レミール転生   作:久保田紅葉

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ちょっと駆け足になってしまいました。


エジェイ防衛戦ならびに東方侵略軍撃滅戦

 澄み渡る空の下ジューンフィルアは、2万の大軍が隊列を整え終わったのを確認して満足していた。よく訓練された兵たちが整然と並んでいる姿は壮大な眺めである。

 

 列強国のパーパルディア皇国やニホンなる国がいかに強くても、簡単にはやられはしないであろうと決めつけていた。

 

 するとどこからか奇妙な音が聞こえてきた。聞いたことのない音、まるで笛のようなヒュルルル……という音がだんだんと近づいてきて……。

 

隊列のあちこちで何かが炸裂して爆発し、轟音を轟かせていた。

 

「な……何だ!一体何が起こった!?」

 

 状況把握をする前に大爆発が立て続けに起こり、地面が破裂したかと思えば兵たちが一瞬にして消滅する。

 ジューンフィルアが壮大な眺めだと称していた兵たちがバタバタ倒れていた。

 

 

 

「なんだこれは……?敵陣で火山が噴火したのか?」

 

「いえ、あれはニホンとパーパルディアの砲撃でしょう」

 

「馬鹿な!奴らの基地からは10キロも離れているんだ!届くはずがない!」

 

 

 

 エジェイの城壁から双眼鏡を覗き込みながらノウとモイジは言い争っていた。5キロ先の丘にロウリア兵たちが整列したかと思えば爆発が巻き起こり、煙に包まれるロウリア兵、爆発と同時に命が散らされロウリアの兵隊たちがなぎ倒されていった。

 

 敵の錬度は高いはずである。隊列を整えるのも早く良く訓練されている。だが整然と整列していた兵たちの姿が掻き消えていた。

 

 そこには、華やかな戦いや騎士道は無く、ただただ効率的に虐殺されていく哀れなロウリア兵たちの姿があった。

 

 

 

「な、なんという威力の爆裂魔法だ……なんという魔力投射量だ。パーパルディアは理解できるがニホンの兵隊はすべての兵が大魔導師クラスなのか!?いや、大魔導師6000人でもこの威力は無理だ!日本は神龍でも味方についているのか!?」

 

「科学で発展した兵器であれば。大魔道師などいらずとも、訓練を積んだ歩兵による砲撃であれほどの爆発を起こせる。これでは戦争が変わってしまうな」

 

 

 

 城塞都市エジェイの城内から、クワ・トイネの住民たちは、ただ唖然としてその光景を眺めていた。

 

 ジューンフィルアは効率的に殺処分される大量の部下を見て絶望していた。今まで戦ってきた戦友、歴戦の猛者、優秀な将軍、家族ぐるみの付き合いのあった上級騎士、共に強くなるため汗を流した仲間たち。

 

 すべてが……虚しくなるほど、泣きたくなるほど、あまりにもあっさり死んでいく。しかし死神は、彼だけを逃がしてはくれなかった。

 

 押されたような衝撃とともに、ジューンフィルア自身の体がバラバラになって飛んでいく姿、それが彼の人生最後の記憶になった。

 

 小さな丘は耕されたように地面がほじくり返され、地肌がむき出しとなった丘、ロウリア軍先遣隊陣地だった場所に立っている者は馬を含めて1人もいなかった。

 

 ノウは眼前の攻撃を目にし、何と形容していいのか解らなかったがモイジは双眼鏡を覗き込み大きなため息を吐いた。

 

 

 

「……ここまで来てしまうと敵ながら憐れみすら覚えてしまうな」

 

「これが……パーパルディア、そして日本の……強さだというのか……なんと恐ろしい……」

 

 エジェイに待機していたクワ・トイネ兵たちはまだ1人もロウリア軍と戦っておらず、部下に死者は出ていない。本来喜ぶべきこの状況の中で、彼は1人敗北感を味わっていた。

 

 エジェイでの勝利は魔導通信を通じてクワ・トイネ公国臨時政治部会に持ち込まれた。

 

 

 

「エジェイから入電!エジェイは健在なり!」

 

 

 

 わぁっと歓声があがり舞い上がろうとしたところでカナタが大きく咳払いをする。

 

 

 

「それで、戦闘の詳細は入ってきているのか?」

 

「はい!日本とパーパルディアは共同で運営している駐屯地から攻撃を行ったと報告が入っております」 

 

「何を言っている……と言いたいところではあるがパーパルディアから供与された75ミリ野戦砲のことを考えれば駐屯地から攻撃を行えるのも頷けるな」

 

