楽園に雷光は走る   作:時空未知

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ダイジェストでサクサク行くといったな、あれは嘘だ。


便利屋68鎮圧戦(1)

 

 

「一個中隊を連れてアビドス高校自治区周辺の市街地への遠征?」

 

 

ある日、ゲヘナ学園の風紀委員会の部屋にて、

ソファに座ってお気に入りのラブソングを聴きながら山のように積まれた書類に

委員長印のハンコをポンポン押してゆく作業をしていたダリルは

少し驚いたような声を上げた。

 

「そうです。理由としてはそこで便利屋68の活動が確認されたため。

生憎、委員長は不在ですがこれを期に不安要素を潰しておこうかと」

 

ダリルの言葉に答えたのは首元ほどの空色の髪に空色の瞳。

そして豊満な胸の横を何故かむき出しにした意味不明な服を着た風紀委員会の行政官、天雨アコである。

そんな彼女にダリルはイヤホンを外しつつ疑問をぶつける。

 

「お言葉ですが行政官、便利屋68は正直、脅威としては余りに軽度では?

戦闘力もチナツとイオリ、一般委員のみでも少々厄介な程度で俺だったら単騎で鎮圧できます。

にも関わらず自分、チナツ、イオリ、更に迫撃砲まで運用など……」

 

そんなダリルの言葉には確かな理由がある。

便利屋68、ゲヘナの落第生で構成されたそこそこ有名な、

金さえ受け取れば何でもするなんでも屋だ。

これだけ聞いたらかなり凶悪な相手に聞こえるが、実はそうでもない。

何というか……やることなすことに粗が目立ち、やること自体も結構しょぼいものが多い。爆発も起こるが許容範囲内である。

あちらのリーダーはダリルを目の敵にしている節があるがダリルは正直気にも留めていない。

それに比べて神出鬼没かつ、ひとたび現れれば高確率で建物が一軒吹っ飛ぶ上に

美食のためなどとほざいて誘拐、強盗事件もしょっちゅう起こすし単純に戦闘能力も高い美食研究会、

ひとたび現れようものなら美食研などとは比べ物にならないほど甚大な破壊活動を行う、

更に単純な物量と士気が恐ろしく高い温泉開発部……

これらを普段少数で相手取っているダリルがそう言うのも無理はない。

そんな彼女に、アコは自慢げな表情をして答える。

 

「ええ、確かにその疑問はもっともです。

でも、こうは思わないでしょうか?私たちは犯罪を犯した生徒を一時的に撃退したり、

独房に入れたりするだけでした。

しかし、それで彼女たちが反省したことは一度もありません。

だから一度、見せしめを作るべきではないかと。

あまりおいたが過ぎるようなら完膚なきまでに叩きつぶされることを

知らしめたほうがいいのではないかと思いましてね?」

「なるほど……わかりました」

 

ダリルがそう言って準備のために立ち上がると、アコはうっすらと笑った。

 

「当然、ビッグ・ガンの運用も許可します。やるなら徹底的に、です」

「了解しました」

 

ダリルはそう答えたものの、どこか、不安がぬぐい切れずにいた。

 

 

 

______________________________

 

 

 

時と場所は大きく変わる。

現場は、砂漠化の進み、全校生徒数がたった5人になってしまった

廃校寸前の学校、アビドス高等学校の近くの市街地。

その一角で建物の瓦礫の中から黒々とした黒煙が上がっていた。

紫関ラーメン、そんな看板が瓦礫の隙間からちらりと見える。

その正面の瓦礫が散らばる路上では少女たちが3対激しい銃撃戦が行われており、硝煙のにおいが濃い。

 

 

「あいつら……絶対に叩きのめしてやるんだから!」

 

 

憎悪のこもった声を上げるのはアビドスの生徒である黒髪猫耳の少女、黒見セリカ。

アサルトライフルのリロードを素早く済ませると先程銃弾が飛んできた方向へ連射する。

その横に立つ同学校の先輩たちである灰色の髪に狼耳の少女、砂狼シロコ、

金髪の少女、十六夜ノノミも己の武器を構えて、厳しい目を正面に向けていた。

 

「……やっぱり一筋縄ではいかないね」

「ふ、ふん!どうということはないわ!勝つのは私たちよ!」

 

