルからの荷物だけじゃなくて、他の村と他の村への便も欲しい、って要望が来て、ペルさんが導入してくれたんだよな。
懐かしい話だ。まだ一年も経ってねぇってのになー。
「今から俺は、小細工無しの最強技を使う。その準備を進める。──時間稼ぎは、どんくらいできる?」
耳を塞ぐ。
それを貫く、もうごちゃごちゃしてて誰が何言ったかわからねー言葉。
「オゥケィ、回避や防御は考えんな。全部俺がやってやる。全員逃がしてやる。足がねぇなら言え。どこにだって飛ばしてやる。──天空は俺の領土だ。俺の領域だ。なぁ、いねェ奴らにゃ申し訳ねーがよ」
錦えもん、傅ジロー、アシュラ童子、河松、菊の丞。
そこにエースとゼファーとヤマトで、八人。
まっこと遺憾ながら……俺を含めて、九人だ。
「予言たァちっとは違うかもしれねーが、赤鞘九人男、名乗らせてもらおうじゃねェか」
『応!!』
「ウォロロロロ……!! いいじゃねェか、そりゃ! 最高だ……来い、来い、来い!」
「ああ、まずは一発目行かせてもらうよ!!
カイドウの体内にある
やってくれ、新世界の嬰児たちよ。……ゼファーは流石に嬰児じゃないかもだけど。
暗雲の上にまで行って、ソレを開始する。
天空海闊によって広げた能力の効果範囲。その全てにある気候、天候。
そして、エースやヤマトにお願いした、天網恢恢に向けた最大限の攻撃の数々。そして鬼ヶ島地下の火薬や、フロアドーム内部の武器類。残りのダイナ岩全部。
さらには活火山の火口や自然発生の雷、他、
その、絡めとった「天空」を、束ねていく。
「
細く。小さく。
天空とは世界だ。六道のうちの最上部。天獄。天国。まァなんでもいい。
それを細く、鋭く──棒状に。
否、槍の形に整えていく。
眼下……つーか雲の下では、そりゃあもう大決戦が繰り広げられている。今の俺、役割としてはトラ男だから。vsガチャガチャの時の。ワープと内臓への攻撃と、束ね。
「……完成だ。今から、降らせるんで──良い感じに誘導してくれ」
『そこ適当なのかい!? これだけ用意して!?』
「俺に何期待してんのかしらねーけどな、ヤマト。俺はどこまで行っても適当人間なんだよ。テキテキの実食ってるからな」
『イイ感じにすりゃいいんだな? 任せろ!』
『イイ感じだなァ? やってやる!』
『イイ感じでござるな!? 拙者ら、好きに動くが構わぬか!』
『イイ感じって言ってんだ、それで良いだろう!』
『イイ感じ……って、みんなそれで伝わるのか……それがわからないとおでんになれないなら、ぼくもイイ感じにやるよ!!』
おう、カオスカオス。
そもそも「事細かな指示書」つっても具体的にどうしろああしろを書いたわけじゃない。一人一人に対するやっておいて欲しい事や、vsカイドウで気を付けること、やってくること、アイツの技とかその効果範囲とかを記しただけ。
そんな「これだけ用意して」なんて言われるほどのことじゃねーんだわさ。
さて、んじゃ小細工無しの最強だ。俺の力じゃねーけどな。
今も──天空の中で、エースの炎やヤマトの氷、ダイナ岩の爆発を始めとした天変地異が渦巻いているソレ。
「準備完了だ」
落とす。
降らせる。投げる力なんか無いんでな、自由落下だ。
槍は、暗雲をぶっ飛ばして、海上で燃え盛る龍目掛けて一直線に落ちる。
気付かれてはいる。その上で、エースやゼファーといった火力組がカイドウの頭をぶん殴って
槍が、カイドウを突き刺せるように。
「ゥゥウウォロロロロ!!! 狙いが分かってんだ! そう易々と食らうわけねェだろうが!! 昇龍・火焔八卦ェ!!」
覇気を纏う炎の龍が周囲、全員を襲う。
