エルマルは……終わらねえっ! 作:ONE DICE TWENTY
それは、「麦わらの一味」と呼ばれ始めた彼らがアラバスタ王国はナノハナという港町についた時の話。
船長の少年、モンキー・D・ルフィがふと空を見上げて──その急襲に気が付いた。
「どわっ!?」
「なんだ!? でけぇ鳥が降って来た!」
鳥。鳥の翼。
そう見えただろう。実際ソレには、翼があった。
けれど、砂煙の中でゆらりと立ち上がるシルエットは、人のもの。
「……私はアラバスタ王国護衛隊副官、ペル。海賊たちよ、この国に何用だ」
「人?」
「うわ、人だ!」
「でけぇ鳥に見えたが……」
「……」
晴れる砂煙より出てくるは、少しばかり「怖い」と称されておかしくないペイントを顔に施した男性。
その腰に佩く剣もだが──雰囲気が、「麦わらの一味」の戦って来た今までの敵とは一線を画すものであると誰もが悟っただろう。
だから、戦いになる前に彼女が前に出る。
「
「……君は」
「ん? なんだロビン、知り合いか?」
「ええ。私にこのエターナルポースを
「へえ! そうか、おっさんがこれくれたのか! これが無かったらおれ達ずっとあの島にいることになってたかもしれねーからな、ありがとう!」
まっすぐだった。
噓偽りない謝意。心象がどうのとか、一切気にしていない言葉に……ペルはたじろぐ。
海賊とは、こうだったか、と。
「……驚かせてしまって済まない。君達が彼……彼女の仲間だというのなら、少なくともモーガニアの類ではないのだろう。ログが溜まるまでの間、この砂の国でゆっくりして行ってくれ」
「おう!」
ペルに、翼が生える。実は珍しい、手があるままに翼の生えるタイプ……なんて知識は彼らには無く、ただ「すんげー!!」と目を輝かせて、ペルが飛び立っていくところを一味は見送った。
「あの人も、トニー君と同じ
「おれと同じ……」
「能力者ってのは、なんでもアリかよ」
「ええ……そうね」
己を含めて、「なんでもあり」を見過ぎていて……単なるトリトリの実が可愛らしく見える、というのは。
無論、言わなくてもいい話だ。
「ルフィ、おれとウソップは食料の買い出しに行ってくる」
「おれは飯屋に行ってくる! チョッパー、お前も行くか?」
「あ、いやおれは……。い、行く! 一緒に行くぞコノヤロー!!」
「私は……服でも見て来ようかしら。ロビンはどうするの?」
「そうね。……少し、行ってみたい場所があるから、そこへ」
「……なら、おれもついて行こう。おれはまだアンタを信用しちゃいないんでな」
「ちょっとゾロ、アンタはまたそういう不和を生みそうなことを……」
では、と。
一味は別れる。平和な国だ。何を警戒する必要も無いと、集合時間だけを決めて。
──して、ニコ・ロビンとロロノア・ゾロという異色の組み合わせが、砂漠を行く。
ナノハナを離れ、一直線に西へと向かっていく。
「どこに行く気だ」
「緑の町、エルマル」
「……そこに何がある」
「何も。強いて言えば、運河を利用した自然があるわ」
険悪な雰囲気だった。
ほとんど唯一だ。航海士ナミも多少は懸念しているけれど、そんなものが霞むくらいの警戒をしている。
ゾロの中にある警鐘が片時も鳴りやまないのだ。
この女の危険性。何か腹に抱えている──その感覚が。
砂漠を行く。
それなりの距離だけど、それで体力を削られる程二人は柔ではない。
だから無言のまま、歩いて、歩いて。
辿り着いた。
「……ここが」
「へぇ。砂漠にこんなに緑が生い茂ってることがあんのか」
「サンドラ河の上流から、運河を引いているから」
「で? ここに来た本当の理由は?」
「ふふふ。……本当に何もないわ。ただ……」
ロビンは、見渡す。
緑がある。それは確かにそうだけど、特別なところは何も無い。
田舎町、という表現がしっくりくるだろう。ユバの交易先でもないエルマルは静かで……けれど閑散としているわけじゃなく、ただただ、日常が流れている。
そうして見渡している内に、ロビンはその家を見つける。
配達物承ります、と書かれた看板。ただしそれはもう降ろされていて、家自体は空き屋になっているらしかった。
「アンタたち、その家に何用だい?」
