レミール転生   作:久保田紅葉

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レミールの御一行お忍び小旅行 in博多

 中央暦1639年3月末、先進化学技術研究所、通称技研の所長であるレミールこと私、パーパルディア皇国皇帝ルディアス、私の世話人キャメル、そして外務局の職員数人の姿は物資輸送と兵員輸送を兼ねたヴェルダル輸送機、その一機を改造したフライトレイン号は青い空と青い海の元、ゆうゆうと飛行していた。

 

 

 

 改造元となったヴェルダル輸送機は巡航速度266キロ、操縦士3人で人員28名と2,700キロの物資を輸送可能な輸送機でそれを改造したフライトレイン号は積載物資を減らした代わりに人員を32人まで載せられるようになった。それに加えて機内の設備向上を行ったため快適性が向上していた。

 

 

 

「いつもは列車とか船での移動が多かったけれど、今日はいつもと違って飛行機、ロバートはどうにも苦手みたいだったけど......」

 

 

 

 紅茶をたしなみながらルディアスは外の景色を楽しんでいる。快適性を高めたフライトレイン号はかつての飛行機とは比べ物にならないほど快適で過ごしやすい。

 

 流石に日本のB-787や737には及ばないがいずれはこのフライトレイン号を元に民生機を製造し、航空会社を立ち上げてクワ・トイネ皇国やクイラ王国といった第三文明圏通商条約機構加盟国、それに日本といった国を結んでもいいかもしれない。

 

 

 

 『ご乗客の皆様にお知らせいたします。当機は間もなく日本国の領空内に入ります』

 

 

 

 パイロットのアナウンスが流れるとシートベルトを締めるように指示が出される。窓の外をみれば眼下に緑と建造物の白が見えてきた。ルディアスやキャメルが興奮気味に眺めている中、私はふと物思いにふけっていた。

 

 

 

(この身体になってから早10数年、まさか再び日本の地を踏めるとは思わなかったなぁ……降り立ったら何を食べよう。いやそれよりも発展の為に資料集めか?ああ、もう日本に移住したい……)

 

「レミール?なにか思い詰めたような顔をしてるけど、大丈夫?」

 

「あら?そういうふうに見えちゃたのね。実を言うと楽しみすぎてこんな顔になっちゃったのよ」

 

 

 

 私が笑うとそれに釣られるようにルディアスが笑う。本当に可愛いお人。

 

 

 

 

 

 ▲ ▼ ⏰️ ▼ ▲ ⏰️ ▼ ▲

 

 

 

 

 

 パーパルディアを飛び立ってから数時間、日本の九州地方にある福岡空港へと降り立ったフライトレイン号は駐機されていたB-787の隣に誘導された。

 

 

 

「レミールから話を聞いていたけど……ニホンの旅客機は本当に大きいね」

 

「はい、この機体だけで300人は搭乗できます」

 

 

 

 300人!とルディアスとその一行は驚きながらも乗用車に搭乗しながら福岡市内にあるホテルへと向かいその日は休息をとることに……。翌日は新幹線で東京へそれから日本国の首相と面会し、その後は天皇陛下主催の晩餐会という日程が組まれていた。正直自由も何もあったものでもない。となれば……。

 

 

 

「大人しく休息を取るわけがないよね。ルディアス、出かけましょうか」

 

「レミールならそういうと思ったよ。僕の方もしっかりと準備はしてきたさ。なんせ久しぶりの外遊だからね」

 

 

 

 疑姿の宝石を身につける。鏡を見れば私の銀髪は黒髪へと変わり瞳の色も黒っぽくなっている。ルディアスも同じような見た目になっていた。

 

 これでホテルから出ても誰もわからないであろう。そう思っていたのだけど……。

 

 

 

「レミール殿下とルディアス殿下?……一体どちらに向かわれるのですか?」

 

「んーと、……散歩?」

 

