レミール転生   作:久保田紅葉

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パーパルディアと国交を成立しているので原作時空よりもやや早い接触となっております。


ムーと日本の接触

 すこし風はあるものの空は晴れ渡り、雲は遠くに少し浮かんでいるのが見えるのみであり、視界は極めて良好である。

 

 暑かった気候もやや落ち着きを見せ、過ごしやすい日々を過ごせるようになって来たある日、ムー統合軍所属の技術士官マイラスは軍を通じて伝えられた外務省からの急な呼び出しを受けていた。

 

 外務省からの呼び出しは、港湾・商業都市マイカル、その玄関口でもある軍民共有空港アイナンク国際空港だった。

 

 アイナンク国際空港はムー国内を結ぶ国内線と神聖ミリシアル帝国やパーパルディア皇国を結ぶ国際直通便が民間航空会社によって就航しており一般市民から富裕層まで幅広い利用があった。

 

 パーパルディアの蒸気戦車を参考にした内燃機関を搭載した自動車と呼ばれる乗り物に乗り込み、技術士官マイラスはアイナンク国際空港に到着した。

 

しかし、わざわざ国際空港に呼び出すとは、いったい何だろうか?そんなことを考えながら控え室で待つこと30分ほどすると、軍服を身に纏った軍人、外交用礼服を着た外務省役員、そしてパーパルディア大使館職員の3人が部屋に入ってくる。

 

 

 

「彼が技術士官のマイラス君です」

 

 

 

 軍服を着た者が外交用の礼服を着た者に紹介する。

 

 

 

「我が軍1番の、技術士官であり、この若さにして第1種総合技将の資格を持っています」

 

「技術士官のマイラスです。本日はよろしくお願いします」

 

 

 

 マイラスはニッコリと笑い、外交官や大使館職員と握手を交わし椅子に腰掛けて話が始まる。

 

 

 

「今回君を呼び出したのは他でもない。新たに接触をしてきた正体不明の国の外交官を案内をしてもらいたいのだよ」

 

「もしかして……グラ・バルカス帝国の事ですか?」

 

「いや、違う。新興国家だ。パーパルディア皇国からの紹介で日本国という。外交官を乗せたパーパルディアの政府専用機がここ、アイナンク国際空港に向かって来ている。我が国と国交を開きたいと言ってくる国は珍しい事では無いが、問題は、パーパルディアからの伝ではパーパルディア、いやミリシアルよりも技術力は上……だという」

 

「そんなまさか……」

 

「そして彼の国の機械は魔力感知器にも反応が無いので、魔導文明ではない。機械によるものであると思われる」

 

「そうですか…………、にわかには信じがたいです」

 

「しかし……パーパルディアの情報が間違っている可能性もある。彼らの言い分によれば、日本は第3文明圏フィルアデス大陸のさらに東に位置する文明圏外国家とのことだ」

 

「そこで……マイラス君、外交官たちが我が国との会談は1週間後に行われるが、その間に彼らを観光案内し、我が国の技術の高さを知らしめると共に、相手の技術レベルを探ってくれ」

 

「わ、解りました」

 

 

 

 軍人と外交官が部屋から出ていった後、技術士官のマイラスはなぜ私が案内を?と首を傾げるが、上層部の判断は間違っていなかったことを思い知ることとなった。

 

 

 

 

 

 ▲ ▼ ⏰️ ▼ ▲ ⏰️ ▼ ▲

 

 

 

 

 

 20分後、パーパルディアからの専用機フライトライン号がアイナンク国際空港へと着陸し、タラップが横付けされると二人の外交官が降り立った。

 

 

 

「大変お待ちしておりました。今回会談までの間、ムー国の事をご紹介させていただきます、マイラスと申します」

 

 

 

 そこには迎えの自動車と案内人であるマイラスが待機しており、お互いに握手をする。

 

 

 

 「出迎えありがとうございます。私は日本国外務省所属の御園です。今回ムー国をご紹介いただけるとのことで、ありがとうございます。こちらにいるのが……」

 

「同じく日本国外務省所属の佐伯です。会談の補佐をさせていただきます。」

 

「お二方よろしくお願い致します。具体的にご案内するのは明日からとして……。長旅でお疲れでしょうから、今日はこの空港のご案内の後に、都内のホテルにお連れします」

 

 

 

 横付けした自動車に3人は乗り込む。マイラスは外交官の二人が何の違和感もなく自動車に乗り込んだことに驚いた。

 

 

 

「日本でも自動車が走っているのですか?」

 

「はい、乗用車のみであれば、日本で約5942万台が走っています」

 

「そ……そんなに走っているのですね」

 

