レミール転生   作:久保田紅葉

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巨龍退治

 アルーニ防衛戦から1ヶ月の後、リーム帝国軍によって占領されていた町や村を解放して元の国境線へと押し戻したパーパルディア陸軍。海軍によるデュロ沖大海戦からリーム帝国陸軍の攻勢は弱まり、いや攻勢自体そのものが消極的となっていた。

 リーム帝国軍による大攻勢の前兆ではないのかと司令官や上層部は機関銃陣地の設置や有刺鉄線を張り巡らせ防衛線を強化し警戒していたがその一方で最前線の将兵たちには戦意の低下が見られた。

 

 

 

 遠路はるばる最前線を訪れた命知らずの行商人から甘味や煙草などの嗜好品、読書用の本を買い漁り、それを賭けて賭け事に乗じたり日光浴を楽しんだり等して思い思いのことを過ごしながら束の間の平穏を楽しむが立哨や哨戒なのは持ち回りで行われていた。

 

 

 

 そんな休戦状態が3ヶ月以上も続いたある日、日も落ちようとしていた頃のこと、国境線付近へと哨戒に出ていた1個小隊からの魔導通信によって事態は激変する。

 

 

 

『こちら第3偵察隊!敵竜騎兵大多数が本陣へと向かう!くり返す!敵竜騎兵多数飛来!』

 

 

 

 この緊急通信に一時上は司令官から下は末端兵士までてんやわんやとなるが立て直し竜騎兵の襲来に備える。やがて上空を覆うように敵のワイバーンが襲ってくる。

 

 

 

「敵飛行騎竜接近!」

 

「!打ち方始め!」

 

 

 機関銃陣地から空へ向けられ閃光の光、砲兵陣地から火花が空いっぱいに広がる。勿論歩兵にもたせているライフル銃も炎を吹かせて迎え撃つ。ざっと300はいたであろうワイバーンはあっという間に対空砲火の餌食となっていくが運良くくぐり抜けた竜騎兵たちは火炎放射をするわけでもなく砲弾のようなものを続々と投下していく。

 

 爆撃かと思い塹壕の中でうずくまる歩兵たちであるが一向に爆発はせず煙幕が広がる。どうやら煙幕弾のようであった。

 

「状況報告!」

 

「敵竜騎兵250騎以上を撃墜しましたが敵は煙幕をばら撒いて撤退したようであります!」

 

「リーム帝国の大攻勢が始まるぞー!戦闘準備ー!」

 

「戦闘準備ー!急げ!急げー!」

 

 

 

 やがてリーム帝国軍の戦場に響き渡る太鼓の音と共に不気味な突撃の足音、それに加えて何か巨大な足音が近づいて来ていることに気づく。

 

 

 

 「撃ち方ーはじめー!」

 

 

 

 機関銃陣地が打ち出すが何かに弾かれる音が煙幕の中から聞こえる。砲撃をしようにもこの煙幕では盲打ちにしかならず、効果は薄い。

 

 やがて、風が吹きその全貌が露わになるとその異様な出立ちに塹壕の兵士たちは言葉を失う。

 

 

 

「り、リントヴルムだ!!」

 

「馬鹿野郎!普通のリントヴルムは銃弾を弾かんぞ!」

 

 

 

 ようやく姿を見せたのはリントヴルムというフィルアデス大陸に棲息する地上棲の竜。……なのだが野生種とは異なり全身を艶めかしい金属で覆われ野生種と比べてひとまわりは大きいようであった。

 

 

 

「戦車隊!あのデカブツをねらえ!」

 

 

 

 蒸気戦闘車の12ポンド砲が狙いを済ませてリントヴルムに向けて砲弾を放つ。しかし……。

 

 

 

 ――ガキィン!ガキィン!……ドゥン……。

 

 

 

 リントヴルムの頭部や脚部に命中した12ポンド砲弾は甲高い音を立てて弾かれ、そのまま地面をえぐったり後続していた歩兵隊を吹き飛ばした。もう一度狙いを定め今度こそと放つが同じ結果であった。

