TSしたら異能組織のボス(身長136cm)   作:環状線EX

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紹介

 

 結局、謝罪の言葉を言い出せないまま始まってしまった。

 勝手に始まっているものだと思っていたが、俺が椅子に座ってから司会?らしき人が話し出したことを考えるとどうやら俺のことを皆で待っていてくれたようだ。

 時間にして遅刻して五分足らずではあるが、入室した時に皆俺に注目していたからきっとそうに違いない。

 

 まさか、俺の生足を皆で凝視していたとは言わないだろう。

 現在俺の服装はパーカーにショートパンツと言うファッションになっている。

 今思えばこんな高級そうなとこに来るのならばもっと別の服を着てくればよかった。

 

 この一見履いてない的な服装ではこの場には似合わないだろう。

 きっと、ここにいる者たちの俺に向ける印象は良くないはずだ。

 美少女ロリとあって若干緩和される可能性もあるが遅れた上にこんな場に似合わない服装をして未だ謝罪もしないなど失礼にもほどがある。

 

 どうしよ。

 そろそろ本格的に焦って来た。

 

「それでは、出席者の皆様の紹介に移ります」

 

 俺が考え事をしている間にどんどん進んでしまう。

 

「天明天理、水流添(ツルゾエ)十流(トオリュウ)様」

 

 なんか凄そうな名前の人だ。

 天明天理?ってのがチームだか組織の名前なのだろうか。

 なんか派手だなとも思うがよく考えてみれば異能倶楽部の人たちも中二っぽいところがあったしそう言う人たちが集まっているのかもしれない。

 

 恐らく、名前を呼ばれたツルゾエって人は俺よりも歳は上のようだが、見たところ二十代前半と言った風貌だった。

 始めにこっちを見ていた大きな人の印象がでかくて若い人がいるとなんだか安心する。

 

陰浅葱(カゲアサギ)四至本(ししもと)カズサ様」

 

 今度は着物の人だ。

 キャラが濃い。

 でもなんだか若い人のようでホッとする。

 この人も中高生の集まりで俺と同じようにボスにされてしまった人なのだろうか。

 いや、やりたくてやってる可能性の方が高いか。

 

 俺ももはやそこまで嫌ではないし。

 でも、なんだか、俺を見る目が怖い。

 というか、警戒されている?

 何かしただろうか。

 いや、遅刻をしていた。

 

「セメタリ―、式町(シキマチ)様」

 

 苗字、だよな?

 名前は言わないのだろうか。

 まあ、いいか。

 

 そんなことよりなんだか白い人だ。

 人種的な話ではなく服装も白いし何より眼を惹くのはその髪と瞳。

 服同様にその二つは色が抜け落ちてしまったかのように白かった。

 異能の影響だろうか。

 まあ、先天的なものの可能性も十分あるが。

 

「大録會、大録(オオロク)様」

 

 身体のデカい怖そうなさっきの人だ。

 ここに来るまでの道中に酔っぱらった男に絡まれたせいか見下ろされるとなんだかこわばってしまう。

 とは言え、トラウマと言うほどでもないのだが。

 

 異能に関する健全な活動をしている人なのだろうか。

 そう思ってしまうほどに見た目が厳つい。

 スーツこそ着ているようだけどやばいことをしているような見た目をしている。

 

 まあ、見た目で判断することは良くないのでこの考えは早々に打ち切った。

 何より性転換して見た目と中身がここまで違う俺が偏見で物を語るのは良くない事だろう。

 

「ローレライ、霧消(ムショウ)様」

 

 大人の女性って感じの人だ。

 さっきのカズサって人とは正反対だ。

 ミステリアスな雰囲気を感じる。

 チャイナドレス風の服を着ていて彼女の吸っている煙草の煙を纏う姿はなんだか絵になった。

 

 というか、このメンツを見ると俺が異能倶楽部に名前を変えなかったら犯罪に巻き込まれていた可能性は高いんじゃないか。

 別に自分からしようとしなくてもここにいる他の組織の人たちも中二っぽいから変なムーブをしたり調子を乗って犯罪を犯してしまうかもしれない。

 それに巻き込まれてはどうしようもない。

 

 まあ、道中で話を聞いたネクサスと言う組織が参加しているかもしれないとか考えて話を聞いていたが、ここにはいないようだから特に心配しなくてもいいのかもしれない。

 よく考えれば、ちょっとした同好会みたいな集まりにそんな犯罪組織が来るわけもない。

 少し考えすぎたかもしれない。

 

 そんなことを考えていると皆の視線がこちらに集まった。

 ついに謝罪の無いことを指摘してくるのかと思ったが、そう言えば異能倶楽部がまだ呼ばれていないことに気付いた。

 

「異能倶楽部、ルカ様」

 

 ルカ?

 俺の名前が呼ばれる。

 そう思って身構えていたのだが、呼ばれたのは俺ではなかった。

 いや、だが、明らかに俺が注目を集めている。

 

 どういうことかと俺は頭を悩ませる。

 色々と考えを巡らせて一つの可能性に思い至った。

 思い出すのは昼間の出来事。

 

『ねぇ、リオ君』

『ん、なに?』

『自分のあだ名みたいなのない?本名が特定されない様なもので』

『……るか、とか?』

 

 あの時は急になんの話かと思ったものだが今この時のための物だったらしい。

 何で別の名前にしなきゃなのかは分からないけど。

 一応知らない人たちだし個人情報保護のためとか?

