あなたは貞操逆転世界でプロヒモの弟子なようです 作: ҉ 光 ҉
あなたは薄暗い路地裏の奥でザラザラしたコンクリートの壁の感触を背中で感じながら目を覚ましました。
あなたは目の前に広がる風景に見覚えなどありません。あなたはなんでこんな所にいるのかと考えてみましたがここに至るまでの記憶が全くと言っていい程ありません。
なんで自分はここに居るのか。どうやってここまで来たのか。それが頭の中からすっぽりと抜け落ちてしまったかの様な空白があなたにはありました
ここが何処なのかを確認するために周りをよく見ると寄りかかっていたザラザラした壁の塗装は所々剥げており、その薄暗さも相まってあなたは少しの不安を覚えます。
さらにあなたは風景と自らの事情も相まって恐怖心と孤独感に襲われました。自分が誰かもわからない。ここがどこかもわからない。そんな中でこのような場所に放り出されたならば、誰でも同じような反応するでしょう。
そんな中、足音が路地裏のさらに奥の暗い方から聞こえてきました。この場所とこの状況を考えてみれば、奥から歩いてくる人間がいい人には思えませんでした。
思いこみも激しいと思いますが今のあなたはその想いを断定してまいました。
そして、そうやって現れたのは1人の男でした。
男の服装などはお世辞にも整っているとは言えませんでした。その黒い髪は少し跳ねていて、服もあまりおしゃれに気遣っているとは思えません。ですが、格好悪いと言うことではありませんでした。
それはこの男がこのような状況に置かれていたあなたも一瞬間気を取られる位のとてつもない美形だったからです。高い鼻と少し釣っている目がとても似合っており、かっこいいとも言えるし美しいと言える、そのような顔立ちをしておりました。
何かわからないものに抱いていた恐怖心と言うものがその姿形がわかったことであなたの恐怖心は多少は薄くなりました。それでもまだ恐ろしいと思うのは男の身なりが粗暴かつ顔はいいということで『女殴ってそうな奴』と言う印象があったからでした。
その男はあなたを見るととても驚いた様子でうろたえています。目を見開いたかと思えば、「は?」や「なんで?」などと言ったり頭を抱えて悩みだしたりしていました。彼がそのような仕草を一つ一つするたびに、あなたの中の恐怖心が和んでいきました。
2人の間に沈黙が流れます。その時になるとあなたは男の目をまっすぐ直視できる位には恐怖感を忘れていて、目と目は合っているのにどちらとも何も話していないと言う少し奇妙な状況になりました。そして男の方が観念したように頭の後ろをガリガリとかきながら口を開きました。
「……お前みたいな歳の男がなんでこんな場所にいるんだよ?」
少しかったるそうに男は言葉を発しました。あなたはその言葉にいくつかの疑問を覚えました。
まずはお前みたいな歳と言う言葉です。その言い方だと、まるであなたはとても若いかとても老けているように思えます。あなたはそのような歳だっただろうかと考えてみてそんなはずはなかったんじゃないかと確信に似たような思いがありました。
なぜ自分が何歳であるかという記憶がないあなたにそのような確信があったのか、それは分かりませんが、あなたは今一度自分の身なりと外見の年齢を見直してみることにしてみました。
するとどうでしょうか。あなたの身なりは病室から抜け出してきたような真っ白い服を着てます。しかもこれは明らかにオーバーサイズでまるで本当に病人のような自らの白い肌色が多く見えてしまっています。
さらにあなたの身長や手や足の小ささなどから考えるに年齢は小学生高学年位が妥当。もしただ単に身長が低い人と考えたとしても高校生に届く事はないだろうと言うものでした。
そんなふうにあなたは自分の体や服を見ながらなにかおかしいと頭をひねっていました。するとあなたに対して男はまた口を開きました。
「こんなクソみたいな所になんで居るんだよって聞いてんだ。まさか仕事とか言わねぇよな」
