楽園に雷光は走る   作:時空未知

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高評価、コメント。ありがてえ……


AL-1S

 

ちょっとしたハプニングから少し時間が経ち、

一旦、状況は先生とイオが頬を赤くして若干気まずくなっている程度に落ち着いた。

……何とかこの妙な空気を打開しようと先生がイオに話しかける。

 

「"……え、と。イオさん?"」

「いや、なんで敬語なんですか?」

「"あ、あなただって敬語じゃないですか……"」

 

……結果、更に気まずくなってお互いに目を逸らす羽目になった。

そんな2人の様子を見てモモイが一言。

 

「先生は当然として、イオ先輩も大人っぽいのにこういうことに関しては初々しい……

結構意外かも」

「全面的におめーが変なこと言うからだよ!!

自分を抱いてるやつが女好きだとか言われたら気まずいだろうがっ!!」

 

元凶に対し怒号を上げるイオであったが、

顔がいまだ羞恥で赤いためいまいちいつものような迫力がない。

 

「……つかホント誰なんだよ俺が女好きとかいう噂流したやつ」

「え、アスナ先輩だよ?この前会った時に教えてもらったの」

「あンんにゃろぉ……」

 

きょとんとして発されたモモイの言葉に、イオはこぶしを握り締めてそううめく。

一体どこの馬の骨かもわからんやつがうわさを流してるのかと思ったらまさかの元凶は身内だった。

イオの脳裏にいつも彼女が浮かべている愉快犯じみた笑みが浮かぶ

一瞬、帰ったら本気で押し倒して(・・・・・)やろうかと考えたが直ぐにその考えを振り払った。

困ったところもあるが彼女は大切な仲間であるし、

そもそも、そんなことをしたら本当にいろいろ終わる。いろいろ。

 

……そんな事を考えていたらいろいろ馬鹿らしくなってきたイオは、

はあ。とため息をつくとモモイの横で茹ってぐるぐると目を回しているミドリの肩をゆする。

 

「おいミドリ、いい加減に目を覚ませ。

こんなくだらないことは置いておいてさっさとここを探索するぞ」

「う……うひゃえっ!?あ、あれ、先輩……?」

 

……どうもショックで放心していたらしい。

きょろきょろとあたりを見回すミドリを見て、何とも言えない表情になるイオ。

因みに、モモイの方は既に辺りを軽くうろついて探索を始めていた。

 

「落ちてきたとは言ってもそこまで深い場所じゃなさそうだけど……ん?」

 

その時、モモイが落ちてきた空間の中で唯一空いている通路の先に何か見つけたのか、

そんな声を漏らした。

 

「"あれ、どうかしたの?"」

 

先生がそう声をかけるが、モモイはそれにこたえず、

通路の奥に少しだけ進むと、その向こうによくよく目を凝らした。

 

「……えっ!?」

「どうしたのお姉ちゃん……えっ!?」

 

その奥のものを見たらしいモモイ、彼女が発した驚愕の声につられて

そちらの方を見に行ったミドリも、姉と似たような声を上げる。

 

「何かあったのか……ってなんだありゃ?」

 

そんな2人につられてそちらの方を見たイオも、疑問の声を上げる。

先生もそちらの方を慌ててみた。

そこには……

 

 

「"……へ?"」

 

 

通路の先の日航が差し込む部屋。

その小高くなった中心には、大きな椅子が一つだけ、ぽつんと置かれていた。

その中心に座るのは……

 

「"……女の子?"」

 

少し距離が遠いのでよくはわからないが、黒髪の女の子が座っているように見える。

先生がそう声を漏らして数秒後、目をじっと凝らしていたモモイがぽつりとつぶやく。

 

「……ここからだとよく見えないな……よいしょと」

「あ、ちょっとまってよお姉ちゃん!」

「ちょ、おい!お前ら、もう少し状況確認をだな?」

「"……あれっ!?み、みんな置いてかないで!?"」

 

周囲の警戒など知ったことではないとそちらの方へ直進するモモイ。

突然駆け出した姉を追いかけるミドリ。

上記2名にそう声をかけながらいつの間にか拾いなおした自分の武装を構えて

警戒しつつ後を追うイオ。

そのことに遅れて気が付いた結果、慌てて生徒たちを追いかける先生の順で、

部屋の中心部にたどり着いた。

 

目標の場所に近づくにつれ、その少女の全貌が徐々に露わになってきた。

身の丈ほどある黒髪、どこか人肌とは違う質感の透き通った肌。

瞳は少女自身が死んだように眠りについているため分からない。

……何より、その少女は衣服を身にまとっていなかった。

 

