そこが、楽園ではないとしても   作:テクニカル古則おじさん

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書くにはかけたんですけど、前提の話が没って構成ぐちゃぐちゃになって文字数もいつも以上に少なくて申し訳ない……。
でも、なんかもう投げます。投げやり。


虚の空

 二次試験が試験会場の爆破という形で幕を閉じた翌日。ハナコはシスターフッドの拠点の大聖堂を訪れていた。

 シスターフッドとは、ティーパーティーの管轄下にない組織で、独自の戦力と指揮系統を保有している部活というには血生臭いところもあるが、普段はシスターらしい慈善活動を行っている部活でもある。

 

「……どう言った心境の変化でしょうか? 今まで大聖堂ごとシスターフッドを避けていたというのに」

 

 シスターフッドのリーダー。歌住サクラコに訝しまれながらも、ここに来た理由を回想しながら懺悔室の入口を見つめる。

 

「懐かしくなった。と言いますか。特にお試しで懺悔室の担当をしていた時のこととか。ですかね」

「スカウトされていた時期ですね。それが何か?」

「そうですねぇ。あの頃の私が……修道服の下に何も着けずに懺悔を聞いていた時のことです」

「……今なんと?」

 

 勿論、ハナコの言うことは半分くらい嘘である。

 サクラコからすれば神聖な大聖堂でなんてことをしているのだと、叫びそうになるが、立場上声を荒らげることを良しとしないため、なんとか抑える。

 最近昼間からスクール水着で校内を徘徊していたハナコを知っていると、人に見えていないだけマシだと一旦そういうことにしておいた。

 

「こほん……。その頃ですか……確かに懐かしいですね。私も男の子の懺悔がとても可愛らしかったのをよく覚えてます……内容は流石に言えませんが」

 

 サクラコも当時の微笑ましい懺悔を思い出す。

 その男の子曰く、婚約者と過ごしていたら事故で唇に触れてしまった。その時の感触が忘れられなくて、その婚約者にそういう感情を持ってしまったのが嫌で仕方ない。

 という懺悔を聞いたことがあった。別にそれ自体は悪いことではないと思った当時のサクラコはよしなに諭したことを覚えている。実際に関わりのある人物が懺悔に来ると何とも言えない気持ちになったことをよく覚えている。

 

「それで、本当に昔話をしに来ただけなのですか……?」

 

 スカウトを断り続けたハナコがただ世間話や昔話をするためだけに自分を訪ねに来ないだろうということを理解していたサクラコは本題を引き出すために、切り込んだ。

 

「そうですね……付け加えるなら、サクラコさんからその男の子……基督さん。基督アルマさんのことですが──」

 

 ハナコはその男の子のことを知ったのは、約三年前のことだった。

 立場に縛られながらも、不自由なく色んな場所に訪ねて回っているという噂を聞いて、自分とは違う存在にほんの少し憧れたが、その噂を知ったのは、何もかもが終わった後で、相互理解を最後まで信じた彼の最期が後味の良いものではないことに察しがついて、ハナコの目に映る世界は、色味が薄くなった気がした。

 

「本当に事故だったのでしょうか?」

 

 ぼやけた疑問を確信に変えるために、動き出した。

 

 

 ●

 

 

「補習授業部は全員が二次試験で使用する答案用紙を紛失しましたので、不合格になりました」

「続けてその報告を受けられるよう、お願いしますね」

 

 テラスで一人で紅茶を嗜むナギサは二次試験の結果報告を聞き終わったら、フィリウス派の連絡要員を下がらせて一人になって安堵した。

 これで、裏切り者の排除に一歩近づく。ヒフミには悪いとも思っている。一方的に愛を押し付けて、都合の良いことばかり言って、そうして最後は捨てるのだから、ナギサは益々自己嫌悪に陥る。

 

(これもエデン条約のため……これも、きっと……楽園のための……)

 

 愛する存在のために、愛を切り捨てるやり方に必死に気付かないように、全て楽園のためと考える。

 誰にも証明できない空白の未来だからこそ、すべてがそこにあると盲目的になるしかない。

 雨音を聴きながら、食べさせる相手はもうこの世にいないのに、日課として毎日作ることが染み付いてしまったロールケーキを眺めながら心をすり減らしていく。

 

(……やっぱり、一人で雨音を聴いても寂しいだけじゃないですか。嘘つき)

 

 愛した人が愛したモノは、自分も愛していたいが、どうにも雨音だけはそうすることはできなかった。

 一人で食べるには多いロールケーキも、いつもはミカの口に押し込むか彼に食べてもらっていたのに、今のナギサは孤独だった。

 

(でも、今は誰かと居ることは怖い。次に狙われるとしたら……まだ、私は向こうに行くわけにはいきません)

 

 死ねば、彼に会える。

 そう思えば今すぐにでも死んでしまいたいが、まだ彼の信じた楽園を証明出来ていない以上、そうなるわけにはいかない。

 

(三次試験で最後ですから……そうすれば、エデン条約だって上手く行く筈ですから……少しだけ待っていてください。楽園を見つけたら迎えに行きます……)

 

 緩やかに生きる気力がなくなっている。

 ロールケーキを無駄にするわけもいかないため、最終的には自分で日に二人分口にはするが、それと紅茶以外受け付けない身体になりかけている。

 少しずつ痩せていくナギサを見かねたミカが一食分はまともな食事をするように強制して何とか抑えられてはいるものの、それで身体が持つわけがない。

 

(……早く、彼に会いたい)

 

 雨はまだ止む気配はない。

 確かに生きているのに、何故生きているのかと、自分に問い続ける。

 その答えは出ることもなく、折角淹れた紅茶も冷めていく。




ナギサ様の影武者(角も折って翼も尻尾も捥いだゲヘナ生)というネタを思いついたけど、断念。
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