楽園に雷光は走る   作:時空未知

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高評価、コメント、ありがてえ……ありがてえ……


手放したもの。守りたかったもの。(1)

 

 

 

「それでねそれでね、これがアクチュエーターまわりで、これがそれをうごかすOSでね……」

「そ、そうなんだね……おじさんさっぱりだよ」

 

その頃、ホシノはカーラと名乗った謎の少女とファンシーな子供部屋の中で遊んでいた。初日こそ情報収集をしようと試みていたホシノだったが、本人に自覚はないがカーラ自身もここに軟禁されているらしいこと、そもそも精神年齢が幼くわかってないことが多かったことが相まって、その試みは早々に頓挫していた。

代わりに彼女の遊びに付き合うことにしたのだが……ホシノは画用紙一杯に描かれた設計図をみる。

 

「……本当、すごいね。カーラちゃんは」

「えへへ、くろおじさんもおねぇちゃんもほめてくれるの」

 

……設計に関して素人のホシノですら精巧で、高度な技術のもと作られているとわかる大型の人形兵器の設計図。他にもパズルと称した演算など、明らかに精神、肉体年齢を超越した頭脳を有していた。その中でもホシノが探した中で特に異彩を放つのが、特務士官によく似た兵器の設計図。気になった理由は特務士官と似ていたからだが、問題はそれではない。何故か、その機体のコクピット周りの設計図だけがポッカリと欠けていた。

その事を聞くと、何故かそこだけ書きたくないらしい。何故か、は本人にも分からないようだか。

……何にせよ、彼女が黒服や特務士官にとって重要な意味を持つのはまず間違いない。

多分、彼女のこの能力と、ぽっかりとあいた空白部分の「何か」を狙っているのだろう。

 

ガコン

 

その時、部屋の後方で何か音がした。

 

「あ、ごはんだ!」

「……うへ、ホントだね〜。それじゃあいったんお絵描きはおしまいだね〜」

 

ホシノがそういうと、カーラは製図道具と書きかけの設計図を手早く片付けうれしそうにそちらの方に駆け寄る。

この部屋では食料は決まった時間に、3食と2回のお菓子が部屋の隅にある受け取り口から来る。

どれもこれといって問題のあるものではないが……

 

「……夕食のタイミングが早い…?」

 

ホシノはカーラには聞こえない程の小さな声でつぶやいた。

ここに来たときから寸分の狂いもなく来ていた夕食が、何故か少し早くきたのだ。

……出てきた食事はパンがついた温かなシチューで、湯気が立ち、あたりいっぱいにいい香りがして、特に怪しい様子はない。

だというのに、何故か胸騒ぎがする。

机にそれを並べカーラとともに食卓につく。

 

「いただきます!」

「はい、いただきま〜す」

 

カーラは元気よくそう言うと、パンをシチューに浸して食べるためかパンを手頃なサイズにちぎり始める。

ホシノはそれを確認すると、サッとシチューをスプーンで少量掬い、口に含んだ。

 

(……何もない)

 

至って普通の、違和感一つ無いシチューだった。

杞憂かとホシノが思い直したその時、

 

カチャン

 

正面からスプーンが落ちる小さな音が響いた。  

ホシノは反射的にそちらを見た。

そこでは、スプーンを取り落としたカーラが、椅子に座ったまま小さな寝息を立てていた。

 

「!!カーラちゃ…!」

 

慌てて彼女に呼びかけようとしたホシノ、しかし、その身体もその場に崩れ落ちる……強烈な眠気がホシノを襲う。

混濁する意識の中、ホシノはシチューの香りの中に、微かに異質な臭いが混じっていることを確認した。

 

「すいみん、ガス…?」

「御名答です、小鳥遊ホシノ。並の人間なら一瞬で眠りに付く程強力なものだったはずですが……流石はキヴォトスの中でも有数の神秘の持ち主、と言ったところでしょうか」

 

