エルマルは……終わらねえっ!   作:ONE DICE TWENTY

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第22話 鮮明! 彼の答えと彼らの応え

 季節はめまぐるしく過ぎて……いかない。

 毎日に彩りがあるからかね。光陰矢の如ナントカにならない。

 

 時折、麦わらの一味の文通の連絡役となり。

 時折、ウェザリアで小技を開発し。

 時折、革命軍の革命に参加し。

 

 時折──海王類とコミュニケーションを取りに行く。

 

 いやさ。

 こっちの言葉がわかる、ってことは、俺疑似ポセイドンじゃん。あっちの言葉が聞こえないとはいえ、なんかできることないかなーって思って凪帯(カームベルト)に入り浸り、少ないとは思うけど餌やりなんかをしてどうにかこうにか意思疎通ができないかを試みる日々。

 ちなみにリヴァースマウンテンは双子岬に行ってラブーンとの会話も試みたけど、それは無理だった。アイツは普通のクジラらしい。むしろ肉声の方が通じた。どういうこっちゃねん。

 

 あとゾウにも行った。

 ズニーシャの声は聞こえなかったけど、こっちの声は聞こえているらしいのはわかった。雷ぞう、イヌ、ネコはいなかったのでもうワノ国へ帰ったんだろう。

 ガルチューはされなかった。っつーかバリバリ警戒された。なんでよ。ちょっと空から降って来ただけじゃん。

 

 それと……多分頂上戦争が起きてないからだろうけど、まだ海軍の元帥はセンゴクのまま。

 世界徴兵も起きていない。ズシズシ鬼門になる可能性あったからありがたいような、海軍っていうわかりやすい場所に居てくれた方が楽なような。

 

「んー」

 

 それにしても、というかなんというか。

 これ、どうしようかな。

 

 

 

 

 FILMシリーズでありながら、正確な位置の示されていなかった島、エレジア。

 既に彼女の歌が電伝虫から流れていたことは知っていた……というかニコ・ロビンが気付いていたけれど、特にどうしようもなくて放置してたんだよな。

 ……FILM REDさんのやべーところはその被害の広さで、世界の七割がうんたらかんたら。

 電伝虫のあの最悪な音質に関係なく発動するのがエグい。そんでもってウタ死んだっぽい描写あるのもエグい。いやウタの生死は良いんだけど、それってウタウタが再生成されるってことで……。

 

 見つけちゃったからには……うーん。

 別に悪政が敷かれてるわけでもねーし、俺寝ないしなぁ。

 

「しかし、ネーミングが皮肉過ぎるよなエレジアは。確かに哀愁漂ってるけど」

 

 うーん。

 とりあえず……ネズキノコ根絶やしにしてみる?

 

 

 

 見えたネズキノコ全部根元……菌糸の根っこから採っていく。

 いや気の遠くなる作業過ぎてな。もうよくね? エレジア一回ひっくり返すとかじゃダメ? グラララ呼んでくりゃ簡単じゃね?

 

 それか、楽譜強奪して燃やすか。

 いやそれが一番楽なのはわかってんだけど……んー。

 

「君……」

「あ、エレジア王じゃん。良かった良かった、今この辺の建物全部ぶっ壊して探そうとしてたところだったんだよね」

「……物騒な発言は置いておくとして……私がエレジアの王だったことを知っているのか……?」

「ああ。出て来てくれたなら話が早い。トットムジカくれ」

「……なぜあれの存在を知っている」

「古代エレジアを知ってるから」

 

 再三言うけど、FILM REDそのものはどうでもいいというか、二年の修行さえ経れば麦わらの一味&赤髪でなんとかできるだろう。ビッグマムは……知らん。ミロワールド無いとヤバいのは理解してるけど。

 それよりウタウタの実のランダムリポップがエグ過ぎる。ウタには普通に世界一の歌姫になってもろて、まぁウタワールドでもなんでも展開してもろて。

 

 ただネズキノコによる暴走と魔王復活だけ阻止すれば、特に問題なしと見ている。

 この孤島に一人でいてもらった方がよっぽど安全だ。ウタウタの実強すぎるから。

 

「そうか……だが、突然来た君にアレを渡すわけには」

「ところでこれ、何だと思う?」

 

 ──見せるのは、古ぼけた楽譜。

 元エレジア王はそれを見て目を見開き、「そんなはずは!」と言って自分の胸に手を当てた。

 

「なんで持ち歩いてんねん。助かったけどさ」

「ハッ!?」

 

 はい。

 FILM RED 完!!

