エルマルは……終わらねえっ!   作:ONE DICE TWENTY

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第9話 判明! ラニラニの実の真の力

 単純な身体能力もそうだけど、雲に糸引っかけて進んでくるドフィに対し、俺は降ってくる砂岩を蹴って進んでるだけ。どうやったって追いつかれる。

 じゃあ逆に雲を散らしてしまえばいいじゃんというそこの貴方。

 ええ、しましたとも。浮いてる雲退かすくらいの力はあるからできますとも。

 そうしたらなんですか。この方俺が生成している砂岩に糸引っかけて追って来やがりまして。

 

 っべーわ。っじっべーわ。

 

「フフフフフフ! なんだァ、小物にしちゃよく避ける。見聞色の覇気だけ鍛えて来たって所か?」

「なーに言ってんだか。俺に! この! 俺に!! 小物に!!! 覇気なんか宿るわけねーだろ!!」

 

 ドン!!

 

「……フフフフフッフッフッフ!! そうやって手の内を明かすことで実力を隠す頭の良い奴もいるが……どォやらお前は正直者らしい。いや、正直に話すことで何か裏側があるんじゃないか、とおれに勘違いさせる……そんなところか? フフフフ!」

「馬鹿! 見抜くなっつってんだろ馬鹿!! あんまり頭良いといじけるぞ馬鹿!!」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ──……。

 ちったぁ慢心しやがれっつーの。

 

「"劣神の裁き(クライン・トール)"!」

「フッフッフ! やっぱりまだ隠し玉があったか!」

「避けんなよ。雷だぞ」

「新世界に雷も避けられねえ奴がいると思ってんのかァ?」

 

 いやいるだろ。一般市民とか。

 じゃなくて、仮に戦闘者でも避けれねえよ初見の雷は。

 

「……フフフ、何か狙ってやがるな」

「当たり前だろ。小物が格上から逃げるのに小細工しないでどーすんだよ。俺がアンタより強かったら正面切って戦うわ」

「フッフッフ! そりゃ当然だ。すまねェな、そんな当然のことを言わせて」

「全くだ。……っと、こんなところでいいか」

「フフフフフフ……準備は終わったか?」

「ああ。ちなみにだけどさ、俺がアンタの攻撃避けてたの……避けることができてた理由、わかる?」

「理由? ……見聞色じゃねェとすれば、そういう能力だろう」

「そんな便利な能力じゃねーよ」

 

 小細工で作った大気のヴェールを、脱ぐ。

 その下から出てくる俺の身体は──。

 

「……フフフ。フッフッフ! なんだァ……まさか、避け切れちゃいなかった、とでも言いてェのか?」

「ご明察。アンタの糸の硬度。アンタの糸の速度。狙いは随分甘くしてくれてたみたいだけど、限界まで手加減してくれてても俺には当たる。なんせ前半の海を出てから成長らしい成長をしてねぇんだ。努力もな。それで王下七武海が最悪の男、なんて呼ばれてる奴の攻撃避けるなんざ無理があるって話だろ」

「ンフフフフフフッフッフッフ!! そォか、そうか……じゃあお前は、今まで何らかの方法でそれを隠してただけで、それが隠しきれなくなって──降参でもするつもりか?」

「──ハ。それこそ馬鹿言えだろ。──俺が()()()()()()()()()に負けるモンかよ」

 

 煽りは一回だけ。

 一瞬で上がる血圧に青筋が立つのを見て──降らせる。

 

「テメェ──」

「落ちろ、元天竜人!!」

「こ──あァ!?」

 

 ガクンと落ちるドフィ。

 雲に引っかけていた糸が解け、砂岩を掴んでいた糸が解け、そして──ドフィ自体も、解ける。

 

「……ちぇ、やっぱり本体はドレスローザか。クソ、分身相手にこんなに怪我負ってちゃ世話ねぇな」

「何を……したァ……!」

「おいおい、相手が死ぬ前に手の内明かすわけないだろ。まぁ俺が何者かもよくわかってないのに分身で来たのは驚きだけど。それ隠し玉じゃなかったっけ? まぁ糸に戻ることがバレなきゃなんでもいいのか」

 