それに対するは冷徹な表情の白と黒髪の髪をきれいに分けた少女、鬼方カヨコ。

いたずらっぽい笑みを浮かべた小柄な白髪の少女、浅黄ムツキ。

何かに追い詰められたようにショットガンをぶっ放す黒髪の少女、伊草ハルカ。

自慢げな表情が目立つものの冷や汗たらたらな赤髪の少女、陸八魔アル。

彼女たち4人が件の便利屋68である。そんな彼女たちが戦闘になっているのは理由がある。アビドスの生徒達と便利屋達は敵対しているが交流があるというなんとも奇妙な状況にあったのだが、その交流に一役買い、憩いの場となっていたラーメン屋を依頼主の命令とアビドスとの交流の間で板挟みになって精神的に疲れていたアルが暴走、詳細は省くがこの店のせいで中々任務がうまくいかない、といった意味合いのことを言った結果部下のハルカが

連鎖反応で暴走、店を爆破した。

…それを知ったアビドスの生徒、特に店でバイトをしていたセリカが怒らないわけがなかった。

 

「"セ、セリカ、冷静にね……"」

 

そこから一歩離れた場所に先生はいた。

 

「うるさいっ!冷静でいられるわけないでしょ!」

「"気持ちはわかるけど、怒りに呑まれて正常な判断ができなくなったら負けちゃうよ"」

[先生の言う通りです。今は戦闘に集中を]

「…わかってるわよ」

 

吠えるようにまくしたてるセリカに押されながらも、それをやんわり諌める先生、更に通信で後方支援を行っている眼鏡をかけたエルフ耳の黒髪の少女、アヤネにもそう言われ、セリカは今にも突撃しようとしていた感情を何とか押し留めた。

 

「なに話してるの~?私も仲間に入れてよ…っと!」

 

そんな彼女達の中心にムツキがバッグごと爆弾を投げ入れる。

 

「"!!っノノミ!"」

「わかってますよ〜」

 

大きな放物線を描いたそれに向けて、ノノミがガトリングのトリガーを引いた。

秒間数発十単位で放たれる弾丸が一瞬でバッグを耕し、上空で火球に変える。

 

「うっ!」

 

しかし、爆発の射程圏内にいなかったとはいえ、余波は来る。

襲いかかる熱風と衝撃波でセリカは一瞬怯んだ。その時、

 

「"セリカっ!前!シロコ、今すぐカバーを!ノノミは掃射で他の相手を牽制してっ!"」

 

先生の鋭い声が耳を打った。セリカが慌てて顔を上げるとハルカが鬼気迫る勢いでショットガンの銃口をこちらに向け吶喊してきていた。

 

「死んでください死んでください死んでくださいっ!」

「がはっ!?」

 

ポンプショットガンの定義を問いたくなる勢いで放たれる弾丸が雨あられとセリカに降り注ぐ。

 

(やばっ…意識が…)

 

着弾の衝撃の中にセリカの意識が溶けてゆく。そして…

 

ガアァン!!

 

轟音と衝撃波が彼女の体を見舞ったかと思うと、目の前にいたハルカの身体が冗談抜きに吹き飛んだ。

 

「え…?」

「!!まずい…!社長、ムツキ、伏」

 

セリカたちが突然の事に呆然とする中、カヨコが仲間に警告を発するが、それが言い終わるよりも早く2発目。

アルの胴体がくの字に折れ曲がったかと思うと沈黙。

それを確認したムツキが慌てて瓦礫に身を隠したが、射線が通っていたのか、次の瞬間、そこから少し離れた場所に転がった。

 

「い、一体何が起こってるの!?」

「狙撃……?でも、私たちの学校にそんなことできる人は……」

「"アヤネ、何かわかる!?"」

 

一拍遅れて、アビドス陣営にも混乱が訪れる。

所属も、敵か味方かさえわからない何者かからの狙撃、幸いにも今は狙われていないようだが

いつその矛先がこちらへ向くか分かったものではない。

先生が通信端末に急いで呼びかける。その解析に、さほど時間はかからなかった。

 

[解析、完了しました!3㎞先に迫撃砲部隊……さらにその遥か後方のビルの屋上に

固定式のライフルを装備した狙撃兵一人!!現在所属の確認を急いでいます!]

「嘘、この距離を当ててくるの!?」

 

その言葉を聞いたセリカが悲鳴を上げる中、カヨコは自分の悪い予感が確定したのを悟った。

カヨコは舌打ちをすると遮蔽から身体を出しすぎないよう気を付けて

セリカたちに声をかけた。

 

「アビドス!あれは恐らく私たちを追ってきたうちの風紀委員!

まさか、執行官まで動員してくるなんて……」

「"え?風紀委員?執行官?"」

[執行官…!風紀委員の中でも武力面を担当するナンバー2です!