 

 

 ちなみにこの技術はナミから教わった。財布の場所が分からない時はこれが一番! だそうで。勉強になります。

 

 

 

 

 そうして、ようやく目まぐるしく季節が過ぎて行った。

 二年。まぁ、たった二年である。

 

「おお、レコダ君。来てくれたか」

「びっくりするからやめてくんない? 飛んでる時に覇王色飛ばしてくるの」

「すまないな。大声を出しても届かないと思っての行動だ」

「俺ニョン婆からあんまみだりにここに近づくなって言われてんだけどね」

 

 女ヶ島がアマゾン・リリー。その端っこ。

 そろそろ二年だから誰かからアクションあるかなーって各地飛び回ってたら、来た。

 

 冥王から。

 

「修行は?」

「充分だろう。これならば、新世界にも──君にも通じる」

「俺には元々通じるだろ。ギア2くらいで充分通じるわ」

 

 で、件の彼は。

 

「ルフィ君なら、ルスカイナ島で最後の修行を行っている。それよりも──彼女から君に、話があるそうだ」

「話?」

 

 ガサ、と。

 ジャングルの木々を分けて……まず蛇が来た。

 えーと、回天土(エクステンド)の先はどこにしようかな、と。

 

「そなたが、運び屋レコダか」

「そういうアンタは、九蛇海賊団船長、ボア・ハンコックだな」

「……不遜な目じゃ。わらわの肢体を見ても、心を欠片も動かさない。加えて……見定めた死地に向かわんとするような鬼気」

「不躾にも程が無い? 初対面だよねはじめまして。でも俺アンタに用無いからさ、用件あるなら早めにしてくれ。特に理由も無くどっか行きたくなる」

「不敬……レイリー。そんな目で見るでない。わかった、わかった。用を言い渡す。とくと聞け」

 

 はいはいなんですか、っと。

 

「──未来を教えて欲しい。いずれ(きた)る、女ヶ島に訪れる不幸について」

 

 ──……。

 ……。

 

「いやそんなの知らないけど」

「そなたは未来人だと、レイリーから聞いた。限定的ではあるが、この世に起きることを知っていると」

「そんな嘘信じちゃうの? シルバーズ・レイリーつったって男だぜ、老人だけど。下心で噓吐くことくらい」

 

 覇王色の覇気。しかも俺個人向け。

 侮辱は許さないってか。はいはい。

 

「で、どういうつもりでそんな嘘吹き込んだわけ?」

「二年。君はどういうわけか、麦わらの一味の修行が二年で終わることを知っていた。それだけじゃない。今までに起きた全て。今まで君が起こしてきたすべてが──その説明で方を付けられる」

「度を超えた見聞色って可能性は?」

「無い。覇気を拒否している君はそれを習得することができないだろう? 無論、習得したのならば、可能かもしれないが」

 

 ……。

 んー。

 

「条件がある」

「なんじゃ。申してみよ」

「一つは、俺が言う未来を口外しないこと。ああ女ヶ島内で戦力強化とかそういう系はいいよ。ただ外部……特に海軍や世界政府に漏らさないこと」

「ふん。元々奴らは敵。漏らす理由が無い」

「二つ目は、俺の使う回天土(エクステンド)の接続先の許可を出すこと」

「エクステンド、とは?」

「簡単に言えば長距離移動の悪魔の実の能力かな。もう少し先の未来で、俺は何人かを安全な場所に飛ばす気でいる。けど、完全に安全な場所ってこの海に無いじゃん? だから、そのセーフハウスっていうかセーフ国家になってほしい」

「……それには男も含まれるか?」

「数人は」

「却下じゃ」

「じゃあ未来は教えない」

「……」

 

 つか、冥王さん。

 俺に未来が見えてる、ってとこまではいいけど……不幸まで、なんでわかるの?