 バラけ──落ちていく糸ドフィ。

 下は海だ。

 

「まぁ、いい勉強になったよ。ありがとう、ジョーカー。次は本気出す」

 

 完全に意識を失った糸ドフィを見送って。

 俺はボロボロの身体で、ドレスローザまで向かうのだった。

 

 

 

 ありがたいことにと言えば良いか。

 ドレスローザ市民は真実を知らぬとはいえ善良だ。全身切り傷だらけのガキがいきなり病院に来ても、まぁ、怪しむかもしれないけど、処置はしてくれる。

 昔の暴発弾が腕を掠めた時とは違う。マジで死の淵レベルの怪我だったからな。何より出血量がヤバかった。一瞬で緊急搬送されて、ベッドインである。恋人は点滴。

 

「……眠らないのかい?」

「痛いからねー。すまんね、こんな体の患者、見たこと無いだろ」

「全くだ。……麻酔が効かない、なんて。……縫合、痛かっただろ」

「そのままにしとく方があぶねーし、やってくれって頼んだの俺だから大丈夫。むしろありがたい限りだ。医者ってのは……なんだ、患者が死んだ場合の責任取りたくねぇからって断る奴もいるのに」

「それがどこの医者の話かは知らないけど、少なくともドレスローザの医者にそんな奴はいないよ。目の前に助けられる命があるなら絶対に助けるし、どんな災害が迫ってたって患者は見捨てない」

 

 ……。ああ、知っている。

 

「……先生、これ完治どんくらい?」

「少なくとも一週間はかかるね。アンタの回復力次第だ」

「そりゃまぁ……厳しいな」

「何か予定があったのかい?」

「旅してたんだよ。で、船がこの近くで大破しちゃってさ。小舟で逃げたんだけど、そん時ツレが突風に飛ばされちまって。あっちの……なんかあるだろ、ちっちゃい島。あっちに飛んでったんで探しに行きたいんだわ」

「そりゃ大変だ。……けど、まずは自分のことからだよ。それで自分が倒れてちゃ、元も子もないからね」

「……ん、そーする」

 

 さて。

 ……これは転生者ならでは、かね。

 

 グリーンビット島に落ちたと思ったんだけど……違ったか、あるいは運悪く出会っちまったのか。

 

 俺はここまでの道すがら、旅の同行者がいたことを覚えていない。全部一人でやってきた。そうなってる。何も不都合がない。スナワニ殺し、ヤハハさん殺し、青キジからの逃走、ジハハさん殺し……はなんかちょっと無理のある勝ち方してるけど、一応できることをしてきている。

 ただ、一個だけ。

 パンクハザードでシーザー・クラウンを殺した時のことだけは、どんだけ頭をフル回転させても()()()()()()()()()()()と思える。よって同行者がいたことを導き出せる。

 ただし、ソイツについては何も思い出せない。

 

 どー考えてもホビホビの能力だ。んでもって、俺の出身と俺の旅に同行しそうな奴、且つ俺が()()()()()()()()()()()を考えると──恐らく同行者はニコ・ロビンだったのだろう、ということが推測できる。俺は絶対に道中で誰かを仲間にする、とかしないからな。だから王の資質がねーんだわ。

 

 流石にな。この世界におけるニコ・ロビンとの記憶は消えても、漫画の知識までは消えねーのよ。

 

 が、参った。

 俺も完治一週間で、ニコ・ロビンもオモチャにされてるとなると……最悪空島以上の時間をここで過ごさなきゃならなくなる。

 ドフィの追手に怯えて……は、まぁ良い。いや、世話んなったここの人たちが巻き込まれるのはごめんだけど、アイツかなり放任主義というか「糸ドフィ相手にあれだけ苦戦する相手ならわざわざ出向く必要はない」とか思うタイプだと思うので、放置。監視されてたら知らん。

 馬鹿だからな、俺は。スカイピアと同じ戦法で行こうと思う。

 

 つまり──。

 

 

 

「おやレコダ君! もう怪我は良いのかい?」

「いやぁ、まだ時々縫い痕が痛むんですけど、かなり良くなって。リヴェンタ先生の腕、さいこーっすね」

「そりゃそうよ! あの先生の外科の腕はここいらじゃ一番なんだから!」

「痛感しました。進行形で」

 

