ポケットモンスター バイオレット a.k.a Lemonade Tornado!!   作:ストレンジ.

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#28『Crew the Crow』

 

 レホールに強い敬愛の念を寄せるアカデミーの女子生徒ふたりが昼休みに食堂で学食に舌鼓を打っている頃、レモンはテーブルシティを通り抜け、ペパーと組んで巨大ガケガニを倒し秘伝スパイスをゲットした南3番エリアを再訪し相手との力の差に気を配りながら野生のポケモンたちとウリムーを戦わせ、しかるべき戦いに備えて鍛え上げていた。不利な相手に襲いかかられたときはすぐさま他の手持ちに交代させ、ダメージを負えばすぐさま回復させる。いたわりつつも連戦に次ぐ連戦でウリムーをバトルに慣れさせていく。

「『こおりのつぶて』!」

 空中を飛び回るココガラに素早く的確に『こおりのつぶて』がヒットする。ウリムーのある程度の成長を確認できたところでレモンは一度育成を切り上げ、ポケモンたちと遅めの昼食休憩をとってから今度はコンパンを中心に再び育成に明け暮れ、今日はこれで止めにしようと決めた頃には、かつてガケガニと戦ったときのように夕陽が入り組んだ黄土色の谷間をオレンジ色に染め上げていた。

 

「よーし終わり、帰ってお風呂お風呂!」

 鍛練を切り上げアカデミーの自分の部屋へと戻ろうとミライドンの入ったボールを投げようとしたところで、レモンの目の端が小さな黒い影を捉えた。

「む……むむむむむんっ!?」

 奇声を発しながら影の方へ振り向くと、翼をばたつかせて滞空し寄り集まってる4匹のヤミカラスの群れがレモンの目にはっきりと映った。その内の1匹、他3匹よりも小さめの体格のヤミカラスにレモンの目はくぎ付けになった。

「ビビっと……きたああああああぁぁぁ!」

 叫びながらレモンはミライドンのボールをすかさずサファリボールに持ち替え、さらにもう片方の手にもうひとつのモンスターボールを持ち、ふたつを投げた。ヤミカラスの群れの前にクワッスとウリムーが現れる。

「クワッス、『アクアジェット』、ウリムーは『こおりのつぶて』!」

 クワッスがヤミカラスたちへ『アクアジェット』で切り込み群れを上空へ散らすと、そこへウリムーの『こおりのつぶて』の連弾が追撃をかける。攻撃を受けたヤミカラスは、1匹は地に落下し倒れ、2匹はその場から逃げていき、レモンが気にかけた最後の1匹だけが傷を負いながらもその場に留まり戦おうとする意志を見せていた。

「カッ!」

 ヤミカラスの胸のあたりの空間に暗い球体状の歪みが生じ、みるみるうちに禍々しい紫色のエネルギー弾となってウリムー目がけて飛んでいく。ヒットはしたものの鍛練によって能力の伸びたウリムーにとっては余裕をもって耐えられる程度のダメージで済んだ。相手の数が減ったためレモンはクワッスをボールに戻し1対1の戦いに臨む。

「『こなゆき』っ!」

「アァーッ!」

 レモンの指示に従ったウリムーの『こなゆき』とヤミカラスによる『あやしいひかり』はほぼ同時に放たれ交差し、風に乗った粉末状の微細な雪が不可思議な光に瞬間照らされる。互いの攻撃を受け合うが体力が尽き目を回し地に落ちていくヤミカラスの前に、こんらん状態に陥ったウリムーが次の行動に移る必要はもうなかった。

「よしっ、捕獲タイム! えーと……これだ!」

 急いでバックの中からヤミカラスを捕まえるためのボール類を取り出す。レモンが握りしめたのは宝探し始まりの日にネモからもらったもののひとつである、夜間や洞窟など暗所での捕獲率が上がるとされているダークボールだった。

「うん、まだ暗くないけどヤミカラスに似合ってるかも! いけっ、夕焼けのダークボール!」

 動きを止めたヤミカラスへレモンの投げたダークボールが向かい、口を開ける。闇色の霧に包まれ、光とヤミカラスの姿が消えると、展開部を閉じたボールは2、3度震え静止した。レモンにとって5匹目の新たな仲間が加わった瞬間だった。