 

 もしかして俺の目的わかってる? だとしたらもう老人全員嫌いになりそうなんだけど。ハレダスのジーサンだけは除く。

 

「……わか……った。わかった。それを呑む」

「へぇ、やけに物分かりが良いな。ルフィに絆され過ぎじゃね?」

「呼んだか? ししし!」

 

 ……。

 近づいてきたの、わからなかったな。ギア2で充分とか言ったけど通常状態で無理カモー。

 

「お前……誰だ? なんか聞いたことある声のような気がすんだけど……」

「ああ、俺はただの配達屋。ほら、定期的に手紙届いてたろ? あれ運んでたの俺なんよ」

「そうなのか! ありがとな!! おれ、あれのおかげでずっと頑張れた。……あいつらはあいつらで頑張ってるって知れたんだ。あれがなきゃ、どっかで躓いてたかもしれねェ。ホントにありがとう!!」

 

 ……やめろ、まっすぐなの。

 お前マジで海賊やめてただの船乗りになれ。

 

「さっきの件は、書面に認めてニョン婆に送っておく。それでいいな、ボア・ハンコック」

「ああ。構わぬ」

「──さて。では、ルフィ君。準備は良いか?」

「準備? なんの?」

 

 ああやっぱり。

 全部わかってやがる。この爺さんこーわ。もう近寄らんとこ。

 

「ハンコック。別れの言葉は」

「ええいうるさいぞレイリー!! わらわの……こ……じ、事情にまで口を出すな!」

「だが、この先そう簡単に会えるとは限らないぞ」

「ん? 何言ってんだレイリー」

 

 この言い争い、もうちょっと続きそうなので、各地に手紙を降らせる。

 内容は簡単。「時が来た。身支度を整えろ、麦わらの一味」。

 

 グロリオーサに降らせるのは少し先の未来。

 即ち、王下七武海撤廃と──(きた)るセラフィムという強化改造人間に関するレポート。

 

 九蛇だけ贔屓し過ぎ、ってことはない。

 俺から出した条件を呑んでくれるのなら、ここはかなりの好立地且つ好条件の国だ。

 

「る……ルフィ!!」

「ん? なんだ?」

「そ……そそ、その……わらわは……そな、そなたのことが……そそそそ、その」

「ここで口挟んだらアッブネエエエエ!!」

 

 技名無しただの武装色纏った小石投げ!!

 死ぬよそれ! 俺死ぬよそれで! 簡単に!!

 

「ふふふ、今のは君が悪い」

「いやだってなげーんだもん……素直になったところでどーせ通じないんだから言っちまえばいいものをさぁ」

「それが人心というものだ」

「まるで俺が人心わかんねーみたいに言うじゃん」

 

 冥王とこそこそ話をする。

 女帝の眉がこれでもかとヒクついている。

 

「っていうかアレだよな。九蛇の皇帝のクセに意気地なしっていうか」

「ええい煩いぞ外野!! ルフィ!! わらわは……わらわは、そなたのことが──好きじゃ!! 結婚してくれ!!」

「おう! ありがとう、おれも好きだ、ハンコックのこと! レイリーも、マーガレットたちも! ……おれ、海賊王にならなきゃいけねェから、結婚はできねエけど……好きなのは変わりねェからよ!!」

 

 はい終了。

 アレだな。カラーズトラップで無理矢理恋心芽生えさせるとかしないと成就無理だと思うよ。

 

 そいじゃァ──パン! と手を叩く。意味はない。

 

回星天土(エクスターテンド)!」

 

 地面に穴が開く。

 回天土(エクステンド)の改良版というか改修版というか、色々便利になった移動装置。

 

「おお!? なんだこれ! すんげー!!」

「──モンキー・D・ルフィ。この穴に入ると、シャボンディ諸島に降ることができる。今──各地。世界各地のお前の仲間の元にも、同じものを開いた」

「シャボンディ諸島?」

「後は任せる。その穴は二人用……2人入ったら閉じる穴だ。タイミングは自分で、だ」

 

 そして、俺は俺で浮き上がる。

 体内に「軽い天空」を充填して浮き上がる──生身の人間で在れば、気圧差でエラいことになる技。

 

「待てよ!」

「ん?」

「名前ー!! 聞かせてくれ! 手紙、届けてくれたんだろ、ちゃんと礼が言いてェ!」

「──教えない。覚える必要のない名前だ。お前はお前の道を突き進め、モンキー・D・ルフィ!!」

「あ、思い出した!! その声──ロビンが降って来た時の!!」

 

 教えないことに大した意味はない。

 どうせ誰かが教えるだろう。聞けば、だけど。

 

 ただ……この先で、俺とお前の道が交わらないことが、俺にとっての最良だから。

 

 教えはしない。

 あ、でも転生者的に言いたい言葉はあるな。

 

「来いよ、高みへ」

 

 俺の場合物理的高度だけどな!!!