 仲良くなったマダムと挨拶。

 

「オヤ、コレハコレハ。全身包帯のレコダ君。今日は何用ですカ?」

「もう全身包帯じゃねーって。今日はちょっと発行してもらいたい書類があってさ」

「ホウ。もしや、定職に就かれるのデ?」

「いやいや、あくまで俺は旅人。だけど治療費稼がねえとだからさ。リヴェンタ先生は良いって言ってるけど、それじゃ俺の良心がね。だから短期バイト用の身分証明書が欲しいんだわ」

「イイココロガケですね! ええ、発行しましょう! ただ、スコシお時間いただきますガ……」

「勿論。頼むよ」

 

 仲良くなったオモチャと雑談。

 

「レコダにーちゃん! もう杖無しで歩けるようになったの!?」

「ああ、毎日花ありがとうな。おかげで少し治癒も早まった感じある」

「ううん、良かった! あ、ママにも言ってくる! ちょっと待ってて、約束のクッキーあげるから!」

「お、レコダじゃねーか。全身包帯は?」

「ようやく取れたよ。リヴェンタ先生の腕がいいんだ」

「切れ口も綺麗だったんだろうな。傷痕がほとんど見えない。見ろよこれ、昔旋盤に巻き込んでズタズタになった場所! オレもリヴェンタ先生の手術を受けたんだけどさ、流石にでっけぇ傷が残っちまブフォエッ!?」

「こんのバカ息子が! 病気自慢が一番ダサいって何度話したらわかんだい!!」

「レコダにーちゃん! クッキー!!」

「お、ありがとうな、フィニー。それとユージャおばさんも、そこまで怒んなくて大丈夫だって。今のは話の流れで、どっちかっつーとリヴェンタ先生スゲーって話だったから」

「あ、あらそうなのかい?」

「そーだよ母ちゃん! 文脈聴かねぇでいきなり殴んじゃグホァ!?」

「親に向かってなんだいその口の利き方は!!」

 

 仲良くなった──住民たちと、日常。

 

 いやすまんニコ・ロビン。俺とお前の関係値がどんくらいのもんだったか知らねーけど、俺今なんかアラバスタ思い出してるわ。エルマルの日常もこんな感じだったから。

 ……まぁあっちの方が相当貧しいんだけど。

 

 仲良く、なっちゃったんだよね。

 初めはドフィから逃れる手段としての仮面のつもりだったんだけど……まあ、いい人の多い事多い事。

 

 で?

 

 これで三年後? 麦わらの一味が来て?

 

 ──鳥カゴで、王の台地近辺以外の街全部壊れるんだっけ?

 

「よーし」

「……」

「ん?」

 

 ……あ! 野生のマトリョシカ人形がこちらを見ている!

 その隣には、片足の兵隊さん。

 

 マトリョシカ人形は……なんだろうな。そう……わかるかな。

 Miiの黒髪のデフォルト髪型のデフォルト顔……みたいな。

 

 こーれ。

 こーれニコ・ロビンです。

 

「珍しいオモチャだな。ここいらじゃ見ねえ。どれ、ちと」

 

 ──"亜氷時代(スターディアル・エイジ)"。

 

 雪を、降らせる。

 ドレスローザの建築様式的に恐らく雪は珍しいものだろう。積雪に耐えうる家の形をしていない。

 だから、この程度のみぞれ雪でもみーんな空に注目するはずだ。

 

 その隙に「片足の兵隊」と「マトリョシカ人形」を持って、砂岩ウォークで空も空、空島の高度まで駆け上がる。

 

「きっ、キミは……」

「そういうの良いから。アナタ、私達のことを知っているわよね」

「……知らねえが、知ってる。けど珍しいこともあるもんだな。俺、そんなアンタに心許してたのか? ドがつく程の秘密主義で、嘘吐きの俺が」

 

 原作知識……のことは多分話していないにしても。

 ホビホビの実の能力を超えて俺が知識を保っていられる、ってところまで話す……そんな仲だったってこと? そりゃまた。

 信じられねー。この時期のニコ・ロビンだろ? まだ「生きたい!!」を経験してないニコ・ロビンだろ? それにそこまで話すか?

