TSしたら異能組織のボス(身長136cm)   作:環状線EX

56 / 56
明日は連休明け

 

「本当に不甲斐ないです」

 

 丸めた頭がこちらに向けられる。

 そんな様子を視界に収めながら大録はため息を吐く。

 

「今回は俺が相手の戦力と作戦を見誤っていた。大規模系の異能持ちがいるとも思ってなかったし、その対価を払えるとも思っていなかった」

 

 ザンマ自身の判断ミスだと彼は言う。

 異能と言うのは持っているだけで強力な力を出せるわけではない。

 強い力こそ対価が必要となるのが常だ。

 それに当てはまらないのは、六大組織内にいるものくらいだろう。

 

「ただ、まあ、ルカ殿が気にも留めていなかったからよかったがな」

 

 シロサヤ伝ではあるが、特に気にしていないと言う報告を聞いた大録は胸を降ろしていた。

 そもそも、挽回の意を込めて無理を聞いてもらった結果だ。

 それを相打ちでしたは効かないだろう。

 

 ただ、今は好意に甘える事しかできなかった。

 

 

 

 

 ◆

 

 財布探しに奔走したゴールデンウィーク最終日。

 よくわからない奇妙な現象に襲われつつも俺は何とか財布を発見した。

 え?どこで見つけたかって?

 

 ……昨日着ていた服の中のポケットに入っていた。

 

 昼間で散々探し回って、トボトボと帰って来てツムギちゃんが声をかけて来たから聞いたらポケットに入ってたよって渡してくれた。

 結果的に良かったと思うように努力しつつ、それでもなんだか無駄にしたような気分は良くない。

 仕方ないので気を取り直して、有意義に残りの時間を過ごせるように頭を捻った。

 

 

 

 

 ◆

 

 抗争に敗れた異能者の処遇は様々だ。

 上手く逃げおうせて潜伏し、力をつける者。

 他の異能組織に吸収される者たち。

 

 そして、多くの場合、異能対策治安維持組織による拘束が行われる。

 危険人物と判断された場合、彼らを無力化し拘束しておくのはコストがかかる。

 故に、治安維持組織に回収させるのである。

 

 そして今回もザンマとイグナイトは治安維持組織に拘束され、移送されていた。

 

「ああ、どうもザンマさん」

 

 しかし、移送車は襲撃され、動転していた。

 そして、ザンマは衝撃に曖昧な意識を保ちながら、その顔を見た。

 「食々会」のアジトにいた布塚と言う男。

 その男が延焼する車の前に立っていた。

 

 無論ザンマは喋れる状態にはない。

 ただ、その男を睨むことしかできない。

 そして、その場に中牧の顔を見つける。

 決着の後逃げおうせて食々会に戻っていたのだろう。

 

「そう睨まないでくださいよ。ザンマさん。私どももあなたとの契約を果たしてもらうためにここに来たのですから」

 

 悠長に布塚は話す。

 それにザンマが反応する前に向こうから甲高い声が響く。

 

「もう、そんなのどうでもいいでしょ。救援来ないうちに早く逃げよ」

 

 真っ赤な髪をツインテールにした少女。

 少女の全身白い服装はやはり彼らの仲間だと主張する。

 その声に、布塚は笑みを深くした。

 

「ええ、ええ。そうですね。ではザンマさん。どうか私たちの糧に」

 

 布塚はそう言った。

 

 

 

 

 ◆

 

「マダ、イテモイイノカ?」

「うん。だって、行く場所無いでしょ」

 

 突然、出ていくような雰囲気を醸し出したアナに対して俺は思わずそう言った。

 何が起因してこの家から出て行こうとしているのかは知らないが、彼女のここに居て困ることはない。

 これがもし、新居を見つけたと言うのならば止めはしないけれど、どうにもそうではないと言う。

 ならば追い出すのは酷と言うものだろう。

 それに連休最終日だ。

 自由にできる時間だってそう大きくないから、アナの出ていくにあたっての手伝いだってままならない。

 

「と言う事は、私ももう少しいてもいいってこと?」

「うん。……うん?うん」

 

 そう言えば、何でツムギちゃんも一緒に住むことになったんだっけと思い返せば、アナの面倒を見れるかどうか不安であったためだった。

 ただ、ここ数日一緒に住んでみれば、アナは相当に自立しているように見えた。

 まあ、ツムギちゃんも少しの間に大分俺の生活に欠かせない人物になりつつあるのでありがたくもある。

 多少なりとも、及第点に届かないくらいのギリギリアウトなあたりの家事を自分でしていたが、ツムギちゃんが最近全部やってくれているので元の生活に戻れそうもない。

 とは言っても、俺だって手伝う。その絵面が休日に母親の家事の手伝いをしている娘みたいになっているのは笑えないけれど。

 

