ポケットモンスター バイオレット a.k.a Lemonade Tornado!!   作:ストレンジ.

24 / 43
#24『a.k.a, a.k.a……a.k.a』

 

 アジト内で次々と展開されるスター団のポケモンたちのその数に少なからず気圧されはするものの、ネルケとレモンも気力は十分に自らのポケモンたちをくり出していく。クワッス、コンパン、アママイコ。ネルケからはライドポケモンのモトトカゲ、大量発生したワナイダーから助けてくれたデルビル、そしてニャオハの進化形、ニャローテが姿を見せた。

「お、最後の子は初めて見るね」

「ニャオハは知っているだろう? その進化形のニャローテだ……さあニャローテ、モトトカゲとヨロシク頼むぜ」

「はにゃあ!」

 ネルケの目配せに反応するとニャローテは素早くモトトカゲの背へと跳び乗り、ライドポケモン用に取り付けられた操縦用のハンドルを両手で握った。

「ポケモンが……ライドポケモンに乗ったぁ!?」

 付近にいた下っぱのひとりが驚きの声を上げる。それを合図にスター団はざわめき立ち動揺が走る。

「練習と経験を積めばそれほど難しいことじゃないさ」

「いやアタシもびっくりした!」

「びっくりしても構わないがバトルにはきっちり勝って貰わなきゃな……さて、露払いはオレたちの役目だ。いくぜ!」

 モトトカゲを駆るニャローテとデルビルを従えるネルケ、二組に分かれて浮き足立った空気のままのスター団に遠慮せず切り込んでいく。

「アンタらも驚くのは後にしておいた方が身のためだぜ。デルビル、『ひのこ』を食らわせるんだ!」

 レモンたちから最も近くにいた下っぱたちが従えるゾロアに向かって『ひのこ』を吐き初擊を与えるデルビル。それを見て負けじとニャローテも周囲のスター団に接近をかける。

「おわっ、来たぞっ!」

「落ち着け! 数ならこっちが有利なんだ!」

「にゃろうっ!」

 慌てふためくスター団を楽しげに見ながらニャローテはフットペダルを踏み込んで、その力加減でモトトカゲへ指示を出す。それを受けたモトトカゲはひと鳴きし、一気にスピードを増して下っぱたちへ突撃していく。

「メグロコ、『すなかけ』……」

「にゃは!」

 遅い、とばかりに技を出そうとするメグロコの目の前まで瞬時に近づいたニャローテはモトトカゲに『でんこうせっか』を指示して先制攻撃を加え、メグロコが吹っ飛んでいく。

「『すなじごく』ぅ!」

 すぐ隣にいた別のメグロコ使いの下っぱが、自分たちに矛先が向く前に『すなじごく』でモトトカゲたちの動きを膠着させにかかる。

「にぃ~っ!」

 しかしダメージを受けつつもその状況を楽しみでもしているような、いたずら好きな笑みを浮かべながらニャローテが次なる指示を出すと、モトトカゲはその場でグルグルと身体を激しく横回転させ『こうそくスピン』をくり出し『すなじごく』をあっさりと吹き飛ばす。

「ああもう! じゃあなにを出せと!?」

「おい、ニャローテがいないぞ!」

 次の技を指示しあぐねる下っぱの横で更なる下っぱが異変に気づく。モトトカゲにライドしていたニャローテが『こうそくスピン』が終わる頃には姿を消していた。

「にゃにゃにゃ!」

 声に気づき下っぱたちが上を見ると、次の瞬間にはモトトカゲの背から空中へ飛び上がったニャローテが『タネばくだん』をこちらへ飛ばすのが見えた。指示を出す間もなく、ニャローテたちと相対していたメグロコたちに『タネばくだん』の直撃が入り、辺りには目を回して戦闘不能に陥った3匹のメグロコが転がる。

「ウソだろ……トレーナーの指示なしで、3対2の状況でオレたちのメグロコをこうもあっさりと……」

「あのリーゼント、相当強いぞ! みんなまとめてかかるんだ!」

 敗北した下っぱが周囲の下っぱたちへ忠告すると、2、3人体制の分隊を組んでいた下っぱたちは付近の仲間と合流して10人弱の中隊編成となってレモンとネルケのコンビに襲いかかる。