 

「自覚はあるのね。安心したわ」

「へぇ、そりゃあ良かった。んじゃーまー、ちぃとやりづらいが、そっちに合わせよう。ああ、知っている。十七年くらい前に殺人の罪で囚人剣闘士になり、七年前にオモチャの兵隊になった怒りの雷兵キュロス。そんで、いろんな関係値を察するに──説明はいらねーな、オハラの悪魔」

「……覚えている、人間が……本当にいるとは」

「彼は特別よ。けれど、シュガーの能力が効いていないわけじゃない。現に私との旅路、その記憶は失われている」

「ホビホビなー。相性にもよるし環境にもよるけど、フツーに最強クラスだよなー」

 

 その過去は知っている。

 が、だからなんだレベルだ。俺は五良かろうと九十五悪かったら悪いと思うし、その逆でも悪いと思うノイジーマイノリティの度を越えた人間なので、海賊は洩れなく軒並み悪い! という判断に至る。

 ただ、罪を償ったんなら話は別だ。悪い奴は死ぬまで悪い、なんて言ってたらさて精神的成長とは? ってなるしな。

 

 その点、キュロスは既に罪を償っている。潜在的に犯罪者っぽい思考はあるかもしれないけど、十二分に洗い流されているだろう。

 

 ──というか俺が救いたい、って思ったのはキュロスでもレベッカでもなくドレスローザだしな。

 レベッカはガチ被害者なので普通に助けたいけど。

 

「キュロス」

「あ、ああ」

「アンタ、トンタッタ族と話をつけるのはいけるのか?」

「あの小人たちまで知っているのか。……ああ、いける」

「俺は割合容赦無いんで、普通にシュガー殺すつもりでいるんだけど……どうにかして屋外におびき出せないモンかね。俺の能力は屋内だとあんまり強くないんだ」

「……一度協議を必要とするが……それでこの国が解放されるというのなら、なんとしてでもやってみせる」

「解放? 俺そんなこと言ったっけ?」

「違うのか? 彼女は君のことを、善良な民草を見捨てられないお人好しと称していたが……」

 

 ……ええ? マジ?

 俺そんな人間じゃねーけど。……いやまぁやってることがそう映るんだとしても、そんなヒーローみたいなことしないけどなぁ。

 そんな風にみられる仲だった、ってこと? どんな仲だよ。

 

 あ……いや、だから……やっぱりそこまで仲良くなかった、ってことか。

 俺の根っこの部分を知らずに外っ面だけ見てりゃ、そういう意見になるのも頷ける。

 

「計画を練る必要がある。が、すまん。俺馬鹿だからよ、基本やることシンプルなんだわ」

「大丈夫だ。作戦を考える頭はある」

「ああ、馬鹿ってとこを否定してはくれないのね。まぁいいけど。……で、とりあえず俺は能力者なんてモンは殺した方が良い派……なんだけど、ホビホビがどっかの誰かの手に渡るのはあんまし良くない。だから、シュガーの両手両足に海楼石の杭とか打ち込んでおくのがいっちゃんいいって思ってる」

「……いつもより過激な発想ね」

「ああそう? 俺もうちょっとマイルドだった? すまんすまん、修正する」

 

 ……あ、そっか。

 心象を気にしてるんだ。だから俺は、もうちょっとマイルドな手段を選んでいたはず。容赦なくとも──残酷過ぎないものを。

 ってなると、今思い浮かんだ拘束方法全部だめだな。ちょいとR18G過ぎる。

 

 えーと。

 

「なんにせよ海楼石だな。シュガーを気絶させりゃ一応玩具化は解けるが、アイツがそのままだと一生そのままだ。海軍に引き渡すにしても王下七武海の傘下じゃ返却されるだけ。……殺した方が手っ取り早い、が……んー。難しいな」

「ドフラミンゴは、どうする」

「馬鹿お前、俺はシングルタスクなんだよ。まずは一個一個考えさせろ。……やっぱ海楼石の手錠付けて……インペルダウンに勝手に投獄とか良いんじゃね? あそこの囚人がどんだけオモチャになろうと関係ないし、脱獄は誰をオモチャにしようがマゼランいるし。仮にマゼランどうにかできても脱出無理だろうし」

