特に難産で下(もしくは中)も難産が予想されますので気長におまちください。
「失礼します。皇帝陛下、次の書類をお持ちしました……?」
パーパルディア首都、エストシラントはパラディス城、ルパーサが大量の書類を抱えてルディアスの執務室に入るとそこにはルディアスの姿はない。不思議に思うと執務室の机には『少し出かけてくる』との走り書きが残されていた。
時を同じくして同じくくエストシラントにある先進科学技術研究所、ロバート副所長が所用のため所長室を訪れると所長であるレミールの姿は無く、置き手紙が置いてあった。
「所長、えーと?何々……?『ルディアスと遊びに行ってきます?』はぁ?」
その直後所長室にあった魔導電話が鳴る。ロバートが出ると通話相手はルパーサであった。
『ロバート副所長か。そちらに皇帝陛下はおられるか』
「いえ、それにレミール所長の姿もありません。ただ……書き置きがありまして『ルディアスと遊びに行く』と」
『全くあの二人は……皇都市警には連絡をした』
「かしこまりました。私の方は陸軍憲兵隊に伝がありますので報告をいれておきます」
▲ ▼ ⏰️ ▼ ▲ ⏰️ ▼ ▲
「ルディアス、うまいことだし抜けた?」
「バッチリだよ。今頃ルパーサたちは大慌てだろうね」
私とルディアスはそれぞれパラディス城と先進科学技術研究所を抜け出して落ち合ったのはエストシラント中央駅にほど近い繁華街の店内にあった。
魔導具を専門に扱っている魔導具店、その店内で商いをしていたのは怪しげな魔女、年齢は私やルディアスよりも上のハズであるがシワは無く背筋もしっかりとしていたので所謂美魔女という人種なのであろう。
「イヒヒ……まさかこんな場所に皇帝陛下と許嫁の方が訪れるとは、いやはや長生きはしてみるものですなあ」
気味悪い笑い声が響く、……本当にこんな魔女にまかせて大丈夫なのだろうか。
「ご心配なく……ご要望されていた代物はちゃーんとご用意いたしましたので」
そう言うと奥の棚を漁る魔女、しかしお目当ての物が見つからないのかあっちを開けてみたりこっちを開けてみたりと散らかしまくり、ようやく見つけたようで私とルディアスの前へ小さな箱を差し出した。
「どうぞ、ご要望の品物です。開けてご覧になってください」
小さな箱を開けるとそこには小さな赤い宝石がついたネックレス。至って普通のネックレスと変わりないように見えるが魔女は説明を続ける。
「こちらが、疑姿の宝石となっております。効果は自らの姿を望んだ姿へ変化させます。ただ、物理的にではないのでそこは了承してくださいね」
「分かったわ。支払いはこれでいいかな?」
懐から金貨が包まれた袋を魔女に差し出す。再び奇妙な笑い声をネックレスが2つ入った小箱を手渡してきた。私とルディアスはそれぞれ疑姿の宝石を首から掛けると光に包みこまれた。
「イヒヒ……。お二方、随分とお姿が変わりましたねぇ。今鏡をお持ちしますので」
光が収まりルディアスの姿を見るが特に変わりがないように見えた。不思議に思っていると魔女が手鏡を覗き込むとルディアスの姿は若い女性の姿となっていた。声も変わっているようで女性特有の声がしていた。『レミールも見てみなよ!』と手鏡を渡された。
覗き込むんでみると私の姿は短髪銀髪の青年姿となっていた。
「あー、あー。うん、流石に声までは誤魔化せないね」
「だけど捜索隊の目もごまかすことができそうだね。ありがとう。」
「イヒヒ……。ご満足していただけたようで何より、それといい忘れておりましたが効果は一日ほどですのでお気をつけを」
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「さてと……、どうしようか?」
「まずは着替えをしましょう。今の格好だとすこしチグハグで目立ってしまいますそれに名前も偽名を使わないといけませんね」
「そうだったね。じゃ僕、いや私はルイーザと呼んで」
「では僕はレオと名乗りましょう」
魔導具店からほど近くにある服屋へ駆け込む、店員は私とルディアスに気付くことなく単に若いカップルが来店したと思い込んでいた。
「いらっしゃいませ。どのような服をお探しでしょうか?」
「私……いや僕と彼女に似合う服をもらえないかな?」
「かしこまりました。少々お待ちください」
待つこと数分ほど、店員から受け取った服へと着替えてみる。ルディアスは普段着ることが無いようなフリルのついたスカートにブラウス、はっきりといえばとても似合っていた。
「ど、どうかしら?」
「うん、とっても似合ってるよルデ……ルイーザ」