 

 

 空港出口へ行く前に、空港格納庫内に外交官二人を連れて行く。

 

 格納庫に入ると、銀色に輝く機体に青のストライプが入れられ前部にプロペラが付き、その横に機関砲が2門、両翼にも2門の機関砲が取り付けられていて、車輪は格納式となっている一機の単葉機が鎮座していた。

 

 ピカピカに磨かれており、整備が行き届いた機体だと推測される。

 

 

 

 「ご説明は不要かと思いますが……この鉄龍は、我が国では航空機と呼んでいる飛行機械です。これは我が国最新鋭陸上戦闘機「テラズ」です。最大速度は、ワイバーンロードよりもはるかに速い590km/h、、胴体と両翼に12.7ミリ機関砲を4門を装備した第二文明圏、いや第一文明圏と比べても最強の戦闘機といっても過言ではない傑作機です」

 

 

 

 自信満々にマイラスは説明をするが御園と佐伯は驚いたような顔をする。それほど我が国の戦闘機は素晴らしいものだと確信していたが……。

 

 

 

「ま、マイラスさん。この機体はレプリカではありませんよね?」

 

 佐伯は興奮したようにマイラスへと問いかける。

 

「え、ええ。我が国で採用されたばかりの最新鋭機体です」

 

「まさか三式戦闘機をムー国が運用しているとは思いませんでした」

 

「三式戦闘機……とは?」

 

「はい。我が国で70年以上前に運用されていた戦闘機と瓜二つなのです」

 

「こんな偶然があるなんて珍しいこともあるものですね……写真撮影してもいいですか?」

 

 

 

 三式戦闘機『飛燕』……第二次世界大戦期、大日本帝国陸軍の戦闘機であったが当時液冷エンジンを搭載したのが当機だけであったためにエンジンの生産に大変苦労していた。そのため機体があっても乗せるエンジンがないという、いわゆる首なし機体が大量に発生していた。そこで別のエンジンを積んだ五式戦闘機というのが生産されたが今回は割愛させていただく。

 

 

 

 その言葉を聞きマイラスは1つ探りを入れてみることにした。

 

「日本ではもうサンシキセントウキは使用していないのですか?」

 

「はい、日本ではジェットエンジンと呼ばれる航空機に適した小型高出力エンジンを搭載した戦闘機を使用しています。もちろん、レシプロエンジンの飛行機も運用していますよ」

 

 

 

「そ、速度はどのぐらい出るのでしょうか……?」

 

 

 

 マイラスの質問に対して御園と佐伯は目を合わせると背中でヒソヒソと話をしている。

 

 

 

(どうします?正直に伝えても大丈夫なのですかね?)

 

(ま、まあ現代戦の速度は戦闘性能にあまり関係ないし、国内の一般市販本にも色々F15等の性能も記載してあるから、国交が結ばれたら判明するから隠すこともないか……)

 

 

 

「戦闘機であれば、我が軍の主力戦闘機であるF-15J改が最高速度マッハ2.5くらいです。音速の2.5倍ですので……大凡2,656km/hほどですね。旅客機であれば、対気速度で時速850km/hくらいが巡航速度です」

 

「お、音速超えですか……ハハ、すさまじいですね」

 

 

 

 マイラスは精神的に疲れてきた。再び車に乗り込むと空港敷地から出ると整地された道路を走り宿泊予定のホテルへと向かう。

 

 その道中、大通りに出ると路面電車や他の乗用車や乗合自動車と一緒に走行する。

 

 

 

「……まるで高度経済成長期の東京みたいですね」

 

「ハハ、人口が集中してしまうとやはり混雑してしまうのはどの国でも一緒なのですね」

 

 

 

  やがて、高級ホテルが見えてきた。

 

 車はホテルに横付けされ、皆はホテルへ入る。

 

 

 

「明日は、我が国の歴史と、我が国の海軍の一部をご案内いたします。今日はごゆっくりとお休み下さい」

 

 

 

 マイラスは、日本の使者にこう伝え、ホテルを後にした。

 

 

 

 

 

 

 翌日、日本の外交官とマイラスはマイカル海軍基地にいた。日本に対してムーの……列強で最強かもしくは2番目の海軍力を誇るムーの姿を見せ付けるためであった。

 

 (資料によればニホンの軍艦は回転砲塔の砲が1門しかついていない。しかもおそらくは12か13センチクラスの砲……だが何かしらの細工がしてあるはずだ、だが……)

 

 戦艦ラ・トナガの主砲は41センチ連装砲が4基、合計で8門だ。

 

 砲撃の威力は口径の3乗に比例すると言われており、撃ち合えばよほどの事が無い限り勝てるだろうとマイラスは考えた。

 