 

 レッドライン戻らなきゃならねーのがアレだけど、まぁ多少の徒労だわな。

 

「OK、シュガーはこれでいい。んでドフラミンゴね。まぁ勝てるでしょ」

「……キミのその全身の傷は、ドフラミンゴにやられたものではないのかね?」

「そうだよ? そうだけど……え、負けたからって勝てないって思われてんの俺。それはちょっと不服だわ」

「どうやって勝つか、聞いても?」

「言うわけないじゃん。アンタら人形なんだから、シュガーにどんな契約結ばされてるかわかんねーし」

 

 これは秘密主義とかじゃなくて、ホビホビが強力って話ね。

 

 よーし。方針は固まった。

 他のドンキホーテファミリーは……。

 

 ……まぁ良いんじゃね? いけるいける。

 

 ああ、そうだ。

 ニコ・ロビンと行動を共にしてた俺が渡してたかは知らんけど、人形状態だと元の持ち物もどっか行ってる可能性あるから渡しておこう。

 

「これ、俺のビブルカード。結構頻繁に使うだろうから、逐一確認してほしい」

「ビブルカードを頻繫に使う?」

「まぁねー」

 

 さて──んじゃそろそろ、行動を起こそうか。

 

 

 

 

 "獅子擬き・寒雹巻"。

 

「んねー……んんねー……? きょぉはいつにも増してさむ──んねぁああ!?」

 

 雹でできた獅子で、トレーボルを潰す。殺せてるかは知らん。

 

「ちょっと、うるさい──」

「"斬り刻む雨(スパークリング・レイン)"」

「嫌、なに!? ()ぅ──」

「"黒い雨(ブラックフォール)"、"血の雨(ブラッドフォール)"」

「こ、の……ベタベタは、トレー、」

「"降り懸る火の粉(スパーキー・バーン)

 

 ガラス片で身動きを止め、コールタールの雨と血の雨を混ぜてカムフラージュ。

 最後に火の粉を降らせて大爆発。

 

 ……まだ気絶してないか。まぁ精神面でのびっくりが気絶に繋がったってだけで、肉体面でも相当やるってのは原作でも示唆されてたし、妥当。

 

「"劣神の裁き(クライン・トール)"、"田雷(でんらい)"、"田雷(でんらい)告万化死(つまげし)"」

 

 まだか。なら、やはり俺も長鼻君に倣うしかなかろう。

 

「"黒光り星群"」

 

 からの。

 

轟音貝(ロアダイアル)

 

 トーンダイアルの、絶滅種。

 ダイアル系の隠し玉はこれで最後。ちなみにこれ、俺もうるさい。鼓膜は破れないけどね。

 

 ──して。

 

「お……おおお!」

「……やっぱり隠してた。知らない技ばかり」

 

 伝説の剣闘士キュロスと……ニコ・ロビンが復活する。

 ドレスローザ国内でも歓声が。

 

「驚いてないで、海楼石」

「あい! ちゃんと持って来たです!」

 

 ガチャン、と。

 両手足に、海楼石の錠が嵌る。それぞれ別の鍵。

 

「ぉぁああ、ぁおああああ! んねぇええええ! なんだぁ、なんなんだぁおまえらぁ! というよりぃぃいい、シュガー! シュガー!! んねー!!」

「ニコ・ロビン。ソイツはベタベタの実の能力者で、本体はクソ細い。そのつもりで背骨折ってくれ」

「ええ、わかったわ」

「キュロス。それとトンタッタ族。すぐに動けるか?」

「ああ。日々、鍛錬は欠かしていない!」

「おいら達も動けるれす!」

「よーし。んじゃキュロス、あんたには王宮内の一般人の避難誘導を頼む。ディアマンテは譲る。それでいいだろ?」

「あ、ああ。……わかった。だが、気を付けろ。ドンキホーテ・ファミリーの層は厚いぞ」

「わかってる」

 

 ……そうだったそうだった。

 ニコ・ロビンとは()()()()()()だったな。

 

