フェン王国、首都アマノキそこにある王城では剣王シハン、剣豪モトム、パーパルディア皇国の外交官の姿があった。
「剣王様。次回フェン王国で開催される軍祭に我が国の盟友、ムー国が参加を申し出がありました」
「おお!ついに第二文明圏、それもムーからの参加だとな!いやはや今年の軍祭は大いに盛り上がるであろうな!」
シハンが大きな笑い声を上げながら笑う。10数年前までは考えられないことであったからである。
前々回に初めて文明国のパーパルディア皇国海軍が参加したが今回はそれ以上に盛り上がりがありそうであった。
「それと……我が国の大使館を経由して日本という国が国交を開くために交渉したい。そうおっしゃっていますがどういたしますか?」
会談の最中パーパルディア大使から日本という国について問われたシハンは首をひねる。
「日本?ガハラ神国から言伝で聞いたことがある。ガハラの東側にある新興国家らしいが……、あの辺は小さな群島しかなく船で訪れようにも海流が乱れて到達できない島々のはず。各島の集落が集まって国でも作ったのか?」
「いえ、彼の国は国土がおおよそ37万6千平方メートル、人口はなんと我国と同等の1億2千万人がおります」
「1億2千万人?大使殿、冗談も大概にしてはくれないだろうか」
シハンはパーパルディア大使の言葉を全く信じていないがパーパルディアの外交官は話を進める。
「ですがこの情報は事実であります。ガハラ神国は我が国と同様にすでに日本国と国交を結んでおり、そにあるのは群島ではなく、4つの大きな島から成り立つ列島で、列強……パーパルディア皇国をも超える超文明を実現しているのです」
「ほう……列強を超えるのは言い過ぎとしても、ガハラ神国やパーパルディア皇国がそこまで褒めるのであれば、それなりの国家なのだろうな」
剣王は他の側近らを集め日本の外務省との会談を開くこととなった。
数日後、日本国外務省の外交官である島田平治はアマノキ城で剣王シハンとの会談に臨んでいた。
「なんというか……身が引き締まるな」
アマノキ城まで向かう道中、厳格な雰囲気が国中に漂っているのを剣道7段の島田は感じ取っていた。武士が治めていた古の日本のような国……これが島田が感じ取ったこの国イメージだった。
生活レベルとしては低く国民は貧しい。しかし、精神レベルは高く誰もが礼儀正しく接している。日本が忘れた真の武士道のようなものがそこにはあった。
「剣王が入られます」
側近でもある剣豪モトムの声があがる。島田は思わず立ち上がり深々と礼をする。
「表をあげよ。そなた達が、日本国の使者か」
「はい……貴国と国交を開設したく思い参りました。ご挨拶として我が国の品をご覧下さい」
剣王の前には、様々な日本の『物』が並ぶ。日本刀を始めとして着物、和紙、真珠のネックレス、和紙でできた扇子、輪島塗の漆器等……。
剣王は一通り日本の物を眺めると日本刀を手に取り、引き抜く。
「ほう……これは良い剣だ」
「ありがとうございます」
気を良くしたシハンに島田はホッとしつつも話が始まる。事前に聞いた日本からの提示条件と、日本からの書類に間違い無いか確認する。スムーズに会談が進んでいく中、シハンがふと呟く。
「失礼ながら……私はあなた方の国、日本を良く知らない」
「日本からの提案、これはあなた方の言う事が本当ならばすさまじい国力を持つ国と対等な関係が築けるし、夢としか思えない技術も手に入る。我が国としては、申し分ない」
「それでは……」
島田の顔が明るくなる。それを遮って剣王は話す。
「しかし、国ごとの転移や海に浮かぶ鉄船等、とても信じられない気分だ」
「それは、我が国に使者を派遣していただければ……」
「いや、我が目で見て確かめたい」
「と……いいますと?」
「貴国には、水軍として、海上自衛隊というのがあり、護衛艦群というのが4つあると聞いた」
「確かに海上自衛隊という自衛組織ありますが……」
