楽園に雷光は走る   作:時空未知

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ストーリー更新入りましたね……
……時間がなくてまだ全部は目を通せてないんですけど、
ひょっとしなくても話の流れ粉砕されました?


Do you like games?

「……は?」

 

一仕事終えて帰ってきたイオは、開口一番そんな間抜けな声を漏らした。

目の前に広がるのはいつも通り散らかった部室。

その壁側の中央に鎮座するテレビに光が灯っているのもいつものこと。しかし、そこに映る[TlueEnd]の誤字の目立つ一文は見覚えが……具体的に言うとトラウマが刺激される代物で、

その目下には仰向けに倒れ込んで頭部から蒸気を吐くアリスの姿が……

 

「こ、ろ、し、て」

 

バグッたような音声で、目を回しながらアリスはたしかにそう言った。

 

「すごいよアリス!開発者2人が一緒とはいえ、3時間でトゥルーエンドなんて!!」

「そ、それもそうだけど。もしかしてゲームをやればやるほどアリスちゃんの喋り方のパターンが多彩になってきてる……?」

 

そんな彼女に両側にいた2名は開口一番そう言った。

……いや、それ以上に何か言うことがこう……こう……

結果、

 

「お前ら……」

「あ、イオ先輩おかえ……り?」

「ねえねえ先輩、アリスすごいんだ……よ?」

 

モモイとミドリが気がつくと、

そこには何かを堪えるように身を震わせるイオ。

嫌な予感を覚えたときにはもう遅い。

 

「何やっってんだああぁぁああっ!!!!」

 

次の瞬間、落雷と見紛う怒号が、ゲーム開発部の部室に降った。

 

____________________________________________

 

「何もあのゲームをやらせるなとは言わない。

だがな、何をとち狂ったらあれを3時間ぶっ通しでやらせるんだ!?」

「えぇえ……だってぇ」

「つーかそもそも言語を学ばせるためだったらもっとほかに手段あっただろっ!!」

「う、……もっともです」

 

数分後、モモイとミドリは正座させられてイオから説教を受けていた。

……自身が1日ぶっ通しでプレイして1週間寝込む羽目になった代物を

3時間に圧縮してその情報を余さずねじ込まれたのだ……その恐ろしさたるや筆舌しがたい。

 

(……これ、アリスのCPU焼き切れてないよな?)

 

イオは本気でそんな心配をしながら、先程まで蒸気をモクモクと吐いていたアリスの方を見た。

何とか再起動を果たしたらしい彼女はというと、

正座したまま真っ白な灰になっているモモイ、ミドリ両2人をみて、額に手を当て、大仰な動作で空を仰いだ。

 

「おお、勇者よ。死んでしまうとは情けない!」

「……」

 

(だめかもしれねぇ……)

 

イオは言語教育の敗北を悟った。

多分、アリスの口調がまともになることはもう二度とないだろう。予想でしかないはずなのに確信めいた何かがあった。

 

「……まぁ、過ぎたものは仕方ない」

 

結果、イオはもう色々諦めてそう言って溜息をつくと、モモイたちの方を見た。

 

「それでだ、お前ら。アリスに感想、聞いたのか?」

「「……え?」」

 

イオの言葉に2人は姉妹揃って顔を上げ、キョトンとする。

そんな彼女達の目に映るのは、先程まで怒っていたとは思えないほど、穏やかで、優しい表情だった。

 

「センスのないやつはその辺のゴミと同じのクソゲー呼ばわりするが、アリスはお前らの熱意を間近に感じながらプレイしたんだ。

……お前らの言う、正当な評価。聞いてみたくないのか?」

 

イオはそういうと、続けてロッカーの方に視線を向けた。

 

「ユズ、どうせ聞いてるんだろ?