その全てを逃がしながら、一人だけNOを示したやつを残す。
「エース!?」
「海賊ゥ、何をする気だ!」
「へへへ……相手がどんなに強力でも、火は、火だろ!?」
そうさ。
もうここで、カイドウを倒しちまったんなら。
お前はグラララの傘下に入らない可能性まである。
だったら──やってやれよ。
燃えるウツボくらい、なんだってんだ。
「
「ウオオオオオオオオ!!」
奇しくも──その姿は、同一。
「鬼火!!」
炎の龍と炎の龍がぶつかり合い。
「ァァアアアッ、覇気が、足りてねェんだよ、若僧が!!!」
押し返される。
その行動で、槍の落下地点からカイドウが外れた。
「外れた!」
「外れても」
「外れても良いとか思ってんじゃねェだろうなァ! 爆炎程度でおれを殺せると思って──」
「思ってねーっつってんだろうがよ! 俺はアンタを最強だと思ってんだ、一分一秒一厘たりとも! なめた覚えは無い! ──散々待たせて悪かった! 来いよ、
来る。
飛んで、くる。超高所にあるここに──俺に言葉を伝えようとしていた海王類が。
「海王類!?」
「な……なんでござるか!? トビウオ!?」
ずっと来ようとしていたのはわかっていた。
だから止めてた。
まだだ、まだだ、ってな。
話せるわけじゃない。聞こえるわけでもない。
ただ、俺に伝えたいことがあるってことは、俺の意思は伝わってんだろって勝手に思ってた。
「ウオオオオオオオオ!?」
押される。ワノ国を大きく飛び越えた海王類の突進に、炎の龍が押されて、押されて。
「
「!!」
突き刺さる。
カイドウの、その首に。覇王色と武装色の稲妻が迸るけれど、その全てを無視して突き刺さっていく天鋲の槍。
之即ち、天魔反戈なり!
そのまま──ワノ国の最大水深まで、天鋲の槍が降り落ちる。
「う……海に穴が開いた」
「どうなっているのでござるか、アレ……」
「……ダイナ岩の爆発が、抑えられてやがる」
ま。
「簡単に言うと、ピン留めしたんだわ」
「ピン留め……?」
炎を使ってこっちに飛んでくるエースにも聞こえる声で、それを話す。
「カイドウを殺すのは、まー無理かもしれん。が、事実上は死んだ。本当ならモドモドで消滅させたかったけど、こうした以上は無理だな」
「……ピン留め、って……どういうことだい?」
「言葉通りの意味だよ。お前らにゃ見えないかもしれんが、この天空の長さは果てしなくてね。上は天空、下は海底のプレートまでだ。その上で死ぬほど強固。だから、カイドウをワノ国の水底にピン留めしておける」
「……だがレコダ。お前の天空とやらは、カイドウの
「されたけど、壊れちゃないよ。あの時
アレも嘘だ。
壊風程度で壊れる、というパフォーマンス。
「このピンからカイドウが抜けるには、自分で自分の首を引き千切るか、人型、人獣型に戻って自分の首を引き千切るかしかない。ま、戻ったらその前に心臓の中の刀がそれを突き破るけど。ってわけで、あとは寿命で死ぬのを待つしかないかな」
「そうか……」
「このでっけー穴はまァそういうもんだと思ってくれ。危険性はないよ。ただ中でグランリブートレベルの破壊が起きてるだけで、安全だ」
「大破局噴火……レコダ、お前……」
「そんなワケだけど、フロアドームは結局どうなったん? 飛び六砲とかいたでしょ?」
「あァ、全員倒して来た。海楼石の錠もつけて、遊撃隊の軍艦に運んである。確かに強かったが、オレの生徒にも遠く及ばん奴らだったからなァ」
「そりゃよかった。……んじゃ」
一件落着、ってことで。
……ま、もうちょいは、あるけど。
その後。
カイドウ討伐……っていうか封印の報せは、瞬く間にワノ国じゅうに広がった。