「出し惜しみはしない!」

 数的不利の状況で主導権を得るためにもネルケは早くもテラスタルオーブをデルビルに使用し、ほのおテラスタルを切る。

「焼き払え!」

 テラスタルの力によって強化・広範囲化されたデルビルの『ひのこ』が一帯の下っぱのポケモンたち、ゾロアやニューラ、ヤミカラスたちに降りかかりダメージを与える。

「あれがテラスタル……くっ、オレたちができない技を……!」

「興味があるなら復学したらどうかな?」

「うるさい! ヤミカラス、『あやしいひかり』!」

「悪いが遅いな」

 顔色ひとつ変えずにネルケが目配せすると、デルビルも当然の反応といった調子で反撃の『あやしいひかり』を難なくかわし、返しにもう一度『ひのこ』を放ち周辺のポケモンたちを追いつめていく。

「弱点を攻めるんだ! メグロコ、『あなをほる』」

 下っぱのひとりが『あなをほる』を命じると、近辺の他のメグロコ使いたちもそれに続いて『あなをほる』でデルビルに手痛いダメージを与えようと画策する。

「デルビル、地面が盛り上がる瞬間を見逃すな!」

「オァン!」

 地中を移動する響きでメグロコの接近を感じ、地面の隆起する瞬間にデルビルはしなやかに足を曲げ跳び上がる。そのワンテンポ後に不発に終わった『あなをほる』攻撃で地中から出てきたメグロコに一方的に反撃を加えながら続く2体目、3体目にも同様に対処しテラスタルのデルビルが火を吹く。下っぱたちはネルケ率いるデルビルたちにまともに攻撃を与えられないまま次々と手持ちたちが戦闘不能になっていく状況に戦慄し、そのおののきは瞬く間に全体へと伝播していった。

「いったいなんなんだ、あのリーゼント? マジ、オレたちじゃ……!」

「かなわ……ねえ! いったんターゲット変更だ。あっちのパイナップル頭を狙うんだ!」

 その一言でネルケと相対していた下っぱたちは周辺の者たちとも合流しながら三々五々に戦闘を離脱して今度はレモンのもとへと向かっていった。

 

 レモンはネルケのように各ポケモンの判断に任せて行動させるのではなく、自分の指揮が届く範囲の内でクワッス、コンパン、アママイコの3匹を展開させてスター団に挑んでいた。相手の1体にこちらの1体をあてがい、着実に倒していく。そこへ標的を変えた下っぱたちがレモンの周辺の下っぱたちへと駆け込み合流し倒すべき相手が一気に増える。

「押せ押せ押せ押せ!」

 誰のものかわからないスター団のひとりの威勢のいいその言葉を受けて下っぱたちは雪崩のように自らのパートナーをレモンにけしかけていく。

「大量のあくポケ、無視できないよね! 正義の裁き? 『むしのさざめき』!」

 押し寄せるあくポケモンたちの群れの中央に、風穴を開けるようにレモンのコンパンの『むしのさざめき』による音波の振動が打ち寄せる。その衝撃にさらされたポケモンたちは言わずもがな、攻撃の範囲外にいたものたちもその大きな震動の揺らぎに突撃への躊躇を見せる。その一瞬の隙を突いてクワッスが『アクアジェット』で硬直状態のポケモンたちに攻撃しつつ接近し、『アクアカッター』や『つばさでうつ』で追撃をかけ、続いてアママイコも疾走して接近しながらスライディングの動きで『ローキック』を食らわせ、そこから目に入った敵を片っ端から足技で翻弄し、崩していく。

「引け引け引け引け!」

 その勢いの凄まじさに、反撃もせずに撤退を命令する下っぱが出ると、他の下っぱたちも付和雷同し後退の声がそれぞれに上がる。

 後退していくあくポケモンの群れに追い打ちの『むしのさざめき』をかけつつクワッスとアママイコを側に戻し新手への対応ができるよう体制を整えるレモンだったが、多勢に無勢をものともしない戦いぶりに下っぱたちは勢いを失い消極的になり、誰もレモンに近づこうとしない。

「『とんぼがえり』!」

 ニャローテとモトトカゲのコンビが相対していた敵の劣勢を少し離れた位置から見てとると、とどめのヒット&アウェイにモトトカゲへ『とんぼがえり』を指示し、2匹を自身のもとへ呼び寄せるとネルケはレモンへと歩いて合流しようとする。そこに妨害を挟んでくる下っぱはもはやおらず、滞りなくレモンのもとへたどり着くとネルケは団員たちに号令する。

