エルマルは……終わらねえっ!   作:ONE DICE TWENTY

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第17話 離別! アラバスタの殺人犯レコダ

 西の海(サウスブルー)とレッドラインを横断し、シャボンディ諸島へと戻ってくる。

 ドフィのどんな計らいがあったのかは知らないけど、新聞を見る限り俺の懸賞金はちょっとしか上がっていなかった。これをラッキーと取るか、ドフィと政府との間で何か取引があったとみるべきか……。

 ちなみに1番GRのヒューマンショップは再建されていたのでまた壊しておいた。ドフィがオーナーじゃなくても立地良いから他の権力者が建てたんだろうね。つーか天竜人御用達だから無い金集めて、みたいな可能性もあるか。

 

 で。

 

「いらっしゃい……あら、レコダくんじゃない」

「また来たんだけどまた客じゃなくてすまん。レイリーおる?」

「レイさんなら、今日の夕方には帰ってくるはずだけど……あの人が時間を定めて、その時間で帰ってきたことって、一度も無いのよね」

「ちなみにシャクヤク's見聞色で探せたりは」

「しないわ」

 

 さいでっか。

 

 ほんなま、どうせまひょ。

 

 ……信頼度の面で、冥王以外のコーティング屋には頼みたくないんだよね。

 

「……それよりその樽はなに?」

「え、樽だけど」

「なぜ樽なんかを持ち歩いているのか聞いているのだけど」

「船が無いから」

「?」

 

 まるで意味が分からないものを見た、という目をするシャクヤク。

 

「ふふふ。もしやとは思うけれど……それにコーティングをして、魚人島へ行こう、なんてことは」

「ああそう、その通り」

「自殺志願者なの?」

 

 何を言うか。

 樽は凄いんだぞ。遭難したルフィを海水から守り切り、アルビダ海賊団のもとにまで届けた実績がある。

 

 これを使えば俺だって魚人島へいけるさ。

 

「推進力は?」

「海流」

「海王類や岩礁にぶつかる、とは考えないの?」

「まぁ大丈夫っしょ」

「仮に、そのまま浮いてきてしまって、シャボンディ諸島から遠く離れた所に出たら?」

「そん時は飛んでまた帰ってくる」

 

 どうだこの理論武装。

 完璧だろ。

 

「……ダメだった。やっぱりシャボンディ諸島に造船所はないし、販売所も無いわ」

「ロビンちゃん。……なるほど、考えなしというわけでは」

「いいえ。この人は本気で樽で行こうとしてる。私にはそれがあまりにも無謀に見えたから、船を探しに行っただけ」

「この際だからはっきり言うけれど、ロビンちゃん、ついていく人を間違えていると思うわ」

 

 いや、ここに来ていきなり馬鹿になったとかではないんですよ。

 ただほら、この前海王類と意思疎通できたじゃん。海王類の声が聞こえたわけじゃなかったとはいえ。

 

 だから俺とニコ・ロビンが樽の中にいても、食わずに、なんなら魚人島まで送ってってくれんじゃねーかなと思った次第ですよ。

 ちなみに酸素問題はラニラニの実大活躍なので問題なし。

 

 船を持たない俺達にとってはかなり良い案だと思ってんだけど……そんなに無理かね、これ。

 

「ウォーターセブンで船を買ってくるくらい、レコダちゃんたちならすぐでしょう?」

「それは嫌でェーす」

「どうして?」

「どうしても何も、エニエスロビーが近すぎるのと、あそこ死ぬほどサイファーポールいるから嫌いなんだよ」

「あら、そうなの。怖いわね」

 

 後、今行くべきじゃない、というのもあるけど。

 

 えー。

 ……マッズいな、マジで魚人島行く手立てないぞ、これ。

 

 あー……まぁ、マリージョア直下一万メートルにあるって考えれば回天土(エクステンド)で行けなくはないけど、超博打。……でも、ないか?