出てこなくてもいい。ただ、耳を防ぐんじゃねえぞ」

 

そして、最後にキョトンとしてイオの方を見ているアリスの方を見た。

 

「さて、アリス。こいつらの作ったゲーム……どうだった?」

「お、面白かった…?」

「ねえねえどうだった!?」

 

イオの言葉に続けて、モモイ、ミドリがアリスのすぐ近くにズイッと近寄る。彼女は少しその様子に驚いたようだったが、全員の視線がこちらに集中していることを察したのか、少しの時間、考え込んだ。

……その時間は数秒程だったが、モモイ達にとっては永遠にも感じられた。そして、その末にパッとアリスの口が動く。

 

「……説明不可」

「ええっ!?、なんで!?」

 

極めて端的な言葉だった。

モモイが素っ頓狂な声を発する中、アリスは遠くを見つめるように考え込む。

 

「類似表現を検索中……」

「も、もしかして悪口を探してる……?」

「そんなことはないだろ。感情を言い表すのは難しい」

 

テイルズ・サガ・クロニクルのレビューのことを思ってか、不安そうな表情になるミドリを、イオがそう言って慰める。

そんなやり取りをするうちに、アリスはそれを表す的確な表現を見つけたようだった。

 

「……面白さ。それは、明確に存在」

「おおっ……!」

 

アリスの言葉にモモイが小さく歓声を上げる。

ミドリも、心なしか目がかがやいている。

アリスはゆっくり、ゆっくりと言葉を紡いでゆく。

 

「プレイを進めれば進めるほど、まるで別世界を旅しているような……夢を、見ているような……」

 

そういう言うアリスは、いつの間にか、自分がつい先程終えた冒険を懐古するように目を閉じていた。

 

「……もう一度、もう一度……」

 

 

ポロリ

 

 

アリスの目じりから、小さく、しかし確かに涙がこぼれる。

 

「ええっ!?」

「あ、アリスちゃん、どうして泣いてるの!?」

「……こいつは少し予想外だな」

 

まさか泣くほど感動されるとは思っても見なかったのだろう。

モモイとミドリが驚く。

イオもその光景にしばらく驚愕で呆けていたが、直ぐに何か思い出したような表情になると、

ロッカーのほうを見やった。

 

「おい、ユズ。聞いてたか?」

 

そう、イオがロッカーの中にいる少女に向けて声をかける。

……今まで通り、そこから答えは返ってこない。

それでもいい。アリスの思いが、彼女に届いているのなら……

イオ自身はそう考えていた。しかし、自体は彼女が思う以上の方向へと進んだ。

 

 

「……ちゃ、ちゃんと全部見てた」

 

 

オドオドして、くぐもった声ではあったが、確かにそう聞こえた。

そして、イオが視線を向けていたロッカー……ではなくその隣のロッカーが軋みを立てて開く。中から出てきたのは、

ろくに手入れされていないであろうぼさぼさの赤髮を持った少女だった。

ゲーム開発部部長、花岡ユズ。その人である。

 

「……え、ユズが……ユズが出てきた!?」

「い、一瞬お化けかと思っちゃった……」

「お前、いつの間にそっちのロッカーに移動したんだ……?」

 

人見知りが激しく滅多に初対面の人の前に姿を現さないユズに対し、

部員たちが思い思いに……なかなかにヒドイことを言う。

 

「あ、あう……」

「え、あ!ユズ、ちょっと待って!!」

 

そのことにユズは若干ショックを受けた様子。

いそいそと自分の寝床に戻ろうとし始める。

それを慌てて部員たちが止めに入った。

 

「悪かった、俺らが悪かったから。

後で俺が自腹で新しいプライステーション買ってくるから……な?」

「これが終わったらすぐにゲームのシナリオかき始めるから勘弁して!?」

「わ、私はエナドリぐらいしか買ってこれないけど……」

「え、えと。み、みんなそんなに必死にならなくても……

と、というかプライステーション、やっぱり壊れてたの……?」

 

その勢いたるやユズ本人が困惑するほどであった。

……ついでに先生が初めて来たときの会話でちらりと話題に上っていた

プライステーション破損案件が確定した。

……ソフトは無事かつデータをクラウドにバックアップしてあるのでまあいいかとユズは思いなおすことにした。

……何はともあれ、ユズが再びロッカーに籠ってしまうことは阻止できた。

改めて、モモイはアリスの方を向いた。

 

「アリスは初めてだよね。この人が私たちのゲーム開発部の部長、ユズだよ」

 

そうしてそばにいるユズのことをモモイが示すと、

当然アリスの視線は彼女のほうを向く。

未だ人の視線がこちらを向くことになれていないユズはびくりと身体を震わせるが、

やがて意を決してアリスの前に進み出た。

 