 まあいいか。

 

 平穏な日々が続く今日この頃ではあるけれど、ツムギちゃんやアナと一緒に居るのは楽しいし。





二章完です。
期間が開いた上に、一章以上に滅茶苦茶なものをお出ししてしまい申し訳ないですが、お付き合いいただいた皆様には感謝です。

一応作中の時系列だけ下に書いておきます。

〇4月27日「陽炎、壊滅」
×28日「アナ、潜伏」
〇29日「アナと金髪の男、ニット帽の男、接触」
〇30日「金髪の男、ニット帽の男、死亡」「アナとリオ、接触」
×5月1日「篠塚舞に勉強会に誘われる」「ザンマと志渡澤、協力調査」
〇2日「協力調査」
〇3日「勉強会」「協力捜査」
×4日「笹嶺による呼び出し」「協力調査」
〇5日「無異の偽装殺害」
〇6日「イグナイト、壊滅」

〇…アナの異能発動可能時間×…不可能時間
30日~2日…登校日
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

TS転生者、魔法少女世界に転生するも洗脳悪堕ち魔法少女にされて妹と戦わされる(作者:辻契約マスコット)(オリジナル現代/冒険・バトル)

 悪の組織『シン・アーク』と魔法少女達が日夜戦う世界にTS転生した光の魔法少女オタク(自称)は、ある日悪の組織に連れ去られ、洗脳悪堕ち魔法少女にされてしまった!▼ 一方その頃、彼/彼女の今世の義妹はマスコットと契約し、魔法少女として戦う覚悟を決める。▼ これは、愉快な悪の組織の洗脳悪堕ち魔法少女と、愉快なニチアサ風光の魔法少女の、姉妹の戦いのお話し。


総合評価:1807/評価:8.18/連載:6話/更新日時:2026年07月11日(土) 21:51 小説情報

うわぁぁ!!! エルフだ!!??!(作者:葛城)(オリジナルファンタジー/日常)

例によって例のごとく、神様のミスで異世界TS転生しただけでなくエルフになった人の話▼なお、異世界ではエルフはお伽噺の住人扱いされるぐらいで、本当にエルフっていたんだって超驚かれる存在である▼※セルフレイティングは、いちおう念のため


総合評価:3435/評価:8.32/連載:10話/更新日時:2026年07月04日(土) 23:35 小説情報

ニチアサ系世界に転生したTS魔法少女は悪の幹部をやりたくない(作者:なはた)(オリジナル現代/冒険・バトル)

▼フィジカルよわよわなTS銀髪魔法少女がクール系敵幹部を必死に装いながら魔法少女達と戦うお話。


総合評価:3414/評価:8.47/連載:14話/更新日時:2026年07月24日(金) 12:38 小説情報

アラサーTSメスガキ魔法少女に煽られて恥ずかしくないの?♡ざぁーこ♡(作者:夏川優希)(オリジナル現代/冒険・バトル)

アラサー社畜男性がメスガキ魔法少女に転職し、(口が勝手に)敵を煽って煽って煽りまくってボコボコにやっつけちゃう話。▼七瀬律はブラック企業でパワハラ上司にこき使われる社畜である。▼オフィスにて突如怪人に襲われ、死の淵に追いやられた律は思った。もっと自由に生きれば良かった、と。▼その願いに魔法の力が応えた。▼律は魔法少女に変身したのだ。▼アラサー男性なのに。しか…


総合評価:11084/評価:8.8/連載:51話/更新日時:2026年08月13日(木) 07:06 小説情報

学園でエセ勇者と揶揄されるオレ、うすほそ貧弱ボディ過ぎて喋らなかったら周りが勘違いを重ねて過保護になっていくんだけど(作者:IXAハーメルン)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

魔王が滅びて数百年、世界はめまぐるしい発展を遂げた。▼かつて対魔族の戦闘員を養成する魔術学院は、今や貴族などの箔付のために使われる場所と化している。▼そんな王立魔術学院にて勇者の血を引くオレ、セラフィリア・スタンレイは――絶賛いじめられていた!▼貧弱すぎる体、ガガンボ以下の体力、パスタのほうがまだ太い筋肉、勇者の血を引いているとは思えないほどあまりに雑魚すぎ…


総合評価:7034/評価:8.47/連載:60話/更新日時:2026年08月13日(木) 02:48 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>