そこが、楽園ではないとしても   作:テクニカル古則おじさん

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ヒフミにちんちんさえ生えていれば解決したのに……!
と思うことが多々あります。


夜と悲しみを切り裂いて

 補習授業部の戦力にシスターフッドが加わったことによって、ミカが引き出した戦力の大半は倒れたが、ボロボロになった彼女はもう立つことも出来ず、その場にへたり込んでいた。

 

「はぁ……はぁ……まだ、終われない……!」

 

 情状酌量の余地のない魔女として、裁かれるためにはギリギリまで抵抗して、対話による解決が不可能だと思わせなければならない。

 

(とは言え、ちょっともう立てないかも、意識もはっきりしないし……)

 

 今回持ち出せなかったアリウスの戦力を考えると、シスターフッドの戦力を削り過ぎるのも宜しくない。

 そろそろ頃合いだと思うが、もう少しだけ暴れておきたい。

 

「ミカ、もう止めよう。これ以上は無意味だ」

 

 先生は存在するだけで指揮能力を発揮して厄介である。

 彼が居なければ、戦力もまだ残っていただろうし、シスターフッド側にも損害を与えられていた。

 それに加えてミカの説得も試みてくる。生徒だから。子供だから。そんな理由で等しく差し出される手を取る訳にはいかない。

 ミカは魔女にならなければならないのだから。そんなことは受け入れられなかった。

 

「誰も悪くないなんて私は言わない。楽園を信じろとも言わない。だけど、ナギサともう一度話を──」

「私はこれで良い! 私が全部悪かったんだよ! 私がアルマを信じてればこんなこと……だから私は悪い魔女で良い!」

 

 ミカ以外の生徒も戦闘不能になり、彼女の目線に合わせて話をしたいと思った先生は彼女に言葉を掛けながら近づく。

 警戒していない訳ではないが、無防備な先生が気に食わなかった。話せば解決するのであればこんなことにはなっていない。

 自分が悪いで収まるのであれば、それでナギサが安心して楽園に行けるのであれば、それで良い。

 

「ちっっっっとも! 良くない! よくわかんないけど、何一つ良くない!」

 

 それを否定したのはコハルだった。

 コハルは何一つ今回の件については無関係だった。

 ヒフミのように元々ティーパーティーと接点があった訳でもなく、アズサのようにアリウスのしがらみがあった訳でもなく、ハナコのようにある程度基督某の事情を知っていた訳でもなく、無関係だったから、一番腹を立てていた。

 

「要するに痴情の縺れで私達振り回されたってことでしょ!? 冗談じゃない! だったら最後は仲直りして終わっときなさいよ! 悪いことはダメだけど、後味悪いのなんてもっとダメ!」

「コハルちゃん……」

 

 ミカが何か言い訳(戯れ言)を言う前に間髪空けずにコハルは捲し立てる。

 誰もがコハルは多分エデン条約とか関係なく、成績不振で補習を受けざるを得ないのだが、隣で彼女の言葉を聞いていたハナコもそのことについては指摘できなかった。

 

「痴情の縺れ、か……ある意味そうかもね」

 

 そう言われると微妙な気持ちにもなるが、お姫様になれたのであれば、こんなことしなかったかもしれないと考えると、否定はできなかった。

 

「こんな悪い魔女でも、ナギちゃんは許してくれるかな」

「知らないわよ! 二人でちゃんと話せば良いでしょ! 友達ならね! というか楽園ってそういうことじゃないの?」

 

 何も知らない癖に。となら普段のミカなら言うだろう。だけど、確かに当たり前の話である。

 悪いことはした。ミカを許せない人もきっと居る。だけど、折角なら最後にナギサと話してから裁きを待つのも悪くはない。

 

「ふふっ……そっか、そうかもね……わかったよ、降参する」

 

 何処かで聞いたような理屈に笑ってしまったミカは両手を上げて降参の意を示した。

 友達なら仲直りできる。そんな簡単で難しいことを、関係の無いコハルが言えるのであれば、捨てたものじゃない。

 

「皆! 三次試験まで時間がない! 走らないと本当に全員退学かもしれない!」

 

 一先ず決着が付いたと思い、先生が腕時計を見ると三次試験開始まで一時間を切っていた。

 ここまで夜通しで戦闘が続いたが、試験に受からなければ意味がない。

 

「先生、ここは任せてください。事後処理もシスターフッドで請け負いますので……」

 

 サクラコが気を遣って先生と補習授業部に試験会場に行くように促す。

 ここで被害者でもある補習授業部が間に合わず退学。というのも、それこそ後味の悪い話だった。

 

「ごめん! 任せた! ミカ! ナギサと上手く行かなかったら私が仲介するから呼ぶんだよ!」

「皆さん! これで最後です! 全員揃って合格しましょう! 今度上映されるペロロ様の映画にも行きたいですし!」

「それは楽しみだな……!」

 

 全員疲れているのは承知でヒフミが声を出して気合いを入れさせる。

 アズサ以外ペロロはあまりご褒美になっていないのだが、そういうところがヒフミらしいと思えば、付き合うのもやぶさかではない。

 

「コハルちゃん、一つ良いですか?」

「何!? ハナコも急がないと遅れちゃうでしょ!」

 

 補習授業部と先生は試験会場であるトリニティの本校舎行きのモノレールまで走って向かう最中、ハナコがコハルに問う。

 

「私もちゃんと謝ったら許されるでしょうか?」

 

 必要があったとはいえ、ハナコはナギサの心を土足で踏み荒らして傷付けた。

 やり方が悪いという自覚もある。謝りたい気持ちもある。ただ、許されなかった時、どうして良いかわからない。

 それに対してコハルは今更何を言うのかとため息を吐く。

 

「いや、ハナコは普通に死刑。えっちなのはダメ」

 

 コハルはハナコとナギサのやり取りは知らず、今は試験のことしか頭に無かったため、条件反射でいつものように死刑判決を下す。

 

「ふふっ……コハルちゃんらしいですね。ところで私はえっちなこととは一言も言っていないのですが、具体的にどこが──」

「そういうところー!!!!」

 

 登り掛けの朝日にコハルの悲鳴が木霊する。

 

 かくして、一晩の大騒ぎはこれにて決着した。

 今回の件の裏で悲しい出来事が起きていたことは、どうしようもなくて、未だその悲しみに囚われている者も居る。

 だけど、ハッピーエンドを、後味が悪くない結末を目指すには、この後の三次試験という大勝負に勝ってからである。 

 

 第三次試験結果発表。

 

 阿慈谷ヒフミ 合格

 白洲アズサ  合格

 下江コハル  合格

 浦和ハナコ  合格

 




一旦区切りです。
事後処理の話とか調印式までの話をチョロチョロとやりまふ。
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