楽園に雷光は走る   作:時空未知

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高評価、ここすき、そして何よりコメントありがてえ……


廃墟に響く銃砲のセッション

 

アリスが自分専用の武器を無事入手し、しばらく時間がたったころ。

彼女達はユズの待つ部室へと帰還した。そして……

 

「さてっ、これで今できることは全部終わったし。ちょっとぐらい休憩してもいいよね!」

 

そう言うが早いかモモイは自身のゲーム機器を手に取ると、

アリスの方を見た。そのアリスの方も、手に新品のゲーム機が握られている

 

「じゃあアリス、今日はレイドに行こう!準備はできてる?」

「攻略法は把握しました。レイド専用装備も獲得済。

【初心者歓迎/「燃える森」へ遠征/4人/ヒーラー、遠距離アタッカー募集】で告知。

あっ、【Perorochan32さんが合流しました】」

「ちょ、ちょっとなんでいきなりゲームしてるの!?こういう時に少しずつゲーム開発進めないの!?」

 

帰って早々にゲームを始めた二名にミドリが慌ててそう言うが、2人はどこ吹く風。

その代わりに、横でイヤホンを装着して椅子に腰かけたイオがミドリに声をかける。

 

「まあまあミドリ、いいじゃないか。

どうせ先生が来るまで足止めなんだ。ちょっとぐらい休憩させてやろうぜ?」

「……いろいろ言ってるけど、結構先輩って甘いところあるよね」

 

イオの言葉に、不服とも呆れとも取れぬ表情になるミドリだったが、それに対して彼女は軽く肩を竦めて笑った。

 

「さあな。それより、ミドリは参加しないでいいのか?」

「……うん。ちょっと描きたい絵があって」

 

立ち位置的に自分の作業を進められないミドリは不服そうではあったものの自分のペンタブレットを取り出すと絵を描き始めた。

ほとんど変わらない、ゲーム開発部の日常風景……精々変わったことと言ったら、新たな仲間が加わったことぐらいか。

それぞれが思い思いの時間を過ごしている。

 

そこから先生が部室に帰ってきたのは、丁度十分後の事だった。

 

「"ただいまー。ごめんね、色々長引いちゃって"」 

「おう、別に構わないぜ。こっちもこっちでゆっくりさせてもらってたからな……って、ユウカも一緒なのか」

 

イオが扉を開けた先生の方を向くと、その背後に見慣れたツインテールの少女がいることに気がついた。イオの言葉に、ユウカも反応する。

 

「ええ。転入生って話だし、一応顔を合わせておきたいと思って……」

「あ、先生お帰りなさ……あれ、ホントだ。ユウカもいる」

「出たなっ!セミナーに潜む四天王、冷酷な算術……」

「私と会うたびにその理由のわからない口上を言うのはやめてくれる?」

 

モモイが再び長々と口上を述べようとしたのを確認したユウカは

それを断ち切った。それに反応したのはアリス。

 

「ボスキャラがセリフをスキップするのはだめだと思います!」

「ボスキャラって何なのよ!」

 

……モモイの教育の成果(?)のせいかユウカがアリスに変なふうに認識されてしまったようだ。哀れ。

鋭いツッコミを入れたユウカであったが、ハッと気づいたように姿勢を正すと、改めてアリスのことを見た。

 

「それはさておき、あなたが噂のアリスちゃんね。ゲーム開発部に入った、5人目のメンバー」

「……」

 

ユウカは彼女に近づくと、まじまじと見つめる。

若干の緊張感を帯びた視線に、アリスが身を硬くする。

 

「……ふーん、なるほどね」

 

しばらくアリスのことを見ていたユウカもだったが、やがて身を離すとうんうんと頷くと、先生の方へ向き直った。

 

「……ところで先生、アリスちゃんは経歴上、まだどこに住むか決まってないんですよね?」

「"……?うん。一応住所はシャーレにしてあるけど。どうかしたの?"」

 

彼女の質問の意図がわからず先生は首を傾げる。

それに対して、彼女は挙動不審気味にアリスを数回見ると、もう一度咳払いして言った。

 