「ああいえ、用があるのではなくて、珍しくて。砂漠で空き家……というのは」
「ああ、確かにそうさね。普通は解体しちまうもんだ。土地が勿体ないから」
「そう。だから、気になったの」
「ま、空き家じゃないのさ、この家は。今は誰も住んでないが……いずれ帰ってくる奴がいる。だから、エルマルのみんなで定期的に掃除したり補修したりして、この家を保ってる」
声をかけて来たのは老婆。
とはいえまだまだ元気そうな老婆で、最初は二人を睨んでいた彼女も、最後の方には何かを思い出すような顔つきになっていた。
「家主はずっと帰ってきてねぇのか」
「もう三年になるね」
「そりゃ……」
「死んじゃいないよ。時折風のうわさであの子の話は聞くからね」
「国を出たのか」
「ああ。アタシらに何も言わずに、やることやってとんずらさ。……昔からどこか達観した馬鹿な子供だったけど、あそこまでだとは誰も思ってなかった。……引き留めるに足る理由が足りなかった。それだけさね」
ゾロの頭の上には疑問符が浮かんでいるけれど、老婆とロビンの脳裏には同一人物が映っている。
引き留めるに足る理由が無かった、は。
彼女にも刺さる言葉だろうから。
「っと、済まないね、アンタらに話したって意味の無いことだった。……ようこそ、緑の町エルマルへ。何にもない町だけど、ゆっくりして行くと良いよ」
「ええ、ありがとうお婆さん」
老婆に別れを告げる。
告げて……尚、ロビンはその店を見る。見続ける。
「……何か思い出でもあるのか?」
「いいえ。私には何も」
「そうか」
「ええ」
少し、時間が流れる。
そして──出会う。
「ん? あれ、アンタ……」
「……」
刀の鞘に手を当てるゾロ。
肌でわかる、強者の気配にアテられたのだ。
「おっと、待て待て、おれは怪しいもんじゃ……あるけど、危害を加えるつもりはねェよ」
「……」
「そっちの姉ちゃんに見覚えがあったから声をかけただけだ」
「そうか。アラバスタに居たことがある、ってのは嘘じゃなかったんだな」
「ええ、それは嘘ではないけれど、彼と会ったのはアラバスタではないから……」
「ややこしいな。……良かったら、ちょいと話さねェか? 木陰にでも入ってよ」
声をかけて来た男。
彼の名は──ポートガス・D・エース。
「おれは構わねえ」
「私も……構わないわ」
「よーし」
話とは。
それは、多分。
「初めに謝っておくわ。ごめんなさい、私はもう彼とは二年以上連絡を取っていないの」
「あァ、やっぱりそうか。アイツが変わったのは二年前だ。……アンタと別れた直後、ってことになるか」
「誰の話してんだお前ら」
「っと、自己紹介もせずにすまねぇな。俺はポートガス・D・エース。白ひげ海賊団の海賊だ」
「白ひげ海賊団?」
「グランドライン後半の海をナワバリにする、とても強大な海賊よ」
「そんなもんの船員がなんでこんなところにいる」
「あー。……まぁ、そこの嬢ちゃんと同じ理由だよ」
「その理由を知らねェから聞いてるんだが」
同じ理由だった。
突如変貌した彼。その理由が知りたくて、彼の故郷にまでやってきた。
やってきて──理解した。
何も関係がない、ということを。
「ちょいと、共通の知り合いがいてな。ある時から突然人が変わったように……おかしくなっちまった。だから、何かヒントがねぇかと探しに来たんだ」
「突然、ねぇ。別に、人が変わるタイミングなんていくらでもあるだろう。大切な相手を失ったとか、どうしても許せねえことがあったとか」
「おれもそう思ったよ。そう思って、ソイツの足跡を辿り続けてる。……けど、何もわからねぇ。ここでもそうだ。おれの知ってる人となりが昔から変わらねえってのはわかったけど、変わった理由がわからねえ」
「仲、良かったのか」
「良いつもりだった、が正しいだろうなァ。……駆け出しも駆け出しの頃に食料が尽きて困ってた時に、飯を分けてくれた。その後思ってもみねェとこで再会して、共闘して……」
そして。
「そんで……その後奴は、おれの家族の命を狙うようになった」
「なるほど。そりゃ、気になるのも当たり前だわな」
「あァ。何故を何度問うても一切話してくれないんで、こうして一人で調べまわってんだ。……再三聞くようで悪ィが」