聞き覚えのある、こちらを探るような、楽しむような声がした。

……黒服だ。

視界に辛うじて映ったカーラが、黒い両手にそっと抱え上げられる。

黒服は、寝息を立てるカーラを抱きかかえると、倒れ伏すホシノを一瞥し、そのまま部屋から立ち去ろうとした。

しかし、その足が止まる。見ると、ホシノがのこった力を振り絞って、黒服のズボンの裾をつかんでいた。

 

「おま、え……その子を、どこに……」

 

絞り出すようなホシノの言葉に、黒服は首を傾げた。

 

「どこに、も何も……もともとカーラ嬢は身寄りがなく、それを私どもが保護している、というだけです。

あなたの後輩方がここを襲撃してきましたね。お世辞にも状況は良くないので早く退避しようと考えまして……」

「詭弁を……!その子を、利用、しよう……としてる、くせに……」

 

ホシノの掠れた、しかし身を焦がす怒気を纏ったその言葉。しかし、黒服は揺らがない。ただ、クツクツと笑い声を漏らすだけだ。

 

「利用、ですか……確かに私達大人はできない数多の子供を利用し、搾取してきました」

 

勿体ぶったような黒服の言葉。まるで、ホシノの言うことがおかしくて仕方ないとでも言うかのような口ぶり……

 

「しかし、彼女は私たちと同じ、探求者であり、形は違えど崇高に至ったとも言える女性です。私は……私達は彼女を尊敬しています。それを丁重に扱わない訳がないでしょう?志を共にしてくれるかは……まだわかりませんがね。彼女はまだ、眠りについたままなので……おや?」

 

黒服がそこまで言い切った所でホシノからの応答がないことに気がついた。……どうも、睡眠ガスの効果で眠ってしまったようだ。

 

「ふむ、ようやく眠りましたか……」

 

黒服はそう呟くと、淡く煙の立ち込める子供部屋を後にした。

そう進まぬうちに重厚な扉の前にたどり着く。黒服が近くの認証装置に手をかざすと、電子音とともに扉が開いた。

外に広がるのは広大な砂漠と廃墟。

その目の前に大型の双プロペラ式の輸送ヘリコプターが鎮座していた。黒服はその操縦席に乗り込むと、機体を発進させる。

周囲の砂塵を巻き上げながら、ヘリコプターが飛跳する

あっという間に空高くに到達したヘリコプターの窓から、

黒服は地上を見下ろした。

 

……1部隊だけ旧アビドス本館まで突出した部隊がゴリアテと戦闘し、その後方では猛烈な爆発を巻き起こしながらPMCを蹂躙し、右翼に展開した大部隊が圧倒的な戦力をもって掃討、

更に後方からは迫撃砲の支援砲撃……さほど立たぬうちにこの拠点は陥落するだろう。

その時、端末に通信が入った。

 

[黒服さん、修繕が終わったよ。いつでも出撃出来るよ]

 

ユメからだ。

アーマーの修繕を終わらせたユメは、顔に装着した通信機にそう言いながらそれの目の前に立つ。

パカリと胸部の装甲が開き、そこから無数のアームが彼女に向かって伸びると、その肢体を絡め取った。義足が、義手が外れ、代わりにその先端がコクピットの各部にある電極に接続されてゆく。ユメが完全にコクピットに収まると同時、開いた装甲がピタリと閉じた。

 

グポン

 

特務士官のカメラアイがひかり輝く。

 

[リニアカタパルト接続。システム、オールグリーン]

[射出地点には便利屋と風紀委員会が展開しています。PMCの兵は僅か、空崎ヒナと行躯ダリルも確認されている以上、長居は無用です]

「……ゲヘナ最高の戦力と、もう一人の子は黒服さんの見立てではこれの正体を知ってる人、だっけ?」

[えぇ]

 

各種兵装を装備し、カタパルトに接続しながらユメがそう問いかけると、黒服はそれを肯定した。

 

