エルマルは……終わらねえっ!   作:ONE DICE TWENTY

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本編終了後
第4話 出国! 別れの砂と出会いの空


 その後。

 大量のダンスパウダーが王宮に運び込まれることも、三年間雨が降らないなんてこともなく──バロックワークスは解体された。

 恐るべきはアラバスタ王国軍。そして海軍。

 ペルさん……というかコブラ王が海軍へと連絡を入れ、来てくれたのがヒナ大佐。ちゃんと正義の人なだけあって厳正なる捜査が入り、出るわ出るわのB・Wのボロ。

 ただしオフィサー・エージェントが全員捕まえられたのかどうかについては定かじゃない。その辺全部海軍の内情扱いになっちゃったので、俺が知る由も無いって感じ。

 

 なお、遠方にあったクロコダイル所有の倉庫からダンスパウダーが大量に見つかったことで、クロコダイルの罪は確定したものとなった。ダンスパウダーって製造・所持で違法だからね。

 とはいえ誰がクロコダイルを殺したのかについてはまだ掴めていない様子で、入念な捜査が今も続いている。

 

 ──というのも俺、匿われているのだ。王宮に。

 

 フツーに海に出るつもりでいた俺をペルさんが掴んで王宮に連れ戻し、その後ずっと王宮住み。

 エルマルの様子や他の町村の様子はペルさんが逐一教えてくれるけど、なーぜか俺を外に出してはくれない。

 

 なーぜか、というか。

 

「レコダ。君がやったのか、という問いを海軍にされたら、素直に頷くだろう?」

「まぁ、そうなるね。それで下手人が確定した方がいいでしょ。アラバスタ王国にいつまでもいつまでも物々しい海軍がいたら邪魔だろうし」

「はぁ。……ということです、王よ」

「うむ。レコダ君は王宮に住んでもらうとしよう」

 

 となった。

 ……どこで心象を悪くしたのかわからん。

 

 なお、ビビ王女は速攻で帰って来た。

 マーを連れて。

 

 その時、なんだかとっても悔しそうな目で睨まれたことを今でも覚えている。

 

 こんな感じで続いた王宮住みも……今日で終わり。

 

 なぜって、逃げ出す準備が整ったから。

 

 いやね。アラバスタ王国はどうにかなったよ。

 でもそれによって未来はとんでもないことになったよね。

 

 原作で麦わらの一味が救った国、っていうのはとんでもなく多い。彼らが来なければ救われなかった国が山ほどある。アニオリや劇場版まで含めたらそれはもうエグエグの実だ。

 それをぶち壊しておいて……責任取らないってのも、ねぇ。

 

 もうこの国から脅威は去ったわけだし。ただコブラ王に関しては……あそこ屋内だからなぁ、俺じゃあどうにも。

 

 あと魚人島がヤバなんだよなぁ。為す術無し過ぎる。でもあそこも麦わらの一味が行かないとヤバかった国だし……なんとかしないとなんだけど。

 とりあえずまー。何も考えずに海に出て、それから考えようかと思う所存。頭の頭痛が痛い。

 

 そんな感じで。

 アデュー、アラバスタ。エルマルを頼んだぜ☆

 

 

 

 

 頼めなかった。

 

「誰に何を告げることも無く脱走とは……私達は別に君を監禁しているわけじゃないぞ」

「いやね、ペルさん。もう良くない? 平和じゃんアラバスタ。海軍が頑張ってバロックワークスも解体されて、ビビ王女もイガラムさんも戻ってきて……もう良くない?」

「良くない。我々は未だ君に何も返せていない」

「えーっと……何の話? なんか貸し借りあったっけ」

「……」

「わぁ怖い。怒っている気配だけわかるよ顔見えないけど」

 

 心なしかいつもより強い力で身体を掴まれて、王宮に連れ戻された。

 

 

「──申し訳ありません、ネフェルタリ王。未だクロコダイル殺害の犯人を見つけられておらず……」

「ああそれオ」

 