「ごめんなさい。力になれそうにないの。……私も、彼が変わった理由はわからないから」
「そうか。……いや、ありがとう。つーか、そうだ。アンタら二人で旅してんのか?」
「いいえ。ナノハナに仲間がいるわ。私はこの町が気になって調べに来ただけ。彼は……ボディガードよ」
「違ェよ」
「おれはこれからナノハナに行こうと思ってたんだ。よかったらおれの舩に乗っていかねェか? 砂漠歩くより早いぜ」
「そりゃありがてぇな」
「ええ、お願いするわ」
知らない。
ロビンは、「ポートガス・D・エースがアラバスタにいる」という意味を知らない。
それが彼にとってどれほど重大な意味を持つのかを知らない。
だから、ただただ驚くだけだ。
彼女が今身を寄せている船の船長・ルフィが、ポートガス・D・エースの弟であった、という事実に、ただただ。
それはあるいは──彼ならば知っているはずの情報。
伝えなかったのは……どうせいつもの秘密主義だろうけれど。
──その後。ナノハナに戻り、アルバーナまで行った一味が、何の悪戯かこの国の王女とばったり出会って、そしてバロックワークス時代しか知らない王女からロビンがとんでもない目で睨まれた……なんて話は、余地のある物語として残しておこう。
*
ハック、コアラ、サボ。
他、革命軍の皆さんから──ばっさり言われた。
覇気、才能無し。
……いやね。ドフィが拒否してるとか、ウォロロロが不条理を謳うとかね。言ってくれたけどね。
才能は、ないんだよ!!
ドン!!
「そう落ち込むなよレコダ。むしろすげーよ。覇気無しでドフラミンゴとか海軍大将と渡り合ったんだろ?」
「ドフラミンゴはそうだけど、大将と渡り合ったって何。俺そんなことした覚えないけど」
「ん? 大将青キジ、黄ザルと正面切って戦ったんだろ? 公にされちゃいねぇが、界隈じゃ有名だぜ?」
何だよその界隈。
そして全然嘘だよソレ。捏造だよ。バリバリ逃げたよ。
覇気……なぁ。
「そもそもどういう感覚で使ってんの?」
「どういう……うーん。言語化は難しい。こう……グッ、とやって、ゴァァアってなって、カチン! だ」
「お前に聞いた俺が馬鹿だった」
「そうそう! お前案外馬鹿なんだから、小難しく考えないで感覚でやった方が良いって!」
「そういう意味じゃねェよ」
革命軍といってもピンキリ……っつーかクーデターやってない時はただのコント集団だ。
俺も白ひげ海賊団襲ってる時以外は割とバルティゴにいることが多いんだけど、こいつらのせいでコントに巻き込まれがちで困る。ドラゴンはマジで寡黙。ずっと東向いてて何も言わねえ。風見鶏かよ。
……ところで、そう。
白ひげ海賊団。……サッチはおろか、エースまで最近見なくなったのがちょっと。
ゼハハはずっとグラララの監視下にいるっぽいんだけど、エースどこいったん? って不死鳥に聞いたら「教える義理はねぇよい」だそうで。ごもっともでござい。
ちなみにコイツの教え方が下手ってわけじゃないっぽくて、覇気はやっぱり感覚らしい。
誰に聞いても七割擬音で帰ってくる。もうウォロロとかに師事した方が良いんじゃなかろうか。アイツも感覚派な気がするけど。
「……そろそろ時間だ。俺はちょいと行ってくるよ」
「おう。どこ行くか知らねえけど、頑張れよ~」
「ああ」
どこ、って。
白ひげ海賊団襲撃だけど。
初手
なんか……慌ただしい。
とか考えている間に不死鳥が飛んできた。
「すまねぇよい! 今はお前の相手してる暇はねぇんだ!」
「……まさかとは思うが」
「いや、エースの奴は少し前に別件で外に出てる。だが、ティーチの奴がお前の言う通り仲間殺しをして船を出た。ご丁寧にヤミヤミの実を食って、だ」
「だから殺しておけと……。それで? それ、いつのこと?」
「昨晩のことだよい! ……待て、まさか」
左掌に右拳をぶつける。
破裂音は……しない。クソ、もう海に出たか。
「
「用意周到なことだよい。……それで、殺せたのかよい」
「わからん。アイツ特異体質だろ。心臓の近くで爆弾が爆発程度で死ぬモンかね」
「普通は死ぬよい」
普通じゃねーから言ってんだ。
……つーか、待て。エースが別件で別行動してるって何?