「……返事がない、ただの屍のようだ」

「"ぶふっ!!?"」

 

ド直球かつとんでもない感想がモモイの口から飛び出してきて先生はむせた。

姉のあけすけな感想にミドリが声を上げる。

 

「不謹慎なネタ言わないで!それに死体っていうか……電源が入ってないような感じがしない?」

「……そう言われれば確かにそうかも」

 

そんなやり取りをはさんでモモイとミドリが少女と、

座っていた椅子の周辺を何かないか調べ始める。

……その時、ふと先生はモモイがさっきのような発言をしたときに即座に突っ込みを入れてきそうな

イオの方から、何の反応もないことに気が付いた。

 

「"……そういえばイオ?どうしたの"」

 

そう言って先生が振り向くと、

イオが先生の存在を思い出したかのように目を瞬かせた。

……心なしか顔色が悪い。

 

「"イオ……?"」

「あ、……悪い、何でもない」

 

先生の心配そうな声に、イオは誤魔化すようにそう言った。

しかし、相変わらず顔色は悪いままだ。

 

「"でも、具合悪そうだし……"」

「う、あー……それはだな」

 

先生がイオにそう声をかけると、彼女は明らかに何かをためらうように視線を泳がせたが、

やがて観念したのか、一息ついた。

 

「……昔、馬鹿みたいに怖いホラーを見たせいで、

人の死体を見るのがとことん苦手でな。その時のトラウマだ」

「"あー、なるほどね……"」

 

多分、先程のモモイの言葉でその記憶が蘇ってしまったのだろう。

……今のところ一緒に行動する限り結構図太い性格をしていると思っていたが、

そんな彼女にも怖い物はあるらしい。意外だ……

そんなことを考えている先生に、イオは軽く目の前で手を合わせた。

 

「あんたのことだから大丈夫だとは思うが……このことは余り言いふらさないでくれよ」

「"もちろんだよ。生徒の秘密をそう簡単に言ったりしないから……"」

「……くふふ、イオ先輩の弱点はホラー映画だったのか」

「おいコラモモイ」

 

……どうも、ミドリが未だあちらを調べているにも関わらず、モモイの方は面白そうな会話を聞きつけたからかはたまた飽きたからか、いつの間にか近くで会話を盗み聞きしていた。

イオは早速いたずらっ子に制裁のバイブレーション攻撃を行おうと素早くモモイの肩を拘束した……と、

 

「……何してんだミドリ」

 

視界に映ったミドリが突然、懐からパンツを取り出したのを見て、その表情がジト目に変わる。

対するミドリも、自分に変な疑いがかけられているのを察したのか少し怒ったようにイオに言う。

 

「何してるんだも何も、何も着てないのはちょっと可哀想だから私の予備の服を着せてあげようとしてるだけだよ」

「なんで下着含めて予備の服を持って来てだな……?」

「だって、汚れちゃうと思ってたし……そもそも、先輩は女の子なのにファッションに無頓着すぎるの」

 

そう言うと、ミドリは少女に服を着せ始めた。

そんな彼女に、心外だと言いたげなイオだったが、結局何も言わなかった。

さて、さほど経たぬ間に少女に服を着せる作業は終わった。

 

「……よし、これでいいかな?」

 

ミドリはそう言って、予備の紺色の服に包まれた少女を見る。

背格好がほぼ同じだからか、違和感はほとんどない。

何も言わなかったら、誰もがミレニアム生と信じて疑わないだろう。

 

「ほう、結構様になってるんじゃないか?」

「"だね。こうして見ると本当にお人形さんみたいと言うか……"」

「うーん……ミドリの服を着てるし、実質アリスは私の妹ってことにならないかな……」

「「"アリス??"」」

 

少女の方を見て、突然名前のようなものを言うモモイ。

それを聞いた先生とイオの疑問の声が重なる。

ほぼ確実にあの少女の名前だろうが、果たして何処からそれを……

と、思っていたらミドリが、自分の姉を呆れたように見てから2人に説明した。

 

「さっきこの子の座ってる椅子を調べてたら型式番号のようなものを見つけたんです。AL-1Sって刻印されてたんですけど……1をお姉ちゃんがIって読み間違えて……」

「あー、なるほど。いつものモモイだな」

「何さ先輩!!まるで私が英語てんでダメみたいな言い方じゃん!!」

「事実だろ。ついでに熟語もダメだな」

「んも~っ!!!」

 

ポカポカ言う擬音が似合いそうな動作で自分に殴りかかろうとするモモイを片手であしらうイオ。

その様子を、先生は苦笑いして見ていた。

その時、

 

