エルマルは……終わらねえっ!   作:ONE DICE TWENTY

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第18話 震撼! 天命至りてここに降る

 そうして──ようやく、その日が来た。

 

「──よう、二年ぶりだなニコ・ロビン」

「ッ!」

 

 一瞬で臨戦態勢になるニコ・ロビン。

 いいね、ここの安穏とした生活で尚、逃げ続けた生活は忘れないか。

 

「……もう来ないものだと思っていたわ」

「あんだけ未来の話しといて?」

「ええ。だってあなたは嘘吐き。正直に話す、と言っていた部分の、果たしてどこまでが本当かなんてわからない」

 

 そりゃそうだ。

 日頃の行い。オオカミ少年レコダ君。

 

「あらかじめ、これだけは言っておく」

「……なに?」

「──俺に細かい作戦とか無い。馬鹿だ馬鹿だと、アンタらの方が頭がいいと──ああ言ってたのは、そりゃもう、本気も本気だ!! 回天土(エクステンド)!!」

 

 ニコ・ロビンの足元に穴を開ける。

 

「え──」

「じゃあな、ニコ・ロビン!! そんで──モンキー・D・ルフィ!!」

 

 叫ぶ。

 声は、天と天の繋がる先に。

 

「空から女の子が!!!」

 

 親方ァ!!

 

 ──んじゃ俺グラララと日課やったあと革命軍行くんで、そんな感じで!

 

 

 

 *

 

 

 

 双子岬。

 リヴァースマウンテンからこの岬へと辿り着いた「麦わらの一味」は、ラブーンと名付けられた巨大なクジラとのひと悶着を終えて、いざ次の島へ出航しよう、という……そういう時だった。

 

「ん?」

「どうした、ルフィ」

「いやなんか、誰かに呼ばれた気がしたんだけど……気のせいか。ししし」

 

 だから、まぁ、奇跡的ではあった。

 上を見上げていたのが一人だけでもいてくれたこと。それはこの船で航海士を務める女性、ナミで──。

 

「う……嘘!?」

「どうした」

「どうしたーナミ」

「上……上!」

 

 上。

 上から──降ってくる、女性。

 

「はぁ!?」

偉大なる航路(グランドライン)って、人が降ってくるのか!?」

「言ってる場合か! ルフィ、腹貸せ!」

「おう!」

 

 大きく空気を吸い込んだ少年ルフィの腹が大きく膨れる。

 それを蹴って、全身黒スーツの男……サンジが高く高くへ跳躍した。

 

 狙いは精確。

 彼は、紳士は──見事に彼女をキャッチする。

 

 

 では──幕を上げよう。

 ここからが、少しばかり「捻じ曲がった」麦わらの一味の物語の始まりである。

 

 

 

 *

 

 

 

 ということは全くなくて、レコダ君の話である。

 

 バルティゴの位置は知ってたので直で行ったら門前払い食らった。

 竜爪拳食らいかけた。怖いよ覇気。

 

 ごめん嘘。食らった、食らいかけた……んじゃなくて。

 

 進行形。

 

「あの平和なアラバスタから出た凶悪犯が、革命軍に何の用だ!」

「おいおいそれまでの功績を見てくれよ。アラバスタでは暗躍してた王下七武海を殺し、アラバスタを解放! あんま知られちゃいねーが空島では独裁政権を敷いてた神を殺し、空島を解放! シャボンディ諸島ではドンキホーテ・ドフラミンゴの経営していたヒューマンショップを潰し、そこにいた奴隷を解放! パンクハザードでは違法薬物作ってた科学者を殺し、その犠牲者たちを解放! ドレスローザなんか顕著だ。悪魔の実の能力で国民を操ってたドフラミンゴの企みを暴き、ドレスローザを解放! 魚人島では燻ぶってた国への不満を持つ不穏分子を殺して、危機から解放! どうよこのスペシャリティ。革命特化だろ、俺はよ!」

「それは全て、結果論だろう!?」

 