「ポートガスがどこにいるって?」
「……お前に言う義理は無ぇが」
「言えよ。最悪、俺はポートガスの動向を監視する必要が出てくる」
「……お前を探しに行ったんだよい」
「ほぼ日で俺襲撃に来てんのに?」
「お前を、というか、お前の足跡を。最初はアラバスタを目指すとか言ってたか。お前が変わっちまったのが気になって仕方がねぇんだとよい」
「……まぁ、前半の海にいるなら大丈夫……か?」
バナロ島の決闘は麦わらの一味がエニエスロビーぶっ壊した後だ。
四六時中の監視はその辺でいい……かもしれない。今会いに行くとニコ・ロビンと鉢合わせてそれはそれで面倒になりそうだし。
「ああそれと、白ひげ海賊団を襲撃する理由が無くなったんでな。明日からはもう来ないよ」
「そりゃ構わねえが、ウチの連中はまだお前に恨みを持ってる奴も多いよい。そいつらの誤解は」
「誤解じゃねぇさ。ちゃんと殺しはしようとしてる。それも、マーシャル・D・ティーチ本人じゃなく、その関係者でしかなかったサッチの方をな。恨まれて然るべきだ」
「そりゃそうだがよい。……すまねぇよい」
「何が?」
「オヤジ曰く、まだ嫌な予感ってのは消え去ってないそうだ。……こっちでも留意はするが……」
「ああ、じゃあ伝えておいてくれ。耄碌したな、旧時代、って」
「へっ、一回オヤジの本気の拳食らってからもう一度言いやがれよい」
まだ、最悪ではない。
これからの俺の行動次第だ、後は。
……今までも、だけどね。
それから、時はめまぐるしく過ぎて行った。
ドラム王国以外でゼハハ海賊団がどこにいるかもわからず、空振りを繰り返すこと数か月。
──麦わらの一味がW7に辿り着いたことを、聞いた。
ドラゴンから。
「行け、って言ってたりする?」
「教えただけだ。そういう情報が入った、と」
「……。アンタ案外息子想いだよな」
「アレのためではない」
わかってるよ。
えー。
……行くの? 俺が?
えー。……えー、なんだけど。
行く……か?
行って何になるんだ? ……前にも述べたけど、設計図関連はぶっちゃけ持ってる方が悪いと思うし、エニエスロビー襲撃に関しちゃ無辜の海兵というか、マジでただただ正義を全うしてる海兵がしこたま犠牲になるからなぁ。
そこに俺が行って何ができるって話で。
何より、俺がいたら……「生きたい!!」ってならないんじゃねーかなぁ。
アクア・ラグナに対してもやることねーし。
俺お尋ね者だけど、海軍にはほとんど喧嘩売ってないからそこまで危険視されてねーし。
まぁ……近くに行くだけは、行ってみる……か?
