……ドウデュースの有終の美見たかったなぁ
「うぅん……これでは我が種族の未来は明るくはないかもしれない……」
クワ・トイネ公国公都クワ・トイネから北に700キロほど離れた村、そこを治めているエポナ族のダレーは頭を抱えていた。
エポナ族はクワ・トイネ北東部に分布する亜人族であり、ヒト族やエルフ族と明確に異なる点としては「馬の耳」と「馬の尻尾」、そして「驚異的な身体能力」を持っている。
……何故か理由は不明であるが女性のみで構成された種族であり、男のエポナ族は100年に1人いるかいないかという非常に男女差に偏りのある種族であった。
だがその身体能力は優秀そのものであり、その力を活かしクワ・トイネ公国に古くから仕え、駅馬車や荷馬車の代わりとして、時には戦場の伝令兵へとして歴史に名を刻んでいたが……今その役目を奪われようとしていた。
「鉄の長蛇や馬のいない馬車……あれがクワ・トイネに普及するようになってから我々の仕事は次々と奪われてしまった……今まで出稼ぎに出ていた若い娘たちが仕事を失い田舎にもどってきている。今まで公国へ貢献してきたというのに、そして何より自慢の脚を活かせなくなることが悔しいわ……」
ダレーは拳を強く握る。パーパルディアや日本から伝わってきた鉄道や自動車の普及によって職を失ったエポナ族が大量に出てきたのである。勿論港での荷役人夫といった力仕事に就いていた者たちの仕事は奪われることがなかった。しかし、脚を使う仕事をしていた者たちはその大部分が仕事を失い故郷であるエポナの里へと戻ってきたのである。
「ここでは食うに困らん場所であったのが幸いだけど……、このままじゃいけない……何か現状を打破する手立てを探さないと……」
「族長!オレ様に良い考えがあるぜ!」
族長ダレーの扉を勢いよく開けたのは黒い長髪に頭のてっぺんから顔の正面の毛先に白い流星のあるエポナ族の一人、サンデーであった。
「サンデー……一体どうしたの?」
「何、簡単な話さ。オレ達の祭りを見せつければいい。ついでに勝利の舞やエポナ飯を振る舞ってやって金を稼げばいい」
エポナ族の祭典……それはエポナ氏族たちが集まり互いに脚を使って競い合い、その年一番早く強いエポナを決める祭りである。
「祭りを……ね。だけど一体どこで行うの?」
「……ニホンさ」
「ニホン?最近国交を結んだ国じゃない。クワ・トイネじゃ開催できないの?」
「聞いた話にゃニホンじゃオレたちが作るのに一月はかかる催事場、それよりも立派なケイバジョウっつーのがいくつも建っている。クワ・トイネには1つもない。そこでオレ達の祭りを見せつけるのさ」
「村の者が同意すればいいが……できるのか?」
「知り合いに外務局の役人がいるんだ。上手くやればニホンで祭り事が出来るはずだ。」
不安が残るが、サンデーの言葉を信じる他ない。
その日のうちにサンデーは公都クワ・トイネの外務局に顔を出していた。
「……何?国家交流を名目してトウキョウケイバジョウとやらでエポナ族の祭りをしたいということであるな」
「そういうこった。で?できそうなのか?」
「こればっかりは
日本国外務省からの返答は2日後に届く。結果として異種族交流の名目で開催の許可を取り付けた。
これには族長のダレーも大喜び。他のエポナ氏族の長を集め、大慌てで祭りの準備を進めるのであった。
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それから1ヶ月、残暑が未だ残るもののだんだんと秋めいてきた9月中頃、東京都府中市、東京競馬場でエポナ族による祭典『クワ・トイネ公国記念エポナダービー』と称されたイベントが開催されることとなった。本当は『エポナの祭典』という名前であったが開催を許可した
2日間のイベントのうち、1日目はエキシビション戦が行われ、非常に盛り上がりをみせており、エポナ族のレジェントと呼ばれるエポナ娘たちによるエキシビション戦、その合間にはエポナ族による勝利の舞の披露や野菜をふんだんに使用したエポナ料理を楽しめる屋台街が展開されていた。
2日目はいよいよ祭りの本番となる。午前中は今年初めて祭典に参加するエポナ娘たちによるレースが開かれ、休憩を挟み午後からはそれぞれの距離でのエポナ族の一番を決める競争が始まる。
各距離の争いにアナウンサーがそれぞれあてがわれ実況・解説を行い、さながら休日の競馬中継のようになっていた。
短距離……1200メートルの争いではクラバクとカルスト、そしてカナロアというスプリント自慢のエポナ族が覇を競って争い今回はクラバクが見事先頭でゴールを駆け抜けた。