「残念なことに、今、うちの寮は空きがなくて……だから、もし、もしよかったらその、私の部屋に……」

「"……え??"」

「……ユウカ、お前」

 

……明らかに頬を赤らめてとんでもないことを言い出すユウカ。

普通に自分の部屋を貸し出す旨をいう分にはまだいい。しかし、その様子だと話は変わってくる。

アリス、モモイ、ミドリは得体のしれない恐怖からお互いの身体を抱き合い、ロッカーから出てこようとしていたユズは中に逆戻り。アリス達の前にイオと先生だからが立ち塞がる。

その対応にユウカは抗議の声をあげた。

 

「ちょっと何よ!!私を変態みたいに!」

「黙れロリコン。そういうのは少なくとも口から垂れたよだれをどうにかしてからにしやがれ」

「"ユウカ……人の性癖に兎や角言うつもりはないけどこれは流石に……"」

「ユウカ……まさか私達の部室によく来てたのは……」

「それはあなたたちが部としてまともな活動をほとんどしてこなかったからでしょ!?」

 

心外だ、と言わんばかりに声をあげるユウカだったが。周囲から向けられる視線は厳しい。残念ながら疑いが晴れることはもうなさそうである。

 

「う、うう……違うのよ、と言うかアリスちゃんみたいなかわいい子が一緒の部屋にいるってなったら誰だって……」

「"基準がおかしいよ、ユウカ??"」

「……兎も角、普通にモモイとミドリの部屋に居候でいいだろ。そもそもうちの部活、1日中部室にこもることも少なくないしな」

「アリスもそうします。ボスモンスターと一緒にいるのは怖いです……」

「……もういいわよボスモンスターで」

 

ユウカは投げやりにそう言うしかなかった。

 

________________________

 

さて、そんな茶番もといやり取りが終わり、先生が来たということで彼女らは改めてG.bibleを求めて廃墟に向かうこととなった。

……しかし、アリス以外にも前回違うことが1つ。

 

「しかしユズ、本当に大丈夫か?」

 

自分の隣にいる人物……ユズに、イオは心配した様子で声をかける。

ゲーム開発部部長であるユズは、極度の人見知りだ。

人混みや喧騒に近づくことすら苦手で、

授業もほとんどインターネットからの受講で、初対面の人と会うとキャシティパオーバーで意識が落ちてしまうことも時々あるほどだ。そんな彼女が、今こうして廃墟にいる。それには、モモイ達と同じ、自分達の居場所を守りたいという決意があったわけだが……それでもとても辛そうである。

 

「う、うん……ひ、人の多い場所は抜けたから……それに、先輩が気を使ってくれた、し……」

 

そう答えるユズの耳には、イオが愛用しているイヤホンがついていた。流れている曲はいつも彼女が聞いているフリージャズではなく落ち着いたバラード。それによって少なくともある程度人混みの恐怖は和らいでいるようだった。

……さて、そんな二人を第3者が見た様子だが、背の低い庇護欲のそそる少女に、背の高く大人びた少女が優しく微笑んでいる様子というものは中々絵になる……と言うかぶっちゃけ、

 

「……先生の時も思ったけど女誑しだよね、先輩」

「んだとコラ」

 

その様子を遠くから観ていたミドリから飛んできた女好き以上にあんまりな称号にイオが抗議の声をあげる。

しかしそれに対して思わぬところから追い打ちが入った。

 

「アリスわかりました!!イオはろくでなしなのですね!!」

「やめろやめろアリス、人をビ……ゲフンゲフンってか誰だっ!!

アリスにそんな単語教えやがった野郎はっ!?」

 

自分が一番ろくでもない言葉をアリスの前で言いそうになってイオは慌てて誤魔化した後、怒号を発する。

それに対し、アリスはキョトンとして言った。

 

「モモイが勧めてくれた恋愛ゲームで学びました」

「テメェかモモイィイイ!!」

「さ、流石にわからないじゃんっ!?

