クラユカバとクラメルカガリがいいぞ
「……以上が国家情報局からの情報です我が皇国も備えるべきかと」
「リーム帝国がきな臭くなり始めたね……国境防衛隊の用意は?」
「準備を進めております。」
私がレミールとなってから数ヶ月、定例で開催されている帝前会議にて国家情報局からリーム帝国が北方諸王国連合との戦争状態に入ったと国家情報局の密偵により明らかとなった。中立国のクーズ王国、友好国でもあるトーパ王国は戦争状態には入っていない。
原作では北方からの脅威に抵抗するため拡張政策とあったがこの世界では史実よりも強大化したリーム帝国がパーパルディア皇国最大の脅威となっていた。国防のために拡張政策をするというのもわからない話では無かった。
……それはともかくとして今リーム帝国の目は北方に向いてるため、パーパルディア皇国侵攻の兆しは未だ見えないとのことなので国境線の警備を強化するにとどめておくということになった。
「レミール。ムー国からの蒸気機関の輸入についてどうなってる?」
「はいルディアス様。最新鋭……とは行きませんでしたが旧式の蒸気機関を数台輸入することができました。現在先進兵器開発研究所に運び込んで解析し量産化や改良の準備をすすめております」
「大変結構!そのまま進めてもらう。……それでレミール。君にはこれから先進兵器開発研究所の所長を任せる。外務局監査室と兼業になるがその類まれなる才能を活かして欲しい」
……一介の外務局監査室所属員からいきなりの栄転である。ルディアスの顔をみればしてやったり、といった感じの顔をしていた。まぁ確かに蒸気機関や機械文明を皇国で一番知り尽くしているのは私であるから適任なのだろう。
「……謹んでお受けいたします」
「……皇国発展のため頼んだぞ」
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帝前会議の後、私は先進兵器開発研究所、通称兵研へ足を向けていた。到着すると技術長、実質の長から簡単な説明を受けながら研究所内を案内される。その中でも皇帝陛下の命で進められている蒸気機関の解析にはパーパルディア人に混じってタートルネック姿のムー国人の姿がちらほらと見受けられた。彼らは輸入した蒸気機関の指導に当たっている技術者たちだ。
その中に一人、原作よりも若々しく覇気を感じる人物がいた。
「あのー、ムー国人の彼は一体?」
「彼ですか?少々お待ち下さい。おーい、マイラス君。ちょっとこっちに来てくれないか?」
技術長が呼びかけるとマイラスと呼ばれたムー国人の技術者がやってくる。間違いない、原作よりも遥かに若いがムー軍随一の技術士官と囃されるマイラス本人であった。
「こちらが新所長となるレミール殿下だ。」
「えっ!あのレミール殿下ですか!」
何やら驚いているが私は彼らを驚かせるようなことをしたのだろうか?その説明は後にしてとりあえず自己紹介である。
「はじめまして、ですかね?私が先進兵器開発研究所、新所長となったレミールです。私が一体何を……?」
「レミール殿下!是非お話をお聞きしたかったところなのです!あのレミール・レポートの作成者とお会いできるなんて……あだぁ!」
「バカヤロー!皇族の方に向かってどんな口を聞いてるんだ!申し訳ございません殿下。ウチの若いものが粗相を……」
大分興奮していたようであるが背後から鉄拳を食らっていた。どうやらマイラス直属の上司であった。別に粗相といった粗相を働いたワケでも無いので怒る理由がないのだが。
「私は大丈夫ですよ。それよりも……お二人からのお話をお聞きしたいと思っていたところなんですよ」
「それは幸いです。私共もレミール殿下にお尋ねしたいことがたくさんありますので……僥倖でした」
そのまま二人と私は兵研に備え付けてある会議室へと足を運ぶ。彼、技術長には悪いが会議室周辺の人払いを頼んだ。これからの会談は下手に聞かれたくないのである。
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「単刀直入にお聞きします。こちらの設計図、レミール殿下がお描きになられた物でしょうか」
やはりその話題となるか。彼らは技術者兼ムー諜報部の依頼で派遣されてきているのだろう。
「堅苦しいのは嫌いですわ気軽にレミールとでもお呼びになって。……確かにそのスケッチを描いたのは私に間違いございません」
これにムー側が騒つくがそれはそうであろう。魔導文明国の貴族から機械文明の設計図がポンと出てきたから誰だって驚く。
「なるほど……いくつか質問よろしいですかな?レミールさんが書かれたのは空軍に関するスケッチのみでしたが陸軍や海軍はどうなるとお思いですか?」
未来を正直に伝えていいものだろうかとは考える。しかし今ここでムーに見限られては皇国の未来は危うい。ぼかしつつも正確に伝えるのが吉であろう。
「今は大砲が戦場を支配しているが……その大砲が自由自在に動けるようになれば戦場が変わると思えませんか?」
「確かに大砲が自由自在に動くことができれば戦争はがらりと変わりますね」
「大砲を持ち装甲で味方歩兵の盾となる自動車のような兵器、戦う自動車……戦車と名付けてみるのもいいかもしれませんね」
戦車の生みの親にお叱りの言葉を言われてしまうかもしれないがこの言葉以外に戦車を表す言葉が見つからないから仕方がない。
「戦車か……だがタイヤでは不整地を走れないな」
「確か農林省が開発していた農業用機械がありましたよね。あれの足回りを使ってみるのもいいかもしれません」
ムー国人二人が戦車談義に盛り上がっていきそうだったので咳払いをしつつも海への返答をする。
「オホン、次に海軍だが今竣工しているのは……ラ・シヤマ型でしたか。これは説明が難しい……いずれ戦艦の大型化や大口径の時代を迎えますけれども……」
「けれども?」
「……もしかして戦艦の時代が終わりを迎えるということですか」
含みをもたせたところでマイラス君が口を開く。やはり将来はムー軍随一の技術士官と言われることだけはある。私が言いたいことをズバリと言い当てた。
「マイラス!戦艦の時代が終わるはずないであろう!」
「……マイラス君は流石だな。その通り、いずれ戦艦の時代は終わりを迎えると私は踏んでいる。」
紙とペンを取り簡単なスケッチを書く。イメージとしては旧日本軍の酸素魚雷擬きを描いてある。
「これは……爆弾のようですがやけに長いですね」
「水中を進む爆弾のようなものだと思ってもらって構わない。これが戦艦の横っ腹にぶつかると……」
「大穴が空きそこから海水が流入して沈没する……確かに恐ろしい兵器ですな」
「そしてこの兵器は航空機に積載することができるとすれば」
「海での戦術がガラリと変わってしまう!急いで本国に……!」
「まぁ慌てる必要は無いじゃないマイラス君。ここにその知識を持った皇国人がいるじゃない」
私の頭をトントンとつつく。この際ムー国とパーパルディア皇国、共同で技術協力をしてしまおうではないか。ムー国も将来的グラ・バルカス帝国に攻められる可能性があるので今の内に国力や技術を身につけておけば勝ち負けはしないであろう。
ミリシアル辺りが口出ししてきそうな気配はあるがムー国の勢力圏に入ったと思わせておけば良い。
「そうしてもらった方が技術畑の我々としても貴女の知識を得ることが出来て万万歳です」
「上層部に掛け合ってみますが良い返事を聞けるかと思います」
それから一月もたたないうちに、エストシラント城でルディアスとラ・ムー国王陛下が一堂に会し技術交流に関する協定が結ばれてることとなった。
ミリシアル帝国あたりが口を挟んできそうですがパーパルディアはまだ列強じゃないのでそこんところは甘く見ているという想定です