また、光月日和、光月モモの助はニコ・ロビンが保護していたようで、一人として欠けることなく戻って来た赤鞘五人男と再会。これから海外に散っている
夕立ちカン十郎は──まぁ、死んでた。そこにどんな悶着があったのかは知らない。けれど、誰もそのことを口にしないんだ。そういうことなんだろう。
ちなみに俺はまた入院。失血死しないからって止血もせずにいたのが刀圭家にはとんでもねーことに映ったらしく、それはもうカンカンに怒られた。反省してまーす。
既にエースは去った。まだまだおれは強くなれる、らしい。
既にゼファー達も去った。お前が海軍に来るのを待っているぞ、らしい。海軍やめてなくて、今回のは独断専行だったから、その罪で解雇される可能性はあるらしいけど。まぁダイナ岩使い切っちゃったからグランリブートは起きないだろう。
ヤマトはおでんの航海日誌を持って赤鞘五人男+光月家と共に居る。
つーわけで、俺と一緒にいるのは。
「……」
「まだ怒ってんの? おロビ」
「……」
「いやアンタを思ってのことだったんだぜ? アンタをゼファーに預けようとしたのは」
「……」
その話をゼファーに言った瞬間から、ずっとこんな感じだ。
いやぁ、妙案だと思ったんだけどなぁ。
「……怒っているわけでは、ないわ」
「ああそう。じゃあ何?」
「……私は、結局……何の力にもなれなかった。……その上で、あなたは私を彼に押し付けようとした。不要、なのでしょう」
「……」
んー。
そっか、そう映るのか。そりゃ心象悪いわな。
……どうするべきだろうなー、これ。
確かに不要だ。俺はこの先に行くつもりが無い。一応鬼ヶ島にあるロードポーネグリフのことも伝えたんだけど、一切見に行く様子を見せないニコ・ロビンに俺も困惑。
お前ソレ目的で俺についてきたんじゃねーの? って。
んんんー。
思春期少女のメンケア。……どうしよう、美味いモン食べに行くとか、綺麗なトコ連れてくとかしか思い浮かばねえ。あと相談乗ってやるとか……ただこれが他の奴の相談だったら聞くだけくらいいくらでもするんだけど、悩みの種が俺なのがな。
……ンンンン。
「これから俺は、白ひげのトコ行って……ある男を殺す。ついてくる気ないなら、ここに永住するといい。ここはこれから良い国になるからさ。ああ後はまぁスカイピアでもいいけど」
「……不要なら、はっきりと」
「うん、不要」
「……っ」
あ、去ってった。
……まー、これくらい突き放すのも必要だろう。
そんで……この後誰を仮宿にするか知らんけどさ。
この世界の神様が優しかったら、麦わらの一味と引き合わせてくれるだろうよ。
「ところでそこでほっかむり被ってる八人は、バレないってマジで思ってんの?」
「な!? ほっかむりを被っていて……拙者たちの正体がわかったでござるか!?」
「わかんねーワノ国の住民がおかしいんだよ。……で、何? 痴情の縺れでゴザルなぁ、とか思ってたりする?」
「読心術!?」
「ちげーよ」
……まだ、光月トキの謎は解けてない。
なぜ俺が来る時を選んだのか。なぜルフィを選ばなかったのか。
俺がやったのは結局「時が解決してくれる」っつー最悪な手段だ。それを。
……。
「ヤマト」
「な、なんだい?」
「浜色の髪の人、って。おでんの航海日誌に書かれてたんだよな」
「あ、ああ」
「詳しく覚えてるか?」
「勿論だ! 曰く──"時を超えて、浜色の髪のお方が現るる。人魚の姫の予言に、唯一燦然と輝く浜色の髪と瞳の男。砂と海の狭間の男こそ、この世を捻じ曲げる現人神"と」
人魚の予言。
砂と海の狭間の男。
……。
そういや、そうか。
魚人島な。行かなきゃ、か。