アリスがこんなことまで理解するなんて思わななななななななななな」

 

モモイの悲鳴に近い抗議の声は、急接近したイオの手によるバイブレーション攻撃でかき消された。

 

「"ちょ、ちょっとイオ。もうその辺でやめてあげて、

モモイの目がペロペロキャンディーみたいになってきてるからっ!?"」

「せ、せ先輩、わ、私は大丈夫、だから……そろそろ、その……」

「アリスわかりました!これはモモイを揺さぶり続けるとレアアイテムが出てくるんですね!!!」

「「「「"アリスっ!?"」」」」

 

……今日もゲーム開発部は平和である。

 

______________________________

 

 

程なくして少女達は廃墟へとたどり着いた。……が、ここで問題が一つ。

 

「"……みんな待って、確認したら敵の防衛網が厚くなってる"」

 

敵の集団を視認したため一旦瓦礫の奥に身を隠した一同。

その間にアロナに依頼し周辺の索敵をしていた先生から、そんな報告が入った。

その言葉に、イオは露骨に表情を歪めた。

 

「……ちっ、あいつらもただのガラクタじゃねえってことか。面倒かけさせやがって」

「で、でも、前回散々イオ先輩が大暴れしたし、

相手のロボットはかなり減ってるはず……だとしたら、

守ってるところがけっこうガバガバになってるんじゃないかな?

その間をすり抜けていけば……」

 

……モモイの言葉は最もだ。相手とて数は有限。

それに、イオの大規模な戦闘により相当数が戦闘不能になっていることはまず間違いない。

普通なら、警備は局所集中し、手薄になっている箇所が多いだろう。

……普通であったなら。

しかし、モモイの言葉に先生は首を振った。

 

「"それが、相手の数が元に戻るどころか増えてるの。

前みたいにステルスゲームみたく動くことも難しいぐらい……」

「えぇ、嘘っ!?」

「そんな……!」

 

先生の言葉にモモイとミドリが驚愕する。ユズも何も言わなかったものの、

明らかに顔色が悪くなった。

 

「となれば、流石に今の装備だと前みたいに俺一人で強行突破するのは厳しいな」

「どうする?先生もいるし、安全第一で一度作戦を立てるって言うのも……」

 

イオといえど、前回と同じ軽装備ではこの場所を突破することは難しいらしい。

その様子を見たミドリが安全かつ策を提案する。しかし、イオはそれに対し不敵な笑みを見せた。

 

「おいおいミドリ。いつ、俺がこの状況を打開できないといった?

一人では無理だが、お前らとセッションを組めば確実に突破できる」

「なるほど……このクエストはクランバトルということですね!!」

 

その声に最初に答えたのはアリス、いつの間にか自分の得物を構え、いつでも放てる体勢に入っている。

やる気十分といったところか。そんな彼女に、モモイとユズが続く。

 

「正直、次来たときに更に警戒が厚くなってるかも知れないし、

だったら少なくとも突破できる今、どうにかするしかないよ!」

「モモイの言う通り。それに、どう転んでも危険はある……私も頑張るから」

「……ふう。わかった。私も覚悟を決める」

 

姉と、部長に励まされるようにミドリもそう言うと、自分の愛銃を握り締めた。

その様子を見届けると、イオは先生の方へと向き直った。

 

「さて、俺があんたの指揮系統にまともに入るのはこれが初めてだったな?

噂の指揮能力、お手並み拝見と行こうか」

「"うん、任せて!"」

 

イオの言葉に先生は力強く頷くと、シッテムの箱を手に持った。

 

「"さあ、作戦開始だよ!"」

 

______________________________

 

カシャン、カシャンと金属のきしむ音が廃墟の中で連続する。

音源である無数のオートマタはただ、無表情に、無感情に巡回を続ける。

時折、仲間の機体と交信し、情報を交換。また巡回に戻る。

プログラムに従い最奥の建物を守る。それが彼らの使命だ。

巡回。交信。そして巡回。

視界内にまた、仲間の機体が見えたその時、

 

 

ドガァン!!

