「"うへ~……暑いよ~溶けちゃうよ~……"」
ある日のアビドス砂漠にて、間抜けな声があたりに響き渡った。
声の主は先生。砂漠用の装備は万全に整えてきているものの、
真昼間の砂漠を長時間歩き続けるのは普通の人間には相当堪えるらしく、
へとへとになりながら先を行くアビドスの生徒たちに何とか追従していた。
「うわ、先生がホシノ先輩みたいになっちゃった……」
[……なんか、こうしてみると私たちと先生の力の差を実感するといいますか……]
「ん、か弱い」
「"ひええぇぇ"」
そういえば、今通信している後方支援が主なアヤネさえも、
ついこないだあったちょっとしたアクシデントの時、
車を追いかけて数キロにわたる道のりを疾走していたな……
キヴォトスの人間と普通の人間との差を改めて先生は実感した。
「……もうダメ、シロコ、後で何でもしてあげるからおぶってぇ」
「ん、じゃあ後で……頭なでなでしてもらう」
「"そんなこと今からでもたくさんやってあげるよ~"」
そう言ってシロコの背中にもしだれかかりながら頭をわしゃわしゃと撫でる先生……
はたから見れば完全にダメ人間である。
「うへ、先生、ほどほどにしときなよ~」
それを見てホシノを筆頭に他の生徒たちは苦笑いした。
さて、彼女らがなぜここに来たかと言うと理由がある。
ゲヘナ風紀委員会の自治区侵入……それには明確な理由があった。
アビドスの土地のほとんどが、数年前にカイザーに前生徒会によって売り払われていたのだ。ホシノもそのことは記憶にあるらしく、生徒会長がいなくなって数日後に、「土地代及び諸収入」として5億近くのお金が銀行口座に振り込まれていたらしい。
更に、去り際にヒナが先生にひそかに伝えた「カイザーがアビドス砂漠で何か企んでいる」
という情報……
アビドス砂漠で一体何が行われているのか、それを確かめるために彼女達はここまで来ていた。
「とはいえ今の所、何も見えないですね……」
「ドローンやオートマタぐらいだね~、なんでかこういうのが集まるんだよね~」
ホシノがそう言って軽く肩をすくめた。
その言葉通り、時折徘徊している戦闘用ドローンやらなんやらがちょっかいをかけてくるだけで
特にこれといったものは見えない。
おまけに先生が長時間歩き続けてこのざまなので、
一旦帰ろうかと彼女たちが考え始めたその時だった。
[……っ!?皆さん、前方に何かあります!]
「"えっ!?どこ!"」
突然のアヤネからの報告に先生は急いでシロコに身を預けるのをやめて跳ね起きる。
しかし、その変わりようも気に留まらないのかアヤネは少し緊張した様子で報告を続ける
[砂ぼこりでまだよくは見えないのですが……!
巨大な町……いえ、工場、或いは駐屯地?とにかくものすごい大きな施設のようなものが……?]
「"……わかった。よし、みんな"」
先生が打って変わって真面目な表情で生徒たちを見回す。彼女達は、その言葉にこくりと頷いた。
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先程は砂ぼこりでよく見えなかったが、
近づくにつれ報告にあったその威容は徐々に明らかになっていった。
「何これ……」
「この張り巡らされてる有刺鉄線、優に数キロメートル先までありそう……」
「工場……?石油ボーリング施設、ではなさそうな……一体何なのでしょう?この建物は……」
「"……どうも、駐屯地が正解みたいかな?"」
シロコ達の言葉と目の前に広がる光景からそう推測する先生。
それに付随して、ホシノが厳しい表情で「こんなの昔はなかった……」とつぶやく。
その言葉にさらに警戒を強める一同。
……そういえば、いつの間にか施設の中に入り込んでしまっているような?
先生がふとそう思ったその時、
ズガガガガ!!