「その護衛艦群のうち、1つでも親善訪問として、ここに派遣してくれぬか?今年は軍祭の年であり、我が国の水軍船から廃船が出る。それを敵に見立てて攻撃してみてほしい。要するに……貴殿たちの力が見たいのだ」
島田は面を食らった。通常、他国の軍が国交も無いのに来るというのは、威嚇であり、細心の注意を払うが、シハンの言う軍祭は違うのだろうか。
「かつてパーパルディア皇国が軍祭に参加した時もこのような状況であったからな。前例はある」
笑顔を見せるシハン。非常に嫌がるのが普通であるのに、この国は「力を見せろ」という。しかも首都アマノキの沖に持ってこいという。
異世界で、しかも武の国だから、そんな事もあるのかな?と思い本国に報告、近日中に訓練も兼ねて護衛隊群が派遣される事が決定した。
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フェン王国 首都アマノキ 上空
ガハラ神国所属の風竜騎士団長スサノウは、フェン王国の首都上空を飛行していた。
5年に1回開催する「軍祭」が行われるためガハラ神国の親善武官として、風竜3騎で上空を飛んでいた。
軍祭は文明圏外の各国の武官も多数参加し、武技を競い、自慢の装備を見せあう。いわば観艦式のような行事である。各国の軍事力の高さを見せる事により、他国を牽制する意味合いもあった。
かつては文明圏の国の参加はなかったが前々回、パーパルディア皇国が初めて参加し、今回はなんと第二文明圏のムーが参加を表明し、より一層の賑わいを見せていた。
スサノウは、上空から下を見ると常軌を逸した大きさの灰色の船8隻、そして大小様々な灰色の船が12隻、そして人一倍巨大な船を引き連れた10隻の船がみえる。
そして風竜が着陸出来そうなくらい大きい船がいくつも見受けられた。
一隻は東にある日本国の海上自衛隊護衛艦群、もう二隻は第三文明圏の覇者パーパルディア皇国海軍、そしてもう二隻が第二文明圏からはるばるやって来たムー海軍であった。
『今日はすごくまぶしい日だな』
スサノウの相棒である風竜が話しかけてくる。風竜は知能が高く念話を介して会話をすることが可能であった。
「確かに……今日は快晴だな」
今日は太陽がまぶしく、雲の少ない快晴であった。
『いや違う。太陽ではない。あの下の灰色の船達から、線状の光が様々な方向に高速で照射されているのだ』
「船から光?私には何も見えないが……」
『フッ……人間には見えまい。我々が遠くの同胞と会話をする時に使用する光、人間にとっては不可視の光である。どこに何かが飛んでいるかの確認も出来る。その光に良く似ているようだ』
「飛行竜が判るのか?どのくらい遠くまで?」
『それには個体差がある。ワシは120キロぐらい先まで判るが……あの船の出している光は、ワシのそれより遥かに強く、そして光が収束している』
「まさか、あの船達は、遠くの船と魔信以外の方法で通信出来たり、見えない場所を飛んでいる竜を見ることが出来るのか?」
『あそこにいる日本の船、8隻全て……いや弱いながらもパーパルディアとムーの船からもその光が出ているようだ……』
「日本……、いや文明圏の国々はすごいな」
上空では、このような会話が行われていた。一方地上ではシハンが興奮しながら遠眼鏡で海上自衛隊の護衛隊群を覗き込んでた。
「前回も見かけたパーパルディアやムーの戦船もすごいが……日本の戦船も大きさでいえば同じようであるな。一瞬城が攻めてきたと勘違いしてしまうほどである」
「いやはや……ガハラ神国とパーパルディア皇国から事前情報として聞いてはいましたが……日本もすさまじいですな」
「パーパルディアに数回訪れた時見かけた巨大な鋼鉄船、それがアマノキに集合している。まるで夢のような光景です」
側近のマグレブが興奮したようにシハンへと語る。
「剣王、先立って初参加のムー国とパーパルディア皇国による合同訓練を行うそうです」
「合同訓練?一体何を行うのだ?」