 

 

目の前の味方の機体が爆音と共に粉みじんに吹き飛んだ。

オートマタは急激に旋回、音源に向けてライフルを構える……が、遅い。

続けて響き渡った轟音と共にそのオートマタも仲間と同じ運命をたどった。

その残骸の横を人影が素早く駆け抜ける。

 

「はっ、これだけやれば嫌でもこっちに意識が向くだろ?」

 

イオだ。今回はジャズを辺り一帯に流すことはなく、自身のイヤホンで聞くにとどめている。

しかし、そこに張り付いた凶暴な笑みは変わらない。

そして、その言葉通り周囲一帯に展開していたオートマタが一斉に彼女の姿を捉えた。

数十の銃口が一斉に彼女のほうを向く。

しかし、イオは遮蔽物に姿を隠すことも、シールドを前面に構えることすら一切しなかった。

ただ次の標的に2連ライフルの銃口を向ける。

そして……

 

 

「"ユズ、3時の方向大体80m付近、今っ!"」

「了解です。照準は……定まりました!」

 

 

イオに照準を向けていたオートマタの一団がドットの爆破に巻き込まれて吹き飛んだ。

思わぬ方向からの奇襲に、敵のアルゴリズムが明らかに混乱する。

そこにイオが吶喊する。

その瞬間、混乱していたオートマタが、一斉にイオに銃口を向けた。

 

「ははっ!!前回あれだけ煮え湯を飲まされたんだ。そうなるのは無理もないよなぁッ!!!」

 

しかし、イオは一切怯まない。

続けて響き渡る2連ライフルの轟音。

圧倒的な火力により3機のオートマタが巻き込まれ、吹き飛ばされる。

それを確認するより早くイオはシールドを正面に構え突撃。

アサルトライフルを乱射するオートマタを瓦礫との間で押しつぶすと、

電磁バトンを脆い関節部から内部へ突き入れた。

紫電がほとばしったかと思うとオートマタががくがくと痙攣し、動作を停止する。

しかし、イオは後方に展開する先生たちと比べ明らかに突出していた。

当然、その背中にオートマタの銃口が一斉に向けられる。

……本当に、イオだけが前線に来ていたのなら、その銃は発砲されていたであろう。

 

「"モモイ、カバーお願いっ!"」

「OK!ふふ、脇ががら空きだよっ!!」

 

突然、瓦礫の背後から飛び出したモモイのアサルトライフルがその一団薙ぎ払った。

狙いこそ甘いものの、連射される弾丸の雨が敵の装甲を打ち砕き、残骸に変える。

 

「ナイスモモイ!助かったぜ」

「ふっふ~ん。私だってやれば意外とでき……「お姉ちゃん前っ!!」え?」

 

イオに褒められたのがうれしいのか自慢げに胸を逸らすモモイ。

しかし、戦場で慢心することは非常に危険である。

後方に展開していた数台オートマタのロケットランチャーが、

正面に展開しているイオとモモイを焼き払わんと一斉に放たれた。

その一発が、モモイに向けて直進する。

 

「わ、」

「うおおおおおおおっ!!!!」

 

声を出す暇すらほとんどなく、

ただ自分に迫る自走榴弾を見ることしかできないモモイ。

 

その正面に、雄たけびを上げながらイオが飛び込んだ。

 

 

ドガアアアアン!!!

 

 

シールドの向こうで、爆炎が立ち上がる。

イオはそれを辛うじて受けきった。

 

「"ミドリ!!"」

「ああもう、お姉ちゃんのバカっ!!」

 

先生は2人の無事を見届けるや否やミドリに間髪入れずに指示を飛ばす。

彼女は悪態をつきながらも、スコープを素早く覗き込むと照準を定める。

 

「連続射撃、行きます!!」

 

緑色のドットを纏った弾丸が、

敵のカメラ部とロケットランチャー本体を的確に破壊、無力化してゆく。

先程までの戦闘で、この付近に展開している敵の数はかなり少なくなってきた。

その時、先生が手に持ったシッテムの箱から反応を受け取った。

 

「"敵の増援……アリス、あそこの建物の根本、狙える?"」

「わかりました!!光よ……!」

 