 

 俺の天空は海中には開かない。悪魔の実の能力だから。

 それを考えると、開くまでやり続けて、開いたらアタリ……でいけるな。

 

 そこが魚人島じゃないシャボンの中だった場合が最悪だけど。

 いや、マリージョアに行かなくても、シャボンディ諸島から斜め下に、ピタゴラスの定理でこう……。

 

 やる価値ありけり、か。

 樽よりはいい気がしてきた。

 

「何か思いついた、という顔ね」

「ああ。んじゃ俺達行くわ」

「レイさんは待たなくていいの?」

「……勘だけど、帰ってくるの半年後とかな気がするから」

「ふふ、多分正解ね、それ」

 

 待ってられるかいってんだ。

 

 樽は……。

 でもまぁ、一応持っていくか。

 

 

 一応ニコ・ロビンに後方警戒を任せ、魚人島のある方向に向かって天空を開き続ける。

 暖簾に腕押しというか、一生404に辿り着いているような虚しさを覚えること数時間。

 

 十数時間。

 数十時間。

 

 

 四日目くらいで、ようやく見つけた。ああニコ・ロビンは食事とか摂ってるからヘーキ。俺いらないから無限試行できるってだけで。

 

「それで……魚人島では、誰を殺すの?」

「なぜ殺人前提」

「自分の過去を省みれば、わかると思うけれど」

「否定はしない。──行くぞ」

 

 行く。

 

 

 

 

 来た。

 

 ──これは、確かに絶景だ。

 陽樹イヴによってもたらされる太陽光。酸素も潤沢で、だというのに頭上には深海。時折海王類が齎す翳りが見える。

 

 単純に綺麗。けどここは……原作じゃ描写されてない地域かな。誰もいねーや。

 

「きれいな場所ね」

「空も海も綺麗でずりーなー。地上は汚れまみれだ」

「……」

「冗談だよ冗談。半分な」

 

 海賊さえいなけりゃな、とか思うけど、人攫いが消えるわけでもねーか。

 

「それで、誰を殺すの?」

「……もう少し無いの? 余韻とか」

「失くさせたのはアナタ。それに……誰を殺すのかによっては」

「アンタが止める、って? いつからそんな正義側になったんだよ」

 

 しかし、誰もいねーはいねーで面倒だな。

 流石に土地勘が働かん。誰かいねーでやんすか。

 

「呼んだ?」

「ん?」

 

 ……人魚だ。

 ……おお、初人魚。

 

「うん、初めまして!」

「お、おう。初めまして。……呼んだ、ってのは? 誰が?」

「誰が……って、あなたが」

 

 ケイミーじゃない。勿論パッパグでもない。

 知らない人魚。それ……わぁ、いっぱい集まって来てる。

 

「呼んだ?」

「あなたね?」

「あなたが呼んだの?」

 

 ふむ。

 

 もしよかったら、魚人街の方に案内してくれたりしない?

 

「魚人街? あそこは危険だから、やめておいた方が良いわ」

「あなた達人間でしょう? 外のお話聞かせて?」

「海色の瞳に、海底の砂みたいな髪の男の子! それと、深海の青色とよく似た髪と瞳の女の子! ねえねえ、二人は恋人なの?」

「いえ、違うけれど……」

 

 ネプチューンかフカボシに取り次いだりできない?

 流石に一国民じゃ無理?

 

「王様のお客さん? それならどうしてここにいるの?」

「フカボシ様への取り次ぎは……ごめんなさい、私達には難しいわ」

 

 だよなぁ。いや、無理言ってすまん。

 ただ、地図……海図? この辺のマップみてーなの貰えたりしない? サンゴに軽く描いてくれる、でもいいんだけど。

 

「あ、私、家に余りがあるから、取ってきてあげる!

「私も! ……って、行っちゃった。あの子泳ぐの早いから、追いつけないわね」

「それにしても、不思議な声……」

「ね! さざ波と水泡を足して二で割ったみたいな声で、面白い!」

 

 それ褒めてんのか貶されてんのかわかんねーな。

 

「概ね!」

 

 あらそう。

 

「そういうことだ、ニコ・ロビン」

「いえ……何もわからないのだけれど」

「うん、俺もよくはわかってないんだけど、どーやら俺の意思は人魚や海王類に通じるらしい。あっちからの声は聞こえねーんだけどな」

「……それで、ワノ国に行く前」

「多分」

 

 いやしかし、この能力は何の役に立つのか。

 魚と会話できる……わけでもなく、海王類と会話できるわけでもなく。

 

 一方的に言葉を伝えるだけって、悲しくね。バッドコミュニケーション過ぎない?