その戦闘能力は風紀委員長のヒナとほぼ同等とまで…]

 

聞きなれない単語に先生がオウム返しに聞き返すと、

通信相手のアヤネが焦った様子でその問いに答えた。その時、

 

 

 

 

 

「目標、捉えた」

 

 

彼女たちの戦場のはるか後方にあるビルの屋上、そこにダリルはいた。3脚に保持された口径50mmのその銃は全長が4m近くあり、3脚との接続部分で回頭、射角の調整ができるようになっていた。その付け根の右側面に簡易的な背もたれ椅子がついておりま、ダリルはそこに背を預けていた。

銃身の側面についたスコープの中には瓦礫の隙間からほんの少しだけ出た何者かの指先。

 

轟音。

 

衝撃波と共に放たれた徹甲弾がその何者かごと瓦礫を貫通、吹き飛ばした。粉塵が晴れるとそこには、黒と白の髪をポニーテールにした少女が力なく横たわっていた。

ダリルはそれを確認してホッと一息つくと通信機を手に取りボタンを押した。

 

「こちら往躯ダリル。目標、全員沈黙した」

[こちら火宮チナツ。こちらも確認しました。これにて任務…]

[ダリル、チナツ、ちょっと待って。他にも…アビドス対策委員会、だっけ?そいつ等が残ってる]

 

ダリルが任務終えたとこをチナツに報告すると、横から誰かが通信に割り込んできた。銀髪をツインテールにした少女、銀鏡イオリだ。まるでまだ敵は残っているとでも言うかのような物言いにダリルは眉をひそめる。

 

「俺たちの任務は便利屋68の鎮圧だ。不要な戦闘は避けるべきだ。下手なことをして委員長の仕事が増えたら申し訳が立たない」

[うっ、それはそうだけど…]

[…アビドス、臨戦態勢に入りました。徐々にこちらに接近してきます]

[あっ、ほら、相手もやる気だ。所詮相手は4人、一個中隊に勝てるわけ…]

 

なお食い下がるイオリにダリルはため息をついた。

この諌めるにはチナツ完全にこちらにつけたほうが早いだろう。となると…

 

「チナツ、こちらに戦闘の意思はないと伝えて交渉を。

相手にシャーレの先生がついてることも伝えておく」

[なっ!!イオリちゃん、直ぐに停戦を!

こちらが撃たなければ少なくとも相手も攻撃してこないはずです。私は拡声器を持っています!]

[え、ええ…?わ、わかったよ…]

 

ダリルの言葉を聞いた瞬間、慌てた様子でそう詰め寄るように言うチナツの勢いに完全に押され、イオリは渋々といった様子でそう言った。

 

(何とか開戦は避けられた、か…)

 

ダリルはほっと一息つくと、もう一度無線機を操作した。

まだ、彼女が通信をする相手はひとり残っている。

 

「行政官、こちら往躯ダリル。作戦完了しました」

[…ダリル、私は迫撃砲による火力投射を指示していましたけど…]

 

程なくしてダリルの眼の前にアコのホログラムが浮かび上がった。不服そうな表情の上官だが、ダリルは気圧されることなく言う。

 

「状況を鑑みて必要な範囲で火力支援、その後に歩兵の投入。戦術の基本通りに、とは指示されました。その為、状況を鑑みて無差別攻撃となりかねない迫撃砲による火力投射を避け、俺が狙撃で殲滅しました。問題はありませんね?」

[…えぇ、はい問題はありません。出来ることなら私に一言くれてもいいとは思いましたけどね]

 

アコがそう答えるのを確認すると、ダリルはもう一度スコープを覗いた。

視線の先では、丁度チナツと先生が顔を合わせた所だった。

緊張感は漂っているが、少なくとも今の所は大丈夫だろう。

さて…ダリルはアコに視線を戻した。

 

「それについては申し訳ありません。以後気を付けます。それより行政官、なんのつもりですか?」

[…なんのつもり、とは?]

 

ダリルの脈絡もない言葉に何故か緊張したようにそう言うアコ。

そんな彼女に、ダリルはフッと表情を落とした。

2人の間に不穏な空気が漂い始める

 

「報告にないうちの部隊が潜伏しているのを確認しました、それも3部隊以上も。

まさか、俺が気づかないと思いましたか?行政官?」

[…バレてましたか?]