「わかったよ。全力で戦線を貫通する。後輩ちゃん達は?」

[アビドス本館で理事と戦闘中……訂正します。たった今撃破しました。時間はもうほとんど残されていません]

「……りょーかいです」

 

おちゃらけた口調とは裏腹に、特務士官声に緊張が帯びる。

 

ガタン

 

目の前の景色が開けた。広大な砂漠を舞う砂塵の中に、戦闘の光が瞬く。特務士官のスラスターが、唸りを上げて起動する。

梔子ユメは、特務士官の中で一息つくと、目を見開いた。

 

「梔子ユメ、出撃するよ!」

 

その瞬間、その白い装甲が砂漠の空に放たれた。

 

 

_______________________

 

 

ガアン!!

 

大質量の弾丸が宙を裂く。

その音とほぼ同時に敵の後方に縦列に並んで展開していた高射砲が数機まとめて貫通、吹き飛ばされる。その爆発の余波は周囲に展開していた部隊にも被害を及ぼした。

 

「委員長、高射砲陣地は破壊しました。次の指示を」

「わかった。アコ、敵の左翼を崩す。突撃のタイミングは任せるわ。ダリルは援護を」

 

そういうが早いか、ヒナは自ら正面へと進み出ると、愛銃の重機関銃を構える。当然、敵からの砲火が集中するが、ヒナはそれを歯牙にもかけない。

 

 

「どこまで耐えられるか見ものね」

 

 

瞬間、紫の神秘を帯びた弾丸が敵の陣地を放射状に薙ぎ払う。

文字通りの粉砕、文字通りの蹂躙、圧倒的な暴力がPMCを薙ぎ払う。その掃射が終わると同時、アコから鋭い指示が飛ぶ。

 

[第4、第6部隊、前進!]

「よし、とっとと終わらせるぞ!!」

 

その指示の下イオリが部下を鼓舞し、一気に攻勢をかける。

それを止めようと相手のロケットランチャーを装備した兵がそれを狙うが、次の瞬間その体は宙を舞うこととなった。

一糸乱れぬ連携と、2つの理不尽とも言える戦力による蹂躙。

更に……

 

「どこを観ているのかしら?私たちのことを忘れるなんて、随分と余裕があるじゃない!」

「ほらほら……そんな子たちにはプレゼントをあげちゃうよ!!」

 

思わずそちらの方に目をやったPMCの部隊が一つ爆炎の中に消えた。アルの榴弾と、ムツキの爆薬だ。

きれいに敵を吹き飛ばしたアルは自信満々に笑みを漏らすが、

それを側面から、伏せていた2人の敵が狙う……が、

 

「そこ、気づいてないとでも思った?」

「アル様を傷つける輩は……絶対に許しません!!」

 

片方はサプレッサーにより掠れた音の下に倒れ、もう片方は明らかにオーバーキルのショットガンの乱射により吹き飛ばされた。

 

遊撃と広範囲殲滅に優れ、連携能力も高い便利屋68。

この2つの組織、更にファウストなる人物からの火力投射によりPMCの戦力はもうグズグズだった。

 

「た、対デカグラマトン部隊半数が沈黙!!

本隊に至ってはもう8割がた行動不能だ!!」

「おい、理事がやられたという話は本当か!?」

「そ、そんな事あるわけない、デマだ、絶対にデマに決まってる!!」

 

指揮は錯綜し、それが動きを阻害し、更に敵に漬け込まれる。

そして……

 

「う、右翼を突破した敵部隊が中枢に、うわっ!?」

 

遂に、敵の部隊を破って突っ込んできたゲヘナ風紀委員会の部隊が司令部に突っ込んできた。

 

「終わりだっ!!」

 

理事からの指示がなくなり、それでもなお必死で指揮をとっていた悲しき中間管理職の少女に、イオリの銃の銃口が向けられる。

そして……

 

