ロウリア王国ワイバーン陣地から飛び立った450騎、海軍と共同で攻撃を行うという通信を最後に連絡が途絶えていた。
海戦に勝利したのならば必ず通信が入るはずであるが、全く通信が無いことに司令部は首をかしげていた。なにも変化がないまま日没を迎えたが1騎たりとも帰ってこないワイバーン部隊、司令部は次第に焦りの雰囲気で包まれていた。
「何故帰ってこないのだ?」
問い合わせに答える者はいない。まさか全滅したのではないか?と考えたくもない考えが出てくる。敵が大艦隊だったとしても、450騎のワイバーンの全てを全滅できるはずは無かった。
「司令!司令!海軍からの緊急入電です!ロウリア王国東方征伐海軍は敵の攻撃によって半壊!ワイバーン部隊は全滅したとのことです!」
最悪の予想をしていたがその通りとなってしまったことにワイバーン司令部は多いに荒れた。
その日の夜、ロウリア王国ジン・ハークでは第34代国王、ハーク・ロウリア34世はベッドの中で震えていた。
先刻発生したロデニウス沖大海戦で手を出してこないとされていた列強のパーパルディア皇国とニホンコクと名乗る新興国が参戦、ワイバーン450騎が全滅した上、魔導装甲艦を含む艦船2000隻が撃沈、シャークンを含む大勢の海兵を失った。
しかも、帰還した艦艇の乗組員からの報告によればこちらからの攻撃による被害は一切確認されていない。ほぼ皆無である。
報告には荒唐無稽な部分が多いがほぼ事実であろうとハーク・ロウリアは予想していた。第三文明圏の列強国であるパーパルディアが参戦してきたのである。
6年間でロデニウス大陸を統一して征服をするべく、泥水を啜り、リーム帝国からの屈辱的な要求を飲み込み魔導装甲艦やワイバーン、地上兵力ではリントヴルムを一定数をそろえることが出来た。
しかし、それはパーパルディア皇国が手を出してこないという前提での整備である。その上ニホンという得体のしれない国も参戦してきたおかげで計画は大幅に狂っていた。
質がものを言う海と空である。しかし、陸戦は数がものを言う。リンドヴルムを軸とした部隊を全面にだして一気にエジェイを陥落さて陸戦でケリをつければなんとかなるかもしれない。ロウリア王は、その日、眠れない夜を過ごした。
「……ロウリア海軍は大損害を被った。これでもお父様は目を醒まさないのね。それに他の将軍たちも。準備を一刻も早く進めないと……!」
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「以上がロデニウス大海戦の、戦果報告になります」
海上自衛隊に派遣されていたブルーアイとパーパルディア海軍に派遣されていたミドリ、二人の観戦武官がそれぞれ政治部会において報告書をあげた。
政治部会の各々の手元には、それぞれの戦果が記載された印刷物を広げて報告に耳を傾けていた。
「パーパルディア海軍の戦果は言わずもがなであるが……日本はたったの8隻、しかし決して外れることのない光の矢を飛ばしてワイバーンを撃墜し、敵船をも撃沈したと。さらには一撃で敵船を破壊する大砲を連続で打ち出したと……日本も日本でこちらも凄まじい戦果であるな」
「はい。ただ、海上自衛隊の船長曰く、ニホンの軍艦に積まれていた大砲はパーパルディア皇国の大砲を進化させたものだと説明をうけました。」
列強国と文明圏外の国が激突してしまえば圧倒的な結果となることが決まりきっていたがまさかここまで大戦果を上げるとは誰も信じられなかった。
「外務卿!日本国は必要最低限度の戦力しか持ってないのではなかったのか?」
「逆を言えばあの戦力を持たなければ国を守れなかったのであろう。日本の転移前の世界とやらは……」
「と、とにかく!今回の海からの侵攻は防げたが……残存勢力は未だ2000隻、ここまで手ひどくやられては警戒して海からの再侵攻には時間がかかるだろう。陸軍のほうはどうなっている?軍務卿?」
暗い話題を無理やり引き離したカナタは軍務卿へと話の話題を振る。
「現在ロウリア王国軍は、ギムの周辺陣地の構築を急ピッチで行ってるようです。海からの進撃が失敗に終わったため、電撃的に進行しここ、クワ・トイネを陥落させて一気にケリをつけてしまおうとしているようです。」
軍務卿は続ける。
「パーパルディア陸軍はモイジ団長をはじめ、ギムから撤退した兵を集めエジェイで防衛戦の構築を進めております。それに対して日本の動向についてですが、首都クワ・トイネの西方、大凡30kmの地点にあるダイタル平野、縦横3kmの貸し出し許可を求めてきております」
政治部会会場に設けられた地図へ青い印が付けられる。そこは城塞都市エジェイのすこし首都よりの場所であった。
「ギムと首都の直線上か……。日本はこの場所に陣地を構築するつもりなのか?」
「飛行機械の発着場……。つまるところ飛行場を構築したいとの申し入れがありました」
「あそこは何も無い平野で、土地も痩せていたな……。外務卿、日本に対して陣地構築の許可を与えよ。好きに使えとな。」
日本の要請を断る理由は無く、後日、同場所に日本は飛行場『クワ・トイネ公国救援基地』を建設することになる。完成すると航空自衛隊に加えてパーパルディア軍も使用したいとの申し入れがあり、日本としては異世界初の海外自衛隊基地を共同で運営していくこととなった。
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とある廃墟、そこで2つの影が会話を繰り広げていた。
『――サマ、ロウリアの連中は海上の争いでクワ・トイネに敗れ去ったそうです』
『なんだと?せっかく我が力を分け与えたというのになんとも情けない連中だ』
『……追加で物資などを送りつけますか?』
『ああ、海が駄目なら陸だ。改良したリンドヴルム、そして飼い慣らした魔獣を与えよ。勿論対価を払ってもらうがな』
『かしこまりました』
すぅ……と1つの黒い影が消え、残された影がつぶやく。
『くくく、封印されてから幾万年。ようやく陽の目を浴びることができたぞ……今度こそ人類を根絶やし……いや使役する奴隷にしてくれるわ』