楽園に雷光は走る   作:時空未知

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悪魔の見た楽園

 

「で、何で呼ばれたかわかってるわよね?」

 

 

 

次の日、よく晴れた青空の下、ミレニアムサイエンススクールの生徒会、

「セミナー」の部室にそんな声が響き渡った。

部屋の中にはC&Cのメンバーが相変わらずのメイド服で、

しかし、緊張した面持ちで(リーダーと01を除いて)直立不動になっていた。

そんな彼女たちの前にいるのは紺色の髪をツインテールでまとめた少女、

その名は早瀬ユウカ。セミナーの会計係を務めている。

その表情は笑っているが、目が全く笑っていない。

彼女はさっと懐から一枚の紙を取り出すと、彼女らに突き付けた。

 

「発電機は7割使い物にならなくなって、メイン施設は爆破により全壊。その余波やらなんやらで

周囲の建築物もほぼ全壊。修理費は莫大、昨今の混乱もあって修復の見通しは立たず……

さて、どうしてくれるのかしら?」

「あ、あはは……掃除の手がはかどってしまいまして……」

「笑い事じゃないわよっ!!」

 

コールサイン03こと、室笠アカネ(主犯)にユウカの雷が降った。

普段は温厚な彼女だが、事戦闘となるとそこら中に爆弾を

仕掛けてところかまわず爆破する悪癖があるのだ。当然の帰結である。

 

「あなたもよ、ネルっ!」

「あ、あたしもか!?今回は気を付けたんだぞ!?」

「担当区画の発電機5割以上を破壊は気を付けたとは言わないのよ!

イオみたく考えて戦闘しなさい!」

 

続けざまにリーダー、美甘ネル(副犯)に雷が落ちる。当然の帰結で(ry

 

「あちゃー、大変なことになってるねー」

「アスナ!あなたは止めれる位置にいたんだから少しは止めようとしなさい!!」

「はーい」

 

更にその矛先はコールサイン01、一ノ瀬アスナ(愉快犯)にも降り注ぐ。当然の(ry

なお、当の本人は相変わらずにこにこ笑っているせいで

反省してるのかしてないのかよくわからない。

そんな彼女たちの様子を見てイオはため息をついた。

 

「全く、ネル先輩もアカネも攻撃をバラまきすぎなんだよ。

もっと相手の規模に合わせて戦法を変えないと……」

「イオ!!あんたにはあんたで言いたいことが山ほどあるんだからね!?」

「ぬおっ!?」

 

そしてついにユウカの怒りの矛先はコールサイン04、迅雷イオ(外道)へと向いた。

先ほどまでと比べてもひときわ大きい声だったためすぐ隣にいた

コールサイン02、角楯カリンまでもびくりと肩を震わせた。

 

「私、毎回言ってるわよね?武器を捨てるなって??あなたが毎回毎回特注の武器と弾薬を

ありったけ使ったうえに弾切れになったらそこら中に捨てて行くせいで

武器を回収できずに高いお金払って一から作り直す羽目になってるんだからね!?

あといくら犯罪者相手だからといってあそこまではやるなって!

あなたが捕まえてきた子の事情聴取をしに病院に行ったけど

こっちが見ててかわいそうになるぐらいのとんでもないトラウマ植え付けられてたわよ!!

第一、あなたがほぼ毎回作戦中に過激な行動をするせいで

うちの機嫌を損ねたらジャズの悪魔が死ぬよりもひどい目にあわせてくるとかいう

変な噂まで流れてるんだからねっ!!!!」

「い、いや、噂に関しては正直関係な「黙りなさい!!」はっ、申し訳ありません!」

 

弱弱しい反論を試みたイオだったが、ユウカの一喝によって

反射的に昔の仕事(・・・・)の癖で敬礼して直立不動になってしまう。

なおも怒りは収まらないのかユウカの文句は止まらない。

思わずイオは仲間たちのほうをちらりと見て助けを求める。

しかし、返ってきたのは自業自得だろ、というジトっとした視線だった。

 