 ──そう。

 そういうことになっている。

 

 アラバスタでも、魚人島でも、「そういうこと」にしてもらった。

 真実を知ってる奴の方が少ないんだ、より真実っぽい方が信じられやすい。

 

 ……ただドレスローザは……その、頷いてくれなかった。こっちに交渉材料が無かったってのが大きいんだけど、リク王曰く「それに頷くくらいなら! 私は王であることを放棄する!!」とまで言われちゃ無理強いはできない。

 一応言っておくと、コブラ王とネプチューン王もかなり渋ってはくれたんだよ。優しいね、ただの殺人犯にさ。

 

 リク王家と取引できる材料がありゃ良かったんだけどなー。なんもなかったから、あそこだけは噓吐きレコダ君を犯罪者として認めていない。ただ、事の詳細は伏せてもらえているので、ただただドフラミンゴに恨みが有って来た海外の殺人犯になってる。

 ……あの国暗黙の了解で全部バラすからなんも信用できねーんだよな。見聞色特化があの国行ったら全部おじゃんになりそーで怖いわ。革命軍は平和な国に目をつけないからまだ大丈夫とはいえ。

 

「この、ちょこまかと……!」

「ハッ、覇気が使えるからなんだってんだ! 悪魔の実食ってから来いよ、参謀総長!」

「全く同じ言葉を吐いてやるよ、能力者!!」

 

 記憶戻ってない参謀総長は能力者や犯罪者にヘイトが高い。海賊にも。

 俺は海賊じゃないけど、悪魔の実の能力を使って悪事を働く奴、の括りに入れられているっぽくてそれはもう。

 

三天注(トラニペット)!」

 

 覇気は一切身に付いてないけど、グラララたちとの戦いで能力の使い方はかなり上達した。

 今まで科学知識頼りか「降るはずのないもの」と「降るけどランクダウンしたもの」を降らせていたけれど、どっちかというとこの世界寄り……つまり、「天空ってこうなんだよ!!」の方に着手してみた。

 

 その開発には空島の海雲島雲が多いに関わっている。

 アレの性質が不思議過ぎて、ようやく俺もそれを常識として認識できるようになってきたのだ。

 

 だからこういう、「跳ねる天空」とか。

 

「竜の息吹!!」

絡天網(クラニネット)

 

 こういう、「絡みつく天空」とか。

 

 俺の得意で大好きな「小技」をこれでもかと開発できたってワケ。

 

「この──」

「どけ、サボ! 四千枚瓦正拳!!」

「……っぶねぇな! だから海上付近で戦うの嫌なんだよ!!」

 

 ただしこの通り、海対策はほとんどゼロに近い。

 近いし、vs魚人だと心の声が漏れやすく、漏れない声を使ってても位置バレしやすいとかいうハンデがある。意味わからん。その上で俺海の中の気配わかんねーし。

 普通に天敵なんだよね、こっち海上あっち海中での魚人戦。

 

 ……だからサッチ狙う時は毎回ジンベエいないことを確認してる、ってのは内緒。

 

 つーかサッチもサッチなんだわ。

 最近いねーんだよアイツ。グラララの船に。船室にいるとかじゃなくて、完全にいない、って日がよくある。船降りたとかじゃないっぽいだけど、もしその行き先かなんかでヤミヤミ手に入れてたら色々水泡だろうがよ。

 もっと後遺症残るような攻撃にするべきだった。まだ体内に天空が残ってるとはいえ、それでどこまで妨害できるか。

 

「上の空か?」

「馬鹿言え、空は俺の領域だよ」

 

 エビスダイと参謀総長の攻撃を躱しつつ、そんなに攻撃はしない。

 革命軍入りたいアピールしてる奴が革命軍攻撃してどうすんだって話でね。

 

 今更? はは。

 

 ──突風が吹く。

 

回天土(エクステンド)!」

 

 風に目を瞑るほど天空に困っちゃいない。

 だから避けられた。……多分、狙撃。

 

 そこまで嫌われてますかね、俺。

 

「当たり前だ! 天害レコダ! 海賊でもないのに、四億の懸賞金のかかった一個人!!」

「アンタらだって海賊でもないのに懸賞金ついてるじゃんかよー」

「一緒にするな、快楽殺人鬼!!」

 

 槍波系統の海のへこみ。

 それと同時に、竜爪拳。

 

 避け切れない──ので、今日は帰るか、と思ったら。

 

「──待て、サボ、ハック」

 

 いた。

 ……岩礁の上。いつの間に?