「……?」

 

しかし、声を出す勇気が出せない。

ユズはもう一度アリスの前に進み出ると、一度ぎゅっと目を瞑って、

大きく息をついた。

 

「えっと、あの、その……あ、あ、あ……」

「あ……?」

 

テンパって声が詰まるユズ。

それに対してアリスがきょとんとして聞き返す……

聞き返された本人は、しどろもどろになりながら視線を右往左往させていたが、

やがて、勇気を振り絞って言った。

 

「……ありがとう」

 

決して大きな声ではなかったが、確かに彼女はそう言った。

一度言ってしまえばあとは早かった。

 

「ゲーム、面白いって言ってくれて……もう一度やりたいって言ってくれて……

泣いてくれて……本当にありがとう」

「???」

 

当のアリスはというと、

状況がよくわかっていないらしくきょとんとしていたが、

ユズは特に気にしていないようだった。

 

「面白いとか、もう一度とか……そう言う言葉がずっと聞きたかったの」

 

そう言うユズの表情は、とても安らかで、嬉しそうだった。

その光景を見て、イオは自分が彼女たちと出会った時の一幕を思い出していた。

 

______________________________

 

数か月前……

 

 

「古代史研究会が目の前で襲撃されて……何かと思ってきてみれば」

 

そう言って、辺りに被弾した生徒やら

気絶した生徒やらが転がり硝煙にまみれた室内で一人無傷のイオ。

彼女はそう一言呟くと、目の前で抱き合って震えている

襲撃犯2名を見つめて嘆息した。

 

「双子のガキが2人とはな……

てっきり仲の悪い近未来観測研の連中だと思っていたんだが」

「ひうっ……な、なんで[ジャズの悪魔]がここに……」

「偶々近くを通ったんだよ、悪いか?あと……誰がジャズの悪魔だコラ」

 

別にイオ的には凄んだつもりは少しもなかったのだが、

元々目つきの悪い彼女と、若干強めの口調が合わさり、

ただでさえ直前に精神的に完膚なきまでにボコボコにされた彼女らは震えあがった。

 

「ひいっ!?す、すいませんごめんなさい

言い出しっぺはお姉ちゃんなんですだから食べないで見逃してええええ」

「へあっ!?い、いや、ミドリもなんだかんだ言いながら参加したじゃん!!

共犯者、共犯者だよ!!!」

「……俺は人食いの化け物か何かか」

 

姉妹の醜い争いの中でどうも自分がとんでもない人物として

扱われているらしいことを理解し何とも言えない表情になるイオ。

しかし、そんな彼女の言葉をよそに勝手に激化してゆく姉妹喧嘩……

 

「……取り敢えず、生徒会まで連行するか」

 

イオはそう呟くと、双子の服の首元をつかみ上げた。

 

 

最初のころこそ手足を振り回して抵抗していた彼女らだったが

すぐに無駄たとわかるや否や、ワンワンと泣き始めた。

その泣き声のせいで、周囲から視線が集まる。

……誰も文句を言ってくるものはいなかったが、突き刺さる視線は中々痛い。

 

……イオとゲーム開発部の初めての邂逅というものは、

お世辞にも良いものとは言えなかった。

 

 

「ひっぐ……ひっぐ……」

「うわああああんもうダメだ……こんな場所、誰も来ないだろうし……

私達ここで半殺しにされるんだぁ」

「別に事情聴取するだけだって言ってんだろ……何もしやしねえよ」

 

事情聴取のために生徒会の一室まで双子を運び込んだはいいものの、

未だ彼女らが泣き止む気配はない。

お陰でここまで運ぶときにユウカとノアに会ったが、すごい目で見られた。

イオはため息を一つつくと、彼女らの学生証を手に取ってそれに目を落とした。

 

「……1年の才羽モモイと才羽ミドリか……

それで、どうして古代史研究会を襲撃した?」

「え、あ、それは……お姉ちゃんがまだ見ぬレトロゲームを探しに行くって……」

「レトロゲーム???」

 

ミドリの予想だにしない質問の答えに思わずイオはそう聞き返した。

その問いに、びくびくしながらミドリが説明する。

 

「は、はい……私達はゲーム開発部の一員で、ゲームの開発や研究をしてまして……」

「……ゲームと言ったら、あれか?テレビにつないで……」

「……?そ、そう。それです」

 

ミドリはイオの反応に戸惑いつつもそう答える。

 

(……もしかして、ゲームをしたことがないのかな?