 

「それでも、私達はあなたに声を届けられるわ」

「でも、聞こえない声もあるのよね。何かに遮られているような」

 

 何が聞こえて何が聞こえないのかは俺側で把握できたから大丈夫。これからは聞こえるモンは聞こえるモンとして考えるよ。

 

「ええ、それが良いと思うわ」

「……もしかしてあなたって、魚なの?」

「おっと確かに状況証拠だけ見るとそうだな」

 

 魚人や人魚の、魚の意思がわかる特性。

 俺の意思がわかるということは、俺は魚……あり得なくは……。

 

 あるわ。

 

 あ、そうだ。だったらマダム・シャーリーのとこに案内してほしいかも。地図取りに行ってくれた子が帰ってきたら、連れてってくんない?

 

「マダム・シャーリーなら、ええ、任せて!」

「私、マーメイドカフェで昔ダンサーやってたの!」

「え、そうだったの? すごい!」

「今私カフェの店員だけど……昔っていつのこと?」

「三年前かな?」

「ああ、それなら入れ違いかぁ」

 

 雑談である。

 超・雑談である。

 

 危機感無さすぎる。一応人間ですよ僕ら。

 

「地図、取って来た!」

「おー、ありがとさん。そんで、今からみんなでマーメイドカフェ行くことになったんだが」

「任せて、案内してあげる! ……けど、そっちの声より、最初の声の方が面白くて好き!」

 

 ああそうかい。

 じゃあこっちで喋るよ。

 

 

 

 

 道中、そこそこの雑談をしながら幾つかの水域を渡って、人魚の入り江へと辿り着いた。

 いやまぁ思ったよりそこかしこにいる人魚だけど、肌の露出より気になるモンがあってなーんも目に入らなかったわ。

 

 な。

 

 フツーに見えてんのな、方舟ノア。めっちゃ遠いけど。

 

「マダム・シャーリー! お客さんよ!」

「お客さん? カフェのかい?」

「あ……っと、そうなの?」

 

 NOだ。

 初めまして、マダム・シャーリー。

 

「っ……。成程。今日がその日なの。……ごめんなさい、あなたたち。私はこのコと話があるから」

「ええ、カフェの方にいるわ!」

「またね、海と砂の男の子! 深海の女の子も!」

 

 これ楽だな。

 ヤマトに指摘された全欠点を補える。

 

「これは……私も席を外した方が良いのかしら」

「いいえ、構わない。……浜色の髪の()()()()。あなたは今、どこまで把握しているの?」

「今の一言で大体把握した」

「そう。……私の予言、聞いていく?」

「いや、いいよ。ネプチューンにはなんか伝えてある?」

「いいえ。今日のことを思えば……それは憂いでしかないから」

 

 なら、頼みがあるんだけどさ。

 コイツ、一旦預かっといてくんない?

 

「……それがあなたの望みなら」

「一つ、聞いてもいいかしら、マダム・シャーリー」

「ええ。なに?」

「なぜ、彼のことをお爺さん、と言ったの? 彼はまだ19歳よ」

 

 ああそうか、一年経ったからな。

 誕生日とか忘れてたわ。

 

「あなたがまだ教えてもらっていないのなら、私から喋ることはない」

「……そう」

「そして……」

 

 マダム・シャーリーが、ニコ・ロビンに手招きをする。

 何の油断も無く。

 何の警戒も無く、ニコ・ロビンは彼女に近づいて──ぐったりした。

 

「……これは」

「安心して。ただの、海水入りのシャボンだから。魚人街への行き方は、頭に入っている?」

「ああ。親切な子が地図をくれたんでね」

「そう」

 

 ちなみにバブリーサンゴくれたりはしない?

 

「ふふ、案外がめついのね。ええ、あげる」

 

 thx.

