中央歴1634年9月某日、パーパルディア皇国東方沖にある島国フェン王国、そこで5年に1度開催される軍祭が開かれていた。
軍祭に文明圏外の各国の軍人が多数参加し、武技を競い、自慢の装備を見せ合う。各国の軍事力の高さを見せる事により、他国をけん制する意味合いもあった。
文明圏の国々が過去の軍祭で参加することは無かったが今回は様子が少し異なっていた。木造の戦列艦や砲艦が並ぶ中、 すべてを鋼鉄で作り出した巨大艦が8隻、いずれも二重歯車を象った赤い国旗を掲げ、軍祭の会場であるアマノキ港の沖合数キロの場所で演習を行っていた。
沖合を航行していたのはシルガイア率いるパーパルディア海軍第一艦隊、彼らは巡洋戦艦2隻、航空母艦1隻、巡洋艦1隻、駆逐艦4隻、合計9隻の軍艦が軍祭に参加する手筈となっている。
「あれがパーパルディアの戦船か……。まるでいくつもの城が動いているようだな」
剣王シハンは正直な感想を洩らす。その傍らにはパーパルディア皇帝ルディアスと私が一緒に艦隊の様子を眺めていた。
「うんうん、実に見事な艦隊運動、流石はバルスと同期のシルガイアが率いている艦隊だけはあるね」
シルガイアは原作軸では海軍施設に努めていたしがない清掃夫であったはずであるがこの世界では第一艦隊を率いる提督である。
バルズ・プランに基づく近代化計画で士官不足に陥ったパーパルディア海軍、特に艦隊指揮の取れる人材が不足していた。何とか人員を確保しなければならないとなったところでバルスが『かつて同期に私と肩を並べていた者がいた』と鶴の一声を発し船着き場で作業をしていたシルガイアはあれよあれよといううちに第一艦隊の提督に着任することとなったのである。
「シハン剣王、ルディアス殿下、レミール殿下。間もなく廃船と標的船に対するパーパルディア第一艦隊の演習が始まります」
レミールの護衛を兼ねたメイド、キャメルが3人に向けて報告をする。彼らが覗き込む双眼鏡の先には、第一艦隊の軍艦9隻浮かんでいた。
第一艦隊からさらに沖合、フェン王国から出た廃船が5隻と、小型船に引かれた廃船が約5ノットで進んでいた。距離はおおよそ4キロ程離れており、剣王シハンは望遠鏡を覗き込む。
今回は巡洋戦艦2隻の砲撃と航空母艦積載の飛行機械による攻撃演習が行われる。既にパ・リューヒ攻撃隊は上空へと上がっており後は攻撃開始の合図を待っていた。
黒煙がパーパルディア海軍の巡洋戦艦から上がり、遅れて轟音がやってくる。その直後標的船の回りに巨大な水柱がいくつも立ち上がり船の残骸と思われる木片が空を舞う。水柱が収まるとそこに標的船5隻の姿は無く木片が海面に漂っていた。
「これは……凄まじいな。パーパルディアにはこのような戦船が多数配備されているのか」
「それだけではありませんよシハン剣王。次は飛行機械による攻撃です」
シハンが双眼鏡を再び覗き込めば小さな飛行機械、リゲル型艦上攻撃機が編隊を組んで飛行しており、先頭の飛行機械が急に逆さまとなったかと思えば標的船へ向けて急降下していく。
「いきなり急降下を始めたが……大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ。あれはれっきとした攻撃方法ですので」
急降下を始めたリゲル型攻撃機隊は、ある程度の高度まで急降下をすると機首を上げると、その数秒の後に水面が盛り上がる。続けざまに水柱が上がると標的船は爆炎を上げて轟沈した。
「火薬を満載した爆弾を急降下で投下する攻撃方法です。これを急降下爆撃といい、精密攻撃……特に海上の戦列艦や木造船への攻撃には最適といえます」
「なるほどな……だが急降下の最中、対空バリスタの直撃を受けてしまえば墜ちてしまうのではないのか?」
確かにその可能性はある。だが飛行しているワイバーンにも当たらない対空バリスタなど役に立つワケがない。
