エルマルは……終わらねえっ!   作:ONE DICE TWENTY

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第23話 ドン! 天降り注ぐは星屑の調べ

 ドラゴン──及び、革命軍には俺のやりたいことを話してある。

 即ち。

 

「マリージョア襲撃……それはまァ、いい。問題はその後だろう」

「計画はこっちで立てる。それはいい。だが」

「会わないつもりなの!? 本当に!?」

「会ったら殺されようさ。ちったァすまねーとは思うけど、俺はこの命の使いどころってもんを決めてあってね」

 

 天を操る計画である。

 

「……レコダ」

「なんだ、ドラゴン」

「どうせ死ぬなら、吐いていけ。お前の知る全てを」

 

 そして俺の生前葬でもある。

 

「──黙って聞いてりゃ……ああもう、イライラしてきたッチャブル!! じゃあなに!? そこの男がヴァタシ達を煽りに煽ったのも! ヴァタシの機嫌よりその男の機嫌を優先したのも!! 全部全部必要なことだったって言いたいのドラゴン!」

「煽ったつもりは無い。俺は元から犯罪者嫌いでね、勿論テロリストも嫌いだ。ただの同族嫌悪だよ、ごめんな」

「ヴァナタは黙ってなさい!! これから死のうとしている男が、これから先の未来を見てる生者に口出してんじゃない!!」

「そりゃ正論だ。少なくともアンタらは未来へ生きる。が、12か国同時の"革命の炎"を煽ったのは頂けねェんで、ちょいとズラさせてもらった」

「な……ちょっと!? レコダちゃん!? それはやり過ぎじゃない!?」

 

 無血じゃねぇとダメ、とかいう甘ちゃんじゃねーが、やるなら成功させろよい。

 煽るだけ煽って主戦力別の所とか、そんなんブエナ・フェスタと変わらねえ。あれFILMシリーズじゃないから実在性の有無はわからんけど、あのトチ狂った戦争屋とやってること同じだ。

 

 煽るなら手伝えよ。火をつけたなら見守れよ。

 最後の最後まで。生きる意志を芽生えさせて、成否を遠い所で眺めて、成功したら良かったよかった、失敗したら残念だった、なんて。

 

 やってること世界貴族と変わらねーだろーが。

 

「お前……明確な裏切り行為だぞ、それは」

「じゃあここで裁けよ、参謀総長」

「……」

 

 睨み合いは──勿論、この会議のトップが止める。

 

「無駄な問答はよせ、サボ、レコダ。イワもだ。……お前達の主義主張が合致しないことくらいわかっている。わかって引き入れている。──レコダ。もう一度言う。お前の知っている未来を話せ。──兵糧攻め以降、何も話さないお前が、やろうとしている全てを」

「計画はそっちで立てるんだろ? いつも通り俺は単独行動で行かせてもらうよ。だから関係ない」

「関係ならある。お前がミスれば、革命軍全員が危険に晒される」

「危険を考慮してんなら最初から襲撃なんてすんじゃねーよ。ハイリスクハイリターンだろ、こういうのは」

「敵に銃で撃たれることと、味方と思ってる奴に背中を刺されることは違う!」

「裏切るとは言ってねーだろ。話したところでお前らが何にもできねーから言わねーっつってんだよ」

「サボ。レコダ」

 

 メラメラの実を獲得していない参謀総長。

 まだ俺に不信感バリバリのチャブル。おろおろしているコアラ。

 

 不和の原因は勿論俺で、解決の糸口も俺。

 

「……おかしいと思ってた。ヴァナタ……隠しているものの下に、もう一つ隠してるッチャブルね?」

「どうしたイワ、いきなり」

「ドラゴン。コイツ……ただただ死ぬ気じゃないわ。何か……天地をひっくり返すようなことをしようとしてる!!」

「野生の勘って奴か、エンポリオ・イワンコフ」

「ええそう! ヴァナタ……気に入らないけれど、それ以上に……変!!」

 

 変、ね。

 アンタに言われちゃおしまいだ。

 