 いや、でも、そんな人たちと一緒にご飯なんか食べないか。

 

 考えてみるがよくわからなかった。

 ちなみに、ルカと言うのは俺のリオと言う名前を五十音順に並べて後ろに一文字ずつずらした名前だ。

 咄嗟だったのでこれくらいしか思いつかなかった。

 

 まあ、通りで本名っぽくない人がいたわけだ。

 全員が全員じゃないようだけどみんなであだ名で呼び合うみたいだ。

 なんか、オフ会だっけ、そう言うのではネット上の名前で呼び合うって聞いたことあるし、似たようなものなのかも。

 よく考えればここにいるいろいろな年齢の人たちが知り合えるのはネットくらいしかないし。

 

「以上でございます」

 

 司会の人がそう言いって締めくくる。

 よく見れば中華風の服を着ているからムショウさんって人の仲間かもしれない。

 

 さて、ひと段落したところで謝罪をさせてもらおう。

 

「では──」

「ちょっと、時間をいただいても?」

 

 話を遮るようで悪いが今しかない。

 司会の人はなんだか椅子に座る各組織のボスの人たちに目を向ける。

 そして、暗に反対がないことを確認したのか俺に視線を戻して口を開いた。

 

「わかりました。では、用件をどうぞ」

「用件とまでは、言いませんが、一つだけ」

 

 言ってから謝罪を大したことがないような物言いは良くないかもと思う。

 だが、まあ、とにかくさっさと謝罪をしてしまおう。

 さっきから気が気ではないのだ。

 

 「……っ」

 

 皆がこちらを見るのでつい言いよどんでしまう。

 いや、一回落ち着こう。

 早く謝罪をしなきゃいけないことは分かっているのだけどいかんせんオオロクと名乗った人の顔が怖い。

 

 俺は、無意識に目を逸らした。

 ビルの中にあるお店とあってか、夜景がきれいだ。

 絶景と言う奴だろう。

 

 よし、落ち着いた。

 

「ち──」

「よくわかったわ」

 

 え?

 

「遅刻をしてごめんなさい」と言おうと思った俺の言葉は、後から続けられた言葉によって遮られた。

 声の主はさっきのムショウと言う人だ。

 

 なんか最近言葉を遮られることが多い気がする。

 

 でも、わかったって何だろうか。

 俺の誠意を感じ取ってくれた的なことだろうか。

 一応確認を取ろうとして口を開こうとすれば、「皆まで言うな」と言われる。

 

「これはこちらの落ち度よ。今回の集会はローレライに一任されていたのだから。ルカ殿に気を使わせてしまって申し訳ないわ」

 

 殿……。

 マジか。

 美人で胸デカくて大人のお姉さんだから何をしても格好はつくけれど。

 殿か。

 

 でも、そんなことよりも今はご厚意に甘えさせてもらおう。

 遅刻をしたのは俺であるのにも関わらずご丁寧に対応してくれたのだから。

 

 ふぅ。

 なんだか胸の重りが取れた気がする。

 不安なこととかを抱えていると時間が経つにつれてどんどん辛くなってしまう。

 それを最初の方で解消できたのは良かった。

 そうじゃないとご飯を食べても気になってしまうし。

 

 まあ、胸の重りと言っても俺のはペタンコだが。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 六大組織が一つ、ローレライのボス、霧消は、ネクサスのボスであるルカと名乗る少女によって失態に気付いた。

 ルカの目線につられてガラスの外を見てやっと彼女は思い至った。

 

 集会は開かれるたびに場所なんかが変わるのだが、それに合わせて幹事の役割をする組織も変わる。

 そして今回のそれはローレライの役割だった。

 

 日時や今いるこの場所を手配したのもローレライであり、その仕事の中には当然、あたり周辺の警戒も含まれていた。

 六大組織の集まる集会が外部の組織や治安維持組織に狙われないはずもなかった。

 だから、異能や銃火器類による襲撃は常に警戒していた。

 

 潜伏できるような場所はすべて洗い出し、狙撃何てもってのほかだった。

 

 だが、その狙撃に気付かなかった。

 もちろん狙撃ポイントになりえる周囲のビルから何までこちらで抑えていた。

 それは多少やりすぎと言われるほどに。

 凄腕のスナイパーだって難しいような遠距離狙撃も見越していた。

 

 だが、スナイパーはそれをも掻い潜る完全な意識外にいた。

 本来届かない、届いても命中などできるはずもない、そんな場所に。

 長距離射撃。

 そんな言葉が生ぬるいような遠方にそれはいた。

 

 そして、そんなところから射撃が可能な要素もあったのだ。

 

 四年前、突如として現れた異能と呼ばれる存在。

 それを使えば不可能とも言い切れなかった。

 まあ、それでも凄腕なんてレベルの狙撃手ではターゲットに掠らせることすら難しいのだが。

 

 これは、完全なる失態に他ならなかった。

 ここにいるのは六大組織の面々、狙撃をされようともどうにでも出来る実力者が揃っている。

 だが、問題はそこではないのだ。

 ローレライが預かるこの集会において、その弾が当たることが無かろうが敵にそこまでさせてしまったと言う事が問題だった。

 

 だが、霧消はそれを顔には出さない。

 問題があるとわかればすぐに対処する以外の方法はないのだ。

 耳元で『対処が完了した』と連絡を受けた霧消は未だフードを被り顔を見せない少女を見た。

 

 すでに彼女は只者ではないと少女を評価していた。

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