突然、大量の銃弾が彼女たちの足元を薙ぎ払った。
「うわっ!?なになに!!」
「"!!みんな、急いであそこの遮蔽に隠れて!"」
敵からの奇襲、そう判断した先生は急いで生徒たちに指示を飛ばす。
彼女らもほぼ反射的に先生の指示した方向にある詰まれた土嚢の後ろに転がり込んだその時、
「侵入者だ!」
「捕らえろ、逃がすな!!」
[前方から正体不明な戦力が攻撃を仕掛けてきます!]
砂上用迷彩を施されたオートマタや少女が無数にこちらに接近してくる。
それとほぼ同時にアヤネからの通信も入った。
シロコ、セリカはアサルトライフルのセーフティーを外し、
ホシノはショットガンを抜き放ち盾を展開。ノノミのミニガンも唸りを上げて回転し始める。
「よくわからないけど、歓迎のあいさつなら返してあげたほうがよさそうだね?」
「"そうだね……よし、シロコはドローンで正面のシールド持ちを攻撃、
怯ませたらノノミが掃射、その後ホシノを先頭に敵に向けて吶喊!!"」
「「「「了解!!」」」」
先生の指示が終わると同時、彼女達は流れるように行動を開始した。
まず、先んじて飛び出したセリカとホシノが注意を引いている間に
シロコのドローンによるミサイル爆撃、その爆炎に敵が怯んでいる間に
間髪置かずノノミのガトリング掃射……しかし、
「うぐっ!?」
ノノミの身体にスナイパーライフルの弾丸が命中し、その追撃は中止される。
「"ホシノ!カバーを!セリカは敵スナイパーを攻撃!!」
しかし、先生はさらに指示を飛ばし、これをカバー。
セリカのアサルトライフルが的確に相手のスナイパーの頭を射抜き、
ホシノが盾を構えて吶喊し相手の前線をかき乱す。
しかし、敵もただやられているわけではなく、
続々来る増援を的確に展開しながら彼女らを迎え撃つ。
「……くそっこいつらめんどくさい!!」
「"うん、相手練度が単純に高い……軍隊?だったらどこの?"」
セリカが敵に撃ち返しながらそう毒づくのに相槌を打ちながら
先生は思案する……十中八九カイザーの類だろうがまだ確定したわけではない……
その時、
「やぁやぁ、アビドス対策委員会の皆」
突然、質の低いボイスチェンジャーのかかったガビガビとした声が響いた。
ホシノたちの動きも、謎の武装部隊の動きも、一旦静止する。
ザク、ザク、ザク、
何者かが砂を踏みしめながら近づいてくる。
そして、その足元の主は先に展開していたオートマタ達を掻き分けるようにして姿を表した。
「…っ!」
「なに、あいつ…」
彼女たちは息を飲んだ。
そこにいたのはキヴォトスの中で全く見ないタイプのオートマタだった。
2.5mは優に超える巨躯、空色のアクセントの入った白い装甲。
所々から露出した灰色の動力パイプ、頭部は額から一本の角が装着されており、
赤色の単眼のカメラアイが光り輝いた。そして何より…
「ユメ先輩と同じ……いや、違う」
ホシノが誰にも聞こえないほど小さく、呟く。
その視線の先では、オートマタの頭上に砕けたアビドスの校章を思わせる
漆黒のヘイローが暗く、輝いていた。
そのオートマタに、近くのミリタリー服を着た少女が慌てて話しかける。
「と、特務士官、あなた様のお手を煩わせる程では…」
「んん?いいのいいの。私がしたいからするだけだから。
じゃあハイ、そーいーん、私の後ろで待機!」