ドゴッ

 

何かが、イオリの部隊の中心に、着地した。

その衝撃で、数人の風紀委員がダウンする。

 

「な、何事だ!?」

 

イオリと、残った風紀委員の少女達の意識が、一斉にそちらを向く。

舞い立つ砂塵の奥。大柄な何かが、ぬらりと立ち上がった。

刹那、

 

「がっ!?」

 

砂塵を切り裂いてそれが飛び出したかと思うと、

イオリの腹部に強烈な膝蹴りが叩き込まれた。

視界がブレる。

最後にイオリが見たのは、自分の首筋へと振り下ろされる2対の斧だった。

 

斧が叩きつけられ、イオリがその場に崩れ落ちる。

赤熱させてないため致命傷とはならないが、

しばらくもう起きないだろう。

それを行った者……特務士官はそれを確認する時間も惜しいと、他の委員に襲いかかる。

 

「え、」

「なに、がっ!?」

 

凄まじい速度で襲いかかるそれに、彼女らは誰も反応する間もなく、意識を散らした。

砂塵が完全に晴れた頃には、突撃した風紀委員会の部隊は壊滅し、その中心に立つ特務士官を、一層異質に際立たせていた。

 

「特務、士官……?」

「みんなごめんね〜。修理が長引いちゃって……」

 

そう言って小首を傾げて手を合わせる特務士官。

戦場に不釣り合いな動作だったが、彼女の姿を見たPMCの部隊からふつふつと何か高揚のようなものが湧き上がってくる。

 

「待ちくたびれましたよ……特務士官」

「特務士官が来た……この戦闘、まだ勝機はあるかもしれない!」 

 

先ほどまで枯れ果てていた士気が、彼女が現れたことで一気に盛り上がってゆく。

 

ガアン!!

 

瞬間、彼女に向けて一筋の弾丸が放たれた。

今まで悉くこちらを蹂躙してきた魔弾……それを、特務士官は紙一重で回避してみせた。士気が、最高潮に達する。

先日は敗北を見せたとはいえ、その程度で彼女に対する信頼が揺らぐことはなかった。

 

(……やる気は十分、ってとこかな。私と一緒に適当に突撃してもらえば乱戦が起きるだろうし、その間に適当な所で戦線を抜けようかな)

 

……内心で、特務士官が自分達を身代わりにしようとしているなどとは、彼女らは露ほども思わなかった。

対する風紀委員会は、先生からの事前報告があったため動揺こそ小さいが突然現れた特務士官に警戒を示していた。

その中で、1人だけ全く違う反応を示している者がいた。

 

「……あの動き、間違いない」

 

その様子を見て、ダリルはポツリとそう呟くと、ビッグガンから降り、近くにいたチナツに声をかける。

 

「チナツ、俺は前線に出る。あとは頼んだ」

「えっ!?」

 

対戦車ライフルとコンバットアックスの調子を確認するダリルを見て、チナツは思わずそんな声を上げた。

ダリルが前線に出る。それは、狙撃手が主なダリルが不得意な戦場に出る、という事を意味するのではない。

ダリルが前線に出なければ戦線が崩壊すると判断したことを意味する。

 

[……委員長がいるので大丈夫だと思いますが]

「行政官、あれが俺の想定通りだった場合、委員長1人だと万が一のことが考えられます」

 

アコが前線へと歩を進めるダリルにそう声をかけるが彼女は簡潔にそう答えると、ホログラムの方を見た。鋭い眼光の宿った瞳で見つめられたアコは、一瞬言葉を詰まらせたがやがて諦めたようにため息をついた。

 

[……えぇ、そうですね。この中であれについて誰よりも詳しい情報を持っているのはあなたですからね。わかりました、任せます]

「感謝します、行政官」

 

ダリルは一言礼を言うと、最前線に立つヒナの隣に並び立った。

 