……世知辛い。

 

ユウカの怒声をBGMに、イオは敬礼したまま心の中でため息をついた。

ユウカの文句はその後十分間止まることはなかった。

 

 

「はぁ…まあ、過ぎたことを言ってもしょうがないし…

お願いだから次は気をつけて…」

「ぜ、善処します…」

 

疲れ果てた、といった様子で椅子に座り込んだユウカにアカネは申し訳無さそうにそういった。

 

「それにしても、他の自治区でも似たような事件が最近頻発していますよね…」

「しょうがないじゃない。ここ最近連邦生徒会長が全く姿を見せないんだもの。ここ最近も連邦矯正局から七人囚が脱走したって言うし…」

 

アカネの言葉にユウカがそう答えた。

連邦生徒会長、それは銃器や兵器が出回り、テロリストが闊歩し、そこら中で銃声や爆発が起こるここキヴォトスを、ほとんどその身一つで学園都市として成り立たせている文字通りの超人である。しかし、その欠けてはならない人物がここ最近全く姿を見せていないのである。それも失踪説がまことしやかに囁かれるほどに。それと同時に連邦生徒会自体が機能不全になったとなれば今まで抑圧されてきた不良達が暴れ出すのも当然といえば当然だ。

 

「うぅ…そうよ、元はと言えば連邦生徒会長が姿を見せてないからこうなってるんじゃないの…」

 

そういうが早いか机にうつ伏せになっていたユウカから不穏な空気が流れ始める。

ユウカの怒りの炎が再燃し始めたのを察したC&C諸君は静かに距離を取る。

君子、危うきに近寄らずというやつである。

全員が部屋の隅に退避し終わった瞬間、ガバリとユウカが勢いよく身を起こした。

 

「ちょっと今から連邦生徒会に行ってくるわ…

大体、何で連邦生徒会長がいないっていうのになんの情報も寄越さないのよ…」

 

そうブツブツ文句を言いながらユウカは部屋から出ていった。

 

「…あれ、ついて行ったほうがいいよな?」

 

ユウカが出て行って少し経ち、イオがポツリとそう呟く。

キヴォトスに住んでいる以上、事務作業がメインのユウカも戦闘はある程度こなせる。

とは言え、あくまである程度、治安が壊滅的に終わっている今の状況で彼女を1人にしていいものかとイオが心配する。

 

「いやいや、ユウカならきっと大丈夫だよ。むしろイオが行ったほうが色々面倒になっちゃうよ?」

 

そんな彼女をそう言って止めたのはアスナだった。

その言葉にちょっとムッとするイオ。

 

「俺、そんなに信用ならないか?」

「そういうわけじゃないって。まあ、任務のときはもう少し行動を自粛してほしいけど。端から見てて怖いし」

 

アスナはあははー、と笑うと軽く頬をかいた。

割と容赦のない物言いだが、アスナにこういう節があることを知っているイオは冗談半分に口を尖らせるに留める。

 

「じゃあ、何だってついていかないほうがいいんだ?」

「いつものなんとなくだよ」

 

なんとなく。

普通なら全く当てにならない言葉だが、アスナがそういった場合は話は別だ。

彼女の直感は常人のそれと違い、未来予知にも等しい精度を誇っているのだ。

それ故、彼女の奔放な性格も相まって突飛な行動も目立つがそのすべてが勝利につながるので仲間たちからは信頼されていた。

イオはその言葉に、やっぱりか、と笑った。

 

「先輩殿がニュータイプだと、何かと心強いな」

「エヘヘ、そうでしょそうでしょ?」

 

自信満々、といった様子でアスナが胸を張る。

その豊満な胸が軽く揺れるのを見てイオは少しだけ顔を赤くした。それに気がついたアスナがいたずらっぽい笑みを浮かべて

ズイッと近寄る。

 

「な、なんですか?先輩…」

「いつも思ってたけど…イオちゃん、胸が大きい子とか生脚が出てる子、ちらちら見てるよね?カリンちゃんとか」

「んなっ!?」

 

明らかに動揺するイオ。外のメンバーはというと、

どの人もやっぱりか…と呆れた様子だった。

イオの様子が面白かったのか、アスナは追い打ちをかける。

 

「ふふ、こっそり見るのはいいけどほどほどにしときなよ?