ノイズの乗った音と噛み合わない明け透けに明るい声で特務士官と呼ばれたオートマタは右手を掲げ、
くいっと引き上げを示す動作をした。
指示を飛ばされた隊員が、困惑しながらもそれにしたがい背後で整列する。
その様子を満足気に見ると、特務士官は未だ武器を構え、警戒しているホシノ達の方を見た。
「それじゃあ、ほし……、小鳥遊ホシノちゃん、だったっけ?」
「何の用?」
普段ののほほんとした様子からは考えられないほど硬い口調でホシノが応じた。
盾を未だ油断なく構えている。
しかし、特務士官はあい変わらずどこか緊張感のない態度でそれに応じた。
「あはは~、そんなに緊張しない緊張しない。
ただ私はあなた達の…先生だっけ?その人と会話したいだけなんだよ?」
「"……私ならここにいるよ"」
「先生っ!?ちょっと…!」
先生は、特務士官の言葉に答えるべきか一瞬躊躇したが、
このままいても状況は好転しないと考えその言葉に応じ、姿を見せた。
すぐ近くにいたセリカが動転した声を発する中、特務士官はうれしそうに手を合わせた。
「なるほど……あなたがこの子達の先生か……噂には聞いてるよ。私も会えてうれしいな♪」
「"は、はぁ…"」
……やはりどうも雰囲気が噛み合わない。もしこのオートマタに表情を映す機能があったなら、
にこやかに笑っていると断言できる。
困惑する先生に、さて、とロボットは切り出した。
「先生、ここが何処かわかってるかな?」
「"……隠蔽された謎の施設。シャーレとしてアビドスの砂漠の探索中に偶々見つけたから調査に来た"」
カイザーがなにか企んでるという情報を手に入れて来た、とは間違っても言わない。
その上で超法規的な力を持つシャーレの捜査、ということにして念の為の防御をする。
特務士官はその言葉にうんうんと頷いた。
「なるほどね……確かに雇われの私から見てもよくわからない施設を作ってたのは事実だし。
それが怪しまれてもしょうがないね」
「"雇われ……?やっぱり!"」
先生がハッとした表情になると同時、特務士官は告げた。
「そう、ここはカイザー…具体的に言うとカイザーPMCの基地だよ。
しっかりここはカイザーの土地だし、違法なことはなにもないよ」
「か、カイザーっ!?」
[しかも、PMCなんて…!!]
「"……"」
PMC…民間軍事会社の略称、ある種の軍隊のようなものだ。
そんなものがここにあるのだ。先生の表情が厳しくなる。
「"PMC……なんでそんなものが"」
「さあね、雇い主さんが言うには、宝探しの邪魔をする化け物をシッシッて追い払うためらしいけど……」
「ふざけないで!!何が宝探しよ!あんた達のせいでアビドスは…!!」
身振り手振りをつけて呑気な事を言う特務士官に、遂にセリカが爆発した。
相手がカイザーとわかり、他の生徒たちも同じようだ。特務士官に敵意が集中する。
「これだけの戦力は私達の学校を潰すため……違う?」
鋭い視線を向けながらシロコがそう言う。しかし、特務士官はひらひらと手を振った。
「そんなわけないよ~。ここ以外にもいる沢山の兵隊さんに兵器。
アビドスの皆相手にこんなのを全部使ったらイジメになっちゃうよ。
それに…砂狼シロコちゃんと黒見セリカちゃんだったね?
そんな怖い顔したら折角のかわいい顔が台無しだよ?」
「あんた……!!」
[セリカちゃん、待ってください!]