「委員長、俺が相手を近接戦で抑え込みます」

「……わかった。ダリル、援護は任せなさい」

 

短く言葉を交わすと、ダリルは対戦車ライフルとタクティカルアックスを構えた。

正面には、特務士官……白く塗られ、細部が異なるものの、紛れもないかつての愛機が立つ。

 

……ザザッ

 

光景が、フラッシュバックする。

 

「……うるさい」

 

ダリルは、小さく、小さく呟くとすっと瞳を閉じ、

懐に入った音楽プレイヤーのツマミを目一杯引き絞った。

思考を、雑音を、明るいラブソングが塗りつぶす。

再び目を見開いたとき、その瞳には一点の曇りも、揺らぎもなく、ただ凪いでいた。

 

一方便利屋たちは、特務士官の姿を確認した瞬間に物陰に隠れ、

風紀委員会とカイザーPMCの睨み合いを固唾を飲んで見守っていた。

 

「うわ~、厄介なのが出てきた……正直、こっちに飛び火するのは嫌かもね……」

「こう言うのもなんだけど、社長が勝てたのは砂狼シロコの協力によるものが大きい……

しかも、あの時の様子から見るに私たちを見つけたら優先的に攻撃してきてもおかしくない。

どうする?正直、ここで逃げるのも手だけど。あいつだって流石にゲヘナの最高戦力2人を

同時に相手取ったら負けると思うし……」

 

ムツキが特務士官の方を見てうげっという表情になる中、

カヨコがアルに声をかける。

当の本人はというとカヨコの言葉にビクリと反応すると改めて特務士官の方を見た。

 

(うぅ……本当にどうしようかしら……確かにもう十分戦ったし……ここは諦めて撤退しても……)

 

あるが考え込む中、特務士官は風紀委員会が展開する方を指し示した。

 

「それじゃあ、総員……突撃!」

 

そういうが早いか、特務士官は誰よりも早く敵陣に向けて吶喊した。もはや作戦と呼べるかも怪しい雑な指示、しかし、PMCの兵たちはそれに従った。人が、オートマタが、雪崩の如く押し寄せてくる。

 

「……総員、迎撃して」

 

ヒナの指示は簡潔だった。一時は敵の鬼気迫る勢いに止まっていた砲火が、その指示により再び始まる。

高射砲が、銃弾が、大口径の徹甲弾が、彼らを薙ぎ払う。しかし、一向に止まる気配はない。

ダリルはその中で1人だけ突出している特務士官に向け、対戦車ライフルの照準を向けた。

狂いなく放たれる弾丸。

しかし、特務士官は素早く身体を捻るとそれを避け切った。

 

「正面からはやはり厳しいか…!」

 

ダリルがそう唸る。ダリルの狙撃音を皮切りに、特務士官が突出していることに気がついた他の委員からの砲火がそう彼女に集中する。だが、彼女を捉えるには至らない。

対して特務士官は背中のサブアームを展開。

大口径のマシンガンを正面に向けた。

 

掃射、

 

圧倒的な暴虐の嵐が吹き荒れる。

 

一般の委員はもちろん、ダリル、ヒナも流石にそれに怯み、遮蔽に身を隠す……が、それがあっという間に吹き飛ばされる。

 

「…っ!」

 

遮蔽が吹き飛ばされた瞬間、ヒナとダリルはほぼ反射的に

その向こうへと銃口を向けた。しかし……

そこには、特務士官の姿はなかった。

 

「なっ!?」

 

ヒナの瞳が驚愕で見開かれる。しかし、ダリルは違った。

 

「上かっ!!」

 

転がるように上方向に照準を向けると即座に発砲。特務士官にとっても予想外だったその弾丸は右脚の装甲の側面貫通した。

 

「嘘っ!?」

 

態勢を崩した特務士官が、そのまま墜落。

その音でやっとどこに特務士官がいるか気がついた他の委員

が、一斉にそちらの方に銃口を向けた。

……砂煙が立ち込めるだが、特務士官が動き出す気配はない。

その時、

 

[……っ!!第1、第5部隊!!敵部隊が至近距離に接近していますよ!直ぐに迎撃を!!]