「ドラゴン。選択をしろ」

「言ってみろ」

「古代兵器の在り処。ジョイボーイの訪れ。古の魔王の所在。そして、世界を滅ぼす力」

「……」

「全部、俺が握ってる」

「!?」

 

 ざわめきや驚きはドラゴンじゃない。周囲からだ。

 

「お前が欲する、小さな未来。マリージョアで起きる──俺に起きると思われる全てと、俺が握ってるもの。どちらかしか選べないとしたら──アンタは」

「お前に待ち受ける、小さな未来だ」

「……」

「古代兵器の在り処。ジョイボーイ。古の魔王。世界を滅ぼし得る力。()()()()()()()()()()()()()()()をするために、お前は単独行動を取ろうとしている。そうだろう」

 

 ……。

 

「諦めろ。ドラゴンさんはこういう(ひと)だ」

「──わかった。なら、作戦立案は俺がやる。全てだ。良いな。席に着け、今からマリージョアの攻略図を描く」

「いいだろう」

「ドラゴン。……ヴァナタ、天害ボーイを信頼し過ぎじゃないかしら。どうしてそこまで……」

 

 じゃあ、まず、だ。

 

「──今までありがとう。楽しかった」

 

 降る。

 準備をするために。さいならさん。

 

 

 

 

 って降って来たんだけどね。

 

「あの一瞬で入って来たの? ……なんで?」

「ヴァナタが言った通りよ。噓吐き! 不意打ち! 上等!! そんな奴があっさり認めるワケがない!! ヴァタシがそうなんだから、ヴァナタもそう!! だから皆より早く動けた!!」

「……一番遠い所にいるから、全く同じこと考える、って? そりゃ最悪だな」

「ヒー!! ハー!! ……それよりここはどこ。教えなさい。そして、すぐにでも連れ戻してやッチャブル!!」

「あんまり騒ぐな。──ここは赤い土の大陸(レッドライン)の端。神々の地近辺だ」

「……!!」

 

 くそ、一番隠密に向かない奴がついてきやがった。

 ……どうするかなぁ。

 

「エンポリオ・顔面縮小ホルモン!」

 

 頬に刺さった爪。

 それにより──チャブルの顔が小さくなる。

 

「さらに、エンポリオ・女ホルモン」

 

 身体も細く、しなやかに。

 さらにさらにとホルモンを注入し……隠密に向いた背丈になるチャブル。

 

「これで良いッチャブルね?」

「……良いけど、いいの? 帰らなくて。出来るよ俺、あんただけ戻すの」

「そうしたらヴァナタ、単身でことを起こすつもりでしょう」

「そりゃまァ」

「認められないッチャブル。一度革命軍に入った以上、ドラゴンは革命の炎をヴァナータに見出している。向かう先、理想の先が違うとしても、ヴァナータには革命の意志がある。……それに、ヴァナタ、言ったわよね」

 

 妨害電伝虫と電伝虫に、ダイアルダイアル。

 

「煽るだけ煽って最後まで見守らないのはヴァナタにとって悪……って聞いてんのかゴルァ!!」

「だから騒ぐなって。見つかるだろーが」

 

 準備を整えていく。

 世界会議までもうすぐだ。そこまで余地はない。

 

「……だから、ヴァナタにはこの"革命"を見届ける義務がある! 死地を見定めたとか言ってたッチャブルけど、ヴァナータはここで死んではいけない……聞けよ!! 一言でも良いから!!」

「聞いてる聞いてる。聞き流してるだけ」

「それは聞いてないってんだよ!!」

 

 小声でも叫ぶなようるせーから。

 んー……角度の調整がやっぱムズいな。現地行けたらいいんだけど……今は海兵の数がエグ子さんだからなぁ。

 希望を言うならチャブルじゃなくてカラスが良かった。アイツ良い能力過ぎる。次点でモーリー。

 

「はぁ……。疲れた。……ヴァナタ、それは?」

「簡易射石砲。俺の能力で作るモンだからな、資材要らずなのが良い所だけど、同時に火力もそんなに出ない。大事なのはこの"砲弾"。その中に詰まってるモンの方」

「……ただのシャボンにしか見えなッチャブルけれど」

「まぁまぁ。……俺を監視したい、見張りたい、ドラゴンの元に返したい、って意志はわかったよ。従うかは別として。それよりアンタのホルホルの実ってさ、抗利尿ホルモンに働きかける、とかできんの?」