 口を抑えられ、引きずり込まれる。

 ヒナ大佐すんごい顔してたじゃん。あんだけ頑張ってくれたのにあんな苦汁を呑むような顔させちゃダメだって。まぁ逃げるから結局苦汁は飲ませるんだけど。

 

「君は、何度言ったら……」

「ああ、じゃあ。わかった。わかったよペルさん。俺を追い出したくなる言葉を俺が言えば良いんだ」

「はぁ。嘘吐きの君が何を言ったところで」

「──この王宮の地下にある歴史の本文(ポーネ・グリフ)を読ませて欲しい」

 

 緊張が走った。

 それは、何故その在り処を、というより。

 

「……読める、のか?」

「多少は」

「……」

 

 読めてはいけない文字だ。

 もし読める者が発見されたのなら──最悪、バスターコールも辞さなくなるほどの。

 

 どうだ、これなら。

 

「良いぞ」

「王!?」

「海軍は今帰った。そして、レコダ君。君がそれを望むというのなら、読ませてやろう」

 

 ……そんな快活な顔で言うことじゃないけど。

 何か……悟られてるか、これ。

 

「ペル」

「ハッ!」

「今から行く場所に、誰も入れさせるな。良いな」

「承知いたしました」

 

 この人……賢王だけど、同時に食わせ者だからなぁ。

 やめてくれー。馬鹿はまだ治ってないんだヨ。

 

 

 

 カツンカツンと音を立てて、地下への階段を下っていく。

 俺とコブラ王以外誰もいない空間。厚い岩盤の地下に広がる、巨大な空洞。

 

「改めて……礼を。レコダ君。君が居なければ、我が国はどうなっていたことか」

「いや……国民が国を守って国王に感謝されるとか、意味が」

「国から出た英雄に国王が感謝をする。何かおかしい所があるか?」

 

 そう言われると……無いけど。

 

「英雄に見えます? 俺」

「まだまだ子供。だが、少なくともビビよりは大人だろうな」

「ああまぁ、年齢は確かに」

「考え方。そして在り方の話をしている」

 

 ……。

 

「先ほど、海軍から報告が上がった。秘密結社バロックワークスのエージェントの内、唯一捕えることができなかった者がいると」

「……はぁ」

「ミス・オールサンデー。そう呼ばれていた、結社の最高幹部の一人だ」

 

 壁に耳あり障子にメアリー。

 単身で逃げることにおいては彼女の右に出る者はいないだろう。

 

「彼女を逃がしたのは、君だな」

「逃がした、ってほどじゃないですよ。手を貸してもいない。ただ、この国から手を引く代わりに通報しないと約束しただけ」

「それだけではなかろう」

 

 して。

 

 辿り着く。巨大な立方体。

 不可思議な文字の刻まれたキューブの元へと。

 

 もうバレているようなので。

 何も隠さずに、左手を前面へと突き出す。

 

「……見えるか?」

 

 パチ、と。

 長いまつげが、掌底を撫でた。Yes、ということだ。

 

「取引をしました。これを読ませる代わりに、国から手を引いてほしい、と。最初はフラれたと思ったんですけどね」

 

 次の日、起きたら手に目が、腕に口があって。

 思わずミギー!? と叫びかけた。

 

「脱走を試みて連れ戻されて、ポーネ・グリフを読みたいと言い出してここまで連れて来られて。さて、どちらの策か」

「俺ですよ。俺が見せるって約束したんだ、なんとしてでも俺はここに来る必要があった」

「そうか。ペルから君は嘘吐きだと聞いていたが、今はとても正直者らしい」

「コブラ王に嘘を吐いても仕方がないんで」

「ほう? それはまた、どうして」

 

 手にあった目が……消える。

 身体のどこにも、耳や目が生えていないことを確認する。

 

 ……空気を読んだか、フツーに読み終わって撤退したか。

 もうこの国にはいないかもなぁ。

 

