レミール転生   作:久保田紅葉

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文明開化はいいものだ……


パーパルディアの夜明け

 ある日のパラディス城の皇帝執務室にルディアスと私。それに改革派のカイオスがいた。私はムー国との技術協定に関しての報告、カイオスは腐敗しきった臣民統治機構の状態について独自での調査を要請していた中間報告を受けるためであった。

 

 

 

「先日の技術協定のお陰で研究用の蒸気機関が兵研……失礼、技研に運び込まれています。さらにムー国の技術者との交流で我が皇国での蒸気機関の量産は半年以内に実行できるかと」

 

 

 

 私が所長に就任し先進兵器開発研究所改め先進科学技術研究所、通称技研では新技術やブレイクスルーを見つけ出そうと研究を進めている。一部行き詰まった場合、私が口を挟むことがあるがほぼ独力でムーとパーパルディアの技術者たちが日々努力している。

 

 

 

「いい感じだね!その調子で頼むよ」

 

「技研によって皇国が発展するのは喜ばしいことですが……しかし!皇帝陛下にはこちらにもしっかりと眼を通していただかなければなりません」

 

 

 

 内密に調査を行っていた臣民統治機構の腐敗は凄まじいものがあった。私が転生してから数ヶ月は経とうとしているがその全体を把握しきれていない。数が膨大というのも1つの原因らしいが、最もパーラス等による統治機構上層部の妨害工作によって調査が思うようにいっていない現状をカイオスが嘆いていた。

 

 

 

「把握できているだけで犯罪組織から賄賂に加えて地方領民からの搾取、領民への暴行、ならびに強姦。不必要な処刑。全く嘆かわしいことだよ……」

 

 

 

 ルディアスが目元を抑えながら渋い顔をしている。上層部から腐っているので自浄作用も期待できない。皇帝自らが粛正を正すか首を挿げ替える他ない。早急に臨時帝前会議の開催をしなければと合意したところで執務室の扉がノックされる。どうやらルディアスの相談役ルパーサが呼びにきたようであった。

 

 

 

「皇帝陛下、レミール殿下それにカイオス局長。お仕事中失礼致します。そろそろ出発式典のお時間となりのでご準備をお願いいたします」

 

「もうそんな時間なのか。今すぐ向かおう。」

 

 

 

 

 

 ▲ ▼ ⏰️ ▼ ▲ ⏰️ ▼ ▲

 

 

 

 

 

 ルディアスと私を乗せた馬車がエストシラントに設けられたエストシラント中央駅へと辿り着くと軍楽隊の音楽と共にエストシラント市民から熱烈な歓迎を受けた。それもそのはず、ムー国の技術供与を受けつつも皇国で初めての開通した鉄道の出発式が行われるのである。

  ここエストシラントを出発点として北部の聖都パールネウスを経由し城塞都市アルーニまでを結ぶ路線でパーパルディア本線と仮称されていた。

 

 

 

 鉄道の開通……これは有事の際に軍隊の移動のみならず物流の改革という国を豊かにし自国の経済発展、そして軍事力を強化できるという富国強兵の要と言っても過言ではなかった。

 

 

 

「ルディアス陛下お言葉をお願いいたします」

 

「うん。わかった」

 

 

 

 出発式典で司会から言葉を求められたルディアスが壇上に上がると割れんばかりの大歓声が巻き起こる。歓声が収まってからルディアスは口を開く。

 

 

 

『皇国は遅咲きながらも開化期を迎えようとしている。パーパルディア本線はその始まりに過ぎない。やがて我が国皇国は列強へと追いつく。そのためには諸君たち皇国民の力が必要不可欠である。協力してもらえるだろうか!』

 

 これまた大歓声が上がる。嬉しそうにするルディアスは歓声に見送られつつそのままアルーニ行きの一番列車へと乗り込んだ。私も勿論乗り込みカイオスやエルトといった主要機関の局長達も乗り込みこんで後は出発を待つのみというばかりである。

 

 私とルディアスは6人掛けコンパートメント席に2人で陣取る。他にも空いてる席があったのかカイオスやエルトと言った重鎮たちは分かれて座っている。どうせなら一緒のコンパートメントに入ればいい。と言ったのになぜか遠慮されてしまった。おかげ二人きりになれたので良いのだけれど。

 

 

 

「お疲れ様、ルディアス」

 

「久しぶりに民衆の前に立ったのは疲れるね……」

 

「ふふっこれからもっと増えると思いますよ、はいどうぞ」

 

 

 

 保温魔法を施した水筒から温かい紅茶を注ぐ、これは技研の開発品の試作品で水筒の技術自体はムーから伝わって来たものであるがこれに保温、もしくは冷却魔法を施した所謂魔法瓶のようなものである。

 

 

 

「済まないねレミール。…………」

 

 

 

 紅茶を呑んで少し落ち着いたようであり疲れ切っているように見えた顔には少しやすらぎが見えた。

 

 私の前だけでしか見せない弱気な姿、可愛いとしか言いようがないがこれでは皇帝の威厳も何もない。少ししゃきりとさせなければいけない。

 

 

 

「ほら、貴女はパーパルディア皇国の皇帝陛下なのですよ。もっとしゃきりとしてください。」

 

「う、うん……そうだよね。ごめんレミール。弱気になってちゃダメだな」

 

 

 

 ルディアスが元気を取り戻したようで何よりである。それとときを同じくして機関車の汽笛が鳴り響き機関車と特別編成の客車7両を連結した特別列車はゆったりとした足取りでエストシラント中央駅のプラットホームを出発し、一路城塞都市アルーニへと向かう。

 

 列車を追いかけていた馬車や人間がいたが列車はどんどんと加速していくとついに追いつける者はいなくなりエストシラント郊外の広々とした草原地帯へと抜け出した。

 

 

 

「そういえばこの列車は一体どれぐらいの速度を出せるんだい?」

 

「えーっと……確かここにカタログが……」

 

 ルディアスがふと疑問に思ったのか質問をする。ムー国から輸入した時にもらった資料があったはず……あったあったご丁寧に写真まで添付してある。そのム・テシィ型機関車と名付けられた写真は大英帝国製、グレート・ウェスタン鉄道の3700形蒸気機関車にそっくりであった。

 

 

 

「理論設計最高時速は160㌔ですが……脱線事故を防止する目的で100㌔程度で収めるよう国鉄側につたえてはあります。それでも以前は数ヶ月掛かっていたアルーニまでの移動が半日程度に短縮されたのです」

 

「列車の速度を落としたとはいえ、半日もあればアルーニまで辿り着けるのか、科学技術というものは素晴らしい物であるな。こんなことならいち早く取り入れるべきであったな」 

 

「はい、いずれは皇国中を鉄道という波が駆け巡ることとなるでしょう……そんなことより今は鉄道の旅を楽しみましょう。帝都防衛隊のワイバーンも見送りにきたようです」

 

 

 

 ワイバーンが数騎編隊を組んで並走している。そして祝砲のように火焔を打ち上げて去っていった。アルデが仕込んだサプライズのようである。

 

 

 

 軍にも見送られながら列車はひた走る。道中の小規模な駅は通過し、昼過ぎはパーネウス、夕方には目的地である城塞都市アルーニへたどり着いた。

 そこで演説をするとアニールで一泊、朝一番の列車でエストシラントに戻る予定であった。




ストックがなくなってしまったのでまた書き溜めます……
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