 

「ドラゴンさん!? アンタ、ダメだこんな前に出て来ちゃ、何かあったら!」

「何かあったから、出てきている」

 

 モンキー・D・ドラゴン。

 初登場はかなり早い……にもかかわらず、謎に包まれまくっているルフィの父親。

 

 ……。

 

「お前の目的はなんだ、アラバスタの稚児」

「へぇ、その呼び名覚えてる人いたんだ。もう忘れ去られたモンだと」

「目的はなんだ」

 

 嘘は許さない、って目と声だ。

 

「──終わらせたくねェモンがある」

「そうか。それは、お前の今までの全てがなければ、成し得ないことか」

「ああ」

「いいだろう。ついて来い」

 

 えー。

 あっさり頷かれるとそれはそれで裏がありそう。

 

「……先ほどから幻聴かと思っていたが……これはもしや、お前の声か?」

 

 ああそうだよ。今日からよろしくな、ハック。

 

「……」

「ハック?」

「いや……なんでもない。行くぞ、サボ」

 

 安心してくれ。

 俺はやること以外、やるつもりは無いからさ。

 

 

 

 

 

 

 さらに時は流れる。

 光陰矢の如ナントカ。一応、本当に一応、それとなーく麦わらの一味の航路を調べつつ、基本的にはグラララ海賊団に喧嘩を売る毎日。もうサッチは全く見なくなった。

 ただ「サッチを出せ」っていうと「出すわけねぇだろ」って言われるので、たとえそれがサッチを俺から離すための方便だとしても、すんなり騙されていることにする。

 ただ……やっぱりグラララからの殺意がない。おかしいくらい無い。

 隊長連中は殺意ギラッギラで来るのに、オヤジィ! だけないのは明らかにおかしい。じゃもん王がなんか喋ったのだろうか。だとしても今やってることの真意には辿り着けないはずなんだけど。

 

「鳳凰印!」

「それは流石に避けるけども」

 

 ……わかんねーのはコイツもなんだよな。

 不死鳥マルコ。最初の方はコイツも一緒になって怒ってたのに、途中からその殺意が薄れた。

 

 家族殺されかけてて、お前船医だろうよ。

 そんなことある??

 

「──ちょいと、距離取らねェかよい、天害」

「馬鹿言え、俺ァサッチを殺してぇんだ。アンタの相手してる暇は」

不死薊(ふじあざみ)

 

 青緑の炎が広範囲に広がる。

 ……視界を覆った?

 

「ちょいと話したい。できねぇかよい、アラバスタの稚児」

「良いけど、飛ぶのは俺の技でだ。それでいいなら」

「あァ、構わねェ」

 

 信頼し過ぎだろ。

 

 まぁいいよ、話だけな。

 

 じゃあ──不死鳥の腹と背に回天土(エクステンド)を開き、そこに腕を突っ込む。

 意図を察したのか……不死薊を消す不死鳥。

 

「──マルコ!?」

「何が……おい、マルコ! 返事をしろォ!!」

 

 冷静に見ると俺の腕が伸びてて明らかにおかしいんだけど、冷静じゃないし遠いからな。

 そんで、他の奴らが飛んでくる前に回天土(エクステンド)で逃げる。あー、頭パンクする。この技こんな連続で使うモンじゃないんだよ。

 

 

 

 

 ついたのは──凪帯(カームベルト)にある、マジでなんもない岩礁。

 

 ごめんねー、おじさんたちちょっとお話しするからどいててねー。

 

「で、何?」

「やっぱりか。オヤジの言った通りだ」

「何が」

「雰囲気が全く違う。いや、エースの言う通りでもあるか。サッチ狙って来てた時と今とで、別人かと思うほど気配の質が違うじゃねえかよい」

「……見聞色? だったらすまんが持ってねェんだわ」

「覇気を使えねえ奴でも、気配は読める。雰囲気や息遣い、足運び。そういうのを気配という。今のお前は目的が無いから、比較的素に近い。そうだろい?」

 

 それを……グラララが見抜いてた、って?