「"セリカ、堪らえて。相手の挑発に乗っちゃダメ"」
反射的にアサルトライフルの銃口を特務士官に向けたセリカを、
通信しているアヤネと先生が何とか押し止める。
その様子を見て、特務士官は何故かメソメソと泣き真似のような仕草をした。
「挑発したつもりはなかったんだけどな……悲しいな悲しいな」
「は、はぁ!??」
敵対者から出てくるとは思えない言葉にセリカは困惑の声を上げる。
違和感の正体……まるで、自分と彼女達が友達であるかのような振る舞い……
(……読めない)
一体、特務士官が何を考えてこんな事をしているのか、先生は理解出来なかった。
一方、ホシノは脳裏をフラッシュバックする幻影に顔を苦しそうに歪めていた。
全く違う外見、全く違う体躯、全く違う声色。
だというのに、どうしてもその雰囲気に、その姿に、かつての死んだ先輩の姿が重なる。
戦意がいつの間にか崩れていっている彼女らに、特務士官はパッと泣く動作をやめて再び話しかけた。
「ま、話が脱線しちゃったから戻すけど、兎も角今、皆はここに不法侵入しちゃってる状況でね、
今なら見逃してあげるから早く出ていってほしいんだ。
騒ぎを聞きつけて雇い主さんがこっちに来てるみたいだし……」
「雇い主」が誰を示すかはわからないが、来ると面倒なのは確かなのだろう。
ここで少なくともカイザーがしていることは薄っすらとだがわかった。
目標は達成できたといえる。だとすれば長居するわけには…
「……そんなことを言われて、はいそうですかって逃げるとでも思ってるの?」
先生の思考を憎悪のこもった声が断ち切った。
声の主はセリカ、アサルトライフルの銃口を向け、鋭い視線で特務士官を睨みつけていた。
[ちょ、ちょっとセリカちゃん、気持ちはわかるけどここは……
「ごめんね〜、アヤネちゃん」え?]
アヤネが慌ててそれを諌めようとするが、それを別の言葉が断ち切った。
「…おじさんもさ、あの特務士官って人に色々聞いてみたい事があるんだ」
そう言ってショットガンをリロードするのは、いつもならのんびりしていながら何だかんだ冷静にみんなをまとめているホシノだった。しかし、今のホシノは明らかに冷静さを欠いていた。
憎悪とも、悲哀ともとれぬ複雑な表情で特務士官の方を見ていた。そして、そんな先輩に押されるようにしてシロコやノノミも戦闘態勢に入る。
「"み、みんな、一旦…"」
「ありゃりゃ、こうなっちゃうか……」
先生が生徒たちを落ち着かせようとする中、
特務士官は被せるようにそう言うとわざとらしく肩を竦めた。
そんな相手の背後にいた迷彩服の少女が、恐る恐る話しかける。
「特務士官、どう、されますか?」
恐らく、戦闘態勢に入ったアビドスを見て、自分達も戦闘に参加したほうがいいか、ということを聞いているのだろう。
しかし、特務士官はカメラアイをグルリと動かしてそれを制した。
「このまま待機してて。私の実力は知ってるでしょ?」
「は、はっ!了解しました!」
「うんうん、それでよし」
そう言ってカメラアイを正面に戻すと、特務士官は腰辺りに装備されていた2つの武器を手に取った。
「……斧?」
シロコが訝しげな声を上げる。そう、特務士官が手に取ったのは斧だった。しかも特別柄が長いわけではなく、寧ろ刃が大振りなだけで全体の長さは手斧とどっこいどっこいだ。
対する彼女達は銃火器で武装しており練度も高い。
にも関わらず、相手は一人で十分などと言った。
「……ねぇ、特務士官さん、ひょっとして冗談のつもりなのかな?」
「いやいや、そんなことはないよ、ホシノちゃん。至って真面目だよ。
……まあ、手加減するつもりではあるけどね」
先程より更に砕けた様子でそう言って、くるくると斧を弄ぶ特務士官。その姿に照準……セリカだ。
「そう……なら、完膚なきまでにボコボコにしてあげるわ!!」
マズルフラッシュ、放たれた弾丸が寸分の狂いもなく特務士官に殺到する。そして……
特務士官はそれを前傾姿勢になることで躱した。