「もしかして、誰かを漏らさせたい~~~ンナ!?」

「逆逆。そこから下垂体まで辿れたりすんのかなって聞きたいだけ」

「……詳しく調べた身体相手なら可能だけど、初対面の相手には無理ね。いくらヴァタシが人体のエンジニアだからといって、そこまでは」

「ああ無理ならいいや。見かけた天竜人全員に機能性下垂体腺腫発症させるとか考えたけど、できねーならそれでいい」

「怖ッ! 発想怖ッ!!」

「帰る気がないなら、まァ従ってもらう。あと別にここは俺の死に場所じゃねェんで、変な勘違いしてもらっちゃ困る」

「ヴァナタ、本当に……どこからどこまでが嘘なワケ?」

「天から地まで」

 

 ──世界会議まで、あと二日!!

 

 

 

 会議が始まってから、四日日!!

 

「あー。あー。聞こえますかー。テステスマイクのテスト中。──Hello, world.初めまして天竜人諸君。俺ァ天害レコダ。誰が名付けたか知らねーけど、天竜人を害する者としては最高の名前だよな」

 

 ギィン、と……チューニングの合ってない地域放送みたいな音質で響き渡る俺の声。

 あらゆる人々は音の鳴る方を見上げ、そして──さて、何を思うのだろうか。

 

「雨……? いや……血だ。血の雨だ!!」

「血!? ど、どういうことだえ!!」

「神々の地に、血の雨が降って来たァァアア!!」

 

 続々と「到着」していた各国の王たち。

 彼らの中の一部の人間は気付くだろう。その雨の「降り方」があまりにも似ていることに。

 

「それでは殺戮と行こうか、天竜人。俺を差し置いて天に座る愚か者よ」

 

 破裂する。

 血の雨。それに含まれた極小の天空が、地面に落ちた瞬間に弾け飛ぶ。

 その音はまるで銃声。

 ──パニックを引き起こすに十分な量の銃声だ。

 

「海軍! 何をしてるえ!!」

「王たちを守れ!!」

「わちき達を最優先する──ぇ?」

「──エンポリオ・豪水ホルモン」

 

 一瞬、血走った眼をして。

 そのまま倒れる天竜人。……別にホルモンじゃねーと思うんだけど。

 

「な、なんだ!? カマエル聖が突然……!」

「んんん~~~! DEATH WINK!!」

「風圧!? 能力者か!?」

 

 能力者だけども。

 

「ヒーハー!! ──ヴァターシは革命軍グランドライン軍軍隊長!! エンポリオ・イワンコフ!!」

「革命軍!?」

「さァ、行きなさい天害ボーイ!! 死地を見定めてるなら、死なない事!! わかったッチャブルね!?」

「あァよ。アンタも死ぬなよ、元奴隷」

「あア゛!?」

 

 食糧庫で爆発は──起きない。

 食材が勿体ないんでな。世界各地に降らせてもらった。

 

 その他、金だの武器だのも全部倉庫に穴ァあけて世界中の雨になった。上納されたんだ、下賜するのが筋だろうよ。

 

「懸賞金六億ベリー、天害レコダ!! ここは通さ──」

「あれいつの間に二億上がったん? 知らんかったわ」

「浮い……ぐあ!?」

 

 海軍を殺す気はない。

 だけど邪魔なんでぶっ飛んでもらう。打ち所悪くて死んだらごめんだ。受け身の練習しといてくれ。

 

「撃ち落とせ!! 奴は能力者、海楼石の銃弾をぶち込めば終わりだ!」

「じゃあアンタらが降ってもろて」

 

 論幽鬼(ロンガスト)回天土(エクステンド)

 隊列組んでくれてるからな。降らせやすいったらありゃしねェ。

 

『情報管制官副官! 既に町の東に脱出用の舩は用意してある! 所定の位置にボトボト落としてくれ!』

「あいよぅ」

 