杞憂だった。
何がって、W7やエニエスロビーに俺が行ってしまうことによる影響に関する諸々が。
なぜって。
「──レコダ。見つけたぞ」
「いやホントに。しかもバナロ島なんだよね」
何の冗談だ、とは思う。
下見のつもりだった。ゼハハが潜伏してないかを見るための。
そうして立ち寄ったこの開拓村に、あの水上バイクでふらっとやって来たのがエースである。
そして……何の冗談か、バッシバシに殺気叩きつけられてる。
「何用?」
「なんでサッチを狙ったのか。詳しく話せよ」
「恨みがあったからだ」
「嘘だな。アンタの足取りを辿ってきたが、サッチとの接触はどこにも見受けられなかった」
「あー。最近いねーと思ったら、そんなことしてたのか。暇かよ」
「答えろ、レコダ」
冗談が通じないね、コレは。
しゃーなし。
「ポートガス。アンタ、海賊なんだろ? ──聞きてェ事あるなら、拳で来いよ」
「お前は違うだろ」
「俺が違ってもお前は海賊だろ。モーガニアだろうがピースメインだろうが、欲しいモンあったら自分で獲りに行くのが海賊だろう」
「……」
熱が生まれる。
エースの熱だ。
「ようやくやる気になったか。──んじゃ、ポートガス。決め事をしようぜ」
「今更、何を」
「俺が勝ったら、俺はアンタを白ひげのもとに送り返す。そんで、サッチの心臓近くに配置してある爆弾を爆ぜさせねぇ代わりに、お前を白ひげの完全な監視下に置いてもらう」
「……」
「アンタが勝ったら自由だ。俺から情報を引き出すも、サッチの爆弾を解除させるのも、殺すのも。──シンプルだろ」
「……ああ」
ま、好都合か。
ここで俺がエースを捕まえちまえば、少なくともエースがインペルダウンに収監されることはなくなる。
「
「火拳!! っ、なんだと!?」
いつもの見てから防御じゃない。
予め用意していた天板に火拳がぶつかり、俺の後方へと逸れていく。
「ポートガス。お前基本的に初手ソレだからな。読みやすくて助かるよ」
「……そうかよ」
では。
「
vsロギア用の技で、まずエースを包み込む。
ボシュッと音を立ててその球体から逃れようとした彼は、けれど球体の壁にぶつかって停止せざるを得なくなる。
「ッ……!」
「メラメラの実。ロギアの中でもちょいと異質なこの実の真価は、身体の炎化。何も無くても燃焼できる、ってな実はすげーことでよ。でも、だからこそわかることもある。──アンタは熱じゃねぇんだ」
「
「あくまで火。火そのもの。熱源も酸素も可燃物も無い火だからこそ──炎が通らねェと、その威力は半減も良い所だ」
メラメラの実の炎は核融合によるモンじゃない。燃え方を見ても、酸化による燃焼だと断定できる。
けど、多分酸素は必要ない。メラメラの実は「火ってこうなんだよ!!」の代表例だろう。海燃やせるし。
モクモクと決着が付かない、って言われてるのは多分、煙が火から生じるものだから。仮にメラメラに酸素が必要なら、モクモクとの相性は最悪なはずだ。煙が炎を消す、なんてのは大して珍しい話でもないからな。
というわけで、vsメラメラ対策でやるべきことはただ一つ。
「
「出られねェ……!」
密閉して、圧し潰す。
圧し潰すって言っても相手はロギア。大したダメージにはならないけど、動きを封じられるだけデカい。
知らないだろう、ポートガス・D・エース。
天空っつーのは、太陽の火を地上に届けさせないためのヴェールなんだってこと。
「……おいおい」
銃弾を避けて、閉じ込めたエースを移動させる。
どういう運命だこりゃ。まだ麦わらの一味は司法の塔を落としてないはずなんだけど。
「ゼハハハハハ! 今日のおれはツイてるな! 久しぶりじゃねェか、エース2番隊隊長! もしかして今ピンチかァ!?」
「ティーチ……? なんでこんなところに……それより逃げろ、ティーチ! こいつはお前の手に負える奴じゃねェ!」
「つれねェこと言うなよエース2番隊隊長ォ! 同じオヤジの息子じゃねェか! 家族のピンチだ、おれも手助けするさァ!!」
天空海闊。天網恢恢。
蘂降る桜で周囲の建物を揺らし、住民に異常事態を伝える。
「カタギを逃がすか。流石だなァ、革命軍!」
「革命軍!? レコダが!?」
「マーシャル・D・ティーチ。俺はお前に恨みが無い。大人しく立ち去ってくれるなら、お前にゃ特に何もしねーよ」
「ゼハハハ!! そりゃとんだ嘘もあったもんだ! 初めから!! おれを狙っていたんだろう、てめぇはよォ!!」