「……というがエジェイのノウ将軍は日本とパーパルディアと協力して防衛に当たれと指示を出したはずだが」

 

「そ、そのことなのですが……」

 

 

 

 ここでノウが日本やパーパルディアに対して露骨に嫌がり、防衛の要ともいえる作戦会議からの実質的な締め出しをしていたことが判明したのである。

 

 会場がざわつくが……首相であるカナタが会場を静まらせる。

 

 

 

「ひとまず……ノウ将軍の進退の話は置いておこう。手元の資料を見てほしい」

 

 

 

 マル秘と書かれた作戦書が議員に配布される。そこにはロウリア王国の首都、ジン・ハークを陥落させると言うものであった。

 

 

 

「ジン・ハークへの首都直接攻撃とは……」

 

 

 

「今回の作戦はパーパルディア皇国のみでの作戦となります。陽動作戦としてビーズルの爆撃、並びに連合艦隊でジンハーク港の砲撃を行い、敵の意識がそれたところを狙い、我が国から発進した航空機でジン・ハークを強襲、ハーク・ロウリア34世を確保したのち降伏宣言をさせるとの事だ。それに先立って日本がギムに駐屯している侵攻本部隊を攻撃する。日本の攻撃が成功すれば我が国も軍を送り、ギムを奪還したい」

 

 

 

 政治部会の会場がにわかにざわつき始める。

 

 

 

「別にいいんじゃないか?我々としてはメリットしかないが……」

 

「いや、他国の地上軍が侵攻するのは……どうなのだ」

 

「しかし、このままでは我が国は亡国一直線だ。日本とパーパルディアにやぶさかではあるが頼るしかないのではないか?」

 

「敵の首都攻撃……うまくいくとは思えないが……」

 

「しかし、うまくいけば、今回の戦争が終わる……。もっとも被害の少ない方法としてな」

 

 

 

 政治部会では、紆余曲折がありながらも全会一致で日本とパーパルディアの国内及びロウリアでの陸、海、空の戦闘許可を行った。

 

 

 

 

 

  ▲ ▼ ⏰️ ▼ ▲ ⏰️ ▼ ▲

 

 

 

 

 

 ロウリア王国占領下にあるギム、そこでいらつき貧乏ゆすりをしながらアデムは先遣隊からの通信が入るのを今か今かと待っていた。

 

 

 

「先遣隊に連絡はとれないのか!?」

 

 

 

 副将アデムが、机を叩きつけて軍の通信隊を怒鳴りつける。

 

 

 

「魔導士が必死になって魔導通信を送っていますが、返信がありません」

 

 

 

 昨日から先遣隊の定時報告すら無く、一切の通信を絶っている。

 

 

 

 先遣隊とはいえ、2万もの軍、1会戦としては非常に多い大軍だ。通信を送る前に全滅するなんて事は考えられなかった。

 

 

 

「偵察隊は?どうなっている?」

 

 

 アデムは念の為として偵察隊、ワイバーン12騎をエジェイへ向け放っていた。

 

 

 

「間もなく先遣隊の消息を絶った付近の上空です」

 

『こちら偵察隊!先遣隊が居たと思われる場所を見つけた!』

 

「先遣隊はどうなっている?全滅してはいないだろう!」

 

『ええと、その……』

 

「勿体ぶらずに早く言え!」

 

『陣地には何もありません。あるのは穴と耕された地面、そして何かが焼けたような跡です。動くものはありません』

 

「ぜ、全滅……だと?」

 

『くっ……!敵飛行機械が飛んできた!これより戦闘に入る!』

 

 

 

 数分の後、悲鳴のような魔信が聞こえてきた。

 

 

 

『魔導火炎弾が後ろに着いてくる!……もう駄目だ!助けてくれ!ガッ……――』

 

「おい!どうした!何があった!応答せよ!」

 

 

 

 しかしいくら話かけても魔導通信は雑音しか流さなくなっていた。

 

 

 「どうなっているのですかぁ!」

 

 

 

 副将アデムはイラついていた。悲鳴と共に12騎の偵察隊とは連絡が途絶え、戯言のように導力火炎弾がついてくる、といった言葉を最後に連絡が取れなくなっていた。

 

 

 

「現在偵察隊の第二陣が現場に急行しています……すぐにでも状況がつかめるかと」

 

 

 

 部下たちは冷や汗をかきながら言い訳のような説明をアデムにするがそれでも怒りは収まらないようである。

 