 これ嘘一個目ね。

 今までありがとう、楽しかった。

 俺がそんなこと言うわけ無いじゃん、っていう。既にドラゴンには渡してあったんだ、攻略図。

 じゃあなんであそこであんな嘘吐いたかっつーと──参謀総長のためだ。

 

 記憶喪失は爆弾だ。大事なところで記憶思い出してみろ、それで数日寝込むんだぞアイツ。爆弾過ぎる。

 だから、今回参謀総長は仲間はずれ。コアラとかと一緒に別のところにいる。

 

 奴隷という奴隷の足元に回天土(エクステンド)を開き、俺が指示した場所に到着したらしい船に降らせていく。すまんが今回は海賊・民間人関係なしだ。選別する時間が無い。

 

「剃、指銃」

「それ言わない方が強いと思うんだよね俺」

「!?」

 

 躱す。

 言わないと発動できないならすまん。

 

絡天網(クラニネット)

 

 絡みつく天空で動きを封じ、さらに通る場所通る場所にそれを撒き散らしていく。

 

「震天」

「!?」

 

 クエイク。

 降らせるのと浮き上がらせるのをガンッガンにやる。

 三半規管を狂わせるのが目的……ではなく、ゲッポゥ対策だ。

 同じ場所を何度も蹴れないとゲッポゥは上手く行かないってゼファーに聞いたんで。

 

『情報管制官副官、大将が来た! こっちはその対応に全戦力を注ぐ! ──くまさんと王族を頼んだぞ!』

「あいよ」

 

 カラスはマジでいい能力持ってるよ。

 ススススの実。ニキュニキュに並んで言いづらいけど。

 

 ──パンゲア城に突入する。

 

 

 

 城内は城外と打って変わって静かなものだ。

 見回りの兵士は上を見ないんで、基本はずっと天空ホバリングでの移動。

 

 その中で……一人の少女を見つける。

 

「おい、ジュエリー・ボニー」

「──革命軍か。驚かせやがって」

「バーソロミュー・くまからの配達物がある。これ持ってエッグヘッドへ行け」

「は?」

 

 渡すのは、プレゼントボックス。

 あの日、意識の無いはずの男から託された──父親からの最後のプレゼント。

 何が入ってんのかは知らん。中身見るほど無粋じゃない。

 

「おい、どういう意味──」

「エッグヘッド内部。ルームNIKYU。そこに、お前の知りたいものがある。俺はベガパンクを庇う気はないし、あるいはベガパンクの命が危ぶまれるよォなことやろーとしてる身なんで何も言えないが……まぁ、すべては真実を知ってから判断してくれ。回天土(エクステンド)

「待」

 

 たない。

 ……あと気になるのはチャブルだけど……巧くやってくれよ。

 

 

 *

 

 

「とか! 思ってるッチャブルね、この快進撃は!! ヒー!! ハー!!」

 

 全てが読み通り。

 全てが目論見通り。

 

 悔しいほどに──犠牲が出ない。

 

「いた! いたぞ! あの顔のデカイ男だ!! あの男がエンポリオ──」

「うるっさい!! DEATH WINK!!」

 

 海兵を退かし、奴隷たちの鎖を切って──あの男が用意した射石砲を奴隷たちの足元に打ち込む。

 発射されるシャボンは地面に衝突し、割れ……その瞬間、彼の良く使う「回天土(エクステンド)」という穴が展開される。

 それは仲間のいる船の上空へと繋がっていて、だから安全かつ迅速に救助ができる。

 

 勿論奴隷たちにだけじゃない。仲間にも使える。

 その上。

 

『イワンコフ! 敵の配置図は完璧だ! 奴ら、レコダの回星天土(エクスターテンド)を越えられずに立ち往生してる!』

「当の本人はどうしたッチャブル!」

『既にパンゲア城に入った! 計画書通りなら、まだまだ降ってくる奴らがいる! だからイワンコフ、無理を言ってるのはわかってるが──』

「大将の相手でしょ!? ヒー!! ハー!! 勿論やってやるわよ!! だからカラス、これ、リンドバーグに渡して!」

『わかった! 頼むぞ!』

「だーれに言ってッチャブル! ヴァターシは革命軍G軍軍隊長! エンポリオ・イワンコフ!! ヴァタシが死んだら──罪を償い、シャバに出てくるニューカマーが露頭に迷う!! こんなところで死ねるわけがない!!」