短中距離……1600メートル、短距離からやや距離が長くなった争い、タイキやピロイナー、ニチオーといったエポナ族が争ったがなんと大穴であるゼファーが差し切り勝ちを収めた。
長距離……3000メートル、短中距離の倍の長さがあるためスタミナととっさの判断力が勝敗を分ける争い。氏族の中から体力自慢が集まり、黒い運び屋と呼ばれたライシャが先頭で駆け抜けることとなった。
そしていよいよ最後の競争、中距離の王者を決めるレースが始まろうとしていた。
『栗色の髪を靡かせ颯爽と登場、一番スズカ』
『名優の勝利は譲らない、二番マック』
『男勝りな豪快な勝ち姿を見せられるか、三番ホリールカ』
『白い軍服は勝利の証、四番テイオー』
『この勝利を特別なものにしよう五番、スペシャル』
『府中の舞台でも歓喜の聖歌を上げることができるか、六番オペラ』
『最速の足は府中に轟くか、七番タキオン』
『芦毛の怪物、八番キャップ』
『赤いマスクは勝利への道しるべ、九番コンドル』
『皇帝の名を日本へ、そして世界へ、一〇番ルドルフ』
『鼻のテープは勝利の証、一一番ブライアン』
『大王よ世界へ羽ばたけ、一二番カメハメハ』
『芝生の演出家はターフへといざなわれた一三番、シービー』
『脅威の末脚で全てを撫できるのか、一四番インパクト』
『女傑は日本をも制するのか、一五番エア』
『姉の背中を追い求め、ついにこの時がやってきた、一六番ビスタ』
『真紅の瞳に勝利を宿して、一七番スカーレット』
『暴君は日本をも制するのか、一八番オル』
『……以上18人のエポナ族によって争われます』
東京競馬場貴賓席、そこには3人のエポナ氏族長の姿があった。
「あら、バイリターク。……随分と可愛らしい人形を買い込んだようですけど」
「げ、パルプ。いやこれはだな……里に残った子どもたちへの手土産としてだな……」
「そうなの?まぁそういうことにしておきましょうか。それで……どの娘が勝利を収めると思いますか……?」
「それはいわなくともわかるであろう。マック、もしくはテイオーかルドルフのどちらかだ」
「あら?私の娘たちが勝つに決まっているじゃない。バイリターク」
「ダレー……今日の祭典は貴女のとこの娘ばっかりじゃないですか。私のところなんて……」
「そう気を落とすなパルプ。アンタの敵は私たちの娘がとってくれるさ」
自衛隊音楽隊のファンファーレが高らかに鳴り響く中、発馬機の中に続々と選ばれたエポナ族の娘たちが収まっていく。
――……続々とゲートインが進んでおります。エポナダービー、最後大外枠のオルがゲートに……収まりました。体制完了!
勢いよくゲートが開かれ東京競馬場を埋め尽くした大歓声と共に各エポナ氏族たちが一斉に駆け抜けていく。
――先頭はスズカ、後続と5馬身ほどのリード!二番手にはスカーレットそれをマークするようにマックとテイオー、オペラ、タキオンここまでが第二集団、コンドルとキャップはが並んでその後ろルドルフ、カメハメハ、エア、ブライアンは塊のまま中団で動きません。
――ホリールカは後ろからいく作戦か。スペシャル、姉の後ろにビスタがつけました。オル、早仕掛けなのかじわりと上がっていく。
――シービー、インパクトは未だ後方、第一回エポナダービー、それぞれの想いを乗せて駆け抜けていく!1000メートル通過タイムは57.4!非常に早いタイムですが勝負の行方はまだわかりません!
第三コーナー、そして大ケヤキを超え先頭は以前としてスズカが逃げている。会場からどよめいているが次第に歓声へと変わり第四コーナーを向かっていく。
――先頭は依然として一枠一番スズカ!大欅を向こう側を駆け抜けて各エポナ娘が駆け抜けていきます!
――第四コーナーを回って直線へと向かう!数々の名場面を産んだ府中の直線525メートル!それぞれの想いが横一線にならんでいる!これはわからない!これはわからない!
『行け!逃げちまえ!』
『テイオー頑張ってー!』
『シービー!差してけー!』
名も知らない観客たちの大歓声が最後の直前へと向かったエポナ族の娘たちへと注がれ、夢の祭典は最高潮に達し、『第一回、クワ・トイネ公国記念エポナダービー』大成功を収めた。
これを契機にエポナダービーは日本各地の競馬場を巡りながら開催されていくことになり、第三文明圏のパーパルディア皇国も興味を示したことでエポナ族による『エポナダービー』は第三文明圏にも浸透していくこととなった。
どのエポナ娘が先頭で駆け抜けたかはご想像にお任せします。
……というかここ数話タイトル詐欺してますね。次話はちゃんと主人公を出します。ハイ