 

それに対し、アコは悪びれる様子なくそう言った。ダリルの表情が厳しくなる。

 

「……何をするつもりか知りませんが、

これは明らかな越権行為、許されていいものではありません」

 

口調こそ丁寧だが、殺気に近い害意を発するダリルに対して、アコはただ、笑みを深めた。

 

[わかってないのはあなたの方です、往躯ダリル。

私が行っていることは全て委員長のため…

同じ人を慕う同士として、あなたならきっとわかってくれると信じています。

では、私はやることがありますので。]

「……そうですか」

 

ダリルが押し殺すようにそう答えるとアコの姿は僅かなホログラムの残光を残して掻き消えた。

ダリルはそれを見届けると、小さく舌打ちをし、

再びチナツへと無線をつなぐと、何かを呼びかけることなく耳に端末を押し当てた。

 

______________________________

 

 

「つまり、ここはアビドス自治区であり便利屋の処遇の決定権はそちらにあると……」

「"うん。私たちも事を荒立てる気はないからこっちに任せてくれると嬉しいな"」

[実際のところはどうであれ、私たちに加勢してもらえたとも受け取れますしね]

 

ビル屋上でのやり取りが丁度終わりを迎えようとしていたころ、

先生、アヤネ、チナツを主としたアビドス陣営と風紀委員陣営の対話は順調に進んでいた。

気づいていなかったとはいえどうも自治区に入っていたことは確かなようだし、

その上で相手も穏便に事を済ませてくれようとしている。

当初の予定通り迫撃砲による面制圧を実施していればこうはならなかっただろう。

イオリは少々不満そうだがそれを口に出してはいない。

あちらの提案を受け入れたいのは山々、しかし……

 

「提案を受けたくはあるのですが、

作戦指揮を執っているのが私達ではないので決定権がないんです」

「"え、そうなの?"」

 

先生が思いがけない言葉にきょとんとしてそう言った。

 

「ん、ダリルって人がリーダーじゃないの?」

「"いや、ダリルではないと思うよ"」

 

先生は始めてダリルと出会ったときのことを思い出す。

チナツに声をかけられるまで全く自身から動くことはなく、

戦闘時もどちらかと言うとこちらの指揮がしやすくなるような補助的な動きが多かった。

多分、やろうと思えばやれなくはないができる限りその任を負うことを避けているようだった。

となると一体だれが…その時、

 

 

[それは私から答えさせていただきます]

 

 

そんな声が聞こえたかと思うと、突然ホログラムが両者の間に現れた。アコだ。

突然のことに驚く彼女たちに、アコはにこりと笑った。

 

[こんにちは、アビドスの皆様。私はゲヘナ学園所属の行政官、アコと申します]

[行政官ということは、執行官と並ぶ風紀委員のナンバー2…そんな人たちがここに…]

[あら、実際は大したものではありません。どちらもあくまで内務と外務の面で

委員長を補佐する秘書のようなものでして…]

 

息をのんでそう言うアヤネに、アコはなんてことないかのようにそう返した。

 

[まあ、そのことはさておき本題に移りましょう。便利屋68の処遇…でしたね?]

[あ、はい。先程チナツさんと話していたんですが……]

[聞いています。便利屋の処遇の決定権はそちらにある、ということでしたね?]

 

アヤネの言葉にかぶせるようにそう言うアコ。

表情は笑ったまま、しかし、何か不吉な予感がアビドスの生徒たちの間を駆け抜けた。

そして、その予感は的中することとなる。

 

[私たちはこちら側で違反を犯した生徒たちを捕まえるためにこちらに来ました。

違反行為は侵していませんし、大人しくこちらに引き渡していただけると幸いです]

 

アコは威圧交じりの口調でそう言った。一気に場の空気が緊張感を帯びたものとなる。

 

「ぎょ、行政官、それは……」

[チナツ、今は私が彼女たちと交渉しています]

 

悪化する場を取り直そうとチナツがアコに呼びかけるが、

その一言でびくりと肩を震わせると言葉を止めた。

 

「……ただの秘書、本当にそうならそこの風紀委員たちがそんなに緊張するとは思えない」

[あら、素晴らしい洞察力です。確か……砂狼シロコさん、でしたか?]

 

すっかり縮こまってしまったチナツを見て、シロコが牽制するようにそう言う。

それにアコも表面上は笑って応じる。

しばらく無言でにらみ合った後、アコは咳払いをして視線を戻した。

 

[……まあ、いいでしょう。ともかく、便利屋の処遇はこちらで受け持ちます。

風紀委員会の活動に、ご協力いただけますか?]

[お断りします。形はどうであれこれは自治権の観点で明確な違反です!

便利屋の処遇は私たちが決めます!]