メイド部の迅雷イオは女好きって有名なんだからね。特にエイミちゃんは会うたびに視線を感じるって…」

「しょうがねえだろ!?ジッパーついたビキニ着て校内歩き回ってる女とか視線うつらねえわけねえだろ!第1女好きって何だよ変な誤解をも生みかねんわ!!」

「でも、好きなんでしょ?こういうの?」

 

そう言ってアスナは自分の胸の下で腕を組んで軽く持ち上げてみせた。ただでさえ大きいアスナの胸がより強調される。

その結果…

 

「〜っ!帰る!」

「あはは!じゃあねー」

 

イオは顔を真っ赤にしてなんとも言えないうめき声を漏らすと部屋の扉を勢いよく開けて出て行ってしまった。

 

「アスナお前、あんまりからかいすぎるなよ」

「いやー、反応が面白くってついね」

 

ネルがアスナを注意するがこの有り様。

と言っても、いつもの事なのでネルはため息をつくにとどめた。

 

「んじゃ、アタシらもそろそろ部室に戻るぞ。

あいつは兼部先のゲーム開発部にでもいるだろ」

 

ネルがそう言うと、残った4人も部屋から出た。

 

「そういえばふと思ったんだが、

イオの言っていたニュータイプとはどういう意味なんだ?」

 

その途中、ふとカリンがそんな質問をした。

 

「あら、カリンは知らなかったのですか?」

「あぁ、初めて聞いた」 

「ん?あれはな…」

 

アカネの問いに頷くカリン。それに答えたのはネルだった。

 

「あいつの地元では超能力みたいに感の良いエース、って意味合いらしいぞ」

 

 

_______________________

 

 

「クソ…ひどい目にあった…」

 

不機嫌そうにイオがそう呟く。

元々目つきが良い方ではない目が更につり上がっているため、道行く生徒がさっと道を開ける。

 

(でもしょうがないだろうがよ。

ここ…というかこの世界はいい女が多すぎるんだよ。

痴女みたいなかっこしたやつも少なくないし…)

 

心の中でそうブツブツつぶやきながら懐からイオはワイアレスイヤホンを取り出した。

その高音質スピーカーから、ジャズが流れ始める。

ようやく、イオの表情がフッと和らいだ。

 

彼女、迅雷イオには前世の記憶があった。

…いや、前世の人格がほぼ丸っきり受け継がれているため、転生といったほうがよいかもしれない。

物心ついたすぐ後に、今生の自身の母親に、「…誰だお前?」とすこぶる流暢に言って

腰を抜かされたのは今も記憶に残っている。

前世の彼女、イオ・フレミングはジャズ好きな少し荒っぽいところがあるが、根の優しい男だった。

今もそうだ。しかし、いつの間にか幼馴染と共に軍の士官になって、

戦争になって、故郷のが瓦礫と化し、自身も大型人型兵器、

モビルスーツに乗って戦い、戦争の狂気にのめり込み…

そして敵のエースパイロットと相討ちになる形でその生涯を閉じた。

 

はじめの頃はの世界には戸惑った。

何せ、学校が国家と同義語になっている上にそこら中で銃撃や爆発が起こり、

そのくせ全く人死が出ない。というか住民も幾何学的な光輪が浮いていたり、

動物がそのまま立ってたり、機械だったり、本当に人間か怪しい奴らしかいない。

そもそも肉体が女になった上に、道行くほかの少女たちが

どうしようもなく煽情的なことが多々あるため、元男に身にはなかなか酷だった。

 