 

 

 ……尚。

 実はエースとルフィが既に出会っていて、その言葉をエースが吐いたのを後から知って、のたうち回るなど。

 誰から聞いたって?

 

 エース本人だよ。

 

 

 

 

 

「グラララ!! なんだ、若僧。お前とおれの確執は消えたわけじゃねェだろう」

「いや流石に心配にはなるよ。何白ひげ海賊団やめたって。意味わかんないんだけど」

 

 さてそろそろ革命軍……というかドラゴンに対してやりたいことを言おうかな、と思っていた矢先のこれである。

 ヤメテ! 原作知識に無いことしないで!!

 

「白ひげ海賊団解散したってわけじゃなさそうだけど、なんでアンタ船降りてんの」

「流石のオヤジでも、寄る年波には勝てねェんだよい」

「グララララ! まァ、そういうことだ」

 

 偉大なる航路(グランドライン)はスフィンクス。

 グラララの故郷。原作においてはグラララとエースの墓の建てられていた場所。

 

 そこで、呑気に農家やってる大男と、呑気に町……村医者やってる不死鳥がいた。

 いやいや。

 

「白ひげ海賊団の全員が納得してる。新しい船長はエースだよい」

「知ってるよ。そのエースから聞いてきたんだから」

 

 いやね、襲撃っていう交流は途切れたけど、エース個人とは実は繋がりがあった。

 ゼハハに関する勘違い……というか俺の説明不足による蟠りが解けて、ただ歯切れは悪くも、一応、みたいな感じで。

 それで、ルフィがシャボンディ諸島行ったから、そーいや今どーしてんだろーなーって白ひげ海賊団のとこ行ったらこれですよ。

 

 おれが船長だ、ですって。もうちょっと歳食って髭が生えてきたら、白く染めるつもりだとか。

 そうだね、君の血筋的に髭は黒くなるもんね。

 

 じゃねーんだわさ。

 

「なんだ、本気で心配して来ただけかよい」

「寿命で死ぬ分には自然の摂理だ、特に何を言うことでもないけどさ。ロジャーみたいに病気で、ってんならちょいとあんまりにもだからな」

「小僧、前からだが……ロジャーだのおでんだの、とっくの昔に死んだ奴のことを馴れ馴れしく呼ぶのはどういうクセなんだ」

「ああいや……不快なら気を付けるよ。そんなことで心象悪くしたくない」

「もうとっくに最低値だよい」

「そりゃそーなんだけどさ」

 

 ……これ、どうなるんだ。

 バッキンガムとかウィーブルとか。

 もうわっかんないねーこれ!

 

「つーか、そうだ。聞きそびれてたんだけどさ、ニューゲート」

「あア?」

「おでんに俺のこと話したりした?」

「グラララ……何を言ってんだ、小僧。生まれてすらいないだろ、ガキが」

「いやそうだよね。じゃあロジャーか……。クソ、なんで死んでんだよアイツ」

「本当に馴れ馴れしいよい」

 

 光月トキの予言とマダム・シャーリーの予言については大体理解できたけど、おでんの日誌がまだよくわかってない。

 いや、おでんも……というかロジャーもシャーリー&海王類から聞いたクチなんだろうけど……その詳細部分がな。

 

「それで? 未来人はまた、何か有益な情報でも残してくれるのか? グラララ……今度こそ同じ轍は踏まねェよ、ちゃんと活かす」

「……もう確定したことは言えなくなったが、それでもいいなら」

「構わねェ。ティーチの奴がサッチを殺す、ってのも確定した未来じゃなかったしな」

 

 そりゃそうだ。

 じゃあ。

 

「ナワバリだ。ニューゲート、アンタの名の力が薄まったことで、ナワバリの効力も薄まる。……動くかどうかは未確定だけど、ビッグ・マムがリュウグウ王国の労働力を狙ってる。守護する代わりにお菓子10トン、ってな」

「グラララ!! ……成程。そりゃ、面白くねェ話だ。リンリンめ、おれのナワバリを……」

「本当に動くかは知らん。留意しといて、くらいだ」

「本当か?」

「いやだから、本当かどうかは──」

「そうじゃねェ。本当にそれだけかを聞いてんだよ、小僧。グララララ! そんな、若ェクセに死地を見定めたみてェなツラしやがって。何隠してやがる」

 

 だーから老兵は。

 