 

アコの提案を、アヤネは正面切って否定した。

他のアビドスの生徒たちもそれに賛成している様子だった。アコはスッと目を細めた。

 

[なるほど…これだけの兵力差があっても怯まない…

それも一重に信頼できる大人がいるから、でしょうか?]

 

アコは小さくしてつぶやくと、先生の方を見た。

 

[先生は、この状況をどう考えておられるのですか?]

「"私も同意見だよ。それに、アルちゃんが柴大将のお店を爆破するとこがどうしても考えられないから、どうしてそうなったのか聞いてみたいし…連れて行かれるのは困るかな?"」

「確かに、私達を狙ったのだとしても私達が近くにすらいないタイミングであんな事をしたのは不可解ですね…」

[なるほど…そちらの意見はよくわかりました]

 

アコはそう答えると、わざとらしく頬に手を当てて考えるようなしぐさをした。

 

[これは困りましたね……うーん……こうなったら仕方ありません。

本当は穏便に済ませたかったのですが……]

 

わざとらしい、焦らすようなアコの言葉。続く言葉を察して先生たちは身構える。

そんな彼女らに対し、アコはただにこりと笑いかけた

 

[ヤるしかなさそうですね?]

「"……皆、戦闘準備!"」

 

アコの言葉を聞いた風紀委員がその速度に差はあれど一様に銃を構える。

セリカたちがその射線から先生を守るように展開した次の瞬間、

 

「うわっ!?」

「爆発!?」

 

こちらを包囲していた風紀委員の一翼が爆発で吹っ飛んだ。それと同時に進み出てくる4人の人影。

 

[……あら?]

「"アル……?便利屋達、一体どうして?"」

「あ、ええと、これは……」

 

それは、先ほどまで彼女たちが戦っていたはずの便利屋68の少女たちだった。

ハルカは薄暗い表情でぐるぐると目を回し、

アルは先生らのほうを向いて何か言おうとしていたが、

他の2人は正面……特にカヨコは真っ直ぐアコを睨みつけていた。

 

 

「嘘をつかないで、天雨アコ」

 

 

「"え、嘘?"」

 

突然の「嘘」という言葉に先生が呆けた声を上げる中、

アコはピクリと眉を動かすと、こちらではないどこかをちらりと見るようなしぐさをした。

 

[ダリル、何で便利屋68が覚醒したこと報告しなかったんですか?

……はあ!?気がつかなかった!?あなたほどの実力がありながら??]

 

どうやら、後方で控えているダリルと連絡を取っていたようだ。

……その結果が彼女の望むものではなかったことは

そのリアクションと声から明らかだった。

アコはそう言ってしまってからそのことに気が付いたのか、

咳ばらいを一つするとカヨコのほうを向いた。

 

[失礼取り乱しました。しかし、カヨコさん、嘘とは?]

「とぼけないで。最初からあんたが狙ってたのはこの状況だった」

 

カヨコがそう追及する。アコはなおも笑ったまま。しかし、その表情は凍り付いているようにも見えた。

 

[……面白い話をしますね、カヨコさん?]

「……最初はどうして風紀委員会がここに現れたのか、理解できなかった。

風紀委員会が他の自治区まで追ってくる理由、それも私たちを狙って?」

 

アコの言葉を無視して、カヨコはそう語り始める。 誰もそれに口をはさむことなく、その言葉を聞く。

 

「こんな非効率的な運用、風紀委員長のいつものやり方じゃない。

だからアコ、これはあんたの独断的な行動に違いない」

[…………]

 

アコは何も言わない。そのことが、それが図星であると何より物語っていた。

 

「それに、私たちを相手するにしてはあまりにも多すぎるこの兵力。

しかも、執行官まで動員するなんて…他の集団との戦闘を想定していたとすれば、説明がつく。

とはいえ、このアビドスは全校生徒集めても五人しかいない……なら結論は一つ」

 

そこでいったん言葉を区切ると、カヨコは結論を言い放った。

 

 

「アコ、あんたの目的はシャーレ。最初から、先生を狙ってここまで来たんだ」

 

 

 

 

 

 

 




どもー、時空未知です。
さて、最初は宣言通りサクサク終わらせていくつもりだったんですがね?
書いてるとどんどん話が続いちゃってぇ…もう、全然止まれなくてぇ…
今回だけで10000字超えそうだったんで大分長くなると思います。
サクサクとアビドスを終わらせようにもダリルの登場回、
更に「先輩」のお披露目となると長くなっちゃうんだなこれが。
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