何より、急に己が地獄から解放されたことに実感が持てなかった。

 

だからだろうか、ミレニアムに入学した翌日、

突っかかってきた不良集団を殲滅した彼女を見たC&Cにスカウトされたとき迷わず入部したのは。

ただ、この選択が彼女の心を大きく変えた。

初めての出撃ののち、自分が撃った窃盗犯が、自分が盾に使った不良生徒が、

捕まった後にたんこぶや擦り傷を作って半泣きになりながら自分に文句を言ってくるのだ。

敵に直撃弾をもらった仲間が、ちょっとした絆創膏を付けて

次会う時に自分に笑いかけてくれるのだ。

 

……ここは地獄ではない。楽園なのだ。

 

それを見たときイオようやくそれを悟った。

ここでは戦闘は日常茶飯事で、自分は容赦なく敵を叩く潰すことには変わりない。

しかし、その結果あの時のような地獄が生まれることはない。

 

それに、C&Cだけではない。

くだらないことで笑って、遊んで、喜べる。

そんな親友も自分には新しくできたのだから。

 

イオは一つの部屋の扉の前で立ち止まった。

そこには少々傷のついたかけ看板が掛けられている。ゲーム開発部、と書かれた看板が……

イオは、その扉を迷わず開けた。

 

「おーい、一日開けたが帰ってきたぞ……ってのわ!?」

「わあああああ、イオ先輩〜!」

 

扉を開けた瞬間、何か桃色の物体が飛びついてきた。

桃色のネコミミのカチューシャをつけた栗色の髪の少女だ。

半泣きになっている彼女を引き剥がしつつイオは視線を部屋の奥に視線を向けた。

そこではさっき飛びついてきた少女とそっくりな緑色のカチューシャをつけた少女

が呆れた様子で桃色の少女を見ていた。

 

「ミドリ…まさかとは思うが、俺が帰るまでにシナリオを書き始めるとこいつが豪語していたのは…」

「そのまさか。全く進んでない」

「しょうがないじゃん!全く思いつかないんだよ〜」

 

びえ〜、と聞こえてきそうな表情になるモモイにイオはため息を付いた。

彼女たちはゲーム開発部、

企画担当にしてゲーム開発部ができるきっかけとなった部長の花岡ユズ、

その作ったゲームに感動して入部したグラフィック担当の彩羽ミドリと

シナリオ担当の彩羽モモイ、

彼女たちが起こしたちょっとした騒動を鎮圧したことが原因で接点ができて、

そこからゲームに触れたことがきっかけで入部したBGMおよび効果音担当のイオ

計4人で構成された部活である。

そんな彼女らだが、現在廃部の危機に立たされていたのである。

 

部活動の増大に伴って予算の配分が困難になったため、

今年中に結果を残せなかった部活動は即刻廃部とする。

 

そんな法案がつい最近生徒会で採決された。

……人見知りが激しく現在も部のロッカーのどこかに隠れている部長のユズと、

その法案の説明があった部活動会議に、

ソシャゲのキャンペーンを理由に欠席したモモイ、

もう一つの所属先の立場的に上層部の話が耳に届きやすいイオがいなければ

今もそのことを知らなかったに違いない。

ということでユウカの前で大見得を切ったモモイが主な原因で

ミレニアム内で毎年開催される発表会、

ミレニアムプライズでの受賞を目指しているのだが……

今現在、この有様である。

 

「作曲も楽じゃねえんだぞ……納期も迫ってるしもう少し頑張ってくれよ」

「イオ先輩はもう少しBGMのレパートリーを増やしてみてよ。

[BGMジャズしかなくて草]とかいうレビュー、始めてみたよ?」

「ふん、わかってねえな……ニューオーリンズジャズにモダンジャズ、スウィングジャズ、

シンフォニックジャズ、そしてフリージャズで大抵のことは表現できる」

「普通の人にはわかんないですからね?」

 

