レミール転生   作:久保田紅葉

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正月休みが終わって仕事始めなので初投稿です

今回ちょっと案が浮かばなくてちょっとごり推し気味です。


戦乱の風

 日本国政府はみょうこうが被弾したことを受け、朝田大使を通してパーパルディア皇国から説明を受けるとともに厳重な抗議を行うことを決定した。その決定を受けた外務省職員で現パーパルディア大使の朝田はまた胃を痛めていた。

 

 

 

「冗談じゃない……先制攻撃をしたのは自衛隊じゃないか……どうして私がここまで胃を痛めなければならないんだ!」

 

「上層部の命令です。腹ぁくくってください朝田さん」

 

 

 

 胃薬片手に朝田は第三外務局……ではなく、皇帝ルディアスのいるパラディス城へと案内された。本来であれば謝罪を求めるためにわざわざパラディス城まで出向く必要はないはずであった。

 

 

 

「アサダ大使、シノハラ様、こちらでルディアス陛下がお待ちでございます」

 

「は、はい。ありがとうございます」

 

 

 

 朝田と篠原が衛兵から扉を開けられ中へと入る。そこには皇帝ルディアスの他に技研所長のレミール、パーパルディア陸軍アルデ最高指揮官やパーパルディア海軍のバルス海将等上層部の錚々たる面子が朝田の到着を待っていた。

 

 

 

「お久しぶりです。朝田大使、篠原殿、ささ、こちらの席へお座りになってください」

 

 

 

 司会進行役を務めるレミールが二人に着席を促すと二人はぎこちなさそうに席へと着く。朝田は顔を真っ青にしながら腰を下ろしていた。

 

 

 

 ――……えーでは、全員揃ったようですので、先日のフェン王国における軍祭襲撃についての調査結果についてご説明させていただきます。

 

 まずはじめにですが……フェン王国の軍祭で海上自衛隊の皆様におかれましてはワイバーン撃破に被害を出しつつも多大な貢献をしていただき感謝申し上げます。代表して私から感謝の意を申し上げさせていただきます。

 

 

 

 レミールが頭を下げると朝田は立ち上がってお礼をし返す。

 

 

 

 ――フェン王国の軍祭を襲撃した50騎のワイバーンですが……パーパルディア競竜協会、ならびにパーパルディア皇国陸海軍に問い合わせたところいずれの団体でも所有登録がなされていない個体でありました。

 

 詳細について調査を進めていたところ、カルーア地方郊外にあるワイバーン肥竜牧場から用途変更されたワイバーン15騎が脱走したと当局への通報がありました。日本軍の軍艦みょうこうへ墜落したワイバーンにこの牧場で割り振られていた管理番号が確認できたため、この牧場から逃走した個体が襲撃に関係していると断定いたしました。

 

 

 

 ――直ちに牧場担当者を拘束し調査を進めたところ不可解な点がいくつか見つかりました。……お手元の資料を御覧ください。

 

 

 

 手元の資料を各々が開くと食い破られたような鉄製の檻、血がべっとりとついた床、そして大きな穴の空いた天井と厩舎と思われる建物、建物に至ってはワイバーンの火炎放射によって焼け落ちている物も見受けられた。

 

 これには外交経験の薄い朝田には刺激が強すぎたようで朝食を戻しそうになるがなんとか堪える。

 

 

 

 ――見る人によっては不快に思うかもしれませんが話を続けさせていただきます。

 

 ――時系列を追います。午前8時頃、いつものように牧場関係者が厩舎を訪れ朝食の準備を進めていたところ厩舎内のワイバーンがいっせいに暴れ出しました。これを抑え込もうとした厩務員が檻を突き破ってきたワイバーン一騎に襲撃され、とっさにかばった左腕を噛みちぎられてしまう重傷を追いました。

 

 ――その後牧場の厩舎を破壊・放火等破壊の限りを尽くした後、東の方向へ編隊を組んで飛び去っていったとの目撃情報があり、おそらく他のワイバーンと合流しフェン王国へと向かったと思われます。

 

 ――同じ場所のワイバーンが一斉に暴れ出したという記録は過去にはありません。このことから何者かが念波によってワイバーンを操り襲撃を計画したものだと断定いたしました。

 

 

 

「ふむ、だとすれば可能性としてあるのは国内の反乱組織による犯行か?」

 

「いえ、治安維持隊や憲兵隊からの報告によればその可能性は限りなくゼロに近いかと。もし反乱組織であればパーパルディア国内で事件を起こすはずであります」

 

 

 

 集めた情報をまとめると何者かがワイバーンを使って襲撃を行ったがその犯人の尻尾すら掴めていないというのである。

 

 これ以上報告はないと思ったところで会議室に人影が現れる。格好からして第三外務局の外務局員といった風の人物が第三局長ルイージの元へと駆け寄って耳打ちをしていた。

 

 

 

「ルディアス陛下、第三外務局より報告がございます……よろしいですか?」

 

「構わないよ。報告して」

 