ピピッ、ピピピッ

 

微かな電子音が辺りに響き渡った。

 

「ん?」

「な、何の音!?」

「……お前ら、どうも眠り姫のお目覚めだ」

 

音源はイオの言葉通り眠りについていた少女から。お伽噺のような言い回しとは対象的にその表情は警戒に満ちている。

そして、然程経たぬうちに少女が身じろぎしたかと思うと、

その小さな口が動き始めた。

 

「状態の変化、及び接触許可対象を感知。休眠状態を解除します」

 

そこから紡がれるのは機械的な、無機質な言葉。

その言葉が終わった後、少女はゆっくりと身を起こした。

その眼が開かれる。それは、無機質なガラス玉のように澄んだ空色だった

少女はしばらくゆっくりと辺りを見回していたが、

やがてこちらを警戒と好奇心が入り混じった様子で見つめる4人に気が付いた。

 

「状況把握、難航。会話を試みます……説明をお願いできますか?」

「え、えっ?せ、説明?何のこと?」

「そりゃ説明って言ったら、どうしてこんな事になってるのか説明しろってことだろうが……」

 

そこまで言うと、イオは少女に視線を移した。

 

「生憎、俺たちも状況が読み込めていない。そもそも、お前は一体何者だ?」

「……接触許可対象も状態の説明が不可能であることを把握。続けて、対象の質問に回答します……本機の自我、記憶、目的は消失状態であることを確認。データがありません」

 

目の前の少女は、ただ淡々とイオの言葉に回答する。

……表情も声色も全く変わらないため断言はできないが、嘘をついているふうには見えない。

 

「"……つまり、きみは記憶喪失状態にあるってこと?"」

「……肯定」

 

先生の言った言葉が一瞬わからなかったのか、少しだけ考え込むような動作を見せた後、少女はそう言った。

頷くこともなく、ただ淡々と必要な言葉のみを伝える様子。

 

「うわ、凄い……ロボットの市民ならキヴォトスにもよくいるけど、

こんなに私達に似てるロボットなんて初めて!」

「……というか、あいつ等にはまともな自我がある分、なんでこいつがここまで無機質なロボットに寄っているのか甚だ疑問だな……」

 

……まるで、いやまさにロボットのような少女の様子に、

モモイはそう言って目を輝かせたものの、イオの視線は相変わらず訝しげだ。

それはさておき、これ以上この少女に話しかけても何の収穫も得られなさそうなのは確かである。

 

「"取り敢えずどうしよっか……"」

 

あくまで目標はG.bibie、だが、このロボット少女?を置いて行ってしまうのも気が引ける。かと言って少女を連れたまま探索を続けるというのも……

先生が考えていることを察したのかイオが声をかける。

 

「正直、俺はこのまま探索を続けたい所だがな……次回の探索の時に、あっちの任務で出払ってないとは言い切れない」

「"そっか。じゃあ……"」

 

探索を続けようか。

先生がそう言おうとしたその時、

 

ぐううう………

 

部屋一帯に大きな音が響いた。

全員の視線が音源……即ちモモイのお腹に集中する。

視線が集中する中、モモイはエヘヘ、と頭に手を当てた。

 

「いや〜、さっきまでずっと探索してたからお腹が空いちゃった……」

「……そう言われれば私も。多分、そろそろお昼だし余計に……」

 

自分の姉の言葉にミドリもそういえば……と同意する。

その様子に、イオは呆れたような表情になった。

 

「お前ら……俺は探索に丸1日かけること前提で、携帯食料を持ち込んでいるが、もしかしてランチの1つも……」

「うっ……だ、だってしょうがないじゃん。急なことだったし……」

「自販機で買えばよかっただろ……」

 

イオの正論にモモイとミドリはうぅ、と呻き声を漏らして項垂れた。

 

「と、ともかく!もうお腹と背中がくっつきそうなのっ!!

このままだと一旦帰らないと動けなくなったちゃうよ!!」

「……おう、そうか」

 

自分の欲にどこまでも忠実かつ自由奔放なモモイに、もう何も言うまいとイオは一言そう答えると溜息をついた。

さて、そんな3人の様子を見ていた先生はというと……

 

(……そういえば、そもそも自分は今朝から炒めモヤシを水で煮てかさ増ししたモヤシの水煮スープしか食べてないな……)

 

先生はモモイ達のせいで、考えないようにしていた事実を思い出してしまった。因みに、こうなった原因はダリルとゲームセンターで遊んだせいである。

……明日の給料日まで、ずっとこの生活……

 