文句を垂れるイオにミドリが的確な突っ込みを入れる。

自覚はあるのかうっと、言葉に詰まったイオは、思わず

足元にいるモモイに視線で助けを求める。

 

「いや、わたしもイオ先輩はジャズを作りすぎだと思うよ。

いうなれば建築ゲーで神建築をたくさん作るけど、どれもパターンが似通ってる人みたいに……」

「モモイ、お前もかよ……」

 

自分の味方が誰一人いないことを察してしょげるイオ。

そんな彼女の肩をモモイがポンポンと叩いた。

 

「まあまあ、先輩はセンスはいいんだから他のも試してみればいいんだよ。

わたし、イオ先輩が作るラブソングとか聞いてみたいなー」

「確かに!先輩が作るラブソングが想像できない分ちょっと楽し「ぜってえ嫌だ」はえ!?」

 

ミドリの言葉にかぶせるように真顔でイオはそう言った。

心なしか仄かに殺気すら立ち上っているように感じる。

部室内が静まり返り、奥のほうにあるロッカーが何故かがたりと揺れた。

そののち、はっとして表情を取り戻したイオは、ばつが悪そうに頭をかいた。

 

「……悪い。その、なんだ、ラブソングにいい思い出がないんだよ、俺」

「そ、そうなだ……私こそごめん」

「わたしも……」

「あー、気にすんな気にすんな。昔の話だよ」

 

イオはそう言うと、愛銃と荷物を壁に立てかけ、素早くゲーム機のコントローラーを手に取った。

 

「しみったれた話は終わり、モモイも煮詰まってるんだから気晴らしにゲームでもしようぜ」

「その言葉、待ってました!はやくやろはやくやろー!」

「いつもと変わらないじゃない……」

 

イオの言葉に、モモイは満面の笑みで自分のコントローラーに飛びつき、

ミドリもあきれながらもコントローラーを手に取る。

 

「よし、じゃあ仲良くセッションと洒落込むか?」

「今回はスマ◯ラしようよー、音ゲーは部長とイオ先輩の独壇場だし…」

「いや、ス◯ブラでも大して変わらないでしょ?お姉ちゃんゲーム下手だし」

「言ったなー!今日こそギャフンと言わせてやるんだから!」

 

双子がキャイキャイと騒ぐ傍ら、ロッカーが少しだけ開き、

同時にキャラクター選択画面に4Pの表示が追加される。

…程なくして、部室内を和気あいあいとした声が溢れ始めた。

 

 

今はまだ、ミレニアムは平和に包まれていた。

イオが元の世界に未練があるとすれば、

出撃前に会ったきりの二人の親友の行方と、

 

相討ちとなった宿敵の存在のみ……

 

_____________________________________________

 

 

「代行!見つけた!連邦生徒会長を呼んできて!」

 

 

一方その頃、連邦生徒会長本部、サンクトゥムタワーにて、ユウカの声が響き渡った。

呼び止められたのは黒縁メガネを掛けた黒髪の大人びた少女と

栗色の髪を三つ編みにしてまとめた大人の女性。

どうも、ユウカが呼び止めたのは黒髪の少女のほうだったらしく、

大人の女性のほうに気が付いた彼女は訝しげな表情になる。

因みに呼び止められた少女のほうはというと不機嫌そうに顔を歪めた。

 

「首席行政官、お待ちしておりました。」

「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が今の状況について納得のいく回答を要求しています」

 

更に、ユウカの背後から続々とおそらく同じ目的できたであろう他校の少女らが詰めかけてきた。

一人は大きな黒い翼の生えた、スナイパーライフルを装備した背の高い黒髪の少女、

一人は赤みがかった栗色の髪を左右でまとめた、拳銃を装備したエルフ耳の少女、

一人は頭に翼の生え、アサルトライフルを装備した白髪の少女、

そして、最後の一人は黒髪のくせ毛を肩口あたりで切り落とした、黒い瞳に浅黒い肌、

額から生えた特徴的な白いラインが2本入った赤黒い角を持つ、対戦車ライフルを装備した少女。

腕に巻かれた腕章からして、エルフ耳の少女と同じ所属だろうか?