 

「?」

 

 ……スラングは通じないのな。

 

 

 

 

 して、やってきました魚人街。

 それはもう廃れに廃れた街並みを、シャボンの一つで進む。

 

 正直な話、陸上でのvs魚人は消化試合も良い所だ。

 問題はこの水中戦で、俺は能力以外の遠隔攻撃を持ち合わせていない。

 

 だから──。

 

 避ける。

 避ける避ける避ける。

 

 突進してくる闘魚みたいな魚人の群れを、全部避ける。

 

「ち……見聞色か」

 

 違うよ。

 

「こいつ……脳内に直接!?」

 

 おお、なんてノリの良い魚人だ。

 殺すのが勿体ない。

 

「シャボンだ! シャボンさえ割りゃこいつらは何もできねえ!」

「魚人空手──槍波!!」

 

 そんな大技の使い手がいんの!?

 って驚いたけど、流石にジンベエ程の威力は出ないっぽい。簡単に回避できた。

 

 そして──ありがたいことに、その海流によって水泡が幾つも出現する。

 

回天土(エクステンド)

 

 で1万メートル上から大気を大量に呼び込み、水泡を一気に巨大化させる。シャボンだと割れるけど、水泡はマジでただの水泡なんでね。

 こっからは俺がこの空気穴を解かない限り、永遠に天空の溢れ出る場所となる。

 

 なお、この入り口に海水を付けると崩れるので要注意。

 ただ──ンなこと気にならないくらいの範囲を、大気で満たしてやれば。

 

「うっ!?」

「げほっ……いきなり空気!?」

 

 こいつらがどーやって瞬時に肺と鰓を切り替えてんのかは知らないけど、やっぱり突然空気に晒される、ってのは驚きが勝るんだな。

 一部の奴らは鰓から海水を吐いて咳き込んでいる。……人間が急に水飲んで咳き込む感じ?

 

「──マズイ、能力者だった! しかも……空気を扱う!」

「逃げろ、海に逃げりゃとりあえずは追って、ぅ……」

 

 逃がすかよい。

 

天明朝(ラニアケア)超銀牙弾(スーパークラスター)!!」

 

 最大威力で短期決戦だ。

 ちなみにvsカイドウで使った魔界天(マカニラニ)寒砂嵐(さむサーラ)は使えない。だってあれカイドウの龍巻や壊風ありきだし。ワノ国でカイドウに使った技、割合俺の力ってよりカイドウ本人かあの場にいた奴らの力で、孤立無援状態で使えるものではなかったりする。

 

 とにかく。

 魚人街を満たした大気。そこから降り注ぐ、天空の柱。

 それは半ばゴーストタウンと化していた魚人街の悉くを壊し尽くし──。

 

 

 

 

 まぁ、それで終了である。E・Sの無いホーディ・ジョーンズなどただ強いだけの魚人である。

 カイドウより弱い! 完!! 天黒死(テンペスト)強い! 完!!

 

 ──とはいえ、「未だ何もしていない」「無法者なだけ」のホーディ・ジョーンズ含む魚人街のゴロツキ共を殺せば、晴れて俺は魚人島でもお尋ね者になる。

 グラララのナワバリでの、お尋ね者に。

 

 直近であんだけ喧嘩売ってんだ、エースがどこまで喋ったかは知らんが、エースの訴えがあっても息子を傷つけられたことへの怒りを抑える白ひげじゃないだろう。

 そして、マダム・シャーリーから直々にネプチューン王へと進言があるはずだ。

 アラバスタの殺人犯をお尋ね者にするための言葉が。

 

 ──それは、俺がアラバスタを出る時、コブラ王へ言った言葉と同じ。

 だから……まぁ嬉々としてかどうかは知らないけれど、ネプチューン王はすぐに触れを出してくれるはず。そしてその触れは、グラララにも伝わるはずだ。

 

 本当はネプチューン王とサシで話してから、が望ましかったけれど、マダム・シャーリーならなんとかしてくれるでしょう。多分。

 

 というわけで、噂に尾ひれがつく前にマーメイドカフェに戻って来た。魚人だけに。

 

「実際、どこまで読めてたん?」

「"浜色の髪の老人が、魚人街を滅ぼす。それは未来への礎となると同時に、ジョイボーイを遠のける最悪の一手。砂と海の狭間の旅人は、ただただ、海を救うためだけに"」

「具体的な予言過ぎて怖」

「……つまり、そのつもり、なのね」

「まーね。何事も起こす前に対処するのが一番だけど、どーやっても変えられない未来ってのは存在して、そのための準備をするのが俺なんで」

「んじゃ、俺達帰るよ。アンタの予言聞けて良かった。ワノ国ではわけわからんかったけど、そこまで聞けたら充分。全部わかったからね」

「……そう。けれど、これは忠告よ、お爺さん」

「?」

「予定通りばかりが、道ではないということ」

 

 扉が開く。

 そこに──とんでもない形相のフカボシがいた。

 

 ……怖い顔してると逃げるよ?