 殺意ギラギラの時しか見せてないのに??

 

「お前さん、いつだかオヤジに、オヤジのことをオヤジだと思ってねぇ奴がいる、って言っただろい」

「ああ」

「オヤジはその意味を重く受け止めた。元々"嫌な予感がする"とは言ってたんだよい、オヤジも」

「それで?」

「だからオヤジは──サッチとティーチの奴を、離すことにした。サッチはもう別の艦にいるよい」

 

 けれどゼハハハは、グラララの監視下である一番艦にまだいる。

 エースの部下にすらなってないんだ。

 

「オヤジからの言葉を伝えるよい。"手段は頂けねェが、言いてェことは伝わった"だそうで」

「……俺がまだ、サッチの心臓近くに能力を忍ばせてる、って知っても同じ事言えんのか?」

「そりゃおれを舐め過ぎだ。気付いてるよい、そんなことは。だからわかったんだ。いつでも殺せるのに殺さないで、毎日毎日向かってくる。最初の一撃は殺意が乗ってた。その後も。けどよい、船医のおれがサッチの爆弾に気付いてからは、別のことに意識が向くようになった」

「……俺が流れ弾でマーシャル・D・ティーチを殺そうとしてること、の方か」

「あァ。そもそも一番はティーチを狙っただろう? オヤジと近い所にいたティーチを狙って、遠い所にいたサッチを狙わなかった。オヤジならあんな距離一瞬で詰められるがよい、それでもサッチが狙いなら先にサッチを狙うはずだ」

 

 理詰めされてる。

 やめろ。馬鹿にはこうかばつぐんだぞ。

 

「馬鹿でも予感でも、息子は息子だろう」

『グララララ!! おまえがおれの言葉を語るか、若僧』

 

 声。

 ……電伝虫!? かなり離れたのに……。

 

「すまねぇよい、天害。最初から通話中だ」

「汚ェことするなァ。仮にも四皇だろうに」

『汚ェことと小細工が、お前の正々堂々なんだろ? グララララ……はじめ、エースから話を聞いた時は何の冗談だと思ったが……』

「アンタな。もうちょい怒れよ。確かに心臓付近の爆弾は使ってなかったけど、最初はちゃんと殺そうとしたんだぞ。大事な大事な息子だろうが。もっと感情剥き出しで向かって来いよ」

『それでおれが単身お前の元に出向いたら、おれにティーチへの不信感を植え付けて去るつもりだったんだろ? グララララ、雑な仕事だ。一歩間違えりゃ、アラバスタとの全面戦争もあっただろうに』

「はン、その時は全艦沈めてやるし、罵ってやるよ。この世で最も小せェ海賊だってな。殺し殺されの海賊になっておいて、いざ被害者になったら仲間面。力を示すにもナワバリを主張するにも、海賊以外のやり方なんていくらでもあるだろ」

「あー、待て待て。そう熱くなるなよい。話の主題と逸れてる。──オヤジ、もう一度聞くが……()、嫌な予感がしてんのは、誰と誰だっけ?」

『グララララ──ティーチとエースだ』

「は?」

 

 ……なんで?

 まだゼハハハは、エースの部下になってないのに?

 

「その反応だけで充分っちゃ充分だが──何を知ってんだよい、天害レコダ。いいや、未来人!」

『グララララ……! 凪帯(カームベルト)に跳んだのは間違いだったな……!』

「いやいや、息子巻き込むだろ」

「おれはお前と違って、素早く飛べるんだよい」

 

 知ってるよ!!