瞬間、超音速の光芒が辺り一帯を駆け抜けた。遅れて響き渡る轟音。

アリスのレールガンが、ほとんど倒壊寸前の建物の根本を穿ったのだ。

当然、支えを失った建物は倒壊し始める……麓のオートマタ部隊を巻き込んで。

粉塵が晴れる頃には、敵が通過しようとしていた通路そのものがふさがっていた。

 

「"……よし、増援の排除を確認。みんな、この間に一気に進むよ!!"」

 

その様子を見届けた先生が出した指示は進撃、

後方に展開するアリス達に手伝ってもらいながら先生は遮蔽物に身を隠しながら移動を開始した。

 

「了解。おいモモイ、ぼさっとしてないでさっさと進むぞっ!」

「へあっ!?あっ、先輩大丈夫なの!?」

 

先生たちが移動を開始したのを確認したイオが、息を整えると

へたり込んだモモイにそう声をかける。

かなり大きな声だったためか、モモイは慌てて飛びあがるように起き上がった。

その様子を見て、イオは安堵と呆れの入り混じったため息をついた。

 

「見ての通り五体満足だ。お前の方こそ無事でよかった」

「あ、ありがとう……でも、次は油断しないんだから!」

「それだけ元気があるんなら十分だな。さっさと行くぞ」

「ちょ、先輩早い、早いって!!!」

 

返答もそこそこに次の敵に向けて駆け出したイオを、モモイは慌てて追いかけた。

 

______________________________

 

敵は大部隊、対するこちらは少数。当然数値上はこちらが不利。

となれば、自然と対多数戦闘を数多く経験してきたイオを主軸とした作戦が建てられるのも当然だろう。

イオが敵に吶喊、囮となり、その隙にモモイとミドリが展開して彼女を援護。

敵が密集している場合はグレネードを武装とするユズとアリスが一気に撃滅する。

前回イオが単機で相手を強襲し、多大な被害をもたらしたためか

通常以上にヘイトがイオに向けられていることで作戦は驚くほどスムーズに進んでいた。

 

数分後、前回よりは少し遅く。しかし確実に敵を撃退しつつ、彼女達は目的の場所にたどり着いた。

 

「ふう……とりあえず成功、かな?」

 

工場内部に入り込み、敵対存在がいないことを確認。

そこまで終わり、ようやくミドリはそう言って一息ついた。

 

「進入成功。ミッションをクリアしました」

「"そうだね。みんな、お疲れ様"」

「おう、先生もお疲れ。最高のセッションだったぜ」

 

先生のねぎらいの言葉に、イオはにやりと笑ってそう言った。

ユズはようやく戦闘が終わったことに安どしているのかゆっくりと息をついた。

モモイはというと、先ほどの興奮がいまだ抜けきっていない様子だ。

 

「ねえねえ、私たちってもしかして実はすごく強いんじゃない?

イオ先輩とこのC&Cとか、他の学校の戦闘集団と戦っても勝てちゃうかも!」

「それはさすがに言いすぎなんじゃ……」

「いや、そうとも言えないぜ」

 

自分の姉を勇めようとしたミドリだったが、

そんなモモイを肯定したのは他でもないC&Cに所属しているイオだった。

 

「正直、先生殿の指揮能力はずば抜けてる。情報源は知らんが敵の情報を逐一教えてくれるしな。

有能な指揮官がいるってだけで大抵の部隊は強くなる。

それに、お前らの連携もなかなかのものだしな」

「わあ!だって、ミドリ!!」

「わたしも、そう思う……先生がいると、安心感が全然違う……」

 

他でもないイオの言葉に満面の笑みを浮かべるモモイに、その言葉を肯定するユズ。

そんな彼女たちをにこにこと見た後、イオは言った。

 

「ま、今のままだと確実に俺達が勝つがな」

「えっなんでさ!あげて落とすなんてひどいよ!!」

 

……上げて落とす。まさに言葉通りな仕打ちにモモイが抗議の声を上げる。

それに対してイオは手をひらひらと振った。

 

「いや、今のままだとって俺は言ったんだ。

つまりだな……C&C式戦闘訓練、受けてみるか?」

 