「共通の敵を共同で撃退する……とのことです。既に2つの艦隊は合流を済ませております」
アマノキ沖ではパーパルディア・ムー連合艦隊が攻撃の準備を進めていた。総勢22隻の内訳は戦艦4隻、空母4隻、巡洋艦6隻、駆逐艦8隻の大艦隊である。その一隻、パーパルディア巡洋戦艦一番艦『パーパルディア』の艦橋ではシルガイアが指揮をとっていた。
「ムー艦隊との合流、完了いたしました。通信開きます」
「了解した。こちらはパーパルディア艦隊司令官のシルガイアである。通信の感度は良好か?」
『こちらムー艦隊司令ミニラル。感度良好、標的艦隊はは2キロ沖合をおよそ10ノットで航行中』
「了解した。主砲砲戦用意!距離2000!」
『砲戦よーい!左舷標的艦!距離2000!』
シルガイアの号令とともにムー、パーパルディア両国の戦艦4隻が標的艦に全砲門を向ける。パーパルディア型巡洋戦艦35.6cm8門、ラ・トナガ型戦艦41cm8門、それぞれの砲門が動き目標に狙いを定める。
『距離よし!角度よし!いつでもいけます!』
「よし、全砲門撃ち方始め!」
ムーとパーパルディアが砲撃演習を行っている頃、剣王シハン直々に、日本の外務省に頼んだ『日本の力を見せてほしい』その回答が今出る。
護衛艦のさらに沖合いにフェン王国の廃船が4隻、標的船として浮かんでいた。
護衛艦からの距離はおおよそ2キロ。剣王シハンは望遠鏡(ムー製)を覗き込む。
今回はイージス艦とかいう船が、1隻だけで攻撃を行うらしい。
『撃ち方はじめ!』
こんごう型護衛艦三番艦『みょうこう』のオート・メラーラ127ミリ速射砲が火を吹き僅かな時間の後、シハンの耳に発砲音が聞こえる。
――ダン…………ダン…………ダン…………ダン…………。
4回発砲音がした、その直後標的船は猛烈な爆発を起こし、水飛沫をあげ、船の残骸が空を舞う。
標的船4隻は一発の無駄弾を使うことなく、爆散、轟沈した。
「なるほど……これが『日本の力』か。すぐにでも、日本と国交を開設する準備に採りかかろう。不可侵条約はもちろん、出来れば安全保障条約といった条約も取り付けたいところであるな……」
その光景を見たシハンは満面の笑みで宣言した。
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シハンが思いを巡らせている頃、海上にいるみょうこうのレーダー観測員は、遠方の西側……フィルアデス大陸、パーパルディアとムーの連合艦隊の方から近づく飛行物体に気がついた。時速にして約250km弱で、50騎ほどが近づいてきていた。
レーダー員は何かがおかしいと艦隊指令に報告があがる。
「西にはフィルアデス大陸と……パーパルディア皇国があったな」
「はい。今回の軍祭に参加していますのでコンタクトをとってみますか?」
「ああ、頼んだ」
みょうこうがパーパルディア皇国海軍に問い合わせてはみたもののパーパルディア本国からは、指定した空域には何も飛行物体を飛ばしていないとの回答があった。念の為と思いパーパルディアが偵察機を飛ばすとその正体が明らかとなった。
『こちらスカウト02、高度2000で未確認飛行物体を発見。未確認飛行物体はワイバーン。くり返す未確認飛行物体はワイバーン。50騎がアマノキ方面へと飛行中……ちょっと待て、ワイバーンには誰も乗っていないぞ!』
「ワイバーンに誰も乗っていない……?野生のワイバーンが群れてこちらに向かってきているのか?そんな馬鹿げた話があるか」
誰も乗っていないという偵察機からの報告にシルガイアは首をかしげる。野生のワイバーンが海を渡りはるばるフェン王国まで飛んでくることはまずありえないからであった。
「何か裏がありそうだな……ムー艦隊にも伝達、総員対空戦闘用意、直掩機を直ちに発艦、これは演習にあらず。繰り返すこれは演習にあらず!アマノキと日本の艦隊にも伝えろ」
所属不明のワイバーン50騎は、30騎がムーパ連合艦隊へと向かい、残りの20騎は首都アマノキ上空に飛来していた。