 トリトリの素早さは……一緒に過ごした時間が違ェからな。

 

「話せよい、天害。お前が抱えてるモンを」

『グララララ! 喧嘩を売った相手くらい、わかってるよなァ小僧』

 

 ああ、そうか。

 あの時イゾウが言ってたな。菊から聞いた、って。

 

 そりゃ知ってるか。

 俺があそこで未来人を名乗ったことも。

 

 ……自業自得ですかい、こりゃ。

 

 

 

 

 まるっと、じゃないけど。

 話すことは話した。

 

「ティーチがサッチを殺して、ヤミヤミの実を、ねぇ。そんでエースがティーチとぶつかり合って、インペルダウンに収監。……ま、想像できねェ未来じゃねぇ」

「アンタにもポートガスにも多少は悪いと思うけど、重要なのはそこじゃねーんだわ。その収監されたポートガスを助け出そうとする奴がいる。ソイツは多分、この世で最も神に愛されてるか最も見放されてるかで、だからこそ大騒動を引き起こす。俺はそれをなんとしてでも阻止したい」

『エースとティーチから目を離さなきゃいい、って話でも無さそうだな』

「悪魔の実には意思がある。悪魔の実はその実を欲する奴の所へ行く。マーシャル・D・ティーチはたとえどんな苦境、困難の淵に立たされようと、必ずヤミヤミの実を食う。それが仲間殺しになるか親父殺しになるかは知らねぇし興味もないが──つーかマーシャル・D・ティーチの行く末にはほとんど興味がないが、だ」

「エースの収監だけは、どんな被害を無視してでもさせたくねェと」

『グララララ!! 手段は利口じゃねェ、遠回りが過ぎる上に素直じゃねェ。はっきり言って馬鹿の所業だが……意志だけは立派だ』

「いやだから。アンタは俺にもっと害意を持て。家族を殺そうとしたんだぞ」

『持ってくれねぇと困る、って風に聞こえてならねぇよ、小僧』

 

 だーから老兵は。

 

「サッチが死ななかったのは結果論だ。大事な息子なら、大事にしろよ」

『そうだな、死んでりゃ、どんな事情があろうとおれはお前を赦さなかった。だが、今──生きてる。結果論を語るなら、それで充分。おれに息子の愛情を問うなら、お前がおれの息子にでもなってから言え』

「お断りだ。俺は観客席から野次飛ばすオッサンなんだよ。そろそろわかりやがれ」

 

 さて。

 

「実際どうすりゃいい。アンタら頭良いんだろ、馬鹿な俺と違ってよ。その嫌な予感とやらからエースを外すには、何をすればいい」

「エースとティーチは隊が違う。だってのにオヤジは嫌な予感を抱き続けてる。なら──」

「やっぱり俺がマーシャル・D・ティーチを殺すのが手っ取り早いか。あるいはポートガスを殺すか、だが」

「お前はどうしてそう殺す殺さないの話になるんだよい。平和的解決は思い浮かばねえ頭なのかよい」

「馬鹿言え、死ってのは死ぬほど簡潔で絶対な別離だ。悪魔の実や覇気とかいう距離も理屈も関係ない超常の力が跋扈してるこの海で、殺しを選べねェのは甘えだろう」

 

 わかる。

 俺とこいつらは平行線だ。

 どれほど理解を示しても──0-100の俺と、1-99のこいつらでは話が合わない。

 どっちがいい悪いじゃない。

 主義主張の話だ。

 

「もういい。アンタらがアンタらの力だけでポートガスとマーシャル・D・ティーチにこびりついた"嫌な予感"を払拭できるってんなら、そうすりゃいい。俺はそれが見えるまで襲撃を続ける。隙があればマーシャル・D・ティーチを殺す」