 

 あ、表情が軟化した。

 

「お前たちを竜宮城に連行する」

「それは、もう一つの方、と見ても?」

「うるさい。罪人は喋るな」

「へいへい」

 

 ま、今すぐ解放してやれるならしてやりたいよな。

 五年だってキツいよ。カイドウでさえ酒が飲みてぇつってたしな。あ、六年か。

 

 

 

 フカボシ直々の連行、というのは珍しいようで、周囲の人魚たちが俺とニコ・ロビンを見ている……けれど、声をかけてくることはない。

 流石にフカボシの方が圧倒的人気だろうしさもありなん。

 

 そんな感じで連れて来られた竜宮城。

 錠をかけられ、牢獄に入れられ……兵士が全員いなくなった段階で、ネプチューン王が来た。

 

「これからしらほしを救ってくれる相手にこの仕打ち。仕方がないとはいえ、申し訳ないんじゃもん」

「いきなり謝罪から入るなよ。罪人で合ってるし。それで、バンダー・デッケン九世の居場所はわかってんの?」

「アタリはついている。が、確証はない……が正しいのじゃもん」

「そのアタリがついてるところ、距離と方角は?」

「既に書き出してあるんじゃもん」

 

 話が早い。

 ……ってそうか。そっちも予言してあったとか?

 

「ちょいと協力が欲しいな、この距離は」

「なんでも言うといいじゃもん。しらほしのためじゃもん、王家全員が同じ気持ちじゃもん」

「そいつはありがたい。というのも、俺の能力は海中だとほっとんど効果を発揮しないんでね」

 

 この海域周辺に、できる限りの気泡を作って欲しいんだ。酸素入りシャボンである必要はない。泡がありゃなんでもいい。

 

「……わかった。兵にはそう伝えるもん」

「ただ、作ったら近づかねえよう言ってくれ。雷とか使うから、あぶねーんだわ」

「すぐに行動できるというのなら、こちらもすぐに兵を動かすんじゃもん!」

「ああ、すぐにやれる。と、そうだニコ・ロビン。兵士に目を咲かせて、死角なんかも見えるようになっててくれ。その方が捜索もすぐ終わる」

「……今回はいつにも増して説明不足だけど、ええ、わかった」

「悪い悪い。念じりゃ通じるもんで、ついついな」

 

 ──それと、俺のことをしっかり指名手配するのも忘れずに頼むよ、ネプチューン王。

 

「むぅぅ……」

 

 では、作戦開始だ。

 

 

 

 終わった。

 いやあの、マトマトの実さん……必中効果は確かに強いけど、……その、弱ない??

 

 サシで嫌がらせし続けるなら超強いけど、海賊としてやっていくには余りにも過ぎる。

 まぁ呪いとか言われてたし直接食ったわけじゃないっぽいのでバンダー・デッケン九世のせいにするのはアレだけど、その……ね。

 

 ともかくこれでしらほし姫は硬殻塔に閉じ籠る必要が無くなった。

 

 いやー、やっぱいっちゃん最初にカイドウ行ったの正解だったな。

 苦難が苦難に思えん! だーれが死にたがりだ。平和的解決が望めるならそれが一番だよ! 四皇の部下に暗殺しかけたけどな! 結局死んだんだろうかサッチは。

 

 ──"あの……その……助けてくれた方……で、ですよね?"