「"……うぅ。お腹、空いた……"」

「え、ちょ、先生どうしたの急にっ!?」

 

自分の人として終わっているレベルの貧相な食事を思い出した先生の目から涙が溢れる。急に泣き出した先生にモモイとミドリが慌てふためいていたが、どうもイオはその反応を違うように受け取ったらしい。

 

「先生あんた、そんなに帰りたいのかよ……」

 

どうも先生もモモイと同じく、お腹が空いたから帰りたくてこんな行動をしていると勘違いしたらしい。

イオの脳内で、先生に対してダメ人間のレッテルが貼られた。哀れ。

イオは自分の目の前で泣き崩れる大人を見て、何とも言い難い表情になると、その奇妙な光景を見て「……状況把握、極めて困難」とつぶやいて首を傾げている少女に視線を戻した。

 

________________________

 

さて、しばらく時間は経ち、先生達は無事、ゲーム開発部の部室へと帰って来ていた。

本来ならばファミレスにでも行こうかという話になっていたが、先生が頑なにそれを拒んだためである。

ファミレスなんかに行ったら確実に理性が飛ぶ……

そう先生の本能が訴えていた。

 

「ふう……やっと帰れた〜」

 

そう言いながらモモイはドカリと床に倒れ込む。

 

「と言っても、想定以上に早く帰れたがな。

先生の算出したルートとやらが想像以上に役立った」

 

イオはそう言いながら、コンビニで買った弁当の入ったビニール袋と、小脇に抱えた少女を床におろした。

連れ帰った(お持ち帰りされた)少女はというと、無表情ながら物珍しそうに色々なゲーム機器が置かれた部室内を見回している。

その様子を見つつミドリがイオに話しかける。

 

「それで、連れて帰ってきちゃったわけだけど……先輩、どうするの?」

「どうするも何も、先生のとこで預かってもらうしかないだろ」

「"……まあ、そうなるかな?学生証が発行され次第ミレニアムに転入することになると思う……ってあ"」

 

先生が突然そんな声を上げた。視線の先では少女が棒状のコントローラーをもぐもぐと口に含んでいた。

 

「ああっ!!私のWeeリモコンを口に入れないで!ぺっして!ペッて!」

 

先生の声で異変に気が付いたミドリが、急いで少女のもとに駆け寄る。

幸いなことに、少女はミドリに声をかけられると直ぐに食べるのをやめてくれた。

……しかし、まだ何やら部屋を見回している。

 

「……なんか、赤ん坊みたいだな。うかつに目を離せねぇ」

「だね……全く、困った子だよ。アリスちゃんは」

 

呆れたようなほほえましいような複雑な表情でイオが言うと、

その横でモモイもうんうんと頷きながらそう言った。

……その中に含まれた単語に、イオとミドリが眉をひそめる。

 

「ちょ、ちょっと待って!それお姉ちゃんが勝手に読んだ名前でしょ!?

本当ならAL-1Sちゃんじゃないの!?」

「いや、それはそれで変だとは思うが……こいつの名前を勝手に決めるわけにもいかんだろ、

せめて本人の希望をだな」

 

ミドリとイオからの猛烈な批判にモモイはむう、と不服そうなうめき声を漏らす。

その様子を見かねた先生が、

次の獲物は……とイオの持ち込んでいるらしいカセットテープに目を付けた様子の少女に話しかけた。

 

「"ねえねえ、みんなはああいってるけどあなたはどんな名前がいいの?"」

 

少女は、先生の言葉に少しの間考え込むような動作をしたものの、すぐに顔を上げた。

 

「……本機の名称、[アリス]。確認お願いします」

「え、まじかよ」

 

イオは思わずそんな声を漏らした。

……どうも本人は本当に気に入ったらしく、心なしか若干期待に満ちた目でこちらを見ている。

 

「おぉ!もしかしてアリス、気に入ってくれたの?」

 

モモイが目をキラキラさせてアリスの方に素早く近づく。

そんな彼女に、アリスはこくりと頷くといった。

 

「肯定。本機、アリス」

「あはは!!ほら、見たか私のネーミングセンス!」

「うーん、本人が気に入ってるならいいけど……」

「……ま、いいんじゃないか?」

 

イオは、心なしかうれしそうに見えるアリスを一瞥してからそう言うと、

イオの方を見た。

 

「それじゃあ先生、後の転入の手続きのことは頼んだ」

「"うん、任せておいて。それじゃあアリ、"」

 