 

アコの切迫した声が響く。

特務士官に注目が集まっている間に、カイザーPMCの部隊がすぐ近くに接近していたのだ。

 

「う、うわっ!!」

「間に合わない!直ぐに後退「させるか!!」」

 

慌てて銃口をそちらに向けるがもう遅い。

一気に戦場は、敵味方の入り混じる混戦状態へと陥った。

誰もが一瞬、そちらの方に意識が向く。その一瞬、

 

「今っ!」

 

特務士官が弾かれたように動き出した。

まず至近距離にいた迫撃砲部隊の一人が意識を刈り取られる。続けざまに背部のマシンガンを掃射、この一瞬で迫撃砲部隊が一瞬で壊滅した。

 

引火した爆薬による火の手が上がり、特務士官を煌々と照らす。

その姿は、まさに鬼神のようだった。

 

その姿が、少し離れた位置からスコープに捉えられた。

 

「当たってください!!」

 

捉えたのはダリルに代わりビッグ・ガンを操っていたチナツ、

ダリルには劣るものの、その本人から師事を受けていた彼女の狙撃の精度は、かなり高い……しかし、相手が悪かった。

 

その照準がこちらを捉えていることを視認した特務士官はスラスターを瞬間的に噴射、砂埃を立てて回避する。

すぐ先程まで自信がいた場所に弾丸が突き刺さる。

それを確認するや否や、特務士官は左手に抱え持ったバズーカを発射した。

 

「あぐっ!!」

 

ビッグ・ガンの特異な姿が爆炎に包まれ、チナツが吹き飛ばされる。懸念材料を排除し、特務士官が振り返ったその時、

彼女を両側から2人の人影が回り込んだ。

反射的に特務士官は、自分の懐まで滑り込んできた片方に斧を振るった……が、

 

ガキン!!

 

それは金属質な音とともに受け止められた。

受け止めたのはタクティカルアックス。

それを持つダリルは、特務士官の胴体に対戦車ライフルを突きつけた。

 

「……墜ちろ!」

 

轟音

 

特務士官の腹部の装甲に、貫通孔が刻まれる。

貫通したその弾丸は、内部にいたユメに直接衝撃を与えた。

 

「がっ!?」

 

ユメが激痛で呻く中、ユメの思考を受け取ったアーマーは素早くバックステップ、そのままの勢いで背後にいたヒナを回し蹴りで薙ぎ払う。

 

「甘い」

 

しかし、ヒナはそれを安々と回避すると、返す刀で機関銃を速射した。

特務士官は自分に弾痕が刻まれるのも厭わず両手を正面で組んでそれを防ぐと、背部のマシンガンを乱射した。

2人が素早く回避したため、ヒナとダリルがいた場所を、無数の弾丸が薙ぎ払う。

特務士官は素早く敵の位置を確認すると、ヒナに向けてバズーカを一射、更にそれを放り投げるとマシンガンで撃ち抜いた。

 

爆発。

 

更に巻き上げられた粉塵が周囲を覆う。

 

「視界が…!」

 

ヒナが思わずそう呟く。

特務士官突っ込んでこられないように銃を乱射したが、

手応えが軽い。そして、視界がはれる。

 

「……いない?」

 

そこには、特務士官の姿はなく、ただ、硝煙のみが広がっていた。

 

 




どもー時空未知です。
と言うことで今回の作品はいかがだったでしょうか?
……いよいよ最終局面に入れました。やっと、やっとです…… 
あと2話ぐらいで終わりで、その後閑話休題をいくらか挟んでいよいよ時計じかけの花のパーシヴァルに移ることとなります。
イオが、やっと出せる……
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