 

 全てが完璧。

 全てに穴が無い。

 算段通りの堕天計画は、けれど「大将をどれだけ足止めできるか」にかかっている。

 

 ──あの男から渡されたのは、二つの薬。

 一つは豪水。もう一つはエネルギー・ステロイドという錠剤。

 どちらも瞬間的に生命力を消費して力を齎す禁薬。

 

 彼は「自分に使うな、天竜人に使え」と言っていたけれど。

 

「……いざという時は、ね……。テンションホルモンと同じと考えれば、ヴァターシなら……あるいは副作用を考えずに使える!!」

 

 無論、そんなものに頼らなければ勝てない、など。

 微塵も思っては、いないけれど。

 

「……やりてェこと、あるんなら……突き通しなさいッチャブル……!!」

 

 この数日で知った真実を背に、エンポリオ・イワンコフは戦いに身を投じるのである。

 

 

 

 *

 

 

 

(イン)天波槍(テンパランス)

 

 たかだか空気砲。

 されど空気砲。

 

 ロクに鍛えてねー天竜人には良く効くだろう、ってことで、チャルロス聖をぶっ飛ばす。

 

「──誰だ!?」

「て、天竜人をぶっ飛ばし……」

 

 暴れるな。鎖の根元を降らせた。あとは自分で解けるはずだ、しらほし姫。

 

「!」

「……あなたは……五年前の!!」

「レコランド!?」

「……レコダ、さん」

 

 鎖を解くしらほし姫。

 よし、全員いるな。

 

「あ……なたは」

「リュウグウ王国王家! "約定"は守れよ!!」

「……わかっている! お前と結んだ"約定"は必ず守る!!」

 

 なら、頼んだ。

 

魔軋蝮(マキシマム)回星天土(エクスターテンド)

 

 天竜人だけは浮かせて──社交の広場、その地面の全てが穴となる。

 その先にあるのは、海。女ヶ島のすぐ近く。

 

「お、おち、落ちる! パパン、パパン!! 助け」

「動揺するな! 癪だが、我々リュウグウ王国がお前達を生かす! 海中のことならば人魚に任せろ、人間!!」

 

 しらほし姫を含めて、その場にいた全員が海へと落ちた。

 泳げない者もいようが、フカボシらに全任せ。さらに天井にも同じ穴を開ける。

 

「は?」

「なんだ、穴!?」

「下は海だぞ!?」

 

 会議の塔。そこにいた王族が天へと落ちていく音を聞いて……よく聞いて、閉じる。

 

「身体が……身体が浮いて、どこにも行けないえ!!」

「おい、何をしているえ無敵奴隷!! 早くコイツを殺せ!!」

「……」

「命令を聞け、くま~!!」

「……流石。まだ意識があんのか。なら、エッグヘッドだ。ただまぁまだ辿り着いてないだろうから──少しでも余力を残せ。俺はそっちにゃいけねーんでね」

「……」

 

 消えるくま。ニキュニキュの実だ。

 意識は、もうあと僅か、かね。

 

「いやすまんな、ホント」

「今更謝っても遅いえ! 全てをめちゃくちゃにしてくれたその罪! 死で」

「ああいや、アンタらに言ったんじゃないよ。──いっつもゴミ箱扱いしてごめんな、って。凪帯(カームベルト)の海王類に言ったんだ」

 

 降れ。

 大丈夫大丈夫。二年間、欠片もゼハハの情報見かけてねーけど、生死確認してないから生きてる可能性はある。

 アンタらも、可能性だけはあるだろう?