「オレたちに挑む気はなくなったか!? なら、さっさと呼ぶべき存在がいるんじゃないのか?」

 動揺と諦念のざわめきが下っぱたちから異口同音にささやかれるのを耳にしながら、レモンとネルケは下っぱたちの次の動きを静かに待った。圧倒的なこの状況に、ボスが出てくるのは『だいもんじ』を見るよりも明らかだとネルケは確信し、レモンは既にピーニャの登場、バトルを心待ちにしていた。

 

『オーケイ! 事態は了解、出番だそうだ。みんな、幕を上げて!』

 ざわめきを破ってスピーカーから再び声が響くと、直後にけたたましいエンジン音がアジトに鳴り響く。

 音の出どころらしき場所に設営されている大きなテントへレモンとネルケが注目すると、ふたりの団員がテントの入口の幕を上げた。次の瞬間、威嚇するような攻撃的なエンジン音を撒き散らしながら、一目で明らかに改造車とわかる、両端に巨大なスピーカーが取り付けられた派手な大型車がテントから姿を見せ、徐行でレモン、ネルケ両人の前へとゆっくりと近づいてくる。

「な……ななな、なんですかこれはっ!?」

「ふぇぇ……ビッグなモーターサウンド、ヒップなスーパーカーだぞ……」

 予想外も予想外の存在の登場に唖然とするふたりの前でアイドリング音を吹かせ続ける大型車のルーフには凱旋パレードを行うためのようなステージが設けられており、そこに少年がひとり、胡座(あぐら)をかいて乗っているのを、少ししてから落ち着きを取り戻したふたりは確認した。

「ハイ! ド派手にやってくれるじゃん! 侵入者くん!」

 胡座を解き立ち上がってステージからレモンたちを見下ろしながら少年が口を開いた。

「ボクはピーニャ……a.k.a『DJ悪事』! まあ好きなほうで呼んでよ」

 ノートパソコンを片手に、少年はチーム・セギンのボスである『ピーニャ』の名を口にした。

『彼があく組のボス……ピーニャだ!』

 それまで下っぱたちとの戦いを静観していたカシオペアがレモンのスマホロトム越しに、相手の名乗りを肯定するように呟いた。

「おでましだね! アタシはレモン! a.k.a『レモネード・トルネード』! スター団を星屑に変えちゃうサワーな旋風ガール! よろしくっ!」

「オレはネルケ……え、え~、a.k.a……おっ、『ハレーション・カーネーション』! レモネード・トルネードの相棒で、アンタら大将同士のバトルの見届け人だ……ふふふ、我ながらいい名乗りを思いついたものです

 爽やかに見栄を切るレモンと、とっさに思いついた別名の名乗りに満足感を小声で漏らすネルケの前で、ピーニャは不敵に笑って右手をかざす。

「クールな名乗りけっこう! さっそくだけどここで潰れてよ、レクイエム流すからさ。見届けといてよ『ハレーション・カーネーション』、相棒の敗れる様をさ!」

 そう言い渡すとピーニャは首にかけたヘッドホンを装着し、携えていたノートパソコンを開いて少しいじる仕草をすると、今まで流れていたBGMが止み、エレキギター音による金属的なイントロが耳をつんざくハードかつソリッドな曲が新たにかかり、再びPCを閉じ小脇に抱え直すと空いた手にタイマーボールを握り、レモンに突きつけ宣言する。

「さあ、パーティのスタンバイ! 永遠にチルアウトさせてやるよ!」

「待ちに待ったスターダスト・タイム! イカしたレクイエムはキミのために奏でられるのさ!」

「フフ……大した威勢だね、気に入ったよ。始めようか!」

「いざ!」

 レモンは両手にそれぞれモンスターボールとゴージャスボールを持ちクワッスとアママイコを戻すと場に残ったコンパンに目配せをし、戦闘態勢に入る。すかさずネルケがおいしいみずをコンパンに与えて下っぱ戦でわずかに消耗した体力を回復させると、今度こそレモンとピーニャのバトルが始まるのだった。

 

 

 

(つづく)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。