「散歩でこんなに着飾る訳がないでしょう。お二人で何処かにお忍びで出かけようとしているのでしょう?そうはいきませんよ」

 

 

 

 部屋から出たところで私お付きのメイドであるキャメルに見つかってしまった。……見つかってしまったのならば仕方がない。ルディアスと顔を合わせ彼女が騒ぎ出す前に共犯となってもらおう。

 

 

 

「……仕方がないなぁ、キャメル。君には僕とレミールの護衛を任せるよ。もちろん拒否権はないからね」

 

「えっ、ちょっと……!」

 

 

 

 キャメルを部屋に引きずり込んで着替えさせる。茶色の髪をしていた彼女はそのままに日本の町中にいそうな格好をさせてホテルから出る。

 

 日はまだ落ちていなかったのでまだ周囲は明るいものの既に博多の街並みには灯りが灯っていた。

 

 

 

「ハカタの街は明るいね。これ全部が電気で灯っているんだね」

 

「ええ、そうです。街が明るければ犯罪率も下がりますし……なによりも」

 

 

 

『ねぇねぇ?今日どこいく?』

 

『いつもの場所でいいんじゃない?今日新作のフレーバー出たっていうし!』

 

『新作でたの!?いいじゃん行く行く!』

 

 

 

 女子高生たちが制服姿で出歩いている。治安の良い証でもあった。

 

 

 

「……いずれはエストシラントでもああいった景色を見られるようにしませんとね」

 

 

 

 しんみりとした話はさておいて日本では新世界技術流出防止法が制定されたらしいけどあくまで最先端技術や軍事転用できそうな技術の流出を禁止しているのみ、民生技術や書籍はこれにあたらない。

 

 となれば書店で技術書を買い漁り持ち帰ることでパーパルディアの国力を底上げしようという魂胆である。しかし全て日本語で書かれているため翻訳しなくてはらならいがそこは日本語が読める私が翻訳してやれば解決するのである。

 

 博多駅にほど近い紀之国屋書店で技研へのお土産として技術書や図解書、図鑑などを買い込んでホテルへと戻りそこからまた博多の街へと繰り出した。あたりは暗くなり、街灯が道路を照らす中、今度は飲食店街の方へと足を伸ばす。

 

 

 

「ここは……ずいぶんと屋台が建ち並んでいるね」

 

「さしずめ屋台街……といったところですか。エストシラントの旧市街にもこういった風景が見られますがどの国にもこういった店があるものですね」

 

 

 

 せっかくなのでここで食事をとっていこう。様々な提灯と屋台が軒を連ねる中、やけに目立つ赤提灯に赤暖簾、そこにデカデカと『おでん』と書かれていた。

 

 おでん……久しく食べてないし、ここで食べるのもいいかしら。

 

 

 

「ル……ルイ、ここで食べていかない?」

 

「ん、レナがおすすめするならここにしよう。キコもここでいいかな」

 

「えっ、キコ?私?えっと、私は別に構いませんけど……」

 

 

 

 それじゃ決まり。暖簾をくぐればカウンター席のみの小さな屋台にグツグツと煮出つ具材たちが鎮座していた。

 

 

 

「……らっしゃい」

 

「3人ですけどいいですか?」

 

「……ああ、いいよ」

 

 

 

 私たちが座れば屋台の半分が埋まる。メニューをみればいかにも手書きで書かれたものがズラリとならんでいた。

 

 

 

「えーと、とりあえず、大根とちくわと……後はこんにゃくと煮玉子、それぞれ1つずつ、それと熱燗を2つお願い」

 

「あいよ」

 

 

 

 日本語を読めないルディアスとキャメルに変わって私が注文する。二人は私が呪文を唱えているのかと思い固まってしまっていた。ただ注文をしただけなのに……。

 

 数分待てば味の染みた大根と煮玉子、ちくわ、そしてこんにゃくが皿へ盛りつけされて出てきた。さらに、日本酒の入った徳利がお湯に浸かって出てきた。

 