……つまり、だ。指揮官は優秀で連携も目を見張るものがあるがそれはさておき戦闘能力が足りない、と。

笑顔のままどんな地獄が待ち受けてるか分かったものではない提案をするイオに、

彼女らは頬をひきつらせた。

 

「あ、あー。遠慮しとくよ……うん」

「そうしとけそうしとけ。俺らはゲーム開発部なんだからな」

 

そう言ってイオはけたけたと笑い声を漏らした。

そんな彼女たちのやり取りを見ていた先生だったが、ふと、何か思いついたように話しかけた。

 

「"そう言えばイオ、戦闘中も聴くぐらいジャズが好きなんだね"」

「おう、特にフリージャズ。あれに勝るものはないな……それがどうかしたか?」

 

先生の問いにイオはそう答えると、聞き返した。

そんな彼女に、先生は何げなく言った。

 

 

「"いや、私の知ってる生徒にね、イオみたいに戦闘中も音楽を聴く子がいるんだ。

前のイオみたいに大音量で流したりはしないけど……"」

 

 

……何気ない言葉だった。

先生に悪気は一切ないし、そんなこと(・・・・・)知っているはずがないのだ。

その問いに対して、イオが浮かべていた表情は……

 

「へえ。こんな趣味の奴、早々いるわけないと思っていたが意外だな」

 

純粋な興味だった。その表情に、負の感情が混ざっているようには到底見えない。

 

「……アブノーマルな趣味の自覚、あったんだ」

「あたりまえだろミドリ。まるで俺に常識がないみたいな言い方はあんまりだろ

……ってなんでお前ら全員そんな顔してるんだよ」

 

ミドリの言葉に心外だ、と肩をすくめようとしたイオだったが、

「イオ先輩が常識の話してる……!」とでも言うかのような

ユズ、ミドリ、モモイの驚愕の表情に決して少なくない精神ダメージを受けたようだ。

唯一イオと付き合って日の浅いアリスのみが、状況がわからずきょとんとしていた。

 

「……ああアリス。俺をわかってくれるのはお前だけだよ」

「……?イオが変なのは普段のことじゃないのですか?」

「ごはっ!!?」

 

……訂正。イオの味方はいなかったようだ。

精神に致命的な大ダメージを受けたイオだったがなんとか立ち上がると、

先生の方を向いてコホンと咳ばらいした。

 

「……まあ、それはさておきだな。

そいつはどんな曲が好みなんだ?もしかしたら気が合うかもしれん」

「"えっとね……割とメジャーなポップス。そのなかでもラブソングが好きって言ってた"」

「……うっげぇ」

 

先生の言葉にイオは露骨に表情を歪めた。

 

「"え、どうしたの急に!?"」

「あー……悪いけど、そいつとは趣味合わねえわ。顔を合わせるのも嫌だ」

「"え、そんなに……?"」

 

先生のイメージではイオは第一印象は怖いがかなり気さくでフレンドリーな少女だ。それがここまで嫌悪感を顕にするのはとても意外だった。

 

「あ、先生。イオ先輩、何故かラブソングが大嫌いなの。理由は教えてくれなかったけど……」

「"そ、そうなんだ……"」

 

モモイの解説に先生は一応頷いた。

……しかし、それだけでここまで嫌悪を顕にするだろうか?

何が引っかかったものの、先生はそれ以上何も尋ねなかった。

 




どもー、時空未知です。
というわけで今回の作品はいかがだったでしょうか?
……それは別に先に謝罪を。
このシリーズ書ききってないのに新しいシリーズ始めちゃいまして……メインこっちではあるんですけど必ず周一投稿、できるかわからんです……がんばりますので何卒……


さて、イオがまたまたニアミスです。でも今度は名前までは言わなかった先生とイオがそこまで過去に固執してないのでギリギリセーフです。嫌そうではありましたけど許容範囲です。
次回はG.bibleサクッと回収して……生徒会襲撃イベント到来です。
はてさてイオの選択は……?では、お楽しみに〜

どのダリルメインの短編を先に読みたい?(上位2作)

  • 便利屋68との絡み
  • 風紀委員会とイロハイブキ
  • ユメ先輩と黒服との絡み
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