というより意外と話しやすい人かも……)

 

ミドリにとってイオは入学する前からミレニアムで良くも悪くも有名な怖い先輩、

という印象しかない。

その為、そんな人がただ単純に驚いたような表情を示したのがとても意外だった。

因みにミドリのイオがゲームをしたことがないのではという予想は当たっていた。

前世の彼女は根っこからのアウトドア気質、更に上流階級だったため定期的に

親の付き合いでパーティーに行っていたため、

そう言ったことに触れる機会が全くなかった。

今世でもC&Cに入ってかなりマシになってきたとはいえ

あの時の悪夢を少しでも考えないようにするためにずっと戦闘に明け暮れていたため

当然ゲームなどしたことがない。

だからだろうか、イオは少しだけその単語に惹かれた。

……と言ってもそれはそれ、これはこれ。今は尋問中なので、そのことは一旦思考の隅に置いておく。

 

「……お前らなぁ、

あそこは発掘されたオーパーツの解析と復元が生きがいの部活だぞ?

ちょっと調べりゃそんなものはないってわかるだろうが……」

「……だってさ、お姉ちゃん」

「うぐっ……だ、だってぇ……」

 

いつも通りの突発的な思い付きでこんなことをしたのか……と妹からの非難の視線が飛んできて、

モモイはしょぼくれた様子で言い訳を試みるも、何も言い返せなかったのかうなだれた。

その様子を見て、イオはため息をついた。

 

「……ま、クソくだらない理由だったが嘘をついてる様子もねえし、

取り調べはこれで終わりだ。ほら、帰った帰った」

「「えっ!?」」

 

イオの言葉に、ミドリとモモイの驚いた声が重なった。

……その反応に若干眉をしかめるイオ。

 

「……お前ら、どうせ俺が拷問かなんかすると思ってたんだろ」

「そ、そそそんなことないよ!?」

「あ、いや……拷問とまではいかなくてももう少しきつく怒られるかなとは……」

 

モモイはあからさまに挙動不審になり、

ミドリは少し迷った様子だったが、言葉を選びつつそう答える。

それを聞いてイオはさらに溜息をついた。

 

「ったく……ま、噂されても仕方がねえようなことはしている自覚はあるが、

ここまで噂に尾ひれがつかなくてもいいだろ……」

「自覚、あったんですね……」

 

ぶつくさと文句を言いうイオに、ミドリはひきつった表情でそう返すと、

ふと表情を戻した。

 

「……でも、話してみたら意外と普段のイメージとは違うというか」

「確かに……怖い顔と声で結構誤解されてるのかも」

「ははっ、そう言ってもらえると、意外にうれしいもんだな」

 

ミドリとモモイの言葉にイオはそう言って笑った。

……その時、あることがイオの脳裏をよぎった。

それはほんの、思いつきに過ぎなかった。

その思い付きが、彼女の今後を大きく変えることになるが、

そのことが本人にわかるわけがない。

 

「そうだ、誤解が解けたついでといってはなんだが……

お前ら、ゲーム開発部なんだろ?」

「……?うん、そうだけど」

 

突然話しかけられてモモイが首を傾げつつそう返す。

それに対して、イオは言った。

 

「お前らと話してみてちっとばかし興味がわいた。

作ったゲーム、やらせてくれないか?」

 

______________________________

 

 

「……ねえ、お姉ちゃん。あれでよかったのかな?」

 

そんなやり取りの数時間後、ミドリが姉に対してそう話しかけた。

それに対し、モモイは笑っていった。

 

「いいのいいの、先輩が私たちのゲームをやりたいって言ってくれたんだし……」

「いや、でも先輩にとって人生初のゲームだよ?