「国王ネフェルタリ・D・コブラ。俺がこの国を出る理由に、その辺色々絡んでくるんで」

「……聞こう」

 

 さて。

 じゃあ、まぁ。

 ゲロりますかね、色々と。

 

 

 

 

 地下空洞から出て来てすぐ。

 

「ペル」

「はい」

「レコダ君を、海軍のいない港まで連れて行ってやってくれ」

「は……それは、どういう」

「レコダ君。船はいるかね?」

「いや、俺飛べるから大丈夫」

「そうか」

「王、どういうことですか!?」

 

 俺とコブラ王の話し合い。

 そして「取引」は決着した。

 

 故に俺は、晴れて──お尋ね者となる。

 

「そうだ、一目でいい。ビビに会って行ってはくれないだろうか」

「……いやぁ、ダメでしょ。お尋ね者が王女様に会うのは」

「それは……そうか。その通りだな」

 

 これで俺とコブラ王は共犯者だ。

 

「んじゃ、ペルさんが機能しなさそうなんで。コブラ王、エルマルは」

「ああ、必ず守る」

「お願いします」

 

 俺から提示した条件は二つ。

 一つは、エルマルを枯らさないで欲しい。

 

 もう一つは未来の事。

 

「──ハ」

「んじゃね、ペルさん。今度こそマジのお別れだ。賞金首にはなるけど、海賊やるつもりはないからさ。便りは無いものと思って欲しい。ああまぁ、海軍に捕まったら便りになっちゃうから、マジで便りが無いのが便り状態になるね」

「ま……待て。レコダ、君は!」

 

 ちゃんと報われるべきだ。

 なんて言葉を聞き流して、砂岩ウォークで空に出る。

 

 追いかけて来ようとするペルさんは、コブラ王が羽交い締めにしてくれた。

 

「──負けないから!!」

 

 声は……ちょい、王宮の上の方から。

 そこには、窓を開いたビビ王女の姿が。

 

「あなたに負けないくらい、強くなるから!!」

「そりゃあ無理だ。なんたって王女様」

 

 能力を使う。

 降らせるは──花。

 

 花の雨。

 

「俺はもう負けてるからな。賢さも、健気さも、心の強さも。アンタの方が数千倍凄いよ」

 

 あの日、俺を呼び出した時点で、ビビ王女の勝ちだ。

 俺が何も察せずに逃げ出した時点で、俺の負けだ。

 

 既に勝ってる奴に負けないのは無理だよ、ビビ王女。

 

「アデュー、アラバスタ王国!」

 

 今度こそ。

 俺は、生まれ育った国アラバスタを抜け出すのだった。

 

 

 

 

 懸賞金9000万ベリー。

 それが俺に懸けられた金額。懸賞金8100万ベリーのクロコダイル殺害の罪で全世界指名手配。

 まぁ、妥当ではある。

 

「それで、生まれ育った国を抜け出して……どこかアテはあるの?」

「実を言うと、マジでなんも考えてない。ただアラバスタがいつまでも物々しいのヤだったから出て来ただけ」

「フフ、おかしな人」

 

 果たしてどこから見ていたのか。

 砂岩ウォークで空を飛んでいた俺に掛かった声は、ニコ・ロビンのものだった。

 いつの間にか俺に耳と目と口を生やしていたらしい。

 

「そういうけど、そっちはアテあんの?」

「いいえ。また誰かの陰に隠れて、ひっそりと生きるつもり」

「……今、なら俺と一緒に行く? とか言おうと思ったんだけど、一緒に行くメリット皆無過ぎて止めたわ」

 

 航海士もいなければ信用も無い。

 オハラの悪魔とアラバスタの殺人犯。一緒に行動して何になるってんだ。

 

 麦わらの一味にお届けできればそれが一番だけど、まだ結成もされてないし、第一アラバスタ絡みなしでいきなり送り届けたら両者大混乱だろ。

 