「寄る年波に勝てなくて隠居したんでしょ。首突っ込んでくんじゃねーよジジイ」

「まだ、世界を滅ぼす力はある」

「じゃあとっときなよ。ホントに滅ぼさないとダメな世界になるまでさ」

「前から思ってたが……お前、仲間はいるのかよい」

「いたら白ひげ海賊団に喧嘩なんか売らないだろ」

「グララララ!! そういう弁えはあるのか。ますます面白ェ」

 

 へぇ、おもしれー男、ってか。

 ジジイに言われても嬉しかねーわ。

 

「一度だけだ。一度だけなら、手を貸してやる」

「要らねえ。サッチ殺しかけたのとエース助けたのでトントンだろ。俺とアンタに貸し借りは無い。違うか?」

「ティーチのアホンダラに落とし前を付けた。勝手にだがな。グララララ……」

「そりゃ勝手が過ぎる。要らねーよ老害。呑気に畑掘って余生過ごしてな」

 

 覇王色じゃないけど、フツーに威圧が飛んでくる。

 はいはい怖い怖い。

 

「っと、そうだ、天害。さっきオヤジの体調が悪ぃならなんとかできる、みたいなこと口走ってなかったか?」

「なんとかできるかは知らんが、ちょいと凄まじいレベルの薬剤師のいる島と伝手があってさ。まぁなんだ、病死するくらいなら、それで生き永らえて……大勢の息子に最期看取ってもらうくらいの往生はあったっていいだろ、ってだけだ」

「グラララ……その伝手を紹介することで、お前に何の得がある」

「……何? 得が無いと病気の老人助けちゃいけないワケ?」

 

 沈黙が落ちる。天使が通る。

 なに? 俺なんか変な事言った?

 

「一悪いなら、九十九良くても悪い……んじゃなかったのかよい」

「馬鹿言えよ。獄中の犯罪者が病気になったら薬くらい与えられておかしかねーし、怪我したら治療されて当然だろアホ。なんで犯罪者だからって病人見捨てねーといけねーんだよ」

「……」

 

 インペルダウンの犯罪者だってそうだ。

 別に、罪を償うのなら、その気があるのなら、ちゃんと刑期全うして心入れ替えて出てくりゃいい。どんだけの凶悪犯だろうと、だ。そんで、その間に看守煽ったとか以外で怪我したり病気になったりしたら治療受けて良い。あそこ人手不足管理不足で中々難しいかもしんないけど。

 

「今生の善悪だけで天賜の病気が罪になるモンかよ。あんまふざけた事ばっか言ってると怒るぞ流石に」

 

 怒れないけど。

 

「……グララララ!! そうか、そういうことか! 小僧……どうにもどこかすれ違うと思ってたが──おまえにとって、人間は、ただそれだけで生きる価値があると──そう思ってんだなァ……」

「何その感服したみたいな言葉尻。やめろ気持ち悪い。で? 不死鳥のマルコ、アンタだけでニューゲートの病気治せんの?」

「……いや。オヤジが船に乗ってた頃からずっと悩んできた問題だよい。腕の良い医者や薬剤師とやらを紹介してくれるってんなら、藁にも縋りてぇ」

「ああ、最初からそれでいいだろ」

 

 回星天土(エクスターテンド)を開く。

 接続先は、トリノ王国。

 

「これ、しばらくここに設置しておくから。ああでも、俺に何かあったら突然消える可能性あるから、場所の記憶はしておけよ、マルコ。飛べるんだ、橋渡しはアンタにしかできねぇ」

「わかってるよい。……けど、やっぱり何かあるんだな」

「今のは物の例えだっつーの。……はぁ、アラバスタでもそうだったけど、なんで人助けにこんなカロリー使わなきゃなんねーんだか。一切理解できん。じゃあな、養生しろよ」

 

 子供も老人も、救うに然したる理由は必要ないだろ。

 

 別に若者だって無辜の民なら助けるけどさ。

 

 

 

 

 

 ずーっとずーっと、会わないよう会わないようにって避けていたんだけど、ついにこの日が来てしまった。

 

 大人しく手を上げる。

 

「──お前が、運び屋レコダだな」

「なんで初対面で"威しの道具"突きつけられてんのかな、俺」

「理由は、お前が一番よく知っているはずだ……」

 

 赤髪海賊団。

 体内に「軽い天空」を生成する奴、結局風を任意の方向に吹かせられないとあんま意味ない、って理由で砂岩ウォークしてたら、あわや狙撃されるところだった。

 やめてくださいしんでしまいます。

 何用ですか。

 