 

「そっちから声聞こえるとますますおれ魚説浮上するんだけど。……ああ逆に肉声だと聞こえないのか。不便か??」

 

 いいえ。違います。

 

 ──"あ、あっ、す、すみません、人違いで……"

 

 はい。ではワタクシ、罪人なので。さようなら人魚姫。

 

 ──"え、あっ……"

 

「よーし」

「ちなみにワシらにも聞こえてたんじゃもん」

「どうやら、周囲一帯の魚人族に向けて一斉発信しているようだな」

「マジ? それは恥ずいな。ってことは海王類もか。ああだからあの時あんなに一斉に来てくれたんだ……」

 

 ちなみにうるさかったりする?

 

「いや……不思議と、耳馴染みの良い声だ。さざ波と水泡に包まれているかのような……」

「砂と海の狭間の男、じゃもん」

「どーやらそうらしい。んじゃ俺達はもう行くよ。ああそうだ、ニコ・ロビン。ポーネグリフは今ここにないけど、文字ならあるんだ。見ていく?」

「いいえ」

「え」

 

 ……なぁじゃもん。コイツ、ちょっと前からこうしてツンケンしててさ。なんかない? 思春期少女のメンケア方法。

 

「それは……ワシも悩んでおることじゃもん」

「私は何も言えぬ……」

 

 ──"女の子を、虐める方……なのですか?"

 

 はい。そうです。泳げない、息もできないことを知っていながら海上でお手玉したりします。

 

 ──"それは……"

 

「おい! これ以上しらほしに余計なことを吹き込むな!」

「あそうだった聞こえてるんだったヤッベヤッベ。──そいじゃまー、短い間だったけど、世話んなった。アデュー、魚人島」

 

 回天土(エクステンド)を開いて、天と天を結ぶ。

 

 一応、取引として──貰うものは貰っていく。

 そのための樽だ。

 

 出口は──上空2万メートル。気圧で弾け飛ばないのが不思議。でもワンピ世界だから。

 

「ま、まつじゃもんーざいにんー」

「く、ざいにんがにげたーおえー」

 

 演技下手か??

 

 ……とまぁそんな感じで、魚人島編完!!

 

 

 

 

 で。

 

「次は誰を」

「いや、もう殺しはしないよ」

「……どういうこと?」

「というかもう何もしない。アンタを二年後運命に預けるまで、空島で隠居するつもり」

「その後は?」

「その後は、革命軍に行く」

「革命軍……世界各地でクーデターを起こす、戦争屋。……確かに、今までの貴方の行動は……革命軍の理念に近いように見える」

 

 それは結果論だけどね。

 受け入れられるかどうかは知らん。ダメだったらダメだったで動く。

 グラララと確執のある俺を素直に受け入れるはずがないとも思ってるから、この辺はなんとも。

 

「つーわけで、俺とアンタの旅はここで終わりなわけよ。どうする? その日まで付いてくるとか言ってたけど、俺もう隠居だぜ?」

「……」

「ちなみに嘘じゃないよ。マジですることないんだこの二年間。本当は三年間じっくりかけてやる予定だった工程をこの一年にぎゅっと詰め込んだともいう」

「……」

「どうする。ここの選択は避けられない。だんまりなら、俺はアンタを空島に連れていく」

「……ええ、そうして」

「あいよ」

 

 ──分岐点だ。

 

 じゃあな、ニコ・ロビン。

 

 

 

 

 

 六か月後。

 

天明朝(ラニアケア)超銀牙弾(スーパークラスター)

「グララララ!! 今日も来たか、小僧!!」

「あァ来たさ。ったく、船医が優秀な船は厄介で困るね。──今日も殺しに来たぜ、サッチ」

 

 一命をとりとめた──取り留めてしまったらしいサッチをつけ狙う六か月である。

 もう、普通に、フッツーにニコ・ロビンは空島に置いてきた。一人じゃ降りられないだろうからな。ルフィ出航まで空島で過ごすと良い。

 

 俺が嘘吐きだ、なんてわかってただろうにな。

 

「──ッ、火拳!!」

天板(テンプレート)

「おい、やめろエース! お前とアイツの能力の相性が最悪だってもうわかっただろ! 無駄な体力消費するな!」

「ゼハハハハ!! 見ろ、サッチ! 今日も来たぜ、アイツ! 毎日毎日命を狙われるなんざ、おまえいったい何したんだ!?」

「知るかよ……あんなガキ、知らねえよ……」

「だが、凄まじい執念だ! オヤジ達の攻撃を受けて、一切へこたれねェ殺意!! ゾッとするぜ……どれほどの恨みを持ってりゃ、あそこまで殺意を持ち続けられるんだ」

 