 

 

「はいおまち、そいじゃごゆっくりと……」

 

 

 

 そう言い残して店主は屋台の外へと出ていった。どうやら煙草を吸いに外へと出たようであった。店主が出ていったのを確認してから私はルディアスとキャメルの質問攻めにあった。

 

 

 

 

「……卵は鶏の卵だとわかるけどこれは?」

 

「だいこんっていう根菜ね。パーパルディアだとラディスっていう野菜に近いわね」

 

「穴の空いたものは?」

 

「ちくわは、魚のすり身を棒に巻きつけて整形して焼いた食べ物ね。パーパルディアにはないかも」

 

「三角の灰色のものは一体何?」

 

「こんにゃくは……うーん説明しずらいけれど毒のある芋をなんとかかんとかして食べられるようにしたもの、大丈夫こんにゃく自体に毒はないから」

 

「うん、それはわかってるんだけどね……どうにも手が出ないの」

 

 

 

 やっぱり知らない食べ物を口にするのは気が引けるのであろう。仕方がない、私が手本で食べてみせるしかない。

 

 慣れた手つきで大根を箸で切り分けて口に運ぶ、出汁がよく染みた大根、それに熱燗の入ったお猪口をちびりと飲めばもう最高、思い出補正も相まって極上の一口であった。

 

 

 

「「…………」」

 

 

 

 しまった勢い良く食べてしまったから逆効果……かも、と思ったけどルディアスは見様見真似で大根に箸を入れて口に運ぶ。少し噛んだ後同じように日本酒の熱燗をくいっと煽った。

 

 

 

「酒精が強い……だけど甘くて飲みやすい酒だね、それにこの食べ物とよく合う。レナはよくこんな屋台を知っていたね」

 

 

 

 お気に召したようで良かった。キャロルも恐る恐る口に運ぶと驚いたようは表情をしてもう一口運ぶ。こちらも気に入ったようであった。

 

 

 

「おいしいですねレミ『レナ』……レナ様。初めて食べるものですけど、これはおいしいです」

 

 

 

 キャロルも満足しているようである。私自身も十数年ぶりといえる故郷の味であるおでんをもっと味わいたいところである。いいしやっぱり……。

 

 

 

「ラーメンが食べたいなぁ……」

 

「ん?なんだ嬢ちゃんラーメンが食いたいんか?」

 

 

 

 いつの間にか戻ってきていた店主につぶやきが聞かれてしまっていた。

 

 

 

「い、いえそういうわけじゃ……」

 

「うちの倅がやってるラーメン屋が近所にあるんだが……行ってみないか?」

 

 

 

 手書きの地図を手渡されたが思いの外近い場所にある。これならばそこまで遅くならないうちにホテルへ戻れるだろう。

 

 

 

「次のお店にはしごしようと思うんだけどいいかしら?」

 

「僕はいいよ」「私も大丈夫です」

 

「それじゃ決まりね。大将お勘定をお願い」

 

 

 

 会計を済ませて屋台を後にする。なぜか店主から『息子によろしく言っといてくれ』と頼まれてしまった。なぜただの客のわたしたちに頼むのかは謎である。

 

 外は暖かくなってきたとはいえ博多の夜はまだ少し肌寒い。しかし熱燗を飲んだおかげかただ単にアルコールのおかげかはわからないけれど身体は火照っていた。

 

 

 

「ねぇ……レミール?」

 

「何でしょうルディアス?」

 

「また日本でこんなふうにぶらぶらして遊びたいね」

 

「はい、今度は……」

 

「あのー、見張りとしてついてきている私の前でそういう話をするのは……」

 

「大丈夫、そのときはキャメルも連れて行くから連帯責任だよ」

 

「な、なんでですかー!」




若干不憫キャメルさん

次回は早めに投稿できるよう努力します()
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