そこが、楽園ではないとしても   作:テクニカル古則おじさん

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お久し振りです。
兼業してることやら何やらが忙しすぎますが、生きてます。


願う未来の先に

「ここは……」

 

 意識を失ったヒフミが目を覚ましたのは橋の上や避難所ではなく、陽当たりの良い草原とただ一つの日陰を作る大きな木のある空間だった。

 

「久しぶりだね。ヒフミちゃん」

「あなたは、あの時のお兄さん……?」

 

 ペロロの意匠が凝らされたトーガを羽織った少年がヒフミの前に現れた。

 その姿はヒフミがいつか見た姿より少し成長してはいたが、ヒフミとそう変わらないくらいの年齢に見えた。

 

「うん、そうだよ。あの時のペロロのお兄さん。基督アルマだよ」

 

 今ヒフミの身体に伝わる感覚は現実と変わらないはずなのに、目の前に居る彼がどうしようもなく、これが夢だと認識させる。

 

「そのペロロ様トーガって何処に売ってたんですか!?」

「……やっぱり気になる?」

 

 彼の服装より聞くべきことがある筈なのだが、ヒフミにとって自分の知らないペロログッズを目にしてしまっては仕方の無いことだった。

 

「勿論です!」

「あはは……ヒフミちゃんらしいね。色々モモフレンズについて語りたいところだけど、実は頼みごとがあってね」

 

 ちょっと訳を説明すると長くなるんだけど。と彼は言葉を挟んでから突然現れたティーテーブルに座ってヒフミに対面に座るように促す。

 

「頼みたいこと……ですか?」

「そう。ヒフミちゃんにしか頼めないことなんだ。ずぅっと前から決めてたんだ」

 

 最初から、初めて出会ったあの一時だけでそう決めていたことを、今この場で安堵と決意を持ってようやくヒフミに託すことができる。

 

「ヒフミちゃん。今の私が持っている神秘を君に渡そうと思う」

「……どういうことですか?」

「基督家は当主に数えきれないくらい、神秘が与えられるんだけどね。そのおかげでトリニティの中でもティーパーティーに並ぶほどの名家に名を連ねることになった。っていうのが成り立ちなんだ」

 

 ティーテーブルの上に置かれたカップを持ち上げながら、百合園セイアのとは少し違うけどね。と付け加えて紅茶の香りを鼻腔で感じようとする。

 

「その中でも未来を視る神秘があってね。私にもナギサにも、トリニティの未来は作れなかった。だけど、ヒフミちゃん。君はそうじゃなかった」

「私が、ですか……?」

 

 未来を視たとはいえ、たった一度会っただけの平凡な自分には大き過ぎる期待を掛けられたヒフミは困惑を隠しきれない。

 

「そうだよ。君は自分のことを平凡だと思ってるだろうけど、そういう君だから、ゲヘナだけじゃなくて、アリウスとも手を繋げられるんだと思う。

 だから、私の神秘は少なくなってしまったけれど、君にあげる」

 

 泣いて笑って、他愛のない日々を積み重ねて、アズサの出自など関係なく友達になれたヒフミだからこそ、エデン条約の、アルマが見た夢の体現者だと思えたから、彼はこの時を待っていた。

 

「……そうなったら、お兄さんはどうなってしまうんですか?」

「今の私は残り火みたいな存在だから……これで本当にもう居なくなると思う。

 まぁ、もう死んじゃってるのに長いこと残れたと思うし、ナギサとはちゃんとお別れはできなかったけど……」

 

 死人に口なし。と言うには長く存在し過ぎた。

 死んだものはもう死んだのだから、と仕方なさそうに笑いながら手を差し出してきたアルマにヒフミは、有り体に言ってしまえばカチンと来た。

 

「私は、平凡な私は……皆が笑って過ごせる平凡な日常が愛おしいんです! だから、そんな大それたモノを貰っても嬉しくないんです! 私の、私達の物語は、私達の手でハッピーエンドを続けて行くんです!

 その中でナギサ様にも笑っていてほしいんです! そうじゃなきゃ私が目指すハッピーエンドじゃないから!」

 

 椅子から立ち上がって啖呵を切るヒフミに、アルマは驚きながらも、自分の死が前提になってしまったせいで、忘れていたであろうことを彼女に思い出させられた。

 

「……じゃあその気持ちを忘れないで。もっと素直に真っ直ぐに、皆の前で伝えてあげて。こんなくだらない喧嘩さっさと終わらせて……そしたら、仲直りだ」

「はい!」

 

 そんなハッピーエンドを目指すヒフミだから信じた。何処かに走っていく背中をアルマは見送った。

 

 のだが──。

 

「あのー……ここってどうやって出れば良いんですか!?」

 

 十分も経たない間にヒフミが肩で息をしながらアルマの元まで戻ってきた。

 何とも締まらないが、それはそれで良いのかもしれない。とアルマも微笑みが溢れる。

 

「送っていくよ。と言ってもここはヒフミちゃんの夢の中みたいなモノだから、案内するまでもなく、もうすぐ起きれると思うよ」

 

 アルマも立ち上がってちょうど良さそうな位置でヒフミを改めて見送る準備をする。

 

「そういえば……未来を視ていたなら、私の言うことも知っていたんじゃありませんか?」

「あはは……どうだろうね。未来は不確かですぐに分岐するものだからね。今を確定させたのも、今を生きる君達だよ」

 

  ふと思った疑問をヒフミが口にする。

 全てを視ていた訳ではなかったとしても、未来を視ていたとしても、知り得ないこともある。

 

「頑張れヒフミちゃん。運命は……いや、青春の物語は君の味方だよ」

「はい!」

 

 それだけ伝えるとヒフミは夢から覚めたのか、アルマの前から姿を消した。

 

(さて、ここからは君達次第だ……)

 

 ティーテーブルではなく、木の下に座ったアルマが瞳を閉じる。

 ナギサは隣には居ないが、いつかの昼下がりを思い返しながら、彼女達の未来に幸あれと願った。




水着ナギサ見れずに死んだアルママ???という気持ちとグッズの方でも水着があるので二種の水着ナギサはやべぇよという気持ちで一杯です。
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