 

 ……あとは。

 

 

 

 パンゲア城の天蓋を破り──降る。

 車椅子に乗ったコブラ王。その真横に。

 

「……久しいな、レコダ君」

「ああ。そんで、初めまして、五老星方々」

「……異邦人」

 

 ハ。

 なんでそこにバレてんだかね。

 

 知らねーけど。

 

「ネフェルタリ・D・コブラ。あの日吐いた真実の代わりに、今日。嘘を届けにやってきた」

「D……」

「すまねーな、ネロナ・イム。俺は別に未来なんて知らねーし、世界の真実も知らねーのよ。ただ──ちょいと守りたいモンがあってさぁ、そのためにアンタを邪魔しに来ただけのパンピーでね」

 

 だから、余韻も、余白も、すべて関係なしに行わせてもらう。

 

「噛降天手」

 

 貫く。

 病であり、足も思うように動かない──コブラ王の心臓を。

 

「レ……コ、ダ……君?」

「あんま信用してくれるなよ、王様。──俺ァ革命軍だぜ?」

 

 手を引き抜き──回天土(エクステンド)を開いて、車椅子ごと捨てる。

 

 血にまみれた手。引き抜いた心臓。

 

「……なんのつもりだ」

「今言っただろうが。俺は革命軍。世界政府加盟国の王なんだ、殺して当然だろ」

「くだらない嘘はよせ、砂と海の狭間の男(Re;coda)

「はン、俺はそんな大した奴じゃねーよ、創造主」

 

 変貌していく五老星たち。

 けれど、忘れてないか。

 

「星ってのはさァ──降るモンなんだわ」

「!!」

 

 降る。

 まるで首を垂れるかのように、床へと叩きつけられる。

 

「そう、それで思い出した。プレゼントがあったんだ」

「……」

「神から未来のプレゼントがさ。──掏天家(ブランチ)

 

 ──衝突するは、隕石。

 兇状旅のような小さなものじゃない。

 

 それはもうデカい隕石が、パンゲア城に直撃する。

 ……まぁしたにしては一切崩れないこの城。そりゃそうだ、俺がそんな火力出せるワケない。

 

 だからこれは、ただの合図で。

 

「アデュー、天空に輝く星々たち。良いネーミングだよな、五老星って。つまり過去に輝いた光だけで保ってるってことだろ?」

 

 返事は帰らない。

 ガン無視。オーケー、小物に用はないか。

 

 好都合だ。──逃げべ逃げべ。

 

 

 

『撤退! 撤退だ! 全軍に告ぐ──撤退しろ!!』

「ゼェ……ゼェ……ヒーハー!! 後ろに天竜人がいるから!! 大技を撃てない三大将!! ゼェ……はァ……取るに足らずッチャブル!!」

『イワンコフ、早く逃げろ!』

「もう弾切れだよ、そんなモン!!」

『!?』

「とかいうシリアスシーンに俺参上。あれ、豪水もE・Sも使ってないんだ」

「バッキャブルねヴァナタ! そんなの使ったらヴァナタの思うつぼじゃない!! 完全に仲間のフリをしておいて、狙ってたのは()()()()()()()!! ヴァターシがわからないと思って!?」

「俺が狙ってたのは革命軍の弱体化じゃなくて力持ってる奴全員の弱体化だよ。で? お前一人じゃ三大将はキツいか」

「強がりと本音! どっちを選ぶ~~~ンナ!!」

「どっち選んでももう無理が返ってくるんだろ? いいよ、アンタも護衛に回んな。回天土(エクステンド)

「っ、バッキャ」

 

 閉じる。

 おっけー。これで──マリージョアには、海兵と天竜人しかいなくなった。

 奴隷と王族は全員逃がしたんでな。

 

 そして、次々に革命軍も降らせていく。邪魔なんで。

 

「怖いねぇ~……天害レコダ。前に会った時とは別人だ」

「おれ達相手に、一人でやろうって? そりゃ無茶が過ぎるんじゃないの~?」

「……天害。おどれ……天竜人に何をして来た」

「半分くらい凪帯(カームベルト)に落として来た」

「オイオイオイ……やることやっちゃってんじゃないの~」

「え、待ってくれよ。それが罪に問われるのか? 俺ァ革命軍の暴れてるトコにいんのはあんまりにもあぶねぇと思って、でも天竜人なんざ浜に打つ波にも足を取られて転んで溺れるくらいの丁重に丁重に扱わねェといけねェ奴ら。だからよ、波風立たねェ凪帯(カームベルト)に降ろしてやったんだ。むしろ感謝されたいくらいだね」