 

「……ああ、面倒な人たちに捕まってしまいましたね」

 

呼び止められた少女……七神リンはそう言って嘆息すると、4人のほうへ向き直った。

 

「こんにちは、各学園からわざわざ訪問してくださった

生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余しているみなさん。

こんな暇そ……大事な方々がここを訪ねてきた理由は、よくわかっています。

今、学園都市で起きている混乱の責任を問うために、でしょう?」

「"わ、ちょ、ちょっとリンちゃん!?"」

 

息を吐くかの如く口撃を開始したリンを、隣にいた女性が慌てて止めるが時すでに遅し、

ただでさえただならぬ雰囲気だった場の空気は最悪なまでに落ち込んだ。

 

「そこまでわかってるなら何とかしなさいよ!

数千もの学園自治区が混乱に陥っているのよ!

この前なんかうちの風力発電所が不良に占拠された挙句、

再起不能になったんだから!」

「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱走したとの報告もありました」

「スケバンのような不良たちが登校中のうちの生徒たちを襲う頻度も、

最近急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています」

「戦車やヘリコプターなど、出所のわからない武器の流通も2000%増加しました。

これでは正常な学園生活に支障をきたしてしまいます」

 

ユウカの怒声に近い言葉に続けて、

一歩引いた位置に立っている一本角の少女を除いた

各学園の委員会の少女らが続けざまに各地で起こっている惨状の報告を上げる。

それが一通り終わった後、ユウカが大きく息をついてリンの方をキッと睨んだ。

 

「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの?

どうして何週間も姿を見せないの!?すぐ会わせて!!」

「……」

 

リンは何も言わない。近くでおろおろとしている女性を残し、

辺りをしばらくの間沈黙が支配する。

10秒ほどたち、ようやくリンがその重い口を開いた。

 

 

「連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと行方不明になりました。

サンクトゥムタワーの最終管理者がいなくなったため、

現在、連邦生徒会は行政権を失った状態にあります」

「なっ!?」

「……!!」

「そんなっ!」

「やはりあの噂は……」

 

ユウカたち3人がその言葉に驚愕し、

黒い翼の少女は落ち着いた様子でそうつぶやいた。

一本角の少女もリンの言葉にスッと目を細める。

 

「認証を迂回できる方法を探していましたが……先程まで、そのような方法は見つかっていませんでした」

「それでは、今は方法があるということですか、主席行政官?」

 

黒い翼の少女の問いにリンはこくりと頷くと、すぐ横にいる女性の方を見た。

 

「はい、この先生こそがフィクサーとなってくれるはずです」

「"へ、わたし!?"」

 

突然話を振られて驚く先生、しかし、それは他の生徒たちも同じだったようだ。

反応の仕方はそれぞれだが少なからず驚いているようだ。

それを気に留めることなく、リンの話は続く。

 

「こちらの方は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、

連邦生徒会長が特別に指名した人物でもあります」

「"あ、ど、どうも、今日から先生として働くことになりました。よろしくお願いします"」

 

若干おどおどしながらそう挨拶する先生。

 

「こ、こんにちは、先生。私はミレニアムサイエンススクールの……

い、いや、あいさつは今どうでもよくて!?」

 

驚きが連続しすぎて若干パニックになるユウカ。

それを見たリンは小さくため息をついた。

 

「そのうるさい方は気にしなくていいです。続けますと……」

「誰かうるさいって!?」

 