 あっぶね。

 もう少しシュガーが耐えてたら、もう一段階上の使う所だった。

 

九輪咲き(ヌエベフルール)・ツイスト」

「んえええええええ!?」

 

 べたべたを搾るようにして、背骨を……多分折り千切ったらしいニコ・ロビン。エグ。

 さらに携帯していたらしいナイフでその頭蓋と心臓をザクザク、と。

 

 こーわ。

 

「あら。貴方を見習ったつもりだけど」

「怖いれすロビランド……」

「怖いれす~」

「よーしトンタッタ族。お前らはファミリーの使う武器を片っ端から縫い付けて来てくれ。主に銃器。俺見聞色持ってないから普通に銃あぶねーんだわ」

「わかったれす! 他にお手伝いできることはあるれすか?」

「ヴィオラに説明してくることと、コリーダコロシアムにいるリク王、レベッカへの連絡も頼みたい。姿明かしてなかったらすまんが今やってくれ」

「りょうかいれす!」

 

 よし。

 これで、とりあえずいつも通りだ。

 

「……微塵も驚かないのね」

「事前に知ってて、事前に説明されてて。何をどう動揺しろって?」

「いいえ。なんでもないわ」

 

 それより、だ。

 

「ニコ・ロビン。アンタの長所は監視だ。至る所に目を咲かせて、逐一俺に報告してくれ。すまんがミルキーダイアルはもう無いから、逃げる隠れるは自分で。なんならキュロスかトンタッタ族についていってもいい」

「いいえ。私を忘れている時の貴方を見て確信したことがあるから──私はここに残る。シュガーの錠を誰かが外さないとも限らないでしょう?」

「……相手、結構エグい強いけど。大丈夫か?」

「問題ないわ」

 

 そうか。

 強がりさんめ。

 

「あなたは、これからどうするの?」

「ドフラミンゴを倒す……と言いたいところだけど、倒すにはちょいと準備が必要でね。先に幹部連中を」

「そいつは良い事を聞いた。なら今殺しちまえばこの騒動は終わりってわけだな? フフフフ!!」

 

 避ける。

 上空から急降下してきたドフィを。

 

「ンンン、フフフフッフッフッフッフ! また、避けてるフリか? 手応えはあったぞ?」

「どう思う?」

「どうでもいい。──おれの七年を全て無為に帰してくれたんだ。相応の礼が必要だろう?」

「おいおい、たった七年の計画かよ。俺は生まれてからの十八年間をクロコダイル殺害に費やしたんだぜ? それに比べりゃ些事も些事だろうよ」

「フフフフフフ!! なんだァ、生まれた時からクロコダイルの野郎を殺そうと思ってたとでも言いてェのか?」

「へぇ、俺の年齢知ってんだ。つーことは、もう世界政府に通報済みだったり?」

「あァ、アラバスタの稚児。懸賞金たったの9000万ベリーのガキが、世界政府お抱えの研究者シーザー・クラウンを殺し、さらにおれの国に侵略をしに来てると……既に伝えてある」

「プライドとかないの? そんな木っ端に侵略されてるとか、一国の王としての格ってモンに欠けるよね。──ああ、そもそもが没落した天竜人。プライドなんか無くて当然か」

 

「フフフフフフ……お前の言動にはイラつくが、それがお前のやり口だってのはわかってる。直情的な馬鹿が煽って来てるんじゃねェ、ちゃんと頭の回る奴が煽りを手段に使ってるに過ぎねェ。加えてお前が知るはずもない知識と、お前のどうにも不可思議な能力! フフフフフ──初めから全力で来い! その全てを塗り潰して、本物の勝者ってモノを教えてやる!!」

「ああそう、煽り効かねえなら真面目にやるわ。"蘂降る桜"」

 

 空気が重くなる──ことはない。

 ただ。

 

「ッ……」

「おいおい、そんな図体してんだ、肺活量だってとんでもねーはずだろ? なんで耐えられんだよ」

 

 肺。その中にある酸素及び二酸化炭素などを無理矢理降らせる。

 ここが高空で助かったってことで。

 