アリス、行こっか。

そう声をかけようとした先生の動作がギクリと固まった。

どうした?と声をかけるイオのことも目に入らず、

先生の脳裏をよぎるのは自分の部屋の惨状と食料事情……

……一応、客室はある、一応。

しかし、食料事情に関しては極めて深刻だった。

来客に備えて茶菓子はあるが逆に言うとそれしかない。

それ以外にあるとすれば1食分の炒めモヤシの水煮、以上である。

シャーレのカフェも本格的に稼働してないため精々ドリンク程度しかない。

……到底、少女一人を宿泊のために招くような様相ではなかった。

 

「"……あのですね、イオさん"」

「……なんだ、また急に敬語になって」

 

先生から溢れる負のオーラに圧されたのか、若干引き攣った表情でイオが答える。そんな彼女に、先生は極めて申し訳無さそうに告げた。

 

「"今日一日だけでいいからアリスを預かってくれないかな…?明日になったらお給料出るから……"」

「給料が出るって……まさかあんた」

「"それじゃあねっ!?"」

 

イオが何か言うよりも早く、先生は凄まじい速度で部室から飛び出していった。

 

「……コンビニで何も買わなかったのはそう言うことかよ……」

 

先生の懐事情を察して呆れて物も言えなくなるイオ。

 

(今から追いかけて引き摺ってでもファミレスに行くべきか……)

 

イオがそう考えたその時、

 

♪、♪、♫♫!!

 

懐から軽快なジャズが流れてきた。

タイミングの悪さと、自分のスマホの電話はほとんどある用事の為にしか使われないことを思い出し、イオは小さく舌打ちする。

 

「あ、先輩。スマホ鳴って……あれ、先生は?」

「……どうも、急な用事があったらしい。慌てて帰っていったぞ」

 

ミドリの言葉にそう返しつつ、イオは若干不機嫌そうにスマホを取り出すと、耳に当てた。

 

[やっほー!!イオ、今時間空いてるよね、空いてるね!?]

「そんなに何度も言わなくてもわかってますよ、アスナ先輩殿……要件は[掃除]の仕事で間違いないな?」

 

軽口を叩いたのも一瞬のこと、イオの声色のからおちゃらけた雰囲気が消える。アスナ

 

[うん、そうそう。近くでヘルメット団同士の抗争が始まったらしくて、周辺被害がひどくなる前にどうにかしろって。いやーでも、イオに伝えるのが遅くなっちゃって……2分後には出撃だからよろしく!]

「……へいへい、毎度のことなんでもう慣れてますよ」

 

相変わらず自由奔放な先輩に、毎度のように振り回されているとはいえ困るものは困る……イオが疲れ切った表情になったのも一瞬、すぐに表情を正してモモイとミドリに話しかける。

 

「悪い、あっちの任務が入った。3時間後ぐらいには戻るつもりだが……その間にアリスにまともな常識と言葉を教えてやってくれ」

「わかった、いってらっしゃい、先輩」

「ふふん、アリスのことは任せといて!!」

「おう、任せたぞ」

「???」

 

ミドリとモモイ。そして状況がよくわかっていないアリスに見送られ、イオは部室を後にした。

 

……その3時間後、帰ってきたイオが彼女達にアリスを任せたことを心底後悔するのは、少しあとのお話である。

 

________________________

 

一方その頃……

 

「先生……」

「"ご、ごめんね、ダリル。用事が入っちゃったの言うの忘れてた……"」

「そんなことはどうでもいいんです。それより、何ですかこの冷蔵庫に入ってた物体は……」

「"え、えと……炒めモヤシの水煮……"」

「…………」

「"や、やめて……そんな目で私を見ないで……"」

 

 

その後、次の日も当番に入れるという約束でダリルにご飯を恵んでもらった先生であった。

 

 




どもー、時空未知です。
ということで今回の作品はいかがだったでしょうか?

……やっぱ先生は惨めなマスコットだったかもしれない。
さて、イオがゲーム開発部に入ってたのでアリスちゃんは正規の手続きを踏んでミレニアムに入ることになりました。
しっかり不法滞在してるのは内緒。
それよりイオちゃん、まだ心の底からあのときのこと忘れられてないんだね……かわいいね……はっ、閃いた!

次回はアリスの脳が一旦破壊されます(予定調和)
キヴォトスを救うためには必要なことだからねしょうがないね。
キヴォトスを救うためで思い出しましたが、実は2話からどっかの2人だけの殺し合いが発生しないように自覚なく立ち回ってる功労者がいるんですよ。いやはや一帯誰なんでしよう……
じゃ、ではでは~

どのダリルメインの短編を先に読みたい?(上位2作)

  • 便利屋68との絡み
  • 風紀委員会とイロハイブキ
  • ユメ先輩と黒服との絡み
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