 

 

 

「何だアイツは……まるで効いていないじゃないか。化け物め」

 

「どうしますか?以上の大口径砲は存在しません」

 

「まだあるではないか……」

 

「砲兵隊に標的を指示!目標敵リントヴルム!直接射撃であの化け物を仕留めさせろ!」

 

 

 

 12ポンド砲で駄目であればこの戦場にある最大口径の75ミリ砲で対処する他ない。もしこれで撃破できなければ手のうちようがないといえる。

 

 

 

「目標ーっ!前方敵リントヴルム!距離1800!」

 

「距離1800!照準よし!撃ち方用意!」

 

 

 

 黒光りしている75ミリ砲が雄叫びと地響きを響かせながら近づいて来るリントヴルムに狙いを定めている。砲兵には冷や汗が浮かんでいた。

 

 

 

「撃て!」

 

「撃て!」

 

 

 

 大きく手が振り下ろされて拉縄が引かれる。放たれた75ミリの砲弾はライフリングを通り目標のリントヴルムへと一目散に飛んでいく。

 

 全身を覆う艶めかしい金属に弾かれること無く体内へと侵入した砲弾は体内で炸裂、火炎袋に引火した爆発は内側から肉と骨を破壊、辺り一面に肉と血の雨を降らせた。

 

 

 

「リントヴルム撃破確認!」

 

「よくやった!他の個体も75ミリで撃破せよ!」

 

 

 

 撃破できることが確認されてしまえばもうパーパルディア陸軍の独壇場である。次々と撃破されるリントヴルムたち。ワンサイドゲームとなっていた。

 

 

 

「リーム帝国軍撤退していきます!」

 

 リーム帝国の秘密兵器はあっけなく撃破され歩兵たちは散り散りに敗走していく。

 

 

 

「ざまぁみさらせぇ!」

 

「やっぱり75ミリは最強だ!」

 

「75ミリ最強!」

 

 

 

 今回もパーパルディア陸軍の勝利だと司令官や上層部は安堵していたが敵の新兵器を回収すべきだとの意見があり、翌日日が登ってから回収することとした。

 

 

 

「こいつは一体何なんだ?」

 

 

 

 翌日、戦死したリーム帝国軍兵を埋葬しようとした兵が見つけたのは頭全体を覆うガスマスク、それも1人や2人だけではなく戦死したリーム帝国軍兵士全員が装着していた。

 

 

 

 邪魔だからと外してみればその下には正気を失ったようた顔をした兵士たち、これには軍人といえども来るものがある。

 

 

 

「リームの上層部は人の命をなんだと思っているんだ?生存者の捕虜の様子は?」

 

「捕虜全員は全員が衰弱していたため簡易軽便鉄道でアルーニに輸送済みであります」

 

「そうかそれなら良い」

 

 

 

 また別の一段は爆散した仮称リントヴルムの素材を拾い集めていた。比較的綺麗なまま撃破されている物もあれば原型を留めていない個体もおり出来るだけ拾い集めていく。

 

 

「隊長、仮称リントヴルムの回収が完了しました。一部、と言うか大半の個体の肉片は回収できませんでしたが何体かは綺麗なままで回収できました。また、表面を覆っていた装甲はすべて回収が完了しました」

 

「うむ。輸送の手筈を整えておこう。戦闘は我々で行うが分析は専門家に任せた方が良いであろう」

 

 

 

 数日の移動の後、仮称リントヴルムとその他戦利品、そして傷病捕虜たちは貨物列車や輸送列車に載せられ捕虜はエストシラントに設けられた収容施設、仮称リントヴルムはエストシラント中央貨物ターミナルへと到着した。

 

 

 

 厳重な警備の元、技研に運び込まれた代物にレミール所長他、研究員たちは頭を悩ませることとなった。




秘密兵器はリントヴルムでした。ですが原作ではパーパルディアが運用していたモノとは全くことをここに記しておきます。
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