「イエーイ! ヤミカラスゲットだぜ!」

「むうぅぅぅぅぅうあ……?」

 ガッツポーズを決める横で、こんらん中で状況を正確に把握しきれていないウリムーが間延びした鳴き声を上げながら短い手足をばたつかせてレモンの足下をちょこまかと動き回る。

「あーごめん! 戻ってね!」

 ウリムーをボールに戻し辺りに静寂が戻ると改めて胸中の満足感をレモンは噛み締めながら、腰回りに携えた仲間たちの入ったボールをしみじみ眺める。ペパーから託されたミライドンとアカデミーから贈られたクワッスがスタンダードなモンスターボールで共通していることを除けば、あとはコンパンのフレンドボール、アママイコのゴージャスボール、ウリムーのサファリボールにヤミカラスのダークボールと、違う種類のボールが並んで視覚的に賑やかなのがレモンを一層楽しくさせた。育成に捕獲に充実した一日を送り、レモンは今度こそポケモンセンターを経由しつつ寮までの帰路へと着くのだった。

 

   *

 

 アカデミーへ戻り入浴を済ませ、捕まえたばかりのヤミカラスを自室にて出して改めて顔を見合わせる。小さめの身体に『ゆうかん』な性格を持ち合わせた♀のヤミカラス、図鑑アプリに表示された各データを横目でチェックしながら勉強机の端に腰かける姿を眺めて悦に浸りつつ先のことを考える。次の目的地のボウルタウンのジムリーダー、コルサが受け持つポケモンのタイプはくさ。くさに有利な『つばさでうつ』を覚えているが、みずタイプゆえに相性の悪いクワッス、同じようにこおりタイプの技を使えてもじめんタイプを持つためにやはりこちらも相性の悪いウリムーと違い、ひこうタイプを持つヤミカラスが加わったことで図らずも有利にバトルを運べるようになった。加えて特性の『きょううん』が発揮されれば一撃で勝敗を決することも不可能ではないかもしれない。そんな都合のいい想像で悦に入るレモンにとってヤミカラスは幸運を運ぶ存在のように映り、思わず頭を撫でる。ヤミカラスは目を細めまんざらでもなさそうに「カー」と短く鳴いてレモンを見つめ返す。そうやってしばらく親交を深め合ってから第2のジム戦に備えて早めに眠ることにしたレモンだった。

 

 朝になり髪をセットし終えるとレモンはさっそくボウルタウン目指して出かけようとエントランスまで来たところで、話をしている校長とレホールの姿を見つける。話を中断させないよう横を通り過ぎる際にふたりを見て会釈だけしようと近くまで来たところでレホールが楽しそうな表情でレモンの姿を見て声をかけてきた。

「失礼。貴様……名前はなんだったかな」

「え……あ、1-Aのレモンです。おはようございます」

「おはよう。なるほど、レモンだな。もう出かけるのか?」

「はい、コルサさんとバトりにボウルタウンまで!」

「ほう、宝探しの日々を謳歌しているようだな」

「冒険ももちろん素晴らしいですが、授業を受けるのも忘れないよう。きっと宝探しに役立つはずですから」

 どことなく警戒するような目でレホールの動きに注意しながらクラベル校長がつけ加える。

「もちろんです! 今日はもう行っちゃうけど……次に戻ってきたら受けようと思います!」

「いい返事ですね、ではお気をつけて……レホール先生、我々もそろそろ職員室へ向かいましょうか」

「ククク……ご同行しよう」

 含み笑いで校長を見るレホールに少しだけ奇妙な空気を感じとりつつも、レモンはすぐに忘れ、己の目的のための行動に取りかかる。街でサンドウィッチの材料を素早く買い揃えてから、旅立ちのときとは逆の東門をくぐり、ミライドンにライドする。目指すは花と芸術の街、ボウルタウン。くさタイプのジムリーダー、コルサと一戦を交えるべく疾駆するミライドンの背中に跨がって、新たな仲間を加えて再びレモンは出発した。

 

 

 

(つづく)




改稿詳細:ヤミカラスの特性が初稿では『ふみん』だったのを『きょううん』に改めました。
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