レミール転生   作:久保田紅葉

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ちょっと感覚が空きましたがなんとかかき上げました。


日パ外交会談 下

 エストシラントへ向かう急行列車の中、朝田は驚きをかくせないでいた。

 

 

 

 「いやはや、驚きました……蒸気動車とはいうものの実際の中身は我が国の技術を大きく上回っているものが使用されているとは……」

 

 

 

 朝田が驚くのも無理はない。デュロ駅でみかけた711型蒸気動車についてであった。蒸気機関車に必須ともいえる火室を省き、その代わりとして蒸気高圧球なる蒸気圧を貯めることのできる専用の機械を搭載しているのだという。

 

 パーパルディアからしてみれば普段使いされているものであるが日本の技術からしてみればオーパーツと呼べる代物であった。

 

 

 

「日本では、そこまで蒸気機関が発展しなかったのですか?」

 

「いえ、蒸気機関自体は存在しているのですがもう主力機関を退いています。現在の主力は石油を用いた機関ですね」

 

 

 

 1950年代までは日本も石炭を用いた蒸気機関が主力となって国の産業を支えていたが1960年代になると原油の輸入自由化などが相まって石炭は長く続いたエネルギーの主役を石油などの内燃機関に譲ることとなった。

 

 

 

「パーパルディア皇国でも航空機などに石油を用いた内燃機関を使用していますが……数は少ないですね。……となると石油の輸入先が滞ってしまえば経済的に死んでしまうと言うことですかね?」

 

「……」

 

 

 

 レミールの言葉に朝田は答えられなかった。ここまで先見の明がある人物とは考えていなかったのである。

 

 

 

「まぁ、答え合わせはしないでおきましょう。パーパルディアでも幾つか油田は存在しています。が産出量はあまり多くありません。輸出できたとしても日本の全ての需要は満たせないでしょう」

 

 

 

 がっくりと肩を落とした朝田に対して『……ですが』と付け加える。

 

 

 

「パーパルディアから南方にある大陸、ロデニウス大陸というのがあるのですがその国のひとつにクイラ王国という国があります。そこでは石油が露天噴出している上少し掘るだけで鉄や石炭といった鉱物資源が豊富に埋蔵されています」

 

「本当ですか!」

 

 

 

 と、朝田が喜ぶがなにか裏があるのでは?と勘ぐってしまう。

 

 

 

「深い意味はありませんよ?ただ我が国は日本国と友好的な条約を結ぶことができればと思ってのことです」

 

 

 

 本国へ向けて有益な情報を手に入れることのできた朝田。その他建設的な話をレミールとしつつ列車に揺られること数時間、列車は速度を落としていく。流れてゆく車窓を見れば通りには煉瓦づくりの建物が立ち並び、大通りには自動車と路面鉄道が走り、人々の営みがあった。

 

 

 

 「日本の外交官様、ようこそ。パーパルディアの首都でもあり第三文明圏最大の都市、エストシラントへ」

 

 

 

 列車を降り立派な駅舎から出ると迎えの車が横付けされていた。ご丁寧にパーパルディアと日本の国旗を掲げてである。

 

 

 

「これも蒸気機関で?」

 

「ええ、そうです。蒸気高圧球を積載しております。ささ、エストシラント城でルディアスがお待ちです」

 

 

 

 エストシラント中央駅から20分ほど車に揺られると壮大な城、パラディス城が見えてきた。朝田と篠原が降りると軍楽隊が出迎えてくれる。

 

 

 

「随分と豪華な出迎えだな……」

 

 

 

 車から降ろされた二人は護衛の兵士と共に案内されたのは見上げるほどに高い天井と装飾の施されたステンドグラスの大広間へと案内された。

 

 

 

「ここは帝前会議や謁見を行う場所となります。そしてあちらにおられますのが……」

 

「ようこそニホンの方々。私はパーパルディア皇国皇帝、ルディアスだよ」

 