「はっ、ガハラ神国風竜騎士団長スサノオ団長からの報告です。先日の軍祭襲撃の際、彼の風竜が感じ取った念波のようなものがあったそうです。……失礼ながら読み上げさせていただきます」

 

 

 

 

 

 ――『大審判の準備は整いつつある。先ずは我らの力をかの王に示し手向けとせよ』……以上です。

 

 

 

 

 

 ルイージの言葉を聞き、会議に参加していた一同……朝田と篠原以外のパーパルディア皇国の上層部の空気は一瞬でガラリと変わった。そんな中、真っ先に言葉を発したのはルディアスであった。

 

 

 

「……なるほどね。カイオス。念の為だけど国家警戒レベルを平時の5から1段階引き上げそれとリーム帝国沿いの国境地帯の住民に内陸部への避難準備指示。使える物はなんでも使って」

 

「はっ、了解しました」

 

「軍部も準戦時体制に、戦時の臨時動員はまだしなくていいよ」

 

「かしこまりました」

 

「鉄道局も臨時戦時ダイヤへの移行を行い、軍用列車をいつでも出せるようにしておきます」

 

「うん。お願い。できるだけ市民生活に影響のないように」

 

「はっ」

 

 

 

 ルディアスの号令で続々と部屋を後にしていく上層部たち、最後に残されたのは進行を努めていたレミールとルディアス、そして日本側の朝田と篠原であった。

 

 

 

「え、えっとレミールさん。一体どうされたのでしょうか……」

 

「ああ、朝田さん。今我が国は国家警戒レベル4、準戦時体制へと移行いたしました。もし差し支えない範囲でよろしければ質問にお答えいたしましょう」

 

「ええと、パーパルディア皇国はどこかの国と戦争状態にある……ということですか」

 

「……ええ、その認識で間違いありません」

 

 

 

 朝田は頭を抱えると同時に日本が国と国どうしの争いに巻き込まれてしまったと直感的に感じ取ってしまった。

 

 

 

(わ、私はなんて運が悪すぎるんだ……あぁ、胃が痛い。休職届け出したら休暇もらえるかな)

 

 

 

 だが今回のワイバーンの襲撃は当初無人であったために害獣駆除の名目で行われた上、護衛艦の後部にワイバーンが墜落し、火災も発生した。海上自衛隊に非がないのは明らかであった。

 

 また対空兵器を持たないフェン王国ではワイバーン撃退は難しく、海上自衛隊が居なければ王城近くにいた外務省職員も死の危険があった。

 

 だがここで朝田の頭にはこの周辺に敵対国などいたのか?という疑問が思い浮かんだ。日本が接触できた国々、クワ・トイネ公国やクイラ王国といった文明圏外の国々ともパーパルディアと友好的であるし、だとすれば未だ接触のできていないパンドーラ大魔法公国かマール王国といった第三文明圏の国と争っているのだろうか。

 

 

 

「しかし、貴国が戦争状態とは知りませんでした。相手はパンドーラ大魔法公国かマール王国でしょうか」

 

「いえ、その二カ国ではありません。戦争状態……とはいいますが実のところは休戦状態に近いのです。敵はフィルアデス大陸北方の国、リーム帝国です。彼らはリーム第二帝国と名乗りフィルアデス大陸の正統な支配者を主張して突如我が国へ宣戦布告をしてきたのです。ですがそれらを全てはねのけた我々ですが10年ほど前の大攻勢の後彼らは亀のように引きこもり自らで壁を築いたのです」

 

「さらに講和を結ぼうにも相手方との連絡は取れないし、年中気味の悪い霧に覆われている。貴方たちだって気味の悪い国が隣にいたら戦時体制を取らざるを得ないでしょう。それに近年海魔の被害も年々増えてきている。それもリーム帝国の仕業だと皇国情報局は決定付けているからね」

 

 

 

 ルディアスからも情勢が語られる。そんな薄気味悪い国がパーパルディアの隣国にいるなど想定外であった。一刻も早く首脳部にこの事実を伝えなければならなかった。もはや厳重な抗議や責任の所在どころではない。パーパルディア皇国へ邦人の一時渡航停止措置を行う必要さえ出てきたのである。

 

 

 

 朝田からもたらされたこの情報に日本国政府は上から下まで大騒ぎとなった。対話が不可能な敵対国家が友好国と国境を接しているのである。もはや戦闘は不可避と言っても過言ではなかった。

 

 何とか戦闘を回避したいと思ってもリーム帝国は『海魔』と呼ばれる魔物で海を荒らし回っているらしく、偶発的な戦闘が起こる可能性が否定できなかった。

 

 もし日本⇔クワ・トイネや日本⇔クイラ間で海魔の襲撃によってタンカーや貨物船が襲われれば日本は資源の輸入が不安定となり簡単に干上がってしまう。

 

 そうなってしまわないよう日本国政府はパーパルディア皇国に働きかけ日本の護衛艦、もしくはパーパルディアの巡洋艦、駆逐艦クラスの軍艦が護衛となり護送船団を編成することになった。

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