 外野のごちゃごちゃを聞いている暇はない。

 おっそろしい速度で飛んでくる衝撃波を避けつつ、回刺(エクサシブ)天波槍(テンパランス)でサッチ……と、流れ弾でゼハハハを狙う毎日。

 グラララの震動は大気の震動。だから俺は感知が容易だ。まぁ感知が容易なだけで、避けるのが容易かっつったら全然なんだけど。

 

「"劣神の裁き(クライン・トール)"!!」

「マルコォ!」

「わかってるよい!」

 

 原作知識+初見殺しアドマンである俺と、ガチ海賊のグラララ。

 趨勢など問うまでもない。

 

 ガン・不利。

 

「──そんなに守りてェか、白ひげ!」

「息子を守ることが、そんなに異質に見えるかァ、小僧!」

「アンタが息子を息子だと思ってる分にゃ構わねェが、アンタをオヤジだと思ってねェ奴が乗ってんだ、わかってて無視決め込んでんだろ!?」

「サッチはそんな奴じゃねェよ──」

 

 震動。凄まじい大技が来る。

 ので、立ち位置を()()()()()にする。

 

「チッ……」

「お優しい海賊だァ、全く!」

 

 グラララは無辜の民を傷つけるタイプじゃない。

 だから、無辜の民を人質に取れば、俺の天空を意にも介さねェ大技は防げる。

 

 卑怯結構外道結構。

 

 何が何でもエースを収監させるわけにゃいかねーんだ、そのための犠牲を俺は良しとする。

 頂上決戦の方は別にお好きにどうぞなんだけど。

 

「レコダァ!!」

「待て、エース! 頭冷やせ!!」

「──よう、今日も出て来たかポートガス。そんなに気に入らねェか、今の俺の行動が」

「気に入らねえに決まってんだろ! どっからどこまでが嘘なんだ、てめぇ!」

「端から端まで、始まりから終わりまでだよ。──お前に初めて会った時、あの女を運んでる、っつってたのも嘘だからな!!」

「──ッ、炎戒!!」

天球儀(テンスフィアリ)

 

 包み込む天空。

 覇気の使えない俺がvsロギア用に編み出した汎用技──は、直前にエースの肩を掴んで戦線離脱させた不死鳥によって失敗に終わる。

 

 違う、戦線離脱じゃない。

 

天晴糸(テンパレイト)!! ──早いが、今日は勘弁してやるよ! じゃあな、白ひげ海賊団!」

 

 どでけぇ"面"で来た震動を避けられないと理解し、天晴糸(テンパレイト)で遅延を作って回天土(エクステンド)で逃げる。

 戦線離脱じゃなくて、射線開けただけ、ってことね。

 あびねーあびねー。

 

 ……しかし。

 

 どうにも、殺意が薄い。

 グラララならもっと来てもいいと思うんだけどな。そのつもりで毎日殺意ギラギラで突っ込んでってるのに、全然釣れねえ。

 

 こっちの狙いわかってるとか? ……だから老兵は嫌いなんだ、頭がいいから。

 

 

 ──手を挙げる。後頭部に硬い感触。

 

「なんで一発で頭ふっ飛ばさないの?」

「……菊から少し、話を聞いた。……その人物像とあまりにも合致しない」

「ハ、そりゃ随分とサムライダマシイが抜けきってるな。相手の事情なんざ知らねえで問答無用が侍だろ。家族狙った凶手の事情なんざ知ったこっちゃねェでぶっ放せよ」

 

 この隠れ家もバレたか。

 さて次はどこを棲み処にしようかね。

 

「答えろ」

「ヤなこった」

 

 回天土(エクステンド)を俺とイゾウの足元に展開する。

 落ちる先はそれぞれ別々。

 

 いやー。

 見聞色怖いね。多分それで見抜かれたんだろ?

 

 覇気、ね。

 ……。

 

 あと、一年半。

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