「どうせなら全員やってくれたらいいんだけどねぇ~。それなら存分に戦える」

「ボルサリーノ、適当もいい加減にしちょれよ。冗談にならんぞ」

転天響(トラニスファー)

「!?」

 

 雑談中申し訳ないけど、充分量の天黒死(テンペスト)を吸い込んでくれたので、それを破裂させる。

 ロギア相手にゃ何の意味も無い技だけど──驚きはするだろ。

 

「……いつでも逃げられるクセに、逃げないのはなんでか聞いてもいいかい?」

「俺が今逃げたらどういう未来が来るかわからねーの?」

「未来が見えるのかぃ~?」

「オハラの再来になるだけだろ。無数の革命軍と、たかだか各国の王族が乗ってるってだけの舩。反乱分子として見るにゃじゅーぶん。船の場所までわかってんだ、火山弾降らせる準備はばっちりだろうよ、サカズキ」

「……おどれ、何故オハラのことをしっちょる」

「俺は色々知ってるよ。サカズキ、アンタの過去も、ボルサリーノ、アンタの友達も、クザン、アンタの親友も、その信念も。──問答無用だろう、三大将。ロギアだからって気ィ抜いてんじゃねーよ。一回殺されかけてんだ、とっとと殺し返しに来い」

 

 では、踊ろうか。

 

「後悔するなよ……! アイス(ブロック)両棘矛(パルチザン)!」

「ヤだねぇ~。言葉も態度も十面相なのに、感情が欠片も動いてない相手は……八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)

「海軍を舐め腐っちょることだけは伝わった……! 冥狗(めいごう)!」

「ちょ、オイオイ何やってんの、後ろに天竜人いるのは変わってないって……」

「おっととと……そうだったそうだった。危なかったねェ~」

 

 それでも止まらなかったのは赤イヌ。

 マグマの腕。それは──ボタボタと、すべてが降り落ちる。

 

「!」

「三大将の中で唯一アンタだけは封殺できるんだよね、俺。マグマってのはさ、降るモンだから」

 

 粘性の高いシュロロロみたいなものだ。

 蘂降る桜を常時展開しておけば、「氷」や「光」と違ってその形を保っていられなくなる。

 

 そして、降ったマグマは降ったマグマで。

 

「どわっと……オイオイ、降ってきてるじゃないの~……マグマ」

「これは……不味いねぇ~。あんな高さから降らせられたら、()()()()()()()()()()()()()

「チィ……!」

 

 生身に戻る赤イヌ。

 自分から零れ落ちたマグマは制御できねーっぽいからな。それがマリージョアの建物や、間違っても天竜人に当たれば色々おじゃんだ。

 

天明朝(ラニアケア)超銀牙弾(スーパークラスター)

 

 対して俺は破壊し放題。

 相変わらず火力は出ないけど。

 

 ただ──仕込みはできる。

 

八咫鏡(やたのかがみ)──ウ゛!?」

「おっと気を付けてくれ黄ザル。この辺、空気中にパイロブロインがこれでもかってくらい満ちててさ。いやまぁ今満たしたんだけど」

「海楼石の……!」

「だから飛ぶのは無しだよ。(そら)は俺の領域なんだから」

「アイスタイムカプセル!」

「"焦熱地獄"!!」

 

 焦熱地獄から持ってきた天空そのまんまを氷にぶつける。

 ハーハッハッハ。あそこで氷が存在し続けられるわけなかろう!!