「……フフフフ。お前は、ラニラニの実を食べた天候人間」

「こーわ。普通に喋んなよ。肺の空気沈殿してんだぞ今。つか情報周るの早すぎるだろ。調べたか海軍に問い合わせでもしたか──」

()()()()()()?」

「……」

 

 ニコ・ロビンは離れたな。目、耳も……ここには咲かせていない。フィードバックが危険と察したか、残す余裕が無かったか。

 

 どちらにせよ好都合だ。

 

「じゃあ、何だと思う?」

「勿体ぶるんじゃねェ。お前も自分で自分がなんなのかはわかってるんだろ? フフフフ……お前は、能力の使い方を理解している。お前は、自分が何の能力者なのか理解している」

「俺が自分の言葉で言う方が、お好みってわけだ」

「あァ、早くしろ。おれは家族を殺されていつまでも黙ってる程気が長くはねェんだ」

「そうかい。そりゃ失礼。んじゃ改めまして──」

 

 ドン、と。

 今度こそ──周囲の空気が重くなる。覇王色の重圧とは違う。周囲、王宮の屋根やら柱やらに罅が入るほどだから。

 

「俺はラニラニの実を食った天()人間。ただの超人系(パラミシア)だ。よろしくな、ご同輩」

「あァ──おれもただの超人系(パラミシア)だ。お前の言う通りな」

 

 天候人間ではなく天空人間。

 天つ空を操る人間。天を操る男。ヤハハさんはやっぱりすごいってワケ。

 

 合図などない。

 剃と見紛う速度の踏み込み。そこからの蹴りを、()()()()()で弾き返す。

 

超過鞭糸(オーバーヒート)ォ!」

天濁流(テンタクル)!」

 

 空気とか。

 酸素とか、ではない。

 

 降り注ぐは──。

 

「なんだ──空!?」

「液状化した空だ。見るのは初めてか、天夜叉」

 

 空の濁流が糸を飲み込み、そのままドフィをも……っと。

 

「フッフッフ……なんだ、随分と戦い方が違うじゃねェか」

「そりゃあね。いずれ敵対するかもしれない奴に背を預けてるんだ、早々手の内明かさないよ」

 

 ……ま、知ってたけど。

 糸ドフィを分解した時と同じく()()()()()()()()()()()()だったんだけどな。効かねえか。

 普通に避けるしかなかった。残念残念。

 

「フフフフ……! どうやらとんでもねェ嘘吐きみてえだなァ、ガキ」

「むしろ褒めて欲しいくらいだよ。──今の今まで、詰まった蛇口で戦い続けて来たことをさ」

 

 槍を降らせる。

 あ、普通に弾かれた。

 

 こう……混ぜ込んだらワンチャンあるんじゃないかと思ったけど、ダメみたいですね。

 

 はぁ、やだやだ。

 疲れるんだよなぁこっち。

 

天板(テンプレート)天黒死(テンペスト)天波槍(テンパランス)……」

「数を用意したところで、さっきの威力じゃ意味はねェぞ? フフフフ……!」

「──と見せかけての、"兇状旅"!!」

「何を──上!?」

 

 ハーハッハッハ。

 疲れる技ばっか使うワケねーだろ! 小隕石でも隕石は隕石!

 

「そういやそこに、海楼石の錠付けられて気絶してる能力者──まぁ生身の十九歳少女がいたっけ!」

「チィ──!」

 

 ドフィの選民思想においては、「使えなくなったら捨てる奴」と「たとえ負けたとしてもフォローまでしてやる」奴がいる。モネやシュガーは後者だ。つーかホビホビの能力者が大事すぎるってのもあるだろうけど。

 どっちも使()()()からな。あんだけ忠誠誓ってたら。

 

「それじゃあしばらくここでシュガーのお守りを頼むよ()()()。俺は他の幹部連中殺してくるからさ」

「──お前みたいな小物に負けるような奴らじゃねェさ」

「そりゃ安心だな」

 

 降り注げ"兇状旅"。

 

 さーて逃げべ逃げべ。このままやってたらフツーに負けるっつーの。

 

 タイマンするにしてももうちょっと準備させてくれよ。アンタの方が格上も格上なんだからさ。

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