ムーパ連合艦隊の空母からは次々と戦闘機が離陸し、迎撃へと向かっていく。パーパルディア皇国艦上戦闘機『ベルーナ改』15機とムー艦上戦闘機『マリン』10機が即席の編隊を組みながらワイバーンの迎撃を行う。
艦上戦闘機『マリン』……最高速度570キロ、20ミリ機関砲4門を備えたムー海軍の艦上戦闘機である。ミリシアルの天の浮舟と同等、もしくはそれ以上の戦闘能力を持っていた。
『敵はワイバーンだ!かといって侮ってかかると落とされるぞ!気合いれてけ!』
臨時飛行隊長からの激が飛ぶ中、戦闘機隊はワイバーンと戦闘状態に入った。
『各機散開!僚機との衝突だけには注意しろ!』
ワイバーンはすれ違いざまに導力火炎弾を叩き込もうとしてきたがヘッドオンをしたベルーナとマリンの一斉射によってものの数十秒で10騎以上のワイバーンが落とされる。
そのまま敵味方入り乱れる空中戦へと移っていったが速度で劣るワイバーンが戦闘機隊に追いつけるはずもなく簡単に後ろを取られたかと思えばあっというまに機銃で薙ぎ払われ海へと落下していった。
『また一騎撃墜だ!』
『おいおい勘弁してくれよ。オレの獲物横取りしやがやって』
『へっ!そこでチンタラ飛んでるのが悪いんだよ!』
『ガンズ4!ガンズ5!そのよく動く口を動かす暇があったらとっととワイバーンを叩き落とせ!それか戻ったらたっぷりと指導が必要か!?』
30分にも満たない空戦はムーパ連合飛行隊がほぼ無傷でワイバーンを撃破し、列強国の強さを見せつける結果となった。
一方、アマノキに向かっていた20騎のワイバーンはパーパルディア艦隊から報告を受けた海上自衛隊の護衛艦隊が迎撃に当たる。攻撃を受けていないのに迎撃体制を取るのかと思われるが、シハンから直々に『害獣駆除』の名目でワイバーンの迎撃許可を取り付けた。
護衛艦隊の旗艦であるみょうこうの主砲が上空に展開する「敵」へ向く。各護衛艦で標的が重ならないように、振り分けられる。FCS射撃管制システムにより、敵との相対速度が計算され、飛行する敵の未来位置で迎撃できるよう、寸分違わず、主砲の砲身が上空を向き各護衛艦の主砲が放たれ上空にいたワイバーンへ命中し海へと墜落する。
陸上に墜落してしまわないかと心配されるが高度な計算機能のある射撃管制システムによって『計算上』海上で撃墜できるようになっていた。
だがイレギュラーというものが発生する。二騎のワイバーンが急降下すると水面スレスレを飛行しつつ、みようこうへと接近して来たのである。
『1-13、14、低空より接近!』
『
20ミリ機関砲、『ファランクス』が毎秒50-75発の弾丸の雨を浴びせる。しかし、一騎が囮となってCIWSの弾丸を受け止めて墜落する。もう一騎がいきなり高度を取ったかと思えばみょうこうへ急降下する。その口元には導力火炎弾が形成されていた。
『一騎撃墜、もう一騎突っ込んでくる!』
『CIWSは!?』
『駄目だ!間に合わない!』
『総員衝撃に備えーッ!』
その直後、何かが激突したような衝撃がみょうこうを襲う。おそらく導力火炎弾がどこかしらに命中したのであろう。
『状況報告!』
『後部飛行甲板に撃墜したワイバーンが激突!現在消火活動が行われています!』
どうやら他の護衛艦がみょうこうの援護に周り、ワイバーンが導力火炎弾の発射前に撃墜できたようであるがワイバーンの死骸が海へと落下せず、運悪くみょうこうの後部飛行甲板へと墜落してしまったのである。そのため発射前の導力火炎弾が原因で後部飛行甲板で火災が発生していた。
「消火急げ!」
「くそっ、なんだこの炎、中々消えないぞ!」
炎が粘性を持っているらしく、消火活動に手間取るがなんとか消火をすることはできたが謎ばかりが残る。あのワイバーンはどこからやってきて何故フェン王国の軍祭を襲撃しようと考えたのか。考えれば考えるほど謎が深まるばかりであった。
これで今年の更新は終わりです。皆様良いお年を。