さらりと毒を吐くリンにユウカはそう噛みつくと、改めて先生の方へ向き直ると息を正した。

 

「わ、私は早瀬ユウカ!覚えておいてください、先生」

「"よろしくね"」

「じゃあ私も……」

 

ユウカの自己紹介に笑顔で応じる先生。

そこに白髪の少女が入ってきたことでなし崩しに自己紹介が始まった。

 

「トリニティ学園の自警団所属の守月スズミです。よろしくお願いします」

「同じく、トリニティの正義実現委員会所属の羽川ハスミです、お見知りおきを」

「ゲヘナ学園の風紀委員会所属、火宮チナツです」

「"こちらこそ、改めてよろしくね"」

 

白髪の少女、黒い羽根の少女、エルフ耳の少女の順で少女たちが挨拶する。

それに先生も軽い会釈を返した。

……そういえば一人、自己紹介云々以前に今の今まで一言も発していない少女がいる。

 

「"あ、えっと君は……"」

「あっ!!先輩、先輩も先生に挨拶を……」

 

どうにか少女に話しかけようと先生が声をかけると、

それに気が付いたチナツが先輩と呼んだ少女の服の袖を軽くひぱった。

その動作に、先ほどまでの無表情とは一転、少女は少し困ったような表情になる。

 

「えと……こういう対外的なことはチナツがやってくれるからいいかなと……」

「そんなことないですからね?次期風紀委員長なんですからしっかりしてください」

 

チナツが軽くたしなめると少女は申し訳なさそうに頭をさすると、

直立姿勢になって先生のほうを向くと、慣れた動作で敬礼した。

 

 

「同じく、風紀委員会所属、往躯ダリル。お初お目にかかれて光栄です」

 

 

 




どもー、時空未知です。
小説書きながらキャラがぶれてないか
めちゃくちゃ心配しながら書いてる時空未知です。
ということで今回の作品はいかがだったでしょうか?
楽しんでいただければ幸いです…

ということでこれで物語の主要人物が出揃いました。
と言っても登場させやすさ的な問題で
イオ視点が多くなると思います…

因みに小話ですが、なんでイオとダリルがキヴォトスに転生したタイミングを
あそこにしたかといいますと……
あそこ過ぎちゃうと、次相討ちにできそうなタイミング、
ダリルがいろいろ理由つけてるけどとりあえずサイコザクで暴れたい症候群にかかって
行っちゃダメなところまで行っちゃってるからですね。
まだあそこのタイミングなら引き返せる位置にいる気がする……





取り敢えずイオの簡単な設定ドン。

迅雷イオ

ミレニアムサイエンススクール2年
C&C及びゲーム開発部所属

金髪碧眼高身長。目付きが悪い。スリーサイズは起伏少なめ。
一人称は俺

基本誰に対しても粗雑な口調で接する。
更に目つきも悪いせいで怖がられがちだが、
実際は成績優秀な優等生で
話してみるとフレンドリーで優しい性格である。
大のジャズ好きで、戦闘中でも自身の位置バレも気にせず大音量で流し続けるほど。しかし、本人曰くこれは昔あったことの緊張を和らげるためにしていたことがそのまま癖になってしまったとのこと。
この戦闘にかけては複数の高火力な武装を駆使して敵を強襲することを得意とし、単純な身体能力の高さと判断力から
約束された勝利の異名を持つ3年のネルに
匹敵するほど長けている。
しかし、ネルと違いその戦闘力の本質は純粋な技能や身体能力だけでなく戦闘時にのみ発揮されるその外道とも言える容赦のなさにあり、敵を肉壁にする、いたぶって戦意を著しく削ぐなど、
自身の人相の悪さも手伝ってミレニアムの不良内ではミレニアムの悪魔と呼ばれネル以上に恐れられている。
その為、戦場で聞こえるジャズは不良達にとっては死刑宣告に等しい。
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