「でも──あなたの行くところには、歴史の本文がある」

「いやそうとは限らない」

「それに、もし私が……誰かを通じて、あなたがあの文字を読むことができる、と海軍に通報したら、どうなるかしら」

「懸賞金跳ね上がるだけじゃない?」

「本当にそれだけ? ──特別な出自でもないあなたが、あの文字を読むことができる。それが知れたら、海軍や世界政府は」

「……アラバスタとエルマルを標的にする、って? ……おいおい脅しも良いとこだな。俺ちゃんと約束守ったよね??」

「クロコダイルから、次の仮宿を見つけるまでの間の繋ぎ。あなたはとても都合が良い」

「どこが? 俺船も持ってないんだけど」

「船無しでこの海を渡ることができる。たったそれだけでも有用ではなくて?」

「確かに」

 

 スカイウォークとかゲッポゥとかと違って俺の砂岩ウォークはほとんど疲れないしな。

 人を抱えて運ぶこともまぁ可能ではある。

 

 ある、が。

 

「自分で言うのもなんだけど、俺結構危ない事する気満々だよ?」

「例えば?」

「七武海とか四皇に喧嘩売る的な」

「……」

 

 だってそうなる。アラバスタ後に麦わらの一味が救う国々を考えると、自ら危険に首を突っ込みまくる結果になる。歴史の本文が無い島も多い。

 そんな俺、本当に隠れ蓑になるか?

 

「どの道あなたは、私を守らなければならない。故郷が火の海にされたくないのなら」

「バスターコール被害者がバスターコールを笠に着るのか……」

「使えるものは、なんでも使わないと。この海じゃ生き残れないもの」

 

 あー。

 んー。

 

 ……リスクの方が流石にデカいなぁ。

 元々ネフェルタリ王家は神仏様の印象悪い国だ。

 そんな国の村から歴史の本文を読める奴が出たとなれば……すわ、国家の隠れ蓑の裏であの文字を研究しているのでは? となってもおかしくはない。

 

 俺が読めるとか言ったの、超やらかしだねこれ。

 

「わかった。一緒に行こうか、ニコ・ロビン」

「物分かりが良くて助かるわ」

「けど、人質取った気でいるならこっちもやることやっからな」

「ええ、わかってる。私にとっても、あなたはクリティカル」

「ヤな関係だことで。……で? 今どこにいんの?」

「ログポースの示す先は、ジャヤ」

「咲かせた部位からの距離とか方角とか出せないんだ……」

 

 ということで。

 仮宿の繋ぎ扱い兼互いを脅し合う仲で、ニコ・ロビンが仲間になりました。

 

 ……ペルさんからの落差エグ。

 

 

 

 

 ジャヤ。

 ニコ・ロビンが持っていたログポースに溜められていたログが指し示す方向は空。ちゃんと空島だった。

 

 俺もニコ・ロビンも治安悪い酒場には欠片も興味が無いので、そのままの足で空島に向かう。ちなみに彼女が乗っていた、クロコダイルが討伐したというナントカ海賊団の船は乗り捨てた。

 愛着も無ければ名前も知らない船だ。ノックアップストリームに耐えられる強度も持たないようだし、俺飛べるし。

 空島にも天気はあるので、ラニラニの実はちゃんと効果を発揮する。

 

 

 が、である。

 

 正直な話、俺がクロコダイルに圧勝できたのは、完璧に能力の相性だ。

 まだ完璧な雨を降らせることはできないとはいえ、「血でも砂は固まるだろ」理論を使った初見殺しとさらに別のものが降ってくるという二段初見殺し。

 悪魔の実がなければ俺はちょっと剣と棒術が得意である程度のただのガキであり、……ああいやまぁチート能力持ち転生者ではあるけれど、つまりその相性が無いと、普通にガキってことである。

 

 っていうかヤハハにルフィ以外勝てるの??