「いやマジでわからん。なに? ロジャー関連?」

「……」

「ごめんマジでわかんないんだけど……あ、エレジア関連?」

「……」

「ちょ……ちょっと待ってね。えーと、赤髪海賊団関連で俺なにしたっけね」

 

 ダメだ。

 わからん、コイツの「知っていること」次第では、俺はもうやらかしまくってる。

 でも表面上だとそれくらいだと思う。予言関連とウタ関連。それ以外に俺何にもしてないと思うんだけど……な、何かな。

 

「コレだ」

 

 言って、目の傷をなぞる赤髪さん。

 ……あー。

 

「もしかして自分でやりたかった……とか? だったらアレよ、一応アイツ飛ばした海域は覚えてるから、まー二年前のことだけどワンチャン生きてるかも」

「何か、勘違いしていないか?」

「……すまん、マジで何言ってるかわからん。もしこの叩きつけられてる殺気が実はただの興味で、俺を狙ってる複数の射線がマジでただの威しの道具で、実は俺と宴会したいだけ、とかでない限り答えは」

「それが、答えだ」

 

 ……。

 

「すまん俺忙しいんだ。じゃあ──」

「まぁ待て。いいだろう、少しくらい。お前自身の話を含めて、肴になれ」

「馬鹿言え、俺ァ酔えねえんだよ! アンタらだけ酒飲んで浮かれて俺だけ素面とかただの地獄だろうが!」

「酔えない? 何故だ」

「そういう体質なの!」

「いや……先日寄った港町で、良い酒が手に入った。あの酒なら、どれほどの酒豪でも酔える。まずはそれを試してみないか」

「好意は受け取った! あんがとな! それがアンタら流の別れなんだろわかってるよ! ごめんなずっと会いに行かなくて!」

「よし、わかってくれたなら酒盛りだ。風の噂によれば、鷹の目ともやりあったらしいじゃないか。詳しく聞かせてくれ」

「誰!? その噂流したの誰!? あそこにいたのロロノアとペローナだけだよね!? それともヒューマンドリルがついに異文化コミュニケーションを!?」

 

 引き摺られる。

 なんてことだ、苦しくないのに振りほどけない。どうなってるんだ。

 あとここ空中だぞ!

 

「話がしたいだけだ。ある海賊についての──()()()()()()()()()をな」

「!」

 

 ……。

 ヤメテヨー。コワイヨー。

 

 でも、まぁ。

 いいか、それなら。

 

 だって起こらなかった話だし。

 

「おお、ようやく抵抗をやめてくれたか」

天世遮(てんやしゃ)回天土(エクステンド)!! じゃあな、赤髪! 俺は心の中でも嘘を吐ける嘘吐き野郎でね、見聞色なんか意味ねーんだよ! アデュー!!」

「その技、おれが一緒に入ったらどうなるんだ?」

「ちょぉ、あっぶねぇなオイ! 今閉じてたらアンタ胴体ブツ切れになってたぞ! 敵のよくわかんねー能力の中につっこんでくんじゃねーよ!!」

「おお、ここは……どこだ? 風向きからして、随分と遠くへ来たようだが」

 

 なに、この状況。

 え、劇場版始まる? 俺と赤髪漂流記? いや俺は全然どこへでも行けるんだけど。

 

 つーか赤髪海賊団がやべーよ俺が赤髪誘拐したことになってるよコレェ!!

 

「……ふむ。孤島に小屋が一つ。……周囲は断崖絶壁。凡そ人の住み得る場所ではないな」

「だからセーフハウスにしてたんだよ。……さ、帰るぞ赤髪」

「ここがどこなのか知りたい。教えてくれたっていいだろう」

「なんで教えなきゃいけねーのか教えてくれよ」

「おれが知りたい」

 

 うーん純粋!

 

「ここは東の海(イーストブルー)にある、名前の無い島。とある男が自分の足と共に夢を捨て、その夢をガキに託した島だよ」

「成程。面白そうな話だ。皆の所に戻ってから、詳しく聞かせてくれ」

 

 ……だーから。

 まぁいいか。どうせもう……なんだし。

 

「一夜だけな? それで解放してくれるって約束できるなら、それでいい。できないならアンタだけ送還する」

「ああ、約束する!」

 

 ほんとにィィィ?

 

 

 

 ──無論のことではあるが。

 約束はいとも容易く破られるのであった。

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