「なっ!?」
セリカが驚愕の声を発するや否や特務士官がお手本のようなクラウチングスタートで駆け出す……いや、全身のスラスターを煌めかせてホシノに急接近。
「っ!!」
ホシノは反射的に盾を全面に押しだす。
瞬間、大質量がぶつかる凄まじい衝撃が走った。
ホシノは何とかその衝撃を耐えきると至近距離でショットガンを放とうと銃口を向ける……が、そこにいるはずの特務士官の姿はかき消えていた。ホシノの瞳が驚愕で見開かれる中、
ようやく意識が追いついたらしい先生からの声が耳朶を打つ。
「"みんな、上!!迎撃をっ!!"」
反射的に上を見れば、空高く、跳ねるように飛び上がる特務士官。下にいるシロコを飛び込さんとする勢いだ。
「私を……踏み台にした?」
「でも、空中にいるなら…!!」
驚愕で一瞬動きが止まるホシノに対し、シロコ、ノノミ、セリカは上空で動きが取れないであろう特務士官に向けて一斉に射撃を開始する。そう、普通なら、上空にいる時、人は無防備だ……
普通なら、だが。
「痕になったらごめんねっ!」
「え?」
急に特務士官が声を発した。
瞬間、スラスターがガチャリと噴射方向を変え、再び点火。
装甲に弾丸による傷を刻みながら、特務士官の身体がシロコに向けて急落する。
シロコが退避するために身を動かそうとしたときには、特務士官は目と鼻の先まで接近していた。
ごしゃっ
その白い装甲が着地すると同時に砂が飛び散る。
その砂煙の奥でシロコの華奢な両肩に斧が落下の衝撃を乗せて勢いよく叩きつけられていた。
「うがっ…!?」
シロコのヘイローが明滅し、その身体が崩れ落ちる。
気絶はしていないだろうが、あの様子ではしばらく動けないだろう。
「シロコちゃん!!」
[嘘……あんな速度で動くオートマタなんて聞いたことがありません!!]
通信先のアヤネから悲鳴の様な声が聞こえる。
ノノミが声をあげるが、どの人も位置的にシロコを巻き込んでしまいかねないため、射撃の腕が鈍る。
その一瞬の隙をついて再び特務士官は駆け出した。
次に狙うはノノミ、射線を避け、弧を描くように凄まじい速度で接近する。ガトリングを掃射できるほどの力自慢のノノミだが、その旋回速度には当然限界がある。
「はやっ…!きゃあっ!!?」
瞬く間に側面に回り込まれたノノミ。
彼女に対し突撃した勢いのままに大きく弧を描いて右足で蹴り。
ガトリングが跳ね上げられ怯んだ隙に右足で着地し、その勢いで左足で延髄切りを叩き込んだ。
ノノミが崩れ落ちたことを確認するよりも早く、
最後にセリカと先生へと狙いを定め、加速する。
しかし、その間に一人の影が滑り込んだ。
「いい加減止まれっ!!!」
ホシノだ。急に現れた彼女に、特務士官はスラスターを切り返し右足を軸足にその背後に急激に回り込む、しかしホシノはそれに追従してみせた。
発砲、
「ひあっ!?」
特務士官の胸部の装甲の表面が砕け、バランスを崩したその身体が大きく仰け反る……が、その反動すら利用して特務士官はバク宙を繰り出すと、ホシノから一気に距離を取り、それと同時に先生の背後に着地した。
「つっかまーえた!!」
「"あっ!?"」
先生が反応するよりも早くその身体を引き寄せると、喉元に斧を突きつけた。
追撃をかけようとしたホシノの動きが止まる。
「いや~、ホシノちゃんが予想以上に強かったけどこれでおしま「その手を離しなさい!!」おっと」
セリカが零距離射撃をしようとしたのを察して特務士官は先生を拘束したまま大きく距離を取った。
「お前……!」
「ひぃん、ホシノちゃんの顔が怖いよ~。
そんな顔しなくても一緒に外に出てくれれば開放してあげるから……ね、それでいいでしょ、先生?」
そう言って特務士官が赤い1つ目を動かして先生を覗き込んだ。
しかし、先生は何処か上の空でその言葉を聞いていた。
(さっき、特務士官の……中から声が聞こえた。それも、女の子の……)
「?おーい、もしもーし」