 

 とか思ってたら普通に貫通して来たので避ける。まぁそうだよね、マグマ凍らすもんねその氷ね。

 

「アララ……本当によく避けるよね、オタク」

「ヒエヒエは特にわかりやすいからなぁ。まぁ光も避けられるんだけど」

 

 技名の無いビームを避ける。

 目で追える速度の光だ。遅すぎだろ。

 

 そして、コイツにはこれが使える。

 

天薔薇(テンローズ)自尊球(エルゴスフィア)

 

 vsゼハハに使った、vsゼハハ専用の技。

 だけど──光を逃がさない性質は、勿論ピカピカ対策にもなる。

 

「拘束だの、妨害だのと……! 小細工ばかりしおって……!」

「馬鹿言え、覇気使えない俺がどーやってロギアとマトモに戦うんだよ。小細工しなけりゃ戦線維持もできるわけねーだろうが!」

「別にそっちが怒る所じゃないねェ~」

 

 ……とはいえ。

 どれだけ小細工を磨いても、まぁ、俺に火力が無いことに変わりはない。

 赤イヌがなー。もうちょっと暴走してくれたら、天網恢恢からの天槍無窮でドーンが行けたんだけど、案外早く止まっちゃったのがなー。

 

「んんん~~~」

 

 パイロブロインのおかげでピカピカはほぼ対策終わってる。赤イヌは本気どころかマグマ化できない。青キジの動きは読める。

 が、俺からの攻めは一個も効かない。

 

「んんん~~~んんん~~~!!」

 

 膠着状態だ。

 だからこそ。

 

「んんん~~~~~~~~~~HELL WINK!!!!」

 

 ぶっ飛ぶ。

 三大将が、背後から、マリージョア方面に。

 

「流石だエンポリオ・イワンコフ。お前なら超超長距離の"まばたき狙撃"、成功させてくれると信じてたよ。回天土(エクステンド)

 

 そしてそれは、十分な距離まで逃げ切った、という合図でもある。

 

 こうして。

 俺達革命軍は見事世界会議を狙った堕天計画(俺発案じゃない)を成功させ、無事逃げ果せたのであった。

 

 

 

 

 ──ルルシア王国。

 反乱分子による革命の起きたその国に、俺はいた。

 

 まァ、バレバレだっただろう。

 ここが俺の死地だ、なんて。

 

 天空に……黒い影が見える。

 

「……すまんな、嘘吐きで。最初から再会する気なんて欠片もねーし、見返してやるとか、止めさせるとか……まるで"やってみろ"なんて顔しておいて──それさえ嘘なんだわ」

 

 軽い天空で空に浮かび。

 その黒い影を睨みつけ。

 

 ──覇気を、習得する。

 

 それはFILM REDで言われていた話。

 曰く、「この世界で不思議なことは悪魔の実だけ」。「それ以外のことで不思議なことは、全部悪魔の実で説明できる」。

 だから、まっこと勝手ながら……俺は覇気をそういうものだと決めつけた。

 まぁ、ただそれだけだ。

 誰かと繋がっている可能性のある力を有していたくなかったって、本当にそれだけ。

 

 で、今、ようやく。

 ようやく──死を目前にしたのだから。

 

「ポセイドン。プルトン。ウラヌス。……よくもまーこんなバラバラにギリシャ神話の神を集めたもんだよ。所属が全然違うんだ。──だからまァ、そこにもう一柱加わったっておかしかねーだろ?」

 

 ラニラニの実。

 天空を操る実。シッケアール王国跡地で見つけた前任者・雨男の日誌には、もう一つこんな文が添えられていた。

 

 天上を揺るがす力。星を読む力。これを以て、名を遺そう。

 我が名は──。

 

 

「ウラニア」

 

 

 降る。降ってくる、絶大なエネルギー塊。

 それを──持ち上げる。

 いつか言われた。カイドウか。

 

 お前は、止ませることもできるのか、って。

 

「ああ!!」

 

 答えよう。

 俺は天空人間。降らせるだけが俺の力じゃない。

 

 武装色に才能はない。

 見聞色に才能はない。

 

 けれど──今、()()の狭間にて!

 

 俺以外の王はいない!!

 

 

 だから、行け。還れ。

 そして壊れろ、マザーフレイム。

 

 全ては責任感だ。

 俺にあるのはただそれだけ。

 

 海面が、たった一メートルでも上昇したらよォ。

 海岸沿いにある町は! 今尚、海流の逆流で水不足に陥ってる町は!

 

 あァさ、だからこそこう言おう!!

 

 

 

「エルマルは……終わらねえっ!!」

 

 

 

 ただ、それだけのための。

 

 ──二度目の人生。

 

 悔いは無し!!




TO BE CONTINUED...
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