「……結局交渉は決裂かよい」

『グララララ! まぁ、元々そういう関係だ。小僧の言う通り、息子を殺しかけたソイツを憎み、殺されねェよう守りつつ、殺し返す。それだけの話だ』

「最後の最後で物分かりいいじゃねェかニューゲート。海賊やってんだ、いつでも殺される覚悟はしておけよ。あァ勿論お尋ね者の俺もだけど」

 

 回天土(エクステンド)

 

 不死鳥の下にそれを展開し、降らせる。飛び立とうとしたので無理矢理降らせる。

 そして俺も回避。

 

 飛んでくるは、さっきまでいた岩礁を塵に帰すレベルの震動。

 こーわ。

 

 

 

 

 

 アラバスタ。

 懐かしき我が故郷。

 スナワニがいないんで平和なこの国を、久方ぶりに見下ろす。

 

 エルマル含む、サンドラ河の西側は原作よりも元気だ。ただサンドラ河の水源減少問題は解決できていない様子。エルマルに運河が流されているから、平気っちゃ平気だけど……ま、その辺は俺の気にすることじゃない。

 人為的災害じゃねーなら俺は手を出さない。自然の猛威ってのは等しく降り注ぐもの。それでエルマルが終わるっていうんなら、流石に諦めるさ。

 

「──久しぶりだな、レコダ」

「ん。……久しぶり、ペルさん」

 

 上空も上空だ。なんなら砂も舞っている。

 だけど、気付かれた。ほとほと呆れるよ、その目の良さには。

 

「雰囲気が……変わったな」

「そう? 俺は至って自然体のつもりだけどね」

「……焦っている。あの頃もかなり焦っていたが……今は、もっと」

 

 鋭いなぁ。

 本当に。

 

「何か私に手伝えることはあるか?」

「……」

 

 あるにはある。

 けど……返せるモンがない。ただでさえもらいっぱなしなのに。

 

「返せるものがない、などと……考えてはいないだろうな」

「……何、ペルさん。覇気に目覚めたの?」

「新世界の技術か。残念ながら私はそんなものは身に着けていない。だが、何年君と衣食住を共にしたと思っている。……わかるさ、それくらいは」

「そうかぁ」

 

 心配ごとは、ただ一つ。

 

 ──麦わらの一味の行程が原作より遅い。

 バロックワークスという目的が無いからか。あるいはニコ・ロビンの存在が妨害になっているのか。

 

 本来であれば……もうアラバスタの緯度に居ていいはずなのに、いない。

 それは、やっぱり。

 

「じゃあ、欲しいものがある、って素直に言うよ」

「なんだ」

「アラバスタへの永久指針(エターナルポース)

 

 その存在の有無、だろう。

 

 ただ……俺がそれを渡しに行っても、「お前が! おれの冒険の行き先を決めるなよ!!」でパリンされそうだから……最初からニコ・ロビンに渡しておくべきだったかなぁ。でも「なんで持ってるの?」へのアンサーがない状態で送り出したからなぁ。

 

「君はそれがなくとも、帰って来られるのにか」

「この国に導きたい人たちがいるから」

「……」

 

 細められるペルさんの目。

 珍しいにも程があるから、だろう。

 

 俺の口からそんな他人任せの言葉が出ることが。

 

 やりたいことがあるなら、自分でやる。

 目的があるなら、誰に相談することもなく自分だけでやる。

 

 俺はそういう人間だ。

 それが、人を導く、なんて。

 

「……わかった」

「いいの? 俺、アラバスタから出た最悪の殺人鬼って呼ばれてる罪人だぜ? 懸賞金四億ベリー。天害のレコダ」

「ふふ、昔より無駄な問答が好きになったらしいな。それとも、君が救った国で秘かに囁かれている通り名が影響しているのか?」

「え、ナニソレ」

「嘘吐きレコダ。ドレスローザのリク王からコブラ王へ書状が送られて来たんだ。そこに、書き殴るような文字で、けれど育ちのいい文字が添えられていたよ」

 

 ……誰だろ。レベッカ……とは関係値ゼロのはずなので、ヴィオラ?

 そんなに嘘吐いたっけ、俺。あの人に。

 

 ……ギロギロか?