「"っ!?あ、ああ、みんな。ここは大人しく指示に従おう?これ以上続けてもね……"」
特務士官に軽くゆすられたことでようやく先生の意識が戻った。
ホシノはなおも特務士官を睨みつけていたが、やがてふっと諦めたように武器を下ろした。
「わかったよ先生。セリカちゃん、おじさんがノノミちゃんを担ぐからセリカちゃんはシロコちゃんを……」
ホシノがそう答えた。それに特務士官が嬉しそうに頷いた。
「よし、じゃあ私について……
[みな…………ら何か……接近してき……ジャミ……信が不安定……注]」
その言葉を、先生の端末に入ったアヤネからの通信が遮った。
途切れ途切れではあるがその緊迫した様子だけは伝わってくる。
「"え、アヤネ??"」
「……あーあ、だから早く出て行ったほうがいいって言ったのに」
その通信を聞き、特務士官がポツリと、先ほどまでと打って変わって低い声でそう呟いた。
瞬間、
「"へ?"」
パッと突然、特務士官が先生の拘束を解いた。
かなり身長差があった故、とすんと軽く地面に落ちる形になったが。
訳も分からず目を瞬かせる先生にもう興味を失ったかのように
特務士官は部隊が待機しているところまで歩いてゆく。
「せ、先生!!」
そんな彼女のもとに慌ててセリカが駆け寄った。
少し遅れて気絶したノノミを抱えたホシノ、肩を押さえたシロコが合流する。
「怪我は……ないみたいだね」
「"う、うん。何とか……"」
「そ、そうだ!!シロコ先輩とノノミ先輩は……」
「ノノミちゃんは気絶してるだけ、すぐに目を覚ますと思う。シロコちゃんは?」
「ん……多分、骨にひびが入ってる」
「ちょ、ちょっとそれ本当!?」
お互いの安否確認などで彼女たちの間にてんやわんやの喧騒が生まれる中、
ノノミをゆっくりと先生に預けたホシノは、立ち上がると特務士官の方を見た。
「どういうつもり?」
「どういうつもりも何も……時間切れってこと」
特務士官がそう言った瞬間、どこからともなく指揮官の乗るものと思われる
オフロードの車がそのすぐ近くに留まった。
近くにいた一般兵のオートマタがその扉を恭しく開く。
その奥から出てきたのは、赤いアクセントの入った黒いスーツを着た恰幅のよいオートマタだった。
「侵入者と聞いていたが……アビドスだったとは」
相手は先生らを見てそう呟くと、ちらりと特務士官の方を見、また視線を彼女たちに戻した。
「な、何よあいつ……」
「……ん、んん?」
セリカがぽつりとそう呟く。そのタイミングでどうやらノノミを目を覚ましたようで、
少しあたりを見回してからただならぬ雰囲気に身を固める。
一方で、ホシノは相手に見覚えがあるようだった。
「勝手に人の私有地に入り、暴れたことによる被害額……
は、ほとんどなさそうだな。流石だな、特務士官」
「いえ、することをしたまでです」
「ぬおっ!?」
スーツのオートマタは、答えた特務士官の声にぎょっとしたのか軽く身を震わせた。
そのあと再びアビドス……特にホシノの方をまじまじと見てから
何か合点が行ったのかため息を一つついて首を振った。
「もう少しマシな変換器はなかったのか?体のパーツがイカれたかと思ったぞ」
「生憎、急な来客だったもので」
「……あなたは誰ですか?」
ノノミが、スーツのオートマタをにらみつけてそう言った。
その言葉に、相手はこれは驚いた、とでも言いたげに軽く肩をすくめた。
「まさか私のことを知らないとは。アビドス、君たちならよく知っている相手だと思うがね?」
そう言って息をつくと、相手は彼女たちを傲慢に見下ろした。
「私は、カイザーコーポレーションの理事を務めているものだ。
そして君たち、アビドスが借金をしている相手でもある」
どもー、時空未知です。
ということで今回の作品、いかがだったでしょうか?
ようやく……ようやくサイコザク出せた……いやはや、中身誰なんでしょうね()
因みに見た目はサイコザクMK-2に
アビドスの面々の銃のような装飾を施したを想定しています。
サイコザクはいいぞー……