「
白ひげ海賊団襲撃時によく使っていたこれ。
実は弓を引くような動作は必要としない。ノーモーションで撃てる。あんなのパフォーマンスだ。
「っ! うぉ……お?」
「ウィーハッハッハッハ! 船長、まだ生身の感覚が抜けてねェのか! "空気砲"なんざ船長の身体を通り抜けるだろ!!」
「……いや」
「船長? ……ティーチ、そいつらはなんだ? いや、やっぱり最初の質問に答えろ。なんでこんなところにいやがる! オヤジの命令で動いてんのか?」
「ゼハハハハ! まぁそんなところだ。──そんでもって、ロバートの奴がそこの天害に殺されてよォ、おれはコイツを殺すためにここまで追いかけて来たんだよ!!」
「
「──ッ、ぎゃあああああ!?」
ゼハハの腹の中で天空が弾ける。
さっき通り抜けた天空だ。威力はそもそもが低いからな、内臓の近くで空気が破裂する痛みの方がメインだ。
「ティーチ!!」
エースの悲痛な声を背に、銃弾を避ける。
早撃ちにも程がある。避けた先にも銃弾があった。
今のが、ヴァン・オーガーか。
「ゼハハハハ……やっぱりか。やっぱりそうか……ゼハハハハハハ!! おれが闇なら、おまえは天!! 初めから仕組まれてたカードだ……!」
「
「ッ……なんだ!? 空!?」
うるせーんで押し流す。
周囲の奴ら……は、押し流せた。
けど、ゼハハは途中で止まる。
吸われたな。
「ハァ……ハァ……! オーガー、余計なことすんじゃねぇよ……! 相手は単身で四億が懸けられた首だ。政府への手土産にしちゃ充分だが、それなりのリスクもある」
「それなりのリスクとは、舐められたモンだ。俺がヤミヤミの実の能力知らねーと思ってんのか?」
「いいや。──アンタは知ってる。知ってるから可能性のあったサッチとおれの命を狙ったんだろ!? ゼハハハハ、だからこそおれもサッチに目を付けた。が、それを見咎められて、オヤジはサッチを別の艦に乗せちまったァ……ゼハハハ! 丁度いい隠れ蓑だった! 心から感謝するぜ、天害!!」
「礼は素直に受け取るよ。特に悪人からの礼はな。……"兇状旅"」
開拓地の住民が全員避難したことを確認して、落とす。
久方ぶりの隕石だ。
「は……この、
「ティーチお前、いつの間に悪魔の実なんか食って」
「いい加減察しが悪ィなエース2番隊隊長ォ! ゼハハハハ! だが、そんなアンタだからこそ信用できた! 欠片もおれを疑わねぇってな!!」
さて……どうするか。
今、エースから俺への信頼度はマイナス振り切ってる。心象最悪。
対し、ゼハハへのそれは下がっていってはいるだろうけど、まだ信じてるって感じだ。このままゼハハが口を割ってくれりゃいいけど、それはそれで史実をなぞりそうなのでNG。
「ゼハハハハ!! こっちには大義名分もある! そして、エース2番隊隊長との戦いで、ちっとは疲れてんだろ? なァ、天害!!」
「いやちっとも。つーか、カイドウ倒した時もドフラミンゴ倒した時もだけど、俺は疲れた事ねんだわ」
「あア、てめぇまで口裏合わせてんのか! エース2番隊隊長がカイドウを倒しただのなんだの……ゼハハハ! 冗談いうにも程があるだろ!」
「OK、マーシャル・D・ティーチ。ありがとう」
「おう?」
準備完了だ。
「
ゼハハを中心に、楕円形の球体が出現する。
死ぬほどダルい計算してたんで言葉が適当になってたかもだけど、まぁいつものことだ。許してくれ。
「……
「おう、お前の言う通り、初めからわかってたんだ。天と闇が相容れねえことくらい。だったら対策しておくだろうよ」
光を逃がさないのは、何もブラックホールだけじゃないって話。
「
そして、穴を開ける。
ゼハハの足元に。天と天を結んで──降らせる。
「ゼハハハハ……おい、嘘だろう?」
「安心しろ。行き先は海軍とかじゃねェからよ」
「……今か今かと──狙ってる、巨大な影は」
「そら海王類さ。
空も飛べねェロギアの対処法はこれで充分。ホントに引力操れるんなら天体とかを的に疑似ドフィができるはずなんだけど……現時点じゃできねェだろうから、これで終わり。
生身のゼハハを殺すのは難しかったけど、グラララ傘下から外れた能力者を殺すことがどれだけ簡単かって話ですよ。
「ティーチィ!!」
「そんでアンタはニューゲートの所に速達便だ。じゃあな、ポートガス」
──これにて、バナロ島の決闘、完!!