もう少し他のゲームに触ってもらってからのほうがよかったんじゃ……」

 

……ここまでの会話でお判りいただけるだろうが、

2人がイオに渡したのは当然テイルズ・サガ・クロニクルである。

……初投稿からさほど月日が経ってないこともあり、

ミドリの表情はすぐれない。

そして、ミドリはそこまで言ったところでふとある推測に至った。

 

「……怒ったイオ先輩がうちに襲撃しかけてきたりしないよね?」

「そ、そそそそんなことはないんじゃないかな??」

「お姉ちゃん声が震えてるよ」

 

……あの襲撃の時、鎮圧しにきた彼女の姿はトラウマものだった。

突如、大音量のジャズが響いたかと思うと爆炎を突き破って

大量の装備を積んだ人物が

殺気を振りまきながら突撃してきたら誰だって腰を抜かす。

2人は最初のそれで完全に戦意を喪失してしまったのでそれ以上のことは

免れたが……次どうなるかは分かったものではない。

だが、もう渡してしまったものは仕方がない。

彼女たちはおびえながら次の日が来るのを待った。

 

 

……しかし、

 

 

次の日も、その次の日も、イオが彼女たちの部室に姿を見せることはなかった。

 

 

「……先輩、こないね」

「ひょっとして、とことんひどい目見たから会いたくないのかな……?」

 

遂にそれから一週間が過ぎようとしていた時、

部室内で2人がそんな会話をしていたその時だった。

 

ガチャリ

 

そんな音を立てて部室の扉があいた。

 

 

「モモイ、ミドリ、入るわよ……って何よ、人に化け物が出たような反応をして」

 

 

入ってきたのはユウカだった。

そんな彼女の目に映ったのは来たのがイオだと思い、反射的に

おびえた様子でお互いに身を寄せる双子の姿だった。

彼女たちは、入ってきたのがユウカだとわかるや否やほっと胸をなでおろす。

 

「よ、良かった……イオ先輩じゃなかった」

「……イオ?やっぱりあなたたち、あの時イオと何かあったのね?」

「え゛っ」

 

しかし、安心するにはまだ早かった。

ユウカの口から彼女たちが恐れていた人物の名が飛び出した。

 

「な、何かあったの?」

 

もしかして滅茶苦茶に怒っているイオのところに連れていかれるんじゃ……

と戦々恐々しながらミドリがユウカに話しかける。

……が、ここでも彼女たちの予想は裏切られる。

ユウカは彼女たちの様子に首をかしげながら事の次第を語った。

 

「それが……ここ一週間全く学校に来てないのよ」

「……え」

 

予想だにしない回答に、モモイが呆けたような声を出す。

ミドリもその答えを聞いて呆然としている様子だった。

ユウカはその様子に気が付いていないのか、言葉を続ける。

 

「最初の方なんかそもそもモモトークに既読すらつかない状態で……

3日前からようやく連絡が付いたけど[体調を崩した]、としか返ってこないのよ。

持病があるなんて聞いたこともないし……

で、丁度一週間前にあなたたちが泣きながら連れていかれるのを見たから、

何か知らないかと思って」

「そ、そうなんだ……」

 

ミドリが挙動不審気味にそう返すと、ユウカは訝しげな表情になった。

 

「……言っとくけど、別にあなたたちを疑ってるわけじゃないわよ。

あなたたち2人……というかゲーム開発部3人が何をしても

勝てっこないだろうし」

「う、うん……」

 

……一応、一応彼女たちに思い当たる節は一つある。それはイオに渡したゲームの存在だ。もしかするとあれが……

 

「……もしかして、私たちのゲームが……?」

「いや、お姉ちゃん。流石ゲームでそんなことは……」

「……どうしたの、2人とも。さっきからぶつぶつと……」

 

身を寄せ合ってひそひそと話し合うミドリとモモイ。

そんな彼女たちにユウカが声をかけたその時だった。

 

「おーい、ここがゲーム開発部の部室で会ってるか」

 

突然、ひょこりと扉の奥からイオが顔を出した。

 

「え、イオ!?一体どうし「「ひきゃあああああああああ!!?」」きゃあっ!?」

 

ユウカが唐突に現れたイオに驚いたのもつかの間、背後で響き渡った悲鳴にさらに驚かされる。

……声の主はもちろんミドリとモモイイオが現れたと見るやいなや悲鳴を上げて部屋の隅まで後ずさってガクガクと震え始めた。

その様子を見たユウカとイオはしばらく呆然としていたが、

すぐにユウカがイオに厳しい視線を向ける。

 