 港には、ムー国海軍の最新鋭戦艦ラ・トナガが停泊していた。

 

 

 

「御園さん、見てください。戦艦ですよ、戦艦!!!やはり戦艦は男のロマンですね!!写真いいですか!」

 

「え、はい……」

 

「うっひょう!生きている戦艦だあ!」

 

 

 

 佐伯が子供のようにはしゃぎ始める。どこからかカメラを取り出してはラ・トナガの写真をカメラに収めていた。

 

 

 

「佐伯さん……ちょっとはしゃぎすぎですよ。しかし……戦艦までそっくりとは、まさか生きている内に戦艦長門を見られるとは夢にも思いませんでしたよ」

 

 

 

 御園の言葉にマイラスは衝撃を受けていた。戦艦がそっくり……?何かの間違いではないか?それともまさか……日本にも戦艦が就航しているのか?

 

 だとすれば、何故砲がたった1門の艦を作る?マイラスは探りを入れた。

 

 

 

「日本にも戦艦があるのですか?」

 

「あ、はい。かつての戦争……約70年前の世界大戦までは、日本も立派な戦艦をいくつも持っていたのですよ。敗戦後は、時代の流れもあって、戦艦は作られませんでしたが……」

 

「なるほど……過去にあった世界大戦とやらの戦いに敗れ、戦艦が作れなくなったと……そして平和な世界になって、戦艦が不必要となったということですね」

 

 

 

 だとしても国防上の観点でいえばたった1門の海防艦程度の火力で自衛できているのだろうかとマイラスは思った。

 

 (待てよ?戦艦が作られなくなった?ということは、もしかして日本は戦艦を作る能力があるのか?もう少し詳しい話を聞いてみるか)

 

 

 

「日本は今世界に転移してきたとの事ですが、今後戦艦を配備する計画はあるのですか?」

 

 

 

 御園は驚いたような顔を見せてフッと笑った後に答える。

 

 

 

「戦艦ですか?……現時点では配備予定はありませんよ」

 

「この世界は弱肉強食ですが、何故戦艦を造らないのですか?」

 

「うーん、防衛省ではないので、具体的な事はお答えしかねます。申し訳ありませんが」

 

「そうですか……ところで、先ほど日本の艦に似ているとおっしゃっていましたが、日本にも似た艦があるのですか?」

 

「あ、はい。日本では長門と呼ばれる戦艦がありました。約95年前に日本が大日本帝国と呼ばれていた時代に日本独自で建造した連合艦隊の旗艦です。この艦があそこに停泊している戦艦、ラ・トナガにそっくりに見えましたので……」

 

 

 

 戦艦長門 1919年に進水し、連合艦隊の旗艦となる。

 

 関東大震災の際に支援物資を満載し東京へと急行した、第二次世界大戦時には連合艦隊旗艦を大和へと変わったものの1945年に終戦を迎える。

 

 その後、アメリカに接収された長門は1946年にアメリカ合衆国の核実験、『クロスロード作戦』において標的艦となり二発の核爆発に耐えたのち、ビキニ環礁で沈没した。

 

 

 

 「ほうおおよそ100年も前の艦ですか……」

 

 

 

 日進月歩の機械動力戦艦で、100年もの歳月をかければ劇的な進化を起こすようである。マイラスは認めたくないが、日本はムーよりも……機械文明が遥かに進んでいるようであった。

 

 しかし、今の日本には戦艦が無い。だとすればあの砲が1門だけの艦が戦艦よりも強力には思えない。何か戦艦に匹敵する攻撃方法があるのか、もしくは本当に金食い虫の戦艦は必要が無い平和な世界だったのであろうとマイラスは考えた。

 

 しかも技術は継承が重要である。戦艦が作られなくなってから70年も経過しているのであれば、おそらく戦艦の建造方法は日本にとってロストテクノロジーのはずであった。

 

 海軍基地の案内の後、マイラスはムー歴史資料館にいた。そこでムーの歴史……転移国家であり、転移元は地球であること、そして日本とムーはかつて友好国であったこと。

 

 技術士官マイラスからもたらされた報告書がムー首脳陣伝えられる。

 

 受け入れられないような内容の報告書であったが特に敵対してくる訳でもなく高技術が手に入るかもしれない。レイフォルをいとも容易く滅ぼしたグラ・バルカス帝国の脅威が存在するこの状況下にあって、友好的な態度をとる日本国を拒否する理由は無く、ムーは日本との国交を結ぶ事になる。




はよ本編すすめろと思われそうですがもう数話閑話をお楽しみください。
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