 

「最速で持って来よう。運び屋レコダの相棒として」

「へん、実は俺、もうペルさんより早く動けるんだなーこれが」

「なら君が国に戻って来た時は、速達便を君に代わってもらおうか。私は普通の配達物を担当するよ」

 

 帰る、ね。

 

「帰ってこないよ、俺は」

「だが、君の故郷はここだ」

 

 ペルさんがアルバーナの方へ飛んでいく。

 

 どうだろうね。

 砂と海の狭間の男らしいから──ま、半分は、かもしれないけれど。

 

「"亜氷時代(スターディアル・エイジ)"」

 

 降らせるのは──地面にまで届かない、みぞれ雪。いや、アラバスタの気候のせいでみぞれにすらならない。ただちょっとだけ温度が下がった程度だ。

 ……そうだ、こんなに熱い砂なら。

 

「天網恢恢」

 

 少しだけ、貰っていこう。

 ……甲子園の土持って帰るみたいな。違うか。

 

 

 

 

 

 ペルさんから貰ったエターナルポースを持ってグランドラインを遡る。

 原作に登場しなかった島も回って回って……そこに、辿り着いた。

 

 名前の無い島。

 つまり……金魚のフン。長鼻君実は未来視(見聞色説)を推す一派の聖地。

 当然磁気が溜まらないので、ここで何日を過ごそうがログポースはどこを示すこともない。

 

 それは……なんだ。

 運命を感じるなぁ。

 

十六輪咲き(ディエシセイスフルール)

「馬鹿馬鹿待て待て」

 

 ひっさしぶりに使うコールタールの雨で視界を妨害する。

 こーれは。

 

 こーれは怒ってます。ええ。わかります。彼女とかなり年の離れているレコダ君にもわかります。

 

 こーれは怒っています。

 

三十輪咲き(トレインタフルール)

「は!? 視界塞いでんだけど!?」

 

 という焦ったフリをしつつ、咲いた腕に対して"降り懸る火の粉(スパーキー・バーン)"を当てる。ハナになって行く腕に一安心しつつ──自分の鎖骨の上という死角に咲いた目と耳と口に話しかける。

 

「ごめんじゃん」

「熱いわ」

「それはアンタのせい。……ここじゃログが溜まんないけど、それは伝えたの?」

「いいえ。彼らの航路に口を出せるほど、私はまだ彼らとの関係を築けていないから」

「そんな君に良い物をあげよう。回天土(エクステンド)

 

 ぽと、と。

 腕をクロスし、目を瞑っているニコ・ロビンの頭にぽと、と。

 

 アラバスタ行きのエターナルポースを降らせる。っつーか置く。

 

「馬鹿にしていることは伝わったわ」

「待て待て割るな割るなそれ高いんだから」

 

 まぁ、なんだ。

 

「とりあえずは受け入れられたようで良かった」

「……すぐにわかったわ。あなたの言う運命が、誰なのか」

「だろうね。俺とは似ても似つかない、まっすぐ芯の通った奴だ。苦手だろ、アンタ」

「ええ、とっても」

「逃げんなよ。俺は逃げるけど」

「……いつまでも勝手な人」

「ちなみに俺今白ひげ海賊団とバッチバチに抗争してるから、白ひげ海賊団と出会うことあっても俺の名前出すなよ。冗談抜きで死ぬから」

「ええ、元からあなたの名前を笠に着る気は無いわ。"強い奴の笠を着た悪い奴が悪いことをしている"と、あなたに殺されてしまうのでしょう?」

「あァ、真っ先に殺しに行くよ。──じゃあな、ニコ・ロビン。アンタに未練ができるよう願ってる」

「未練?」

 

 別名を──生への執着。

 

 あとはブルックかなー。

 普通にトナカイいたのにはビビったが。つかどーやってこの島に辿り着いたんだ??

 

 頑張れ、思春期少女。

 年齢関係なしに思春期少女だって思ってるよ、俺は。

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