 同じ自然系ならワンチャンマンだけど、ヤハハさん一応ちゃんとクソ強くてぇ。

 

 多分だけど俺は「感電死」も「心肺停止」もしないのでそこは大丈夫なんだけど、雷に打たれて火傷は普通にすると思われるので対策が必要。

 空島を後回しにする……のは正直アリ。覇気をちゃんとモノにしてから。せめて武装色を使えるようになってから、来る。ヤハハさんが空島をぶっ壊そうとするのは三年後なので、その間他の所に行くのはアリ。アリヨリのアリコさん。

 

 ロングリングロングランドには一切用がなく、W7も別に行かなくていい。

 というか鬼門。スリラーバークもシャボンディ諸島にも用は無くて、その後に続くルフィ一味の大冒険にも用は無くて──の、魚人島。

 

 無理……じゃね?

 せめてシャボンディ諸島で冥王探して覇気教えてもらうとか……どうやって? 何の縁で?

 

 コーティング……する船ないし。

 魚人島、歴史の本文的には重要なんだけど、俺とニコ・ロビンじゃ行く術がない。

 その次となるとゾウで、正直これが一番行きやすい……けど歓迎される気がしない。あとログが溜まらないので発見は困難かもしれない。扉絵にあった海底遺跡は魚人島と同じ理由で無理。

 

 その次がホールケーキアイランドで、その次がワノ国で。

 

 キッツ。

 

 となってくると、空島でダイアル手に入れるのがかなり効率よく見えてくるんだよな。

 ヤハハさんはルフィに任せて、俺達はこそこそダイアルとポーネ・グリフに辿り着いて……。

 アラバスタ及びニコ・ロビンの一件がなくとも、麦わらの一味はジャヤには辿り着ける気がする。そんでクリケットのおっさんから話を聞けば、ニコ・ロビンの助言が無くても空を目指すだろう。

 

 うん。うんうん。

 

 よーし。

 

「何も考えてない、って顔ね」

「嫌ならこっから海に落とすって手もある」

「可愛らしいと思っただけ。気分を害したのなら、謝るわ」

「美人に可愛らしいって言われてヤな気分になる男はいないよ。ありがとさん」

 

 砂岩ウォークで白海に穴を造り、さらにそこを砂岩ウォークで突き抜け、ミルキーロードの隙間を縫ってさらに白々海まで、一気に飛び出す。海雲はフツーに溺れるからな、俺達。

 ちなみにニコ・ロビンは今俺がお姫様抱っこしてる。美人であるのは事実だからね。うん。プロポーションに対してちょっと若すぎるのがネックだけど。

 

「へそ!」

「へそ~」

「え?」

 

 コニス……じゃないけど、スカイピアの住民だろうことは間違いない。

 特徴的な羽根と天アドヘア。

 

「青海からのお客様であっていますか?」

「ええ、まぁ。ここがエンジェル島で?」

「そうです。……その感じですと、既に案内は受けていらっしゃるのでしょうか?」

「はい~。天国の門で、心優しい人に会いまして。空島全体の簡単な案内を受けました」

「それはそれは。では、いかがいたしましょうか。必要であれば町への案内もできますが……」

「ああ、大丈夫です。とりあえず今はエンジェルビーチの綺麗さを堪能したいんで」

「わかりました。何かお困りごとがありましたら、ここから東に行ったところに雲小屋がありますので、そこへ」

「ありがとうございます~」

「いえいえ。では、へそ!」

「へそ~」

「え?」

 

 名前は聞けなかったけど、下心とか害意の無い良い感じの人だった。

 ……さて、こっから直でアッパーヤード……は、厳しいかな。遠回りして行ったとしても結局はヤハハさんのマントラに引っかかるだろうし、というか今も引っかかってるだろうし。

 

 とりあえずニコ・ロビン用の食料とか飲料の買い出しかなぁ。できればダイアルも買いたいけど、そういえばここ通貨違うんだっけ。天国の門以外で換金できるじゃろか。

 