少し苛立ちを交えながら男が聞きました。それに対してあなたは「仕事……?」と何も物事の道理がわかっていないかのような声を上げます。しかし先ほども疑問に思った点である『こんな場所』または『クソみたいな所』と言う言葉の意味を踏まえて考えてみると少しわかりそうな気がします。
おそらくここは何か非合法な仕事やっている場では無いのかとあなたは考えました。いえ、もしかしたらR-18のような仕事なのかもしれません。そう考えてみると最初のお前みたいな歳の男と言う言葉はそんな歳で身売りをしているのかと言う心配の言葉にも聞こえてきます。
もしかしたらあなたの目の前にいる男は悪い人では無いのかもしれません。ならばあなたも誠心誠意正直に答えるべきでありましょう。なのであなたは男の質問に対して「わからない」と声は上げました
だってそうでしょう。あなたには一切の記憶がないのですから自分がなんでここにいるのかなどわかりようがないのです。すると男は顔を驚きに染めて自らの目をさらに釣り上がらせました
「てめぇ、ここがどういう場所かわかってるか?」
これもまた同じくあなたは「わからない」と返します。先程考えたことを話そうかとも思いましたが少し飛躍し過ぎているとは自覚していますし、まだ何も確定していないのですから予想だけで思ったことを話すのどうかと思い、口に出すことはははばかられました。
「じゃあ教えてやるよ。ここは
その言葉に対してあなたは「やっぱりそうだったんだ」と声を漏らします。なぜ男が女に売ると限定したのか分かりませんでしたが。
「出会ったのが男の俺で良かったな、そんな格好してたら女に襲ってくださいって言ってるようなもんだぜ。親から教わらなかったか?」
そんなことを言われてもあなたの記憶の中に親と言う存在はいませんし、帰るべき家の場所も分かりません。なのであなたは正直に「親が誰なのかは知らない、家があるのかもわからない」と答えました。
「……は?」
男はこれはこれは本当に心底驚いたと言う表情を見せました。少し言葉遣いを間違えたかもしれないとあなたは思いましたが、言ってる内容は何も間違っていないだろうと言う1種の開き直りに似た感情がありました。
そして、そこからはもう怒涛とも言える展開てした
「お前、名前は?」
これもまた同じ、あなたは「わからない」と答えます。
「どこから来た?」
またまた同じ「わからない」と答えました。すると男は少し考えるような素振りを見せて、またもう一つ質問をしました。
「お前まさか……記憶がないのか」
数回質問に答えただけで真実にたどり着いた男に対して「うん」とあなたは頷きながら返します。
それにしてもこれからどうなってしまうのだろうとあなたは思いました。
冷静に考えてみましょう。あなたの状況は歓楽街に現れた自分が誰なのかも、親の顔も何もかもがわからない少年です。
間違いなく事案です。警察にお世話になってしまうのでしょうか。そこから先はどうなるでしょう。子供の親もわからないとなれば孤児院か何かに送られてしまうことだってあり得るのかもしれません
そんな思考がぐるぐる頭頭の中を巡りだしてしまったあなたを目の前にいた男はつかみあげました。文字通りのことです。まるで俵か何かでも抱くようにあなたを横抱きにして歩き出しました。
「とりあえず、場所だけ変えるぞ。あんな場所男二人で長居なんてしたくねぇ」
あなたは男の性格があまり悪いものではないと先ほどのやり取りで確信を持っていました。なので特に暴れ出すと言うこともなくされるがままに掴み上げられています。
ただ、少し心配するべきなのは、端から見れば事案と言う状況は何も変わっていないと言うことでしょうか。男の三白眼はそれはそれは似合っていてかっこいいと思うのですが、見方を変えてみれば犯罪者顔に見えなくもありません。
あなたはこのような状況に置かれて場違いにも男の身のことを心配していました。
貞操逆転世界なのに1話で女がまだ出てこない小説があるらしい