「ありがとさん。……で、そっちのは?」
「あ、モモの助くん! 何か言いたいことがあるなら、僕が抱き上げてあげるよ!」
「ふ、不要だ! 拙者の名は光月モモの助! ワノ国の将軍になる男でござる!!」
「そうかい。で、おでんのせがれが、俺に何の用だ」
「……前から気になっていたでござるが、貴殿、おでん様のことを妙に親し気に呼ぶでござ、尻!?」
「日和様、下品ですぞ!」
「だが今のは錦えもんも悪い。モモの助様の言葉の最中に言葉を挟むなど……」
このコント集団一回コント始めると長いんだよな。
「言うこと無いなら帰った帰った。こちとら怪我人だぞ」
「……ワノ国の開国は、まだしない」
「ん」
「拙者が立派な男として成長するために用意された四年間。……実際に来るのは、五年後、であったか」
「何の話?」
「来るのであろう、この国に……解放のドラムを打ち鳴らす、ジョイボーイが!」
……。
あー、もうわかんねー。
俺は転生者らしく原作知識でアド取って初見殺しするマンだぞ。これ以上原作に無いことしないでくれ、もう知らんもう知らん!
「それを俺に言う意味は」
「……だから、頼む。そのために……その、ために」
なんだ? 何をこんなに言い淀んで……っつーか泣いてね? え? 俺ぶっきらぼう過ぎた?
あ、あー。8歳か。いやごめんて。ちょっと圧あるよな俺の口調。ごめんごめん。泣かすつもりは。
「そのために、
「──」
「も……モモの助くん?」
ははぁ。
そういう話ね。超速理解レコダ君。
「何を言っているんだ、彼はワノ国の恩人じゃないか!」
「わかっておる……そんなことは、拙者が一番……! だが、だが!」
「俺がいると目覚められねェんだろ、ジョイボーイが」
「!!」
なーるほど。
そういう辻褄合わせになんのね。
そして──どういうワケか知らんが、ビビ王女と会わなくても、どうなっても、麦わらの一味はワノ国に辿り着くのは確定ってワケだ。
そりゃ。
そりゃあ、良いな!
「よーし、いいぞ。すぐ出てってやる。んじゃまーまず点滴を抜きまして」
「抜くんじゃないよアホンダラァ!!」
ぶっ叩かれた。お匙さんから。
「い、今すぐに出て行く必要はない! 恩人であることも理解している! だから、怪我の療養が終わり次第で……」
「わかったわかった、そんな必死にならなくても出てくよ。まだやらなきゃいけねーことあるし」
「も……もう一つ頼みがあるのだ!」
「えー」
「えー。ではござらん! 聞いてくれ、レコダ殿!!」
なんだよ大人組まで焦った顔して。
「おロビ殿……ロビン殿も連れて行ってもらわねばならぬのだ! 彼女がいてもダメだとモモの助様は聞いたという!」
「……お前らの創作話じゃねーんだとしたら、誰に聞いたんだよ」
「信じられぬと思うが、ゾウでござる。巨大な! モモの助様はその象から」
「ああズニーシャがそう言ったの? んじゃそうなんだろうな。わかったよ。なんとかしてニコ・ロビンも連れていく。機嫌悪かったら謝り倒してでもな」
「軽ッッ!?」
ズニーシャが言ったならそうだわ。
今回海王類にも協力してもらったからなー。そこが繋がってるか知らんけど、貸し借りはすぐに解消するに限る。
「話は終わったかい? だったら散った散った! こんなね、軽い調子で話してるけど、この子重傷も重傷なんだよ!」
「いえーい重傷患者ー」
「アンタはもっと自覚を持てアホンダラァ!!」
ぶっ叩かれた。
この人が一番患者に害ある気がします。
……しかし、んじゃどうすっかな。
何で機嫌取ればいいんだろうなぁ、あの年頃の女の子って。
小細工で……どうにかなるかなァ。