「イオあなた……あの子達に何したの?」

「何もしてねえよ!!誤解だ誤解!!」

 

あらぬ冤罪を受けたイオは必死で首を振るが、過去の行いのせいでユウカの目は厳しい……しかし、ここで彼女があることに気がついた。

 

「……いま気がついたけど、なんか顔色が悪くないかしら?」

「だから体調を崩したんだって。今日の昼にようやくまともに動けるようになったんだよ」

 

その言葉にイオは口を尖らせて言った。

……そういえば心ないか顔色が青く、薄っすらと隈も出来ている。

 

「……さて、と」

 

イオはそう呟くと、未だ部屋の隅で震えているミドリとモモイに近づいた。思わず身を硬くして更に縮こまる2人に、イオは困ったように頭をかいた。

 

「別に何かしようってわけじゃねえぞ……ほら」

 

そう言うと、イオは2人に何か差し出した。

それは2人にとっても見覚えのあるケースに入ったゲームディスクだった。

 

「……あれ、私たちのゲーム?」

「全クリしたから返しに来たんだよ。たく……お陰様で休みが丸々潰れちまった」

「え?」

 

思いがけないイオの言葉に、ミドリとモモイはキョトンとした。

 

「ぜ、全クリって……」

「え、でもあのゲーム、時間がかかったとしても1日で終わると思うけど……」

 

ミドリは純粋にイオがゲームを隅々まで遊んでくれたことに対する驚きで、モモイはイオが1週間も来なかった理由がわからなかったのかそう言う。

それに対してイオは、苦行を思い出したのかただでさえ若干悪い顔色を更に悪くした。

 

「……寝込んでたんだよ。なんつーか、俺がやるには早すぎた……」

 

……精一杯オブラートに包んだ表現だった。

どうも、本当に彼女たちのゲームを1日中やったせいで体調を崩したらしい。

その事実にミドリとモモイの表情も体調とは別に青くなる。

 

「え、えと、なんて言ったらいいかその……」

「面白かったぞ」

 

しかし、イオが言ったのは彼女たちにとって思いがけない言葉だった。

……今の今まで一度も、そんな感想はもらったことがなかった。

呆けている彼女たちに、イオは更に言葉を紡ぐ。

 

「確かに色々言いたいことは山ほどあるが……それを引いても俺にとっては新鮮だった。それに、お前達がゲームが好きだってこともよくわかった」

 

そこまで言うと、イオは彼女たちの前に座り込んだ。

……目線の高さが、自然と合う。

 

「……なあ、勝手に調べさせてもらったが、部員が足りないんだってな?」

「え、う、うんそうだけど……」

 

突然の言葉に目を白黒させながらモモイがそう答える。

それに対して、イオはニヤリと笑って言った。

 

「C&Cってな、意外と暇な時間が多いんだよ」

 

 




どもー、時空未知です。
というわけでイオの回想回でした。
……割と切りが悪くなった気がしなくもない。
しかし、平和でいいですね……和気あいあいとした感じで。
アリスという仲間も増えますしお寿司……

……早く曇らsうっゲフンゲフン。
まだや……まだ耐えるんや……一章で曇らせたら今後のプロットもクソも無くなるから……2章まではイオのために大切な仲間と思い出を装填し続けるんや……

そう言えば、丁度第一章が終わったタイミングで
ダリルが主役の短編集投稿しようと思ってるんですけどどれがいいですかね?
モチベ次第ではこっちが先に投稿されるかもですけど……
絡み先と内容のアンケートとるんでよかったらどうぞ。
上位2作を書きますんでよろしきおねがます。
あぶれたやつも第2章終わったら投稿します。

・便利屋68とシャーレでばったり会った
・万魔殿の特別監査(イロハとイブキ)
・ユメ先輩&黒服<きちゃった

くれぐれも感想でリクエスト書かないでね?運営さんに消されちゃうから……じゃ、ではでは~

どのダリルメインの短編を先に読みたい?(上位2作)

  • 便利屋68との絡み
  • 風紀委員会とイロハイブキ
  • ユメ先輩と黒服との絡み
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