「そうでしょう!そうでしょう!ささ、彼氏さんもどうぞ」
私に渡されたのはパリッとしているズボンにシャツとジャケット、今流行りのムー・スタイルのコーデであった。胸の辺りがきついかと思ったけどそこまでではない。
着替えて鏡を見ればそこには銀髪の青年が着飾って出ていた。自分でいうのも何であるが似合っているとしか言い様がない。試着室のカーテンを開けてみると、店員がニコニコと笑っていた。
「似合っておりますね!このまま着て行かれますか?」
「ああ、そうするよ」
支払いを済ませた後、エストシラント中央駅前から路面蒸気に乗り込んであてもない市街探索の旅へと出る。車内はそこそこの混みようであったが誰一人、ルディアスと私には気がつくこと無く普段通りの日常が繰り広げられていた。
『次は〜、中央市場前、中央市場前〜』
「次でおりましょうか」
「うん、ルイーザの赴くままどこにでも行こうか」
中央市場は週末ということもあってか市民でごった返していた。鉄道網の発展によってパーパルディア皇国中の品々がエストシラントへ届くようになり各地の名産が店頭に並んでいる。また、港町から直送された新鮮な魚たちも並び、市民の食生活は豊かになり始めていた。
「いらっしゃいいらっしゃい!今日は良い魚が入ったよ!」
「おっ、お目が高いねぇ!サービスしておくから、まいど!」
「果物はいらんかねー、アルーニのベルトー牧場直送だよー!」
「ねぇ、あそこのお店よってかない?」
変装したルディアスが指差す先にあったのは屋台街、その中の1つで涼しげな食べ物を売っていた。
「果物味の冷菓か、食べて行こうか」
「あら、いらっしゃい。2つね?今できるからちょっと待ってねー」
店員のお婆さんは慣れた手つきでヘラを巧みにあやつりコーンへと盛り付けあっという間に花びらはピンク、中は黄色という花を模った美しい氷菓が出来上がっていた。
「はい、300パソねー。お兄さんの方はもう少しまってね」
少し待つと私の分の氷菓が出来て、テーブル席に座っていただく。ピンクの部分はイチゴ風、黄色部分はレモン風味の氷菓子が使われていた。少し暑い今日のような天気にはぴったりである。
「美味しいね」
「うん、そうだね……ふぅ、ごちそうさま」
あっという間に氷菓は手のひらから無くなり次は何処へいこうかと思ったところで制服姿の皇都市警の一団が中央市場へと繋がる大通りを封鎖し通行する人、馬車、路面蒸気その全てに対して検問を始めた。皇帝陛下失踪の報告が皇都市警に伝わったのであろう。
「ルパーサが臨時権限に皇都市警を出したみたいだね。どうする?反対方面の路面蒸気に乗るのも手だけど……」
「このままここにいてもジリ貧じゃないかしら?だったら正面突破した方が堂々としてばれないんじゃないかしらね」
「なんとかなる……のかなぁ」
▲ ▼ ⏰️ ▼ ▲ ⏰️ ▼ ▲
エストシラント中央駅方面へ向かう路面蒸気が警官によって止められ、数人の警官が路面蒸気の社内へと入っていく。
「大変申し訳ございません。不審物等が無いか臨時検札をさせていただきます」
乗り込んだ警官の一人、新米警官のバルガが乗客一人ひとりの顔を見ていくと車両後方に座っていた2人のカップルに目が行く、短い銀髪の青年と美しい金髪の女性が不安そうな表情を浮かべて座っていた。
「失礼ですがお名前をお伺いしても?」
「私はルイーザよ」「……僕はレオ」
「本日はどういったご要件で中央市場に?」
「……デートで中央市場をぶらぶらしていただけだよ。それが何か?」
「いや、その、デートに中央市場は向かないような気がしてですね……」
「おい新人!一般市民に絡んで一体何をしているんだ」
先輩警官に引きずられるようにして車外に引きずられていく。警官全員が降りたことを確認すると路面蒸気はゆっくりと検問所を発車していく最中、バルガは先程のカップルの姿が一瞬、ルディアスとレミールの姿へと変わったように見えた。
「……皇帝陛下とレミール殿下?」
「はぁ?お前は何を言っているんだ?あの車両に皇帝陛下とレミール殿下は乗車していなかっただろう」
「でも確かに……いや見間違いだったかもしれません。皇帝陛下が女装してレミール殿下が男装してるように見えましたので」
「この暑さでやられたのかもな……少し休んでろ」
「ねぇ、今彼に私達の正体がバレたと思う?」
「バレてないと思うけど……ルイーザは心配しすぎじゃないかな?」
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