「確かに脅威とは言えるかもしれません。……しかし、ワイバーンにも当たらない対空バリスタを飛行機械の脅威とはなりえないかと、それよりも機銃を多数配備して対空射撃をした方がワイバーン戦に有利となりえますし、飛行機械戦でもそちらの方がよほど脅威となりえます」
「ふぅむ……となればパーパルディアからキジュウとやらを輸入するのが吉か」
「……ここだけの話ですが、旧式であれば」
「ほう!詳しく聞かせてもらえないだろうか!」
私とシハン剣王が話し込んでいるのをルディアスがため息をつきつつも眺めていた。
「一応、パーパルディア皇帝の私がいる前で国益に関する話をするのはどうかと思うけど……」
「おっと、これは失敬した。レミール殿、この話はここまでにして市井の様子を見てきてはいかがだろうか」
確かに。外遊という名のデートをしても多少は怒られないであろう。……ルパーサにばれてしまえば大目玉だけど。
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いつもの如く変装……をしたはいいけど最近ちょっと胸のあたりがきつくなってきた。コルセットを巻いて誤魔化していたけれどそろそろ男装をするのも限界があるのかもしれない。
「どうかしたの?」
「胸の辺りが少しきつくなってきてね……。幻惑魔法で姿を男に見せる魔法とかなかったかしら?」
「うーん、どうだろう。もしかしたらあるのかもしれないけれど」
お忍びで歩き回ったり見て回るのに最適な格好だから気に入っていたけど……こればっかりは仕方がない。また何か新しいお忍び衣装を調達しなきゃいけない。
「それにしてもルディアスはいいよね。大きくなくて」
「これはこれで便利だけどね」
王城裏口からアマノキの町中へと繰り出す。江戸時代のような長屋が続く大通りには人山と店が連なり商売たくましい商家が各国から訪れた見物人相手にフェン王国の民芸品や土産をぼっ……適正価格で売りさばいていた。
「いらっしゃいいらっしゃい!兄ちゃんたち!何処からきたんだい!」
「パーパルディアからだよ」
「おお!そうかいそうかい!これ買っていかないか?とーっても貴重なモノだけど安くしておくよ!」
キャッチ……というか客引きにルディアスが捕まり進められたのは何やら金色に塗りたくられたフェン王城を象った置物……ようであるが精巧に作っているのかと思えばそんな事は無く作りが甘い上、金色の塗装もお世辞を言えないほど雑な仕上げであったが店主の男はこれを黄金製だといい切った。
「本当なら数百万パソはするんだが……今日は軍祭だからな、20万パソに割引をしてあげよう。今だけだぞ」
「いや……別にいらないです」
「本当は欲しいんだろ?今だけだ20万パソで売ろう」
断っているにもかかわらず、無理やり押し売りをしてこようとしてくる店主との一進一退の攻防が続いている。いい加減ルディアスの手を引きに走り出そうと思ったところで紺色の制服を身に纏った一段が通りかかる。その中心人物が呆れたように
「関心致しませんな。我が皇国の民を騙そうなど……」
「騙そうだって?あんたらはこの価値をわかっちゃ居ないのか!あんたらの価値で数百万パソはする置物だぞ!それを20万パソで売ろうって言ってんだ!」
「20万パソ?こんながらくたがか?冗談もいい加減にしてほしいものであるな」
何だと!?店主は立ち上がって掴みかかろうとしたが逆に腕を捕まれ、背負投げを食らって伸びてしまっていた。騒ぎを聞きつけた武士団に店主は連行されていった。
「怪我は無いかね?……いや、お怪我はございませんか?皇帝陛下、レミール殿下」
「なんーだ。シルガイアにはお見通しだったってワケね」
「陛下たちもさっさと逃げれば良かったのですが……流石にこれはルパーサに報告をさせていただきますからね」
それだけは勘弁して欲しいところだけど……まぁ無理だよねぇ。
次回以降時計の針がぐるぐるとすすむかもしれませんのでご了承ください
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