 

 

「それでは損害を増やすだけではないのか!たわけがぁ!」

 

「アデム君、少し落ち着いた方がいい」

 

 

 

 なだめるようにしてパンドールが話し始める。

 

 

 

「情報がない中で軍事行動をとるのはあまり好ましくない……であれば出来る事をしよう。本隊の護衛はどうなっている?」

 

「はい、ワイバーン隊50騎が直衛にあがっております。残りはギムの仮設竜舎で休ませています。もちろん、パンドール将軍の命令あれば、いつでも出撃いたします」

 

「直掩に50騎も?やけに多いような気がするけれど……?」

 

「先遣隊の通信切断、それに加えて第一次偵察隊の消失、パーパルディア皇国参戦の件も含めもしかしたら敵はとてつもない力を手に入れたのかもしれません。侵攻軍の本隊が壊滅してしまったら、今回のクワ・トイネ攻略作戦は失敗します」

 

「そうか……。」

 

 

 

 パンドール他ロウリア軍幹部の上空には多数のワイバーンが編隊を組み、乱舞している。その雄姿は何者が来ても勝てると思わせるほどの威容であった。

 

 しかし、その勇姿は一瞬にして消え去る。上空を乱舞していたワイバーンのうち、16騎が突如として煙に包まれ、人とワイバーンが肉片に変えられてバラバラと地面へと墜落する。さらに8騎に加えて、見えない何かによって24騎がいきなり撃墜された。

 

 

 

 「なっ何だ!?何が起こった!」

 

 

 

 やがて、東の空から黒い点が6つほど音も無く飛行機械が近づく、6機各機が2発づつAAM……空対空ミサイルを放つ。AAMは超高速で飛行し、それを避けようとするワイバーンに喰らい付き、12騎がバラバラにその肉体を寸断されて落ちていく。

 

 

 

 パンドールやアデムの上空を『飛行機械』は凄まじい速度で通り過ぎていく。まるで矢じりのような形、灰色に塗られた機体、後ろから炎を2本吐きながらそれは通り過ぎた。

 

 

 それが通過した直後、鼓膜がはち切れそうな音と衝撃波がロウリア軍を襲う。彼らが見たのは、マッハ2.5、約2,656km/hという猛烈な速度を出して上空をフライパスしていったF-15Jの姿だった。

 

 

 

「馬鹿な……速すぎる!」

 

「アレは一体なんなんだ!」

 

「クワ・トイネの奴らとはくらべものにならないぞ」

 

 

 

 ロウリア軍を恐怖が襲う……しかし、悲劇は待ってくれなかった。

 

 

 

 先ほど飛び去ったF-15Jが舞い戻ってくる。さらにAAMを2発づつ発射し精鋭のワイバーン騎士団が次々と。一方的に殺戮されていく……。

 

 ワイバーンの数こそが強力な軍と思っていた。これだけの数のワイバーンがいれば、炎神竜にさえ勝てると思っていた。

 

 それが……まるで何かのゲームのように一方的に撃破される。

 

 

 

「直掩騎……全機撃墜されました……」

 

 

 

 上空から精鋭ワイバーン部隊が一掃された。それを確認したように東の空からF-15Jとはまた違う青い機体、F-2が近づいてきているのがみえた。

 

 F-2が上空を通り過ぎたと同時に大きい何かが多数投下される。不気味な音を立てて落ちてくる物にパンドールの脳裏、先遣隊の消滅が頭によぎっていた。

 

 この時投下されたのはJDAM 500lb誘導爆弾、それを積載量一杯に積んだF-2による航空爆撃であった。

 

 

 

 「閣下!閣下ぁ!」

 

 

 

 光と轟音――。

 

 灼熱の業火がパンドールやロウリア侵略軍を襲った。

 

 将軍パンドールは彼の部下がとっさに覆いかぶさったおかげか五体満足のまま一命を取り留めたものの副将アデムとロウリア東方侵略軍は光と爆発音で共にこの世を去った。

 

 

 

『こちらヴィザード04。ミッションコンプリート、基地に戻る(RTB)

『クワトイネコントロール了解、ヴィザード04。クワ・トイネ軍が進撃を開始した。誤爆に注意せよ』

『こちらヴィザード04了解』

 

 

 

 短い通信を終えてパイロットはロウリア王国の首都ジン・ハークの方向を見つめていた。

 




透き通るような世界観の連載を始めました。
不定期更新ですが書き溜めたら投稿していくようにします。
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