「ねぇ……へそ、って?」

「へそはへそだけど。……なに? そんな露出しておいて、へそも知らないワケ?」

「……」

 

 ニコ・ロビンの目が細められる。

 こっちの真意を探ろうとしてる感じだな。

 

「ところでニコ・ロビン。危険極まりないショートカットと安全だけど時間のかかる正規ルート、どっちがお好み?」

「それは勿論、後者」

 

 だよね。

 

 

 

 

 

 一週間後。

 エンジェル島の街中で「生活」をする俺達の姿があった。

 

 いやー、エクストル換金所が近くにあって良かった。あとニコ・ロビンがお金持っててよかった。なんなら俺無一文だったからね。運び屋レコダ君の溜めたお金は僅かでしかないし、それらはコブラ王に預けて来たし。エルマルへの援助金の一部に、って。

 そんな感じでエクストルを手に入れた俺達は、当面の生活費を稼ぐための職に就いた。

 俺はまた怪力を活かして雲切場での工事の手伝い。ニコ・ロビンは……知らん。「勝手にやらせてもらうわ」らしい。まぁそうそう暴力沙汰は起こさないだろうし、ここにはオハラの悪魔を知っている人間もいないので気楽に過ごせるだろう。

 

 なお、住居は一軒家……ではなく、原作には多分登場してない集合住宅に住んでいる。

 土地の限られた空島だ。あってもおかしくないだろう、と思って探したら密集してあった。県営団地感が凄いある密集集合住宅地だった。

 

 そこの一室を借りての生活。

 男女の生活とはいえ、間違いは起きない。俺からすると若すぎるし、ニコ・ロビンからしてもまだ俺は子ども扱いだろうからな。

 

 なお、がっつり不法入国者である俺達だけど、今のところ通報されたり裁きの地に誘導されたりもしていない。直で裁きが来ることもない。

 

 一応警戒してるんだけど……なんというか、マジ平和。スナワニ来る前のアラバスタくらい平和。

 いやあっちの方が危なかったくらいだ。

 

「レコダ君、今日もお願いするよー!」

「ういっすおやっさん。今日は縦すか横すか」

「縦で、すぱんと!」

「あーっす!」

 

 倫理観が高いというべきか、島雲の切り出しは、けれど巨大なものは手伝わせてもらえなかった。とはいえバイト志願に来た俺を見た現場監督のおやっさんがとりあえず実力を見せてみてくれ的なことを言ってくれて、俺の怪力と無尽蔵レベルのスタミナ、そしてペルさんから習った剣の応用による島雲の美しい加工から歓迎を受け、島雲の中でも階段や家といった細かい作業の必要な雲切を任されている。

 今ではすっかり職人扱いだ。……といってもマジで縦横斬ってるだけで、細かい造形はなんもやってないけど。一応エルマルでの装飾品作りを眺めてたのが役に立ってる感はちょっとだけある。

 

「へそ! 今日もありがとね、レコダ君」

「いえいえ働かせてもらってんのこっちなんで。んじゃおやっさん、へそ~」

 

 なお、バイトは時給制ではなく歩合制である。

 だから早く終わらせればそれだけ自由時間が増え、調べ物なり小細工なりができる……のだけど。

 

 どうせ何しても察されるのだから、もうオープンにダイアル屋に給料ぶっこむことにしている。

 

 なお、飲食はとったりとらなかったりだ。青海に詳しくないヤハハさんなら「そういうやつがいてもおかしくはない」と思うだろうし、というかそもそもまだ俺達に興味ないだろうし。

 

「おばちゃーん。炎貝(フレイムダイアル)一個と、衝撃(インパクトダイアル)一個ちょーだい」

「フレイムダイアルはいいけどインパクトはダメって何度言ったらわかるんだい。はい、フレイムダイアル」

「いや危険なことはしないからさー」

「危険なことにしか使えないんだよっ!」

 

 という感じで取り付く島もない。

 蒼海人に売らない……のではなく、俺がガキだから売らない、って感じだ。倫理観倫理観。

 