「ルディアス……外交官の方が来られてるんだからもう少し威厳というものを込めて言ってもらってもいいかしら」

 

「いいじゃないか。ありのままを見せたほうが印象もいいと思うんだけど」

 

 

 

 やいやいやいとルディアスとレミールが口論を始める。あっけに取られる朝田と篠原に対して衛兵たちは見慣れた光景のように過ごしていた。

 

 

 

「いやはや申し訳ない。外交官のお二人にはお見苦しいところを見せてしまった」

 

「い、いえ。貴方は……?」

 

「これは失礼……私はルパーサ、皇帝陛下の相談役を仰せつかっております。あの二人はああなってしまうとしばらく口論が続いてしまうので別室にご案内いたします」

 

 

 

 10分ほど口論が続いていたがようやく落ち着き、日本とパーパルディア皇国の日パ帝前外交会談が開始された。

 

 

 

「改めまして……日本国外務省の全権大使、朝田泰司と申します。本日はこのような会談をお開きいただき誠にありがとうございます。早速ではありますが我が国の資料を口頭で……」

 

「失礼朝田殿、一応ではありますが資料をいただけますか?」

 

 

 

 朝田が口頭で説明しようとしたところでレミールが資料を要求する。読めるのか?と思いつつも念の為に持ってきた資料を手渡した。ページをいくらかめくると『ふむふむ……』とレミールが頷きながら資料を読み進め、会談に出席したルディアスやルパーサに説明をしていく。意図的に世界共通語(日本語)で話しているのを耳にした朝田は冷や汗をかいていた。

 

 

 

(あのレミールという女性……日本語を完全に理解している。どういうことだ?クワ・トイネ公国では言葉は通じるが文字は読めないと報告にあったはずだ……)

 

 

 

 焦る朝田をよそにレミールは一通り資料を説明し終えたようで用意された紅茶に手を伸ばした。

 

 

 

「……おおまかに貴国の状況を把握できました。単刀直入に申し上げますと我が国から食糧などの輸出はできません。ですが石油や石炭といった化石燃料に関しては一定数輸出を行うことができると断言いたしましょう」

 

 

 

 日本側の朝田が驚きの表情を浮かべる。もしかしたら、多少なりとも石油危機以上のダメージを軽減できるかもしれないのである。

 

 

 

「ゆ、輸出できる量は……いくらぐらいとなりそうですか?」

 

「そうですね、貴国の昨年度の消費量2億1000万キロリットルのおおよそ10分の1、いや100分の1程度、21万キロリットル程度なら輸出することが可能といえます。ルディ……皇帝陛下はどう思われますか?」

 

「うーん、困っている時はお互い様ということばもあるし……それでどうかな?」

 

「ぜひ!ぜひお願いいたします!」

 

 

 

 朝田が立ち上がって頭を下げる。外交官としては失格であるが『背に腹はかえられぬ』と言うやつである。既に日本国内では閉山した炭鉱の再採掘が検討されているほどに逼迫していたのである。

 

 その後は日パ間を民間船、もしくは旅客機を使用して定期便の就航の計画や技術交流を行うことを前向きに検討して今回の会談は終了した。

 

 

 

 1週間もしないうちに日本国は國岡興産のタンカーを借り上げて石油の緊急輸入を行いいつつ、第2回日パ外交会談が開かれ次のことが確認された。

 

 ◯日本国、パーパルディア皇国は国交樹立に向けた話し合いを継続する。

 ◯日本国、パーパルディア皇国は不可侵条約締結に向けた話し合いを継続する。

 ◯日本国、パーパルディア皇国は技術交流を前向きに検討する。

 ◯両国間を結ぶ航空路線、または航路の開設に向けた対話を加速させる。

 

 

 

 パーパルディア皇国は良き隣人として肩を並べるに値すると考えた日本は、早急に友好通商条約を締結しようと奔走し転移から2ヶ月、『日パ友好条約』が締結され今後切っても切れない友好関係を築き、良き同盟国としてこの世界の奔流に挑むこととなる。




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