「後なんか他に珍しいダイアルあったりしない?」

「珍しいダイアルねぇ。……これなんかどうだい。操作貝(コントロールダイアル)だ」

「……それ狂乱貝(マッドダイアル)がないと意味ない奴じゃん」

「だからだよ。マッドダイアルなんて危険なもの取り扱ってないんだ、けどコントロールダイアルはある。珍しいだろ?」

「珍しいっていうか珍妙だよ最早それは」

「で、どうするんだい」

「買うけど」

「やっぱりね」

 

 いや買うでしょ。

 ……んで帰ったらニコ・ロビンからグチグチ言われるんだ。無駄なものを買うなって。

 

 無駄じゃねーし!

 

 

 

 無駄なのは認める。

 

「それで、まだ話してくれないのかしら。あの日選ばなかった危険極まりないショートカットについてと、今私達が辿っている安全な、けれど時間のかかる正規ルートの本当の意味については」

「本当の意味もなにも、それがすべてだけど? ……それより、このコントロールダイアルおかしくね? マッドダイアルが無いと何の効果も無いってソレ、どういう生態系なワケ? ダイアルって死んだ貝だけどさ、元々生きてはいたわけじゃん」

「共生関係にあっただけでしょう。ちょうど、今の私達のように」

「マッドダイアルとコントロールダイアルはそんなに共生関係に無いのよ。マッドダイアル側はそれだけで完結するしな。……だからコントロールダイアルもコントロールダイアル単体で使い道あると思うんだけど……」

「共生はむしろ、単一で完結する生物に対し、後から来た生物が寄生する形で成り立つもの。だからあなたと私の関係が当てはまる」

「成程、仮宿暮らしのロビエッティにはぴったりってわけだ」

「それで? 話すつもりは無いのね」

「無いねー。嫌なら出て行けば? ここでポーネ・グリフ読めるって喚き散らかされても俺困んないし。青海降りるのに俺の手無しだとキツいと思うけど、それでも、っていうんなら止めないよ。他に海賊いないことは無いわけだし」

「フフ、ほら。共生関係でしょう?」

 

 相利共生じゃないのがポイントってか。

 うっせー。

 

「実際、ここで三年くらい過ごすのもアリではある」

「……」

「海軍も来ない、顔を隠す必要もない、真っ当な仕事がいっぱいあって、住民が穏やか。こんないいとこ中々無いよ」

「それは……そうね。認めるけれど」

「けれど?」

 

 ここで三年過ごして、麦わらの一味が来たタイミングでニコ・ロビンを押し付けて退散、でも俺は構わない。

 それなら多少の差異はあれど原作通りに進むんじゃないかと思う。「仲間になった歴が浅いから」なんて理由でW7やらエニエス・ロビーやらをスルーするルフィじゃないだろうし。

 彼女の様々な組織への潜伏期間を考えれば、三年だって苦じゃないだろう。俺も別に苦じゃない。というかニコ・ロビンをここに置いて俺はエルマルに戻るでも全然いい。

 

 ……それで、麦わらの一味が他の国々を救わなかったら、まぁ、俺がちょっかいかけに行けばいいわけで。

 

「あなた自身が……それを良しとしない日が来る。そう感じるわ」

「なんじゃそりゃ」

「フフ、ええ、あなたにはわからないでしょうね」

 

 意味深なことをおっしゃりなさる。

 まぁなんにせよ、今は雌伏の時って奴だ。蓄えて蓄えて、どーにかしてポーネ・グリフのもとまでニコ・ロビンを連れていく。

 俺はインパクトダイアルを手に入れる。

 別にヤハハさんを倒す必要はないので、気付かれてもパパっと青海に逃げちゃえばいい。

 

 ……問題があるとしたら、黄金の鐘楼に近づくためには建設途中のマクシムに近づく必要があるって